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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻7号

1969年07月発行

雑誌目次

視座

施設は医師をもとめている

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.489 - P.489

 私の恩師である故高木憲次先生が,次のようにいわれたことがある.「男一匹として何をやつてみたいかと問われたら,高木の答は,金をもうけるには株式,人を動かすには政治家,人のためには医師の3つです.高木は医師だけしかできませんけれどね.」さらにつけ加えて「医師は患者と1対1で真剣に対決しなければなりませんから,いついかなる環境にあつても仕事に生き甲斐を感じられて幸福です.ただ整形外科医は1人で患者になし得る範囲が限られるから,チームワークを大切にしなければいけませんね.」
 その頃高木先生は療育事業の普及,肢体不自由児施設全国設置のために東奔西走しておられた.先生のいわれたチームワークは,主として施設における医師,看護婦,OT,PT,ST,保母,ソーシャルワーカー,心理学者などの協力体勢を意味していた.先生は同時に,このチームの構成メンバーである各職種の人達が大変に不足しているのを憂えておられた.

論述

変形性股関節症の治療例の検討

著者: 猪狩忠 ,   星秀逸 ,   箱石勝見 ,   高橋繁夫

ページ範囲:P.490 - P.504

 関節の老化の代表的なものは変形性関節症である.本症は慢性に退行変化と増殖性変化が同時におこり,徐々に進行して関節に変形をみる疾患である.とくに疼痛のため作業能力が低下し,日常生活の上でも大なり小なりの制約をうける.
 近時,変形性関節症中,頻度のたかい変形性股関節症に対し,各方面から検索がすすめられているが,その病像が多彩で,成因についても論議が多く,治療方法にも一長一短があり,必ずしも治療体系が確立されているわけではない.

胸椎体侵襲の胸膜外経路法

著者: 大谷清

ページ範囲:P.505 - P.512

いとぐち
 腫瘍,炎症,椎間板症,脱臼骨折など胸椎の疾患も少なくなく,われわれ整形外科医が胸椎椎体に侵襲を加える機会も稀ではない.
 慶大整形外科では胸椎カリエス,腫瘍などに対する侵襲法として,開胸および胸膜外経路の2つの進路を採つてき,池田教授がすでに第39回日本整形外科学会および雑誌などにその詳細を発表している.著者もその方法にならい27例の胸椎カリエス,43例の胸腰移行部カリエスの椎体侵襲の経験を持つている.著者の経験は胸椎および胸腰移行部のカリエスに対してであり,開胸進入と胸膜外進入を行なつた経験から,後者には手術的操作に多少の難はあるが,術中および術後経過が一般的に良好であり,かつ患者に対する苦痛負担が少なく,著者は最近,胸膜外進入を原則としている.

境界領域 骨・関節の病理学序章・2

加齢に伴う骨・関節のintrinsicな変化

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.513 - P.522

 前号第IV章「組織レベルの発生学的構造と疾患」のうち第2図「骨の発生学的構造」に対応する組織像を第3図(a,b,c)に示す.

座談会

骨腫瘍研究会(札幌)での供覧症例をめぐつて

著者: 青池勇雄 ,   赤松功也 ,   秋吉正豊 ,   阿部光俊 ,   石川哲夫 ,   宇野秀夫 ,   大西義久 ,   金子仁 ,   鳥山貞宜 ,   野口朝生 ,   古屋光太郎 ,   前山巖 ,   増田元彦 ,   松野誠夫

ページ範囲:P.523 - P.545

 青池(座長) 昨1968年8月10日に札幌において,骨腫瘍研究会が幹事の島啓吾教授にお世話をいただきまして開催されました.その時の症例検討会に提出された骨腫瘍の7例について,座談会をこれから開かせていただきます,札幌では私が座長をつとめ,皆さまにいろいろご検討をいただいて,非常な盛会に終つたわけですが,また所を変えて,それを別の日に見ると,また違つた意見も出てくるかも知れません.
 私,司会のほうは不得手,また骨腫瘍に関して皆さまのように専門的に深く突込んでおるわけではございませんが,不束ながら座長をさせていただきます.

