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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科40巻1号

2005年01月発行

雑誌目次

視座

運動器の10年(The Bone & Joint Decade)

著者: 杉岡洋一

ページ範囲:P.3 - P.5

 運動器に対する関心やその重要性の認識は,一般は無論,医学界においても極めて低いのが現状である.一昨年4月に第26回日本医学会総会を福岡で開催したが,学術プログラムの生命維持臓器偏重からの脱皮に腐心し,また,運動器への関心を喚起すべく,山室隆夫京都大学名誉教授にレビューレクチャー「人間の尊厳と運動器」をお願いした.

 脳を思考・命令系と考えれば,運動器はその表現系であり,生活機能において両者は不可分の関係にあって,その一方の機能障害は重大な結果を招き,人間の庇護下にない動物にあっては死に直結する.この両者は車の両輪の関係にあって,その軽重に差はない.また,運動器は身体活動を司るうえで,意志によって制御可能な唯一の器官であり,その点,消化器その他の臓器に比べ進化したものと考えられる.

 脳と運動器は互いに刺戟し合って進化を遂げ,現在の高等な人類を形成したといってもよく,その機能進化は学術・芸術・科学技術を生み,現代文明を築いた,日本整形外科学会員の努力や,会員主導の「骨と関節の日」キャンペーンなどにより,整形外科の診療内容も社会に正しく理解されてきたが,一部の会員から「運動器科」あるいは「運動器外科」などへの診療科名変更の提案もなされている。しかし,運動器なる言葉も一般には運動に用いる器具としか理解されないなど,その周知にはかなりの時間を要するので,現時点ではむしろ,整形外科のほうが一般に正しく理解されていると考えたほうがよい。

巻頭言

第78回日本整形外科学会学術総会を主催するにあたって

著者: 藤井克之

ページ範囲:P.6 - P.7

 第78回日本整形外科学会学術総会を,本年5月12日(木)~15日(日)の4日間にわたって,横浜市・パシフィコ横浜で開催いたします.都心から離れて横浜の地を選択した理由は,会員の皆様に宿泊施設の確保にご迷惑をおかけすることなく,発表いただく会場の分散による移動を極力避ける点にあり,参加者の便宜を第一に考慮したことであります.

 日本整形外科学会は,これまでに着実な発展をとげ,その会員数は21,000人をも超え,学術集会の規模も内容も年々膨大なものとなってきています.このまま,学術集会を巨大化させていきますと,その開催意義は次第に薄れ,経済的に運営することも困難になってきます.そこで,日本整形外科学会理事会では,今後の学術集会のあるべき姿を真剣に考えることが急務と考え,学術集会検討部会を設けて検討し,いくつかの点についての見解を打ち出すにいたりました.その主たるものは,1)学術集会のあり方,2)プログラムの企画方法,3)学会の経済的運営,4)参加費ならびに開催地の検討,などでありますが,日本整形外科学会学術総会は質の高いものでなくてはならず,会員に多くのことを学ぶことができる“教育”というニュアンスを強く打ち出すべきであります.また,諸外国との学問の交流によって国際化を推進する時期にあり,さらには市民に整形外科の診療内容を十分に理解してもらう努力も不可欠であります.このことから,学術総会の開催にあたっては,プログラム企画委員会(会長経験者1名,会長予定者数名からなる)を設置し,長期的展望にたったシンポジウム,パネルディスカッション,招待講演,教育研修講演などについて検討することにしました.演題の採択率は8割,口頭発表が2~3割,残りのものはポスター発表とするといった方向に進むことにしました.また,今回の学術総会からは,参加するのみで専門医資格継続のための単位(8単位)が与えられ,この他,単位取得可能な講演を6題聴講することにより,最大14単位までが取得できるようになりました.

論述

肩こりの病態―第3報:鍼・灸治療院で治療を受ける肩こりと病院で治療を受ける肩こりの比較

著者: 矢吹省司 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.9 - P.12

 本研究の目的は,「鍼・灸治療院で治療を受ける肩こり」の病態を明らかにすることである.対象は,鍼・灸治療院に肩こりの治療に通っている女性68例である(鍼灸群).対照として,肩こりの治療を病院で受けている女性49例を用いた(病院群).これら2群間で16の検討項目について比較検討した.その結果,鍼灸治療院で治療を受けている人たちの肩こりの特徴は,病院で治療を受けている人たちとの比較でみると,「肩こり以外に合併する症状がない」というものであった.

