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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科4巻2号

1969年02月発行

文献概要

境界領域

ムコ多糖と骨疾患

著者: 長谷川栄一1

所属機関: 1京都府立医科大学薬理学教室

ページ範囲:P.123 - P.135

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 「君,このエビの甲羅を研究室へ持つて帰り,塩酸で煮てみたまえ.きつとグリココールがとれるよ」昼食の終つた教授は皿の上に残つたエビのカラを指して,傍らの医学生に命じた.教授が,自分の食いかすを実験材料に使え,などと今の学生にいったら,大衆団交で抗議されるかも知れないが,幸いにして時は1875年,学生はいわれるままに実験を行なつて,エビのカラから白色結晶を得た.しかしこれは教授の予想したアミノ酸のグリココールではなく,アミノ糖の1種が得られたのである.ムコ多糖の一成分であるグルコサミンはこのようにして発見されたものであり,その教授はドイツ生化学界の碩学,Hoppe-Seylerであつた.
 この挿話からもわかるように,動物の硬成分と糖質とは深い関係がある.われわれの骨はリン酸カルシウムを主成分とするが,その生成にはムコ多糖と称する特殊の多糖類が,重大な役割を演じているのである.以下ムコ多糖と骨疾患についてのべる前に,蛇足かもしれないが,ムコ多糖の基礎的,生化学的性質や定量法にもふれ,さらに骨形成におけるその意義についても簡単に解説したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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