海外だより

股関節外科の現況—アメリカ整形外科学会の股関節コースをきいて

著者: 加藤文雄

ページ範囲:P.546 - P.548

杖の老人が目につく国
 太平洋をこえてはじめてサンフランシスコの街についたとき,杖にすがつて跛行する老人の姿がなんと多いことだろうと思つた.この国では老人でも自分で買物にでかけなければ生きてゆけないし,そのため便利のよい都心部にたくさんあつまつて(というよりは郊外へ逃げていつた肉親からとりのこされて)住んでいるから,よけい老人の姿が街にめだつのであろう.当然のことながら大腿骨頚部骨折とその合併症が頻発するし,一次性股関節症が日本よりずつと多くみられるから,老人の跛行が街頭での印象的な光景になるのも不思議ではない.
 股関節の外科がどの整形外科医にとつてももつとも重要なレパートリーのひとつであることはいうまでもないが,その内容が日本とアメリカでかなり違つているのは興味ぶかいことに思われる.たとえば,股関節症にたいしてもつとも多くおこなわれる手術は,アメリカではcup arthroplastyであるのに日本では骨切り術であろう.これは日本には先天股脱にもとづく二次性股関節症が多いことがひとつの要因だと思うが,そのほかにも技術的あるいは社会的な背景が影響をおよぼしているようだ.このような関心をもつてアメリカの股関節外科の現状を展望してみたいと思つていたところ,折よく4月にケンブリッジでAAOS主催の股関節コースがひらかれたので,その感想を中心にして簡単な報告をこころみたい.

臨床経験

受傷72時間後に血管吻合を施せる膝窩動静脈挫断の1治験例

著者: 辻陽雄 ,   尾崎賢太郎 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.549 - P.554

 近年,交通外傷産業災害の激増と相まって,血管損傷を伴う四肢外傷に遭遇する機会も増え,四肢切断のやむなきに至る場合も少なくない.今回,受傷72時間後に血管吻合を行ない,下腿切断を免れた膝窩動静脈挫断の1例を経験したので,本例を中心としいささかの検討を加え述べたい.

いわゆるOsteochondral Fractureについて

著者: 伊勢亀富士朗 ,   菅野卓郎

ページ範囲:P.555 - P.559

はじめに
 膝関節のOsteochondral fractureは1905年Kronerの報告をもつて嚆矢とし,本邦においては1964年伊藤,森の報告もあるが,膝関節外傷の診断に際してはなお看過されている憾みがある.
 骨軟骨片の大きい新鮮例はともかくとして,大部分は不明確な初期症状から慢性に経過することが多い.したがつて離断性骨軟骨炎,Chondromalacia,慢性特発性水腫,慢性膝捻挫,成因不明の関節遊離体などの膝関節疾患はOsteochondral Fractureの観点から本質的に再検討する必要がある.

中足指節関節脱臼の1例

著者: 佐口享史 ,   遠藤正弘 ,   田中秀昭 ,   久良木孝晃 ,   肥留川道雄

ページ範囲:P.560 - P.564

 足指の骨折にくらべて,その脱臼は比較的稀であり,なかんずく中足骨のMP関節脱臼に至つては極めてすくなく,しかも,そのうち大部分が足母指のMP関節脱臼である.これについては,成書1)によればBaermannの30例,Garnierの40例が相並ぶ詳細な報告のようである.その他,Amat,ames,Gold,Schwarzschild,Madonらの少数の報告5)があるが,いずれも足母指の脱臼である.足母指を除く他の4指の脱臼については,その報告まことに少なく,1888年Styx2)の左第2中足骨MP関節脱臼の報告をもつて嚆矢とするようであり,以来,内外文献から渉猟し得た範囲では,僅か十数例を散見するにすぎない.
 われわれは最近,多発外傷に伴つた左第2,第3,第4中足骨のMP関節脱臼の症例を経験し,これを観血的に整復して良結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腓骨神経損傷を伴った膝関節外側側副靱帯損傷の2例—(いわゆるLigamentous peroneal nerve syndrome)

著者: 田中義也 ,   張洛善 ,   鈴木明夫 ,   金井彬 ,   田代敦泰

ページ範囲:P.565 - P.567

 膝関節の内転損傷に腓骨神経損傷をともなう症例は,Platt8)やSmillie9)により,Ligamentous peroneal nerve syndromeとして報告されたが,比較的稀な損傷である.著者らは信州大学整形外科にて1例,佐久総合病院にて1例を経験した.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(23)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.568 - P.571

 A:患者は26歳の女性.1968年7月に左下顎臼歯部歯牙の浮いたような感じと,同部歯肉の腫脹に気付きました.近所の歯科医院を受診し,8番の埋伏歯牙を抜去する予定で化学療法を受けましたが効果なく,9月末に某大学の歯科を受診,試験切除の結果,入院手術をすすめられましたが,手術を拒否しました.
 更に他の歯科開業医を訪れ,そこで左下7,8番の歯牙の抜去を受けたところ,歯肉部腫脹は急速に増強し,同年12月初旬,本院を受診しました.すなわち発症から本院受診まで約5ヵ月の期間があり,本人はこの間,歯の病気であると思いこんでいたわけです.試験切除を行ない,ただちに放射線治療を開始しました.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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