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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻5号

1969年05月発行

雑誌目次

視座

先天異常と整形外科

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.329 - P.329

 最近,先天異常の研究が医学の分野で非常に重要な地位を占めるようになつてきた.この分野は遺伝学と発生学を基盤として成り立つていて,甚しく難解である.
 サリドマイド奇形の多発は先天異常の研究に強い刺激を与え,整形外科領域では,動力義手開発の原動力になつている.骨の系統疾患は九大で広範な研究が続けられている.dystrophia musculosum progressivaについても,最近また新しく熱意と希望をもつて研究が推進されている.

論述

痛風と手の症状について

著者: 巌琢也 ,   山内裕雄 ,   御巫清允

ページ範囲:P.330 - P.340

はじめに
 痛風はプリンの誘導体である尿酸の代謝障害に起因する疾患であり,中年以後の男性がおかされやすく,遺伝性が濃厚であると考えられている.尿酸代謝異常の結果,高尿酸血症を伴い,特有な急性関節炎症状を反復し,四肢の関節周辺に尿酸ナトリウムが沈着して局所の病理学的な特徴をつくり,やがては痛風結節や骨関節の変形を生じるに至る,このような変化は腎や心にも及び種々な程度の腎障害を起し,高血圧や動脈硬化などを合併し予後を左右する.欧米ではつとにHippocratesの時代から知られ,Podagra(母趾痛),Gonagra(膝痛),Cheiragra(手関節痛)などの記載は古くからあり,ビザンチンの医師はHermodactylとしてコルヒチンの効能を既に知つていた.痛風は歴史上高名な多数の人物をおかし,帝王の病気と異名を冠せられてはいたが,疾患の本態,発作の病理,治療の薬理などについては永い間追及されることなく経験主義の支配下におかれていた.
 1943年,Barnesらがアイソトープを用い画期的な尿酸の生合成に成功し,その一世紀前にGarrodが唱えた痛風と尿酸代謝との関係が再び衆目をあつめ出し,Probenecidが治療薬として登場する(1951)に及び,痛風に関するあらゆる面での研究は飛躍的な進歩を遂げて現在に至り,全面的解明も間近しの感がある1,2,3)

水溶性脊髄腔造影剤(Abrodil,Methiodal)と低位脊椎部ミエログラフィ

著者: 西尾昭彦

ページ範囲:P.341 - P.352

はじめに
 脊髄腔造影のための水溶性造影剤は油性造影剤や気体造影剤とならんで重要な位置を占めているが,その歴史は決して新しいものではない.1931年,Arnell, LidstromがはじめてAbrodilによる脊髄腔造影術を発表して以来,それはLindblomらを中心として,主にスウェーデンで開発され,以後,広くヨーロッパ諸国に普及するところとなつている.
 これに対し,Sicard, Forestier(1922)以来のヨード化油は早くから弊害が認められていたが,Ramsey, Strain(1944)らによつて,Myodil, Pantopaqueが紹介されてから,「非吸収性」という油性造影剤のもつ宿命的欠陥が「可除去性」という形で大幅に改善された.米国ではtotal myelographyのみでなく,lumbal myelographyにおいても,現在,油性造影剤Pantopaqueが主流をなしているが,これはヨーロッパ諸国でAbrodilなど水溶性造影剤が重用されている事実と較べると興味深い.

前立腺癌骨転移巣における骨形成について

著者: 若松英吉 ,   青柳耐佐 ,   日下部明

ページ範囲:P.353 - P.359

まえがき
 癌の骨転移巣のX線学的所見に関しては数多くの観察がなされている.X線学的所見としては骨溶消像と骨形成像が基本となり,多くの癌は骨溶消像を呈し,また乳癌は混合型の像を呈することが多いとされている.骨形成像ないし骨硬化像を示すものは前立腺癌,胃のsignet cell carcinoma,気管支癌などの骨転移巣であり,前立腺癌はその代表的なものである.しかし教室の土田らが21例の前立腺癌骨転移例のX線像について観察したところでは,骨形成型18例,骨溶消型1例,混合型2例であり,前立腺癌がすべて骨形成的X線像を呈するとは限らないことを示している.背椎,ならびに骨盤のX線写真に,広範かつ著明な骨硬化像を認めるなら,大理石病,Paget病,肉腫,梅毒,中毒性骨症など比較的まれな疾患を考えるより,まず前立腺癌の骨転移を疑うのが常識的である.

臨床経験

鞭打ち損傷(第2報)—受傷機転と自覚症状の分析

著者: 林泰史 ,   鈴木勝己 ,   都築暢之 ,   竹広舜 ,   林浩一郎 ,   今井重信 ,   鈴木暉男 ,   高木徹 ,   磯見明

ページ範囲:P.363 - P.368

 最近,飛躍的に増加している交通外傷の内でも頸部外傷の病像の多様性と一部の難治性は頭部外傷後遺症とともにわれわれ臨床家を悩ませている.頸部外傷の内でも特殊な発生機転によつて起るいわゆる鞭打ち損傷についてわれわれは関東労災病院に来院する患者に系統的な調査,検討を行なつているが,第2報として受傷機転と自覚症状を中心とした臨床症状.予後について分析し報告する.