頚椎症性脊髄症に対するkinematic MRI―有用性の検討

著者: 岩渕真澄 ,   菊地臣一 ,   矢吹省司

ページ範囲:P.13 - P.17

 頚椎症性脊髄症に対するkinematic MRIによる動的因子の評価の有用性について頚椎症性脊髄症16例を対象にして検討した.方法は,従来のMRI(static MRI)に加え,開放型のMRI装置を用いて,前屈位から後屈位まで9姿位のT2強調矢状断像(kinematic MRI)を撮像し,神経学的所見と対比した.その結果,責任高位診断の一致率は,kinematic MRIがstatic MRIのそれより有意に上回っていた.また,kinematic MRIによる後屈位での新たな脊髄圧迫が14椎間に認められた.これらの事実は,頚椎症性脊髄症の病態には動的因子が重要な因子であること,また,除圧椎間を決定する際にkinematic MRIの所見が有用であることを示唆している.

脊髄円錐部脊髄腫瘍のMRI診断

著者: 廣橋達夫 ,   長谷川和宏 ,   平野徹 ,   遠藤直人

ページ範囲:P.19 - P.25

 脊髄円錐部腫瘍のMRI所見について検討し,その特徴について報告した.脊髄円錐部に存在する脊髄腫瘍のうち,病理組織診断の確定した神経鞘腫4例,上衣腫2例,神経線維腫,血管芽細胞腫,血管腫,悪性リンパ腫それぞれ1例の計10例を対象とした.鑑別のポイントは神経鞘腫で嚢胞形成と嚢胞壁の造影効果,粘液乳頭状上衣腫では神経鞘腫に比べ腫瘍サイズが比較的大きいこと,内部が均一なことである.神経線維腫・髄外血管腫・悪性リンパ腫はMRI所見のみでは診断困難であった.

調査報告

関節リウマチ頚椎手術の全国調査

著者: 小田剛紀 ,   米延策雄 ,   藤村祥一 ,   石井祐信 ,   中原進之介 ,   松永俊二 ,   清水敬親

ページ範囲:P.27 - P.32

 関節リウマチ(RA)頚椎手術の実情を把握するため,2001年の手術例に関し全国アンケート調査を行った.74施設で234名236件の手術が実施されていた.主な結果は,年間症例数3件以下の施設が実施施設数の74.3%を占めたこと,主な手術方法は後頭骨頚(胸)椎固定術と環軸椎固定術であったこと,手術方法により術前神経症状重症度に相違がみられたこと,自施設のRA治療例より他施設からの紹介例への手術数が上回ったことである.得られたRA頚椎手術に関する疫学データは,RA治療医に対する情報提供となる.

総説

長期宇宙飛行生活と骨

著者: 鹿島勇 ,   櫻井孝 ,   中村貢治 ,   川股亮太

ページ範囲:P.33 - P.41

 長期の宇宙飛行生活において,宇宙飛行士の血清カルシウムは正常であるが,尿中カルシウム排泄量が増加する.このカルシウムの損失は,主に荷重骨から生じることが,すでにラットを使用した動物実験から証明されている.しかし,微小重力と骨との関係についての詳細はいまだ不明である.われわれは,カエル,鶏胚,イモリを用いて微小重力環境下における骨変化,骨成長・発育,そして骨の発生について実験を行った.

 その結果,微小重力環境下で荷重骨からカルシウムが溶出し,骨の脆弱化が生じることを画像としてとらえることができた.また,微小重力環境は初期の骨の発育・成長を遅延させるかもしれないことを示唆した.さらに,メカニカルストレスがminimumあるいはzeroと思われる器官の発生・発育・成長にも影響を及ぼす可能性のあることが示唆された.

連続講座 整形外科領域の再生医療⑤

軟骨再生医療の現状と展望

著者: 和田佑一 ,   渡辺淳也 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.43 - P.49

 抄録:整形外科領域の再生医療は,近年の組織工学的技術の進歩に伴って著しい発展を遂げた.特に軟骨の再生医療は,従来軟骨組織の持つ特殊性から有効な治療法がなかったため,期待される分野の1つである.本章では,現在欧米を中心に広く用いられるようになった,自家培養軟骨細胞移植術の臨床成績を自験例を含めて報告するとともに,新しいMRI撮像技術による再生軟骨の評価法や,軟骨再生医療の現状と今後の展望を含めて紹介する.

