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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻3号

1969年03月発行

雑誌目次

視座

膝半月摘出術の適応

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.167 - P.168

 半月切除術は今日広く一般に行なわれており,これに関する臨床的,実験的研究の数は甚だ多い.しかし,この半月切除術は全摘出術が優るか,部分的切除を原則とすべきかの基本的な問題は未解決のまま残されている.半月切除術後,十分な再生を信ずる人は全剔出術を推奨し,一方,半月の再生を期待しない人たちは,当然,半月の切除範囲を最小限に止めるべきことを主張している,半月の再生はその切除縁から増殖した滑膜組織が質,量ともに,次第に形を整えて,ついには白色,腱様の光沢を帯びた,一見,正常半月に似た形に到達するのであるが,人間の場合その推移は極めて緩徐で,外観上半月に似た形態をなすには少なくとも1年以上を要する.形態面からみた半月の再生は以上のごとくであるが,形態上の再生が直ちに機能の復元を意味すると考えるのは早計である.従来の多数の論文の弱点もここにある.再生半月が半月本来の機能をどの程度に代償しうるのかは全く別個に考えねばならない.
 半月の生理的機能については色々な分類法があるが,最も理解しやすいCravener & Mac Erloy(1941)のそれによると,半月は6つの機能を有する.これらの諸機能を完遂するには半月自体に次の2条件を備えることが必要となる.

論述

四肢の先天性血管奇形(1)

著者: 東博彦 ,   伊藤維朗 ,   立石昭夫

ページ範囲:P.169 - P.179

はじめに
 先天性血管奇形は一般に頭部,顔面,躯幹に多く,四肢には比較的稀とされているが,1960年から1967年の過去8年間にわれわれが経験した症例は約100例に及んでいる.この数は従来の報告に比べてかなり多く,しかも整形外科領域での血管奇形についての総括的な報告はいまだ見当らないので,主に臨床的立場から,まず分類を中心として検討を加え,更に血管奇形と骨変化の関係,全身循環系にも影響を及ぼす場合のある先天性動静脈瘻の病態生理,診断および治療上重要な血管造影と血管像などについて簡単に総括し,ついで各群の血管奇形の臨床的特徴や治療について言及したい.

先天性股関節脱臼に対するRiemenbügel法の問題点

著者: 赤坂勁二郎

ページ範囲:P.180 - P.187

 先天性股関節脱臼(以下,先天股脱と略する)の治療の歴史のなかにあつて,Lorenzの創始した整復法,固定肢位は文字通り画期的なものとしてその後長く今日にいたるまで広く常用されてきているが,年月の経過とともにその治療成績は最初に期待されたほどかんばしいものではなくなることがSeverinの広範な調査をはじめとする諸家の報告によつて指摘され,すべての整形外科医のいだく最大の悩みの一つとなつている.
 跛行を主訴として医治を乞うて来たような年長児の脱臼に対する瞬間的整復,その後,時として1年になんなんとする,創始者によつてさえultra-unphysiologischと表現された肢位での固定の両者によつて惹起された骨頭の傷害が,変形性股関節症へ発展し治療成績の低下を招く元凶と目されて多くの対策が考え続けられてきた.

臨床経験

Marfan症候群の生化学的問題点について

著者: 三橋稔 ,   大木健資

ページ範囲:P.188 - P.194

はじめに
 Marfan症候群は1896年フランスの小児科医Marfan7)によつてdolichostenomelia(long,thin extremities)として始めて記載されてからすでに文献上数百例に及ぶ報告があり,本邦文献だけでも200例近くに達し,決して稀有なる疾患ではない.家族的発生をみた報告も多く,McKusick8)は74家系を集め得たという.また,アメリカ第16代大統領A. LincolnがMarfan症候群の家系であつたことはあまりにも有名である18)
 本症はすでに整形外科のみならず眼科,小児科,内科の各科から報告があり,それぞれ専門的立場における病態の詳細な記載をみるが,その中にはMarfan症候群の主徴候の不充分なものや詳細な所見を知り得ないものも散見する.

Ehlers-Danlos症候群の2例とその病因について

著者: 藤井英夫 ,   森本一男 ,   小林郁雄 ,   藤原誠

ページ範囲:P.195 - P.205

いとぐち
 Ehlers-Danlos症候群は1901年Ehlersならびに1908年Danlosにより記載発表されて以来,中胚葉性組織の先天性発育不全症として比較的稀な疾患とされている.1936年Roncheseは本症の3症例を経験し,更に文献的考察を加えて本症候群の特徴を下記のごとく総括した.

