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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻12号

1969年12月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

5.Chondromyxoid fibroma/6.Chondrosarcoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.915 - P.918

症例7:29歳.男,約2年前に転び右膝部を打撲し,その後気候不順の折,右膝部に神経痛様疼痛に気付いていた.約半年前より階段の昇降,および歩行時に疼痛を訴え,しかも右大腿の筋萎縮を認める(東医歯大).

視座

先天股脱早期治療の発展

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.919 - P.919

 先天股脱の早期治療という常識的なことが一般に普及してきたのはつい最近のことである.この治療法の発展の歴史を辿ることはわれわれにいろいろな示唆を与える.新生児先天股脱にsnapping or clicking phenomenonがみられることはすでに60年も前に知られていた(Froelich 1911, Le Damany 1912).Puttiはすでに1927年に早期治療の優秀性についてイタリー語の論文を発表している.Ortolaniも早くより早期治療の研究を行ない,1937年にその成績を発表した.1948年にも論文を発表している.しかし,当時はLorenz法が世界を風靡しており,また英国のBarlowも述べているように,Ortolaniの論文はイタリーのあまり知られていない小児科雑誌(Padiatria, 45:129, 1937)に発表されたので整形外科医の注目を引かなかつた.彼の研究が注目されるようになつたのは1951年に発表された独文で書かれた小論文によると思われる(Frühdiagnose und Frühbehandlung der angeborenen Hüftgelenksverrenkung.Kinderärztliche Praxis, 19:404 ,1951).

論述

放射線増感剤BUdRの使用経験

著者: 立石昭夫 ,   大野藤吾 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.920 - P.927

はじめに
 悪性腫瘍の放射線療法は古くから多くの症例に用いられており,その線源,照射方法などに改善が加えられている.それにもかかわらず一般に整形外科領域の悪性腫瘍,すなわち悪性骨腫腸,悪性軟部腫瘍には有効なものが少なく,わずかにユーイング腫瘍,細網肉腫など若干のものが感受性ありと考えられている.しかし,これら放射線感受性の腫瘍においても,放射線療法は必ずしも充分な効果を期待できない現状である.
 放射線治療効果を増大する研究は古くから幾多の試みがあり,それぞれ若干の効果をあげたとの報告があるが,広く実用化されるに至つていない.近年ハロゲン化ピリミジン類似物質の増感効果が注目され研究がすすめられているが,中でもその効果がもつとも期待される物質がBUdR(5-Bromouracil-2'deoxyriboside)である.われわれはこのBUdRを6例の臨床例に使用する機会を得たのでその使用経験について報告する.

腰仙部椎体炎症巣に対する経腹膜式侵襲法とその適応

著者: 大谷清

ページ範囲:P.928 - P.934

はじめに
 今日,飛躍的な脊椎外科の進歩の賜物として直達・直視下に前方および前側方より椎体に侵襲を加えることが容易に行なわれるようになつた.
 脊椎前方および前側方進入は椎体前方に内臓諸臓器が位置するだけに,椎体進入に際し,それらを考慮することが必要となる.腰椎および腰仙部進入では経腹膜式と腹膜外式の2経路がすでに確立されている.

先天性眼運動系異常を有する脊柱側彎症—とくに脳幹性要因について

著者: 手束昭胤 ,   山田憲吾 ,   井形高明

ページ範囲:P.935 - P.945

はじめに
 脊柱側彎症の原因に関して,従来より種々論ぜられてきたが,現在なお不明なものが多い.
 私どものクリニックにおいても原因不明の特発性側彎症と診断されたものが,106例中82例(77.3%)を占めているのが現状である.しかし最近になつてこれら特発性側彎症の中に先天性の眼運動系異常と著明な平衡異常を合併した特異な症例のあることが判つてきた.これらの側彎はきわめて強い進行性増悪を示し,能動的に矯正することがはなはだ困難であつた.以下症例をあげて検討を加えることにする.

境界領域

手術時の化学療法はいつから始めるべきか—実験的骨髄炎と化学療法

著者: 林一郎 ,   柳橋斉

ページ範囲:P.946 - P.950

 骨の手術のときに,感染予防のために化学療法剤を投与すべきかどうかということは,いろいろと議諭されてきた.理論はともかくとして,実地の臨床家の立場では,化学療法を行なわないよりは,行なつたほうが安心できるという主張がある.また一方では,化学療法を行なつても感染の予防には役立たないという主張もある1,2),無差別的に手術症例を二つに分けて,ひとつの群には化学療法を行ない,他のひとつの群には化学療法を行なわなかつたところ,むしろ化学療法を行なつた群に多くの感染が生じたとする統計も発表されている2,3).化学療法が手術創の感染予防に役立つかどうかの問題は,いまだ解決されない問題であつて,これからの解明を要するものである4)

歴史

骨折治療の近代史(2)—ギプス包帯の発明

著者: 天児民和

ページ範囲:P.951 - P.955

 英国の骨折治療は農家出身のBone-setterにより開拓せられ,その流れをくむHugh Owen Thomasによつて研磨せられた.同じ欧州といつても欧州大陸とは必ずしも同じではない.今日も英国では包帯はDresserという医師でない専門家がいる.大陸では医師が骨折治療に悩み,技術用発を考えていた.特に欧州では戦争が頻発しその戦傷者の取扱いに苦慮していた.やがてアラビアの軍隊で石灰粉を硬くして骨折治療に用いられている事実が伝わり,一方欧州で行なわれていた糊包帯とが組合わされて,ここにギプス包帯という新しい技術ができた.

