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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻6号

1969年06月発行

雑誌目次

視座

新しい専門分科

著者: 天児民和

ページ範囲:P.413 - P.413

 昨日,九州リハビリテーション大学校の卒業式に列席した.24人の学生が卒業をし,全員,国家試験にも合格したので大変に嬉しそうで,特に女性は全部振袖姿で出席したので,大変華やかな式典であつた.しかしこの人達を眺めながら,今後この人達の歩む道が決して安楽なものではないことを思いつつ,私の40年になんなんとする整形外科医としての過去をふり返つた.
 40年前に私が自分の終生の専門を整形外科に決めた時,私の周囲の人達は不安な気持で私を見つめていた.実際,整形外科医として踏み出してみると,専門分科としては未だ社会から認められてはいなかつた.大学でも講座がある所は僅かであるし,総合大学にも講座のない所が多かつた.まして大学以外の病院で整形外科を独立させている所はほとんどなかつた.そこでわれわれ若い整形外科医者はいつも不満をもつていたが,そんな時に神中先生は次のようにいわれた.「1つの臨床専門分科が社会に認められるには,その学問,技術が優れて他の分科のものが真似ができないという段階に達することが必要である.他の分科のものが多少の問題はあつてもこなして行ける間は,なかなか独立した分科として認めてくれない.そこでわれわれは整形外科の学問をより深くし,技術をより高度化して行かなければならない」.

論述

重症黄疸後のCP発生

著者: 朝長一 ,   近藤晴彦 ,   川添達雄 ,   八並信 ,   村山明男 ,   穐山富太郎

ページ範囲:P.414 - P.420

はじめに
 この調査は患児が交換輸血を受けたあと,どれ位の率で脳性麻痺(CP)が発生しているのだろうかという,肢体不自由児療育にたづさわつているものとしての極く素朴なる動機から計画されたものである.最近,CPの早期治療が,LCCなどと同じように強調され(Bobath and Bobathら),当園においても乳幼児の外来訓練を行なつており,発見は早いにこしたことはないが,少なくとも生後9ヵ月頃までにCPを発見し,できるだけ早く正しい治療・訓練のコースにのせたいと願望していたからである.また同時に,でき得ればCPの予防に関し,いささかでも知見を得ることができればとの願いもあつた.

Ducroquet脊椎牽引矯正装具を応用せる側彎症の治療

著者: 竹光義治 ,   杉岡洋一 ,   森久喜八郎 ,   多田俊作 ,   石川巌

ページ範囲:P.421 - P.427

 側彎症治療の目標は諸家の指摘するごとく,変形進行の防止,可及的矯正と矯正位保持,呼吸機能の改善,脊柱支持筋力の増強ないし萎縮防止にある.この目標に対し古来各国で多くの方法が研究され,成績向上のため並々ならぬ努力が払われてきたにもかかわらず,その成績は今日においてなお決して満足するに至らぬものである.
 structural scoliosisの治療は,まず保存的療法,すなわち,矯正体操訓練,自動的他動的脊柱牽引により側彎位拘縮をmobilizeし,能動訓練により脊柱支持筋力を増し,かつ呼吸運動練習により肺機能増加を図り,矯正位をcorset,brace,plaster jacketなどにより保持することであるが,更にこれらによつてもなお進行し,矯正位保持の困難な症例には10〜12歳を過ぎた思春期増悪期に固定術を施すことが一般に行なわれてきた.

軟骨芽細胞腫の電顕像とその考察

著者: 広畑和志 ,   森本一男

ページ範囲:P.428 - P.436

序論
 良性軟骨芽細胞腫は非常に稀で,発生学的に興味深い骨腫瘍である.今世紀始め頃よりKolodry(1927),Ewing(1928),Codman(1931),Copeland(1942),らにより,その発生部位および組織像よりGiant cell tumor,Chondrosarcoma,Osteogenic sarcomaなどの一異型として注意が向けられてきたが,Jaffe & Lichtenstein(1942)は,この腫瘍の発生部位がepiphysisで,軟骨性の独立した疾患であり"benign chondroblastoma of bone"と名付けた.以後その腫瘍細胞をembryonal chondroblastと考える者はCopeland & Geschickter(1949),Laskowski(1951),Lichtenstein(1951),Kunkel(1956)らであるが,Valls(1951)は腫瘍組織の銀染色によりreticulohistocytic originを考えDenko(1954),Krowel(1955)らも軟骨原性腫瘍に疑問を持ち,Kunkel(1956)はchondromyxoid fibromaとの移行型を観察している.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(22)

著者: 骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.437 - P.443

症例1
 A:患者は21歳の男子で,主訴は左股関節痛です.1968年5月末にボウリングで腰をひねつてから,階段の昇降に跛行するようになりました.また左大転子部に疼痛を訴えています.某病院のエックス線検査で大転子部の骨変化を発見され,当科に紹介されてきました.
 既往歴としては小児喘息があり,これは現在にもおよんでいて,入院した時にも非常に激しい発作を繰り返しました.