Ellis van Creveld症候群の症例

著者: 佐々木正 ,   松田良三

ページ範囲:P.206 - P.212

 1940年Ellisおよびvan Creveldはectodermal dysplasia,多指症,先天性心疾患を伴つたChondrodysplasiaの3例を報告し,Chondroectoderal dysplasiaと名づけた.同報告3例中の1例はそれ以前にMcIntosh(1933)により簡単に記載されている.その後,外国報告例は現在まで40余例に達するが,本邦報告例は小田(1954)の報告をはじめとして4例にすぎない.われわれは定型的な1例を経験したので報告する.

Oculodentodigital syndromeについて—症例報告ならびに文献的考察

著者: 吉野槇一 ,   山内裕雄 ,   松本淳 ,   三上隆一

ページ範囲:P.213 - P.216

 Oculodentodigital syndromeは眼,鼻,歯牙など,顔面器官と手指に奇形を同時に有する症候群で1920年Lohmann, Wが"Beitrag zur Kenntnis des reinen Mikrophthalmus"と題して2症例を発表して以来,Mikrophthalmus syndrome,Dysplasia oculodentodigital syndromeなどの名称で現在に至るまで9症例の報告をみている.
 本邦では三上が第15回東日本臨床整形外科学会(昭和41年9月)において,1症例を報告したのが最初であるが,その後,著者らは家族内に発生した3症例を経験したので,第1症例と併せて症例の概要を報告する.

いわゆるArthrogryposis multiplex congenitaについて

著者: 佐藤舜也 ,   志賀正之 ,   石原昂 ,   加藤正 ,   田中稲実

ページ範囲:P.217 - P.222

 Arthrogryposis multiplex congenitaは,非常に稀な疾患というほど数少ないものではないが,その割に報告例は少ない.本症はArthrogryposisのほかにArthromyodysplasia congenita,Guerin-Stern Syndrom,Multiple angeborene Gelenkstarre,Amyoplasia congenita,Myodystrophia foetalis deformans(Middleton),angeborene Gliederstarre,Myodysplasia fibrosa multiplex(Baum),rigidités articulaires multiples congenitale,Multiple congenital contracture(Wunsch)などその他にも報告者によっていろいろな名称がある.われわれが経験した9例の症状,治療法および現在までの報告例とあわせて検討を行なってみたい.

若年者にみられる手袋状筋萎縮症の4例

著者: 岡田守功 ,   中村卓

ページ範囲:P.223 - P.226

 1959年平山ら1,2)はMotor Neuron Diseaseと思われる疾患中,筋萎縮性側索硬化症,脊髄性進行性筋萎縮症に類似しているが,臨床上これらの疾患と種々の点で異なる筋萎縮症12例を経験し,若年性一側性筋萎縮症として報告した.以来,安藤3,4),室5)らの報告があり,安藤らは同様の筋萎縮が下腿にもおこり得るとして,これらを総括し「主として若年者にみられる手袋状及び長靴下状の筋萎縮症」と命名した.
 われわれも中部労災病院整形外科においてこれと思われる4症例を経験したのでここに報告し考按を加えた.

境界領域

軟部組織腫瘍の病理学的鑑別—ことに線維肉腫と血管肉腫について

著者: 金子仁

ページ範囲:P.227 - P.239

はじめに
 軟部組織の腫瘍は,いわば病理医の泣き所の一つである.
 一般に肉腫の組織学的鑑別はなかなかむつかしい.いやそれどころか軟部組織にできた良性腫瘍でさえも時に組織学的診断のむつかしい場合がある.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(19)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.240 - P.247

症例1
 A:症例は20歳の男子であり,1967年5月頃から左肩より左上腕にかけてのシビレ感と皮下静脈の怒張を訴えていました.1967年6月の集団検診の際に撮つた胸部レ線写真で,当時異常ないといわれましたが,最近そのレ線写真を振りかえつて見ると,やはり第1図のように異常陰影が認められます.

学会印象記

第2回西太平洋整形外科学会に出席して

著者: 河路渡 ,   高橋栄明

ページ範囲:P.248 - P.251

 第1回の学会を日本で主催して発足した第2回西太平洋整形外科学会が,香港においてProf. Hodgson, Dr. Lamの主催で,1968年9月8日〜9月14日に開催された.
 これに先立つて,9月1日〜9月7日にわたり汎太平洋リハビリテーション学会があり,さらに,第2回西太平洋整形外科学会につづいて9月17〜18日1st Malaysian Orthopaedic Associationがクアラルンプールで,9月20〜21日3rd Singapore Orthopaedic Associationがシンガポールで引つづき開催され,この学会にも多くの日本人学者が参加したが,私たちは第2回西太平洋学会にのみ出席した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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