装具・器械

義手感温装置の試み—とくに温度警報装置として

著者: 大田仁史 ,   伊藤邦彦 ,   三浦哲史

ページ範囲:P.956 - P.958

 四肢切断者のために機能的に本来の手足により近い義肢装具が開発されることは,患者にとつても,また治療にたずさわるものにとつてもこのうえない喜びである.最近,北海道の患者さんから,前腕切断端部が冬になるととくに外出時など冷えてつらいため,白金懐炉を義肢の上に包帯で結んで暖をとつているという切実な訴えを聞いた.言われてみると,なるほど現在この種の装具の開発は耳にしない.簡単なようでいざ実用品となるとなかなか難しい問題がでてくる.電気毛布の原理を利用していろいろ研究しているが,消費電力,ヒーター,ストッキネットの材質など検討せねばならぬことが多い.しかし,切断にたずさわる医師として,この種の問題にも積極的に取り組まねばならぬことはいうまでもないことであろう.
 われわれはこの種の研究の一環として,義手からある程度の温覚を得ることはできないかという単純な発想より,サーミスターを利用して以下の装置を試作してみた.装飾用の義手指尖にサーミスターをとりつけ,温度によるその抵抗の変化を利用してヒーターを熱め,健康な皮膚に温度を伝えるという装置である(第1,2図).

臨床経験

大腿骨骨頭辷り症—経過観察と治療法の検討

著者: 広畑和志

ページ範囲:P.959 - P.967

はじめに
 大腿骨骨頭辷り症は,わが国ではきわめて稀な疾患である.しかし欧米では決して珍しいものではない.本症の原因や発生機序についてはなお,いくぶんかの検討や論議の余地が残されている.しかし,臨床像,治療の適応,治療成績に関しては,多くの記載があつて,それらの報告者の見解にもそれ程の差は認められない.とくにHoworthを中心として,1966年総括されたシンポジアムの内容には,これらのことが盛沢山含まれている.
 一方,著者は,この疾患の少ないわが国において過去15年間に,6例を経験した.しかも最短1年から,最長11年5ヵ月にわたつて各症例の臨床経過を観察して,その治療法を検討する機会を得たので,これらについて報告する.

大腿骨に発生したDesmoplastic fibroma

著者: 川西大司 ,   岩崎肇 ,   倉田利威 ,   池庄司敦

ページ範囲:P.968 - P.972

 骨のdesmoplastic fibromaは稀な原発性の骨腫瘍で,1958年Jaffeがその著書Tumor and Tumorous Conditions of the Bones and Jointsの中で5例を記載し,その臨床的,レ線的および病理的特徴を述べた.
 以来現在までに27例の報告が見られるのみである.われわれは今回左大腿骨に発生したdesmoplastic fibromaと考えられる1症例を経験した.

四肢の血管損傷と血管系疾患—慶大整形外科過去10年間の症例より

著者: 田中守

ページ範囲:P.973 - P.978

 最近整形外科領域においても血管外科に対する認識があらたになり,これはとくに四肢の外傷に起因する血管損傷をはじめ.脊椎・脊髄疾患,筋疾患に付随する四肢の循環障害,血管系奇形にもとづく四肢の発育異常,その他血管系障害による四肢の疼痛,運動障害などに関連して,これら血管系疾患に対するわれわれ整形外科医の態度が大きな課題となつて来ている.
 そこで私は整形外科的愁訴を有する血管系疾患がどのような分布をしているのか,またこれら血管系疾患に対してわれわれが過去にとつてきた態度を省りみ,さらに将来に対処すべき方法を考慮しつつ,慶大整形外科過去10年間(昭和34年より昭和43年まで)における310症例の統計的観察(第1表)と自験例を中心に各疾患の特徴を諸家の意見を参考にして述べてみたい.

両側性先天性筋性斜頸の5症例

著者: 井沢淑郎 ,   小泉正明 ,   黒川一

ページ範囲:P.979 - P.983

 先天性筋性斜頸は多い疾患であるが,その両側性のものの報告は比較的少ない.Zobel8)は「斜頸」が両側ならば,いわゆる斜頸位をとらないはずであるので,本疾患はbeiderseitige Verkurtzung der Sternocleidomuskelnと呼ぶのが妥当であるとし,この名称を提唱している.しかし実際には両側での程度が異なるために,やはりいずれか一方への斜頸位を示すものが多い.
 最近,われわれは本症の5例を経験したので報告する.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(28)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.984 - P.986

 A:この症例はあまり詳しことが分つてないのですが,20歳台の若い女性で,右股関節附近に痛みがあつて来院し,レントゲン写真を撮つたらfemur neckにこのようなcystic lesionがあつたというかたです(第1図).
 epiphysisはきれいで,femur neckに中心性にosteolyticな嚢腫像があります(第2図).cortexはうすくなつてますが破れてはいません.それから大転子,小転子はintactです.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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