整形外科/知ってるつもり

DDS(drug delivery system)

著者: 高倉喜信

ページ範囲:P.50 - P.53

 近年,薬物療法の急速な進歩とともに,薬理活性が非常に強い薬物をはじめ,投与に際して注意が必要な薬物が数多く開発され,「薬物投与の最適化」という概念が重要視されるようになってきた.これは,薬物の投与形態を最適の形に設計し,薬物をできるだけ選択的にかつ望ましい濃度―時間パターンのもとに,作用発現部位に送り込むことにより有効かつ安全な薬物治療を実現しようという考えであり,薬物の体内動態を新しい技術・方法で制御することにより,最高の治療効果を得ることを目指した種々の医薬品の投与形態,製剤が開発されている.これをドラッグデリバリーシステム(drug delivery system:DDS)といい,こうした概念自体を表す言葉としても用いられる.種々の薬物体内動態プロセスが制御の対象として取り上げられるが,①コントロールドリリース(放出制御),②新しい投与経路の開発・吸収障壁の克服,③ターゲティング(標的指向化)の3つのアプローチに大別される.

国際学会印象記

「軟骨修復国際会議」に参加して

著者: 占部憲

ページ範囲:P.54 - P.55

 International Cartilage Repair Societyのsymposiumが2004年5月26日~5月29日,Rene Verdonk会長のもとベルギーのGentという都市のInternational Congress Centerで開催されました.本学会は1997年にスイスのFibourgで初めて開かれ,その後1998年に米国のBoston,2000年にスウェーデンのGothenburg,2002年にカナダのTrontoに続き,今回が第5回となります.私は前回のTrontoで開催されたsymposiumに初めて参加しました.その際,各国での軟骨欠損に対するautologous chondrocyte transplantation(ACT),drillingやmicrofracture,mosaic plasty,allograftの成績や比較検討の報告や各治療法の問題点をうかがい,その後の2年間でどのような発展があるのか楽しみにしておりました.

 今年の学会は26日のopening ceremonyに始まり,17のセッション,4つのindustry workshops and symposia,1つのfire discussionが企画されました.毎朝8時から9時30分までのstate of the artというセッションでは,軟骨,半月,幹細胞について,基礎および臨床での最新の話題を含んだ講演があり,とても有意義でした.その他のセッションでは,軟骨損傷,骨軟骨損傷,軟骨修復,骨軟骨修復,椎間板に関する基礎および臨床研究や臨床成績の発表,半月損傷の画像診断と手術方法に関する発表,scaffoldやバイオマテリアルに関する発表が,様々な国から参加した研究者により行われました.また311演題のポスター発表があり,27日と28日に30分間のposter viewingの時間が作られていました.日本からは,3つのoral presentationと16のposter presentationが出されていました.

「第9回国際手の外科学会」に参加して

著者: 水関隆也

ページ範囲:P.56 - P.57

 3年に1回開催されるIFSSH(国際手の外科連合)学術集会は今回で9回目を迎え,2004年6月13~17日の間,Anntal Renner会長の下,ハンガリーのブダペストにて開催された.登録参加者は世界各国から1,400余名.そのうち,日本手の外科学会からの登録参加者は140名で,これは地元ハンガリーからの参加者数を凌駕し,最多であった.学会はブタペストの東端に位置するブダペストアリーナで行われた.発表は5会場と展示場に分かれて行われた.主会場は十分の広さであったが,他の会場は真ん中に柱があったり,画面が低かったりで参加者には必ずしも快適ではなかった.ともあれ,発表内容は手の外科関連の全ての分野について網羅されていた.会場が多いと,聞きたい発表が重なるという不可避的なジレンマに悩まされる.また,海外での学会になると会期中にどうしても観ておきたい観光もこなさなければならない羽目になる.そんなこんなの事情で筆者も学会全てを見聞しているわけでないので,報告の多少の偏りはご容赦願いたい.