先天性とおもわれる環軸椎脱臼の1治験例

著者: 小野啓郎 ,   小田義明 ,   亀井正幸 ,   緒方晴男 ,   大田寛 ,   岸田雄之 ,   大本晃生

ページ範囲:P.369 - P.374

 先天性の環軸椎脱臼は,外傷や炎症性疾患に由来する脱臼と異なるいろいろの特徴をもつている.また,かならずしも神経症状をともなうものではないが,軽微な衝撃によつてひとたび麻痺の現われた場合には,症状は進行性か,ないしは,すこぶる難治である.
 保存療法はまず無効であるが,手術も,他のcraniovertebral anomaly同様に困難なものがある.

頸椎後縦靱帯化骨症例の追加

著者: 番場哲司 ,   松崎享司 ,   山本三希雄

ページ範囲:P.375 - P.381

緒言
 脊椎,殊に頸椎部後縦靱帯化骨の症例について外国文献には余りみられないが,本邦においては最近報告例が増加しつつある.その発生機序については種々に考察されているにもかかわらず,なお明らかでなく,また強直性脊椎関節炎との関連性の有無についても確然としていない.われわれの教室からは既に月本,小泉らによりその4例を報告しておるが,その後,更に9症例(男子7例,女子2例)を経験したので,これらの検査成績を綜合して追加発表し,レ線学的追求よりその発生機序にいささか考察を加えてみたので報告する.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(21)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   安部光俊

ページ範囲:P.382 - P.390

症例1
 A:患者は24歳の男性,主訴は両上肢の骨の変化です.
 1960年に左肘の上が腫れてきて某病院を訪れ,biopsyを受けangiomaと診断されたことがあります.

検査法

骨動態(Bone Dynamics)の組織学的検査法—第2次骨単位を中心として

著者: 高橋栄明

ページ範囲:P.391 - P.401

はじめに
 個体の発生から死まで,人の体内では代謝が絶えず行なわれている.その中の組織の一つである骨にも,形成と吸収は常に起つている.その骨の動態を知るために,近年,多数の方法が開発されたが,Frostは組織学的な方法を考案した.彼はそれをstandard bone approach9)と呼んでいる.一定の骨を用いて,正常例と病的な骨を組織学的に比較検討することである.
 標準の骨として,Frostは第5,6,7肋骨および第11肋骨を選んだ.著者は第5および第11肋骨を用いている.その理由は,①骨代謝性疾患の多くは,四肢骨より躯幹骨に症状をあらわす.例えば全身的な骨粗鬆症でも,患者の主訴は腰痛で脊椎骨粗鬆症がいちじるしい.②第11肋骨は,骨生検(bone biopsy)が施行しやすい.③呼吸運動により非活動性萎縮などの影響を受けることが少ない.④骨皮質の全岡について計測でき,samplingしやすい.胸骨に接続する上部肋骨中で,その断面が大きく測定しやすい点で第5肋骨を,また胸骨に接続していない下部肋骨中で,第12肋骨が時に痕跡的なので比較的に一定の長さのある第11肋骨を選んだ.

境界領域

整形外科領域における超音波の治療的応用

著者: 青木虎吉 ,   数井英雄 ,   瀬戸英武 ,   三枝清純 ,   小林孝光 ,   和賀井敏夫

ページ範囲:P.402 - P.411

 超音波の医学的応用は近年ますます活発に研究されるようになり,臨床医学の立場からだけでも診断,治療両面にわたり研究がすすめられている.とくに診断的応用は各科領域,各種疾患について,あるものは日常臨床において使用され,種々の特徴や利点とともに診断学領域において新しい分野を開拓するまでに発展してきた.整形外科領域においてもこの例にもれず,種々研究が行なわれており,これに関しては本誌(臨整外,2(8):879,1967)に紹介した.一方,超音波の治療的応用は,整形外科領域に属する疾患を多く対象として研究が行なわれてきたという歴史的経過もあり,今回は整形外科領域からみた超音波の治療的応用について,当教室における研究を中心に報告する.

学会印象記

アメリカ手の外科学会印象記

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.360 - P.362

 今回天児,諸富,津山教授ほか日本手の外科学会の諸先輩の御好意により,国際手の外科学会(International Federation for Societies for Surgery of the Hand)委員会に日本代表として出席し,米国手の外科学会にも出席する機会に恵まれたので,後者の学会の模様をかいつまんで御報告したい.
 学会は本年で第24回となり,New YorkのHotel AmericanaでCincinnatiのDr. Siler会長のもとに1月17・18日の両日盛大に開催された.昨年・一昨年の当学会の模様も本誌にてご報告したが,学会の形式は例年と変りなく,両日で25題の演題に充分の時間をかけての発表であるが,あらかじめ決められた討論者以外に自由討論のないのが何とももの足りない.聞くところによれば90題余の申込みから選ばれたようであるが,それでも玉石混淆の感が深かつた.手の外科学会に引続いて整形外科学会(AAOS)があるため,多くの整形外科医の出席を得られるのはよいが,ただ手の外科学会と同時に並行して,Orthopaedic Research Meetingが行なわれているのは,整形外科学会が完全に臨床学会であるだけに,HandとResearchとに興味のあるものにとつては,まことに具合が悪い.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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