境界領域 骨・関節の病理学序章・1

老化機構の理解を前提として

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.444 - P.452

はじめに
 骨・関節においても他の臓器と同じように,年齢に伴う病変のない生理的範囲内での形態学的変化と病変との問に判然とした識別をつけることは極めて困難である.しかしながら骨・関節に見られる病変を病理形態学的に把えて,その成り立ちや本態を適確に理解するためには,生理的範囲内の骨・関節の年齢の増加に伴う変化(加齢的変化),いわゆるDevelopment,Maturity,Ageingなどに関係する構造的特徴を十分に知る必要がある.骨は問葉性細胞由来の造骨細胞(骨芽細胞)と破骨細胞によつて成長発育が行なわれ,比較的Life circleの長い造骨細胞による骨形成とそれの短い破骨細胞の骨吸収が繰り返えされている.とくに,これらの細胞間物質である膠原線維が骨のAgeingに積極的な役割を果している.2つ以上の骨が結合して作る関節では,その関節端に軟骨があり,軟骨基質内に含まれる多量の粘液多糖類と膠原線維が軟骨のAgeingの要素となつている.骨・関節という可動性臓器は外因性の力学的作用によつてその活性が維持され,発育・成長が続けられていることは骨・関節の廃用性萎縮などの存在でも十分に理解できよう,この骨・関節の構造的活性は膠原線維ならびに粘液多糖類を含む結合組織に加えて,カルシウム,マグネシウム,燐酸などの無機物質の代謝に依存され,さらにホルモン,ビタミン,酵素が強く関係している.

検査法

Ca出納の検査法

著者: 司馬正邦

ページ範囲:P.453 - P.458

 1945年Reifenstein, Albright & WellsによつてMassachusetts General HospitalのResearch Wardにおいておこなわれている無機塩類についてのMetabolic Balance Study(出納試験)の詳細についての論文8)が発表されて以来,この方法はこの種の出納試験の模範として各国の研究者によつて採用されてきた.この方法の原理は要するに,摂取された成分と尿中および便中に排泄された成分をそれぞれ測定することによつて,体中に蓄積されあるいは減少した成分の量(出納)を知ろうということであり,整形外科領域においては骨粗鬆症・骨軟化症・副甲状腺機能亢進症・クッシング症候群などの骨代謝・内分泌疾患の骨塩動態を知る手掛りとして重要な検査法の一つとされ,数多くの研究報告がある.

臨床経験

頸椎椎弓部に発生せるOsteoid osteomaの1例

著者: 古沢清吉 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.459 - P.462

 頸椎椎弓部に発生した比較的巨大なOsteoid osteomaの1例を経験したので報告する.

頸部に発生した神経鞘腫(Neurinom)2治験例

著者: 田中晴人 ,   手束昭胤

ページ範囲:P.463 - P.468

 本邦における脊髄腫瘍の報告例はすでに約500症例にものぼり,毎年その報告例は増加の一途をたどつているのが現状である.そのなかで,頸部発生での神経鞘腫の占める割合は467例中38例で,その頻度は,8.1%で比較的少ないとされている.われわれはここに神経鞘腫の2例を経験したので報告するが,その中の1例は比較的早期に来院して手術が施行でき,その予後は極めて良好であつたが,残る1例は患者が早期に来院し,診断が確定できたにも拘らず,観血的治療を忌避したため手術の時期がかなり遅れ,前者の症例よりも術後も軽度の知覚障害を残した.

膝関節内に発生したOsteochondromaの2例—Solitary exostosisの1例とEpiphyseal osteochondromaと思われる1例

著者: 生田義和 ,   平松恵一 ,   永山五哉 ,   松本保

ページ範囲:P.469 - P.475

 組織学的にosteochondromaの像を示す骨腫瘍は多いが,関節内に発生する場合は非常に稀である.
 われわれは,いずれも膝関節内に発生した単発性外骨腫の1例と,Caffeyの命名したEpiphyseal osteochondromaと思われる1例を経験したので報告する.

骨変化を初発症状とした白血病の1例

著者: 川上和夫 ,   福井英民

ページ範囲:P.476 - P.479

 白血病における骨変化についての発表が最近の整形外科領域においてもしばしばみられるようになつたが,本症の病変の特殊性から,内科医により観察される機会が多い.しかし初発症状として骨変化を認め,次いで定型的な白血病の臨床所見を現わしてくることも稀ではない.われわれは,初発症状とともに骨変化を認めていたが,約2年間の経過観察の結果,臨床的に白血病と診断された症例を経験したので,ここに報告する.

肘頭骨折の治療経験

著者: 福沢玄英

ページ範囲:P.480 - P.484

 肘頭骨折は日常比較的多くみられる骨折であるにもかかわらず,また本骨折は多く関節内骨折であり,初期に適当な治療を施さないと,後日変形性関節症を惹起し,疼痛を生ずる原因となり得るにもかかわらず,その予後を論じた報告は少ない.
 今回,私は当科における過去7年8ヵ月間の肘頭骨折について調査し,その一部についてfollow-upを行なつたので,その結果について,主として手術例を中心に報告する.

先天性と思われる大腿四頭筋,前脛骨筋,長指伸筋,足長母指伸筋短縮症に下肢巨肢症を伴う1症例

著者: 柳下慶男 ,   春日秀彦

ページ範囲:P.485 - P.488

 大腿四頭筋短縮症は大腿伸側部の注射が原因となる症例が多く,本邦でもかなりの報告があるが,先天性短縮症についての報告例は少ない.われわれは最近,先天性と思われる大腿四頭筋,前脛骨筋,長指伸筋,足長母指伸筋短縮症に下肢巨肢症を伴う症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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