 開会式の席上,Pioneers of Hand Surgeriesが発表された.日本からは順天堂大学名誉教授 山内裕雄先生,慶應義塾大学名誉教授 矢部裕先生,東京慈恵会医科大学名誉教授 児島忠雄先生のお三方が選ばれた.このPioneersとは国際的に手の外科の発展に寄与した先達を顕彰するために生まれた制度で,今までに故天児民和先生,津下健哉先生,故田島達也先生,三浦隆行先生が殿堂入りを果たしている.今回の3人を加えて,7人となった.邦人会員として大変嬉しい出来事であった.

連載 医療の国際化 開発国からの情報発信

海外医療ボランティア活動記(8)―ルワンダ(その4)

著者: 藤塚光慶 ,   藤塚万里子

ページ範囲:P.58 - P.60

 前回(本誌39巻7号)まではルワンダでの大虐殺発生直後の1994年8月,混乱期に真っ先に駆けつけた藤塚万里子の記録だったが,今回はやや情勢が安定した同年12月に光慶が活動した時の状況である.

医者も知りたい【医者のはなし】 12

新しい血圧測定法を確立した医師コロトコフ

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.62 - P.65

 1905年12月8日に,ロシアのペテルスブルグの陸軍軍医で血管外科医であったコロトコフは,心臓の収縮期と拡張期の血圧を聴診器で測る新しい血圧測定法を発表した.99年前のことである.その後この血圧測定法は世界中に普及した.現在では医師,看護師,救急救命士,その他の一般の人々も,収縮期(最大)血圧と拡張期(最低)血圧を測定することは,日常茶飯事である.血圧測定時に聞こえる動脈の拍動音をコロトコフ音ということも知っている.このように日常医療で大切なこと発見したコロトコフとは,どのような医師であったかをここに紹介したい.

臨床経験

硬膜外脊髄くも膜嚢腫の3例

著者: 齊藤英知 ,   阿部栄二 ,   森田裕巳 ,   石澤暢浩 ,   小林孝 ,   阿部利樹 ,   江畑公仁男 ,   鈴木均

ページ範囲:P.67 - P.71

 硬膜外くも膜嚢腫は他覚的,神経学的異常所見に乏しく,慢性腰痛症候群として漫然と治療されることが多い稀な疾患である.今回,手術を行った3例を報告した.症例1:24歳,男性.主訴は腰痛と腰部灼熱感.MRIではTh11~L2に硬膜外嚢腫様病変があった.Th12,L1椎弓形成的片側椎弓切除により嚢腫を摘出し,交通孔を閉鎖した.症例2:66歳,男性.主訴は1年前よりの腰痛と両大腿部痛.MRIではTh11~L2に硬膜外嚢腫様病変があり,CTミエログラムでは骨侵食を認めた.Th11~L2片側椎弓切除し,嚢腫を切除した.Th12神経根尾側に交通孔を確認し,閉鎖した.症例3:65歳,男性.主訴は10年来の両鼡径部以遠のしびれ,灼熱感.MRIでは,Th11~12レベルに硬膜外嚢腫様病変があり,ミエログラムでは嚢腫も造影された.Th10~12の部分椎弓切除で嚢腫を切除した.交通孔は確認できなかった.いずれの症例でも術後,症状は消失した.

症例報告

メトトレキサートの初回投与でアナフィラキシー様反応を呈した骨肉腫の1例

著者: 小山内俊久 ,   関根康雅 ,   石川朗 ,   土屋登嗣 ,   荻野利彦 ,   三井哲夫 ,   川上貴子

ページ範囲:P.73 - P.76

 メトトレキサート(以下MTX)大量療法の初回にアナフィラキシー様反応を呈した,小児骨肉腫の1例を報告する.症例は10歳の男児で右大腿骨遠位部骨肉腫である.MTX12g/m2の初回投与で喘息様の咳と全身の蕁麻疹を生じたが,2回目以降はMTX投与前にステロイド剤と抗ヒスタミン剤を併用することで,術前・術後化学療法を無事完遂し得た.MTX初回投与でのアナフィラキシー様反応は極めて稀であるが注意が必要である.症状が重篤でない場合,ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の併用で治療継続可能と思われた.

