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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科40巻2号

2005年02月発行

文献概要

誌上シンポジウム 前腕回旋障害の病態と治療

緒言 フリーアクセス

著者: 別府諸兄1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学整形外科学教室

ページ範囲:P.116 - P.118

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 「前腕回旋障害の病態と治療」は,2004年の第47回日本手の外科学会(大阪医科大学阿部教授会長)でパネルディスカッションとして取り上げられた.この企画は以前からあたためていたものであるが,遠位橈尺関節ならびに骨間膜の病態が解明してきた現在,大変時期を得た,また興味のある内容である.

 前腕の回旋機能は人間が複雑な上肢機能を獲得するために,2本の前腕骨を連結する骨間膜が発達し,支持性と可動性という2つの機能を両立させたものである.この可動性,つまり前腕回旋の機能障害を来すことは,結果的に日常生活に支障を来すことになる.この手関節から前腕にかけての基礎的研究の流れについて考えてみると,1972年にDobyns & Linsheidにより手関節の靱帯損傷が慢性化した手根不安定症(carpal instability)という概念が報告された.手根骨の解剖,バイオメカニクス,治療法の研究が行われ,その解明がなされてきた.日本では米国ほどの高度な手関節外傷が少ないためか,手根不安定症の臨床応用は思ったほどは多くはない.さらに,1981年にはPalmerが手関節尺側にあるtriangular fibrocartilage complex(TFCC:三角線維軟骨複合体)について報告した.手根不安定症の問題が解明されるにつれ,次に手関節尺側部痛について,つまり遠位橈尺関節の不安定症が研究の中心になった.さらに1985~1986年にWhipple,Roth,Poehlingらが現在の実用性の高い手関節鏡システムを確立し,また1985年に本邦の奥津が関節外鏡視下手根管開放術を報告し,手関節周辺に新しい分野を開拓した.その結果,遠位橈尺関節の解剖,TFCCのバイオメカニクスの研究,治療法の開発が進歩した.このように,1980~1990年代には生体力学的な分析の導入,画像診断の進歩(MRI,3-D CT等),鏡視下手術の導入により手関節の周辺の研究が進歩した.この遠位橈尺関節のバイオメカニクスの進歩により,前腕の骨間膜が遠位橈尺関節に与える影響の重要性が問題になってきた.特に,遠位橈尺関節脱臼と骨間膜損傷を伴う橈骨頭骨折を合併した外傷であるEssex-Loprestiは近位・遠位橈尺関節と骨間膜の損傷を同時に受けた破壊的な結果として諸家により報告された.この外傷は初期の治療法の選択が重要であり,骨間膜の持っている前腕での臨床的な役割を明らかにした.当教室の藤田による1995年の前腕骨間膜の解剖学的研究にて,前腕の2本の骨を連結する骨間膜は一様な膜ではなく,橈骨近位から尺骨遠位へと斜走する腱様部と,その遠位および近位にひろがる膜様部から構成されている(図1).また,その機能は前腕筋群の起始として合理的な力の伝達を行うことや,橈骨・尺骨間の安定化および長軸方向の荷重の伝達を担っていることを報告した.さらに,当教室の小泉が前腕回内外運動に伴う,骨間膜の曲げ歪みの検討を行った.腱様部の緊張の変化は常に一定ではなく,部位および肢位により変化し,遠位1/4部では中間位から回外20°まで,中央部では回内10°から中間位で,近位1/4部は回外50°で最も曲げ歪みが低値を示した(図2).その結果,前腕の各肢位により,骨間膜の歪み変化が起こり,これが拘縮とどのような関係にあるかなどが判明してきた.以上より,前腕骨間膜損傷が疑われた場合の固定肢位は中問位から回外20°までがよいと考えたが,まだ意見の分かれるところである.また,この骨間膜はACL損傷の再建と同じで,一度損傷されるとその1次修復は不可能とされている.現在は,その再建術の術式としてBergerらは下腿の骨間膜を応用して,Ostermanらは膝蓋腱を応用して,ともに骨・靱帯・骨を用いた再建法を報告している.本邦では再建の適応となるEssex-Lopresti骨折の頻度が少なく,まだ再建した報告はない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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