高齢者骨粗鬆症性椎体骨折に対して椎体形成術を施行した1例

著者: 宮城正行 ,   高橋和久 ,   大鳥精司 ,   田原正道 ,   青木保親 ,   男澤朝行 ,   齋藤朋子 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.77 - P.81

 高齢者骨粗鬆症性椎体骨折に対し,椎体形成術を施行した1例を報告する.症例は77歳の女性で,主訴は左腸骨稜付近の疼痛であった.単純X線で第1腰椎椎体骨折を認めた.受傷後保存的治療で軽快せず,左第1腰神経根ブロックも著効しなかった.受傷後8週目にハイドロキシアパタイトスティックとペディクルスクリューによるインストゥルメンテーションを併用した経椎弓根的椎体形成術を施行した.術直後より疼痛は消失した.術後2カ月で矯正損失が認められ,疼痛も再度出現したが,術後4カ月で疼痛は消失した.本症例の矯正損失の原因は固定椎の微小な動きによるものと考えられた.ハイドロキシアパタイトスティックの充填量や固定範囲などについての再検討が必要であると考えられた.本症例の左腸骨稜付近の疼痛は神経根ブロックの結果から左第1腰神経の症状ではなく,椎体骨折による関連痛であると考えられた.

腰椎化膿性椎間関節炎手術後に回旋すべり変形を生じた1例

著者: 納田和博 ,   山田宏 ,   楠本幸弘 ,   橋爪洋 ,   吉田宗人

ページ範囲:P.83 - P.86

 われわれは腰椎化膿性椎間関節炎手術後に回旋すべり変形に発展した1例を経験したので報告する.症例は75歳の男性で発熱と腰下肢痛により発症した.MRIにおいて椎体と椎間板には病変はみられなかったが,L3/4高位の両側椎間関節が異常輝度変化を呈するとともに,著しく腫大し硬膜管を圧迫していた.病巣掻爬・洗浄術を施行後,床上安静と抗生物質療法により感染は鎮静化した.以後,体幹装具を装着させて経過観察していたが,徐々に椎間関節機能の破綻による不安定性が進行し,腰椎回旋すべり変形に発展したため脊柱固定術の追加を余儀なくされた.

術前診断に難渋した脊髄髄内腫瘍の1例

著者: 鈴木彩 ,   細江英夫 ,   児玉博隆 ,   清水克時 ,   横田治 ,   宮本敬 ,   下川邦泰 ,   臼井正明

ページ範囲:P.87 - P.91

 症例は15歳,女性.術前MRIでは空洞,flow void,石灰化,一部出血を伴った腫大した脊髄を認め,Th4~11レベルの脊髄は不均一に造影された.術前診断として上衣腫(ependymoma),星状細胞腫(astorocytoma),動静脈奇形(AVM)を疑ったが,術中迅速病理診断ではependymoma,永久標本の結果は毛嚢腫性星状細胞腫(pilocytic astrocytoma)であった.多彩な画像を呈するため,術前診断に難渋した1例を報告する.現段階では,術前に画像所見のみで組織診断を行うことは困難と思われる.

Poland症候群を合併したFreeman-Sheldon症候群における先天性内反足の治療経験

著者: 西山正紀 ,   加藤公 ,   辻井雅也 ,   中空繁登 ,   二井英二

ページ範囲:P.93 - P.97

 症例は4歳の男児で,Freeman-Sheldon症候群にみられる口笛を吹くような特異的顔貌,両内反足を認め,手指に拘縮はないが右短合指症と右大胸筋欠損,右乳頭形成不全を伴い,Poland症候群を合併していた.他医により両内反足に対し,生後3カ月時と6カ月時に両側アキレス腱切腱術,後方解離術が施行されたが変形は再発した.2歳8カ月時に当科にて後内側解離術,足底腱膜切離,母趾外転筋切離を施行し,足底接地可能で経過は良好である.本症の内反足は難治性で,初回からの広範囲な軟部組織解離術が必要と思われる.

呼吸機能障害を来したKlippel-Feil症候群に合併した高度側弯症の1例

著者: 久門弘 ,   川原範夫 ,   小林忠美 ,   吉田晃 ,   赤丸智之 ,   村田淳 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.99 - P.103

 症例はKlippel-Feil症候群に伴った高度側弯症により,重度の呼吸機能障害を生じた患者である.Cobb角143°で,%VC 14%と呼吸不全状態であり,すぐに手術を行うには危険であった.そこで術前halo牽引を施行した.牽引で側弯と呼吸機能の改善を認めたため手術を施行し,Cobb角110°,%VC 24%に改善した.側弯矯正により横隔膜の機能障害が解消し,呼吸機能が改善したために救命することができた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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