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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科40巻3号

2005年03月発行

雑誌目次

視座

再生医療としての骨切り術

著者: 帖佐悦男

ページ範囲:P.229 - P.230

 先端医療の分野では,ゲノム医療と再生医療が注目を集めています.50兆円という巨大市場をねらって多くのベンチャー企業が国内外に出現しています.再生医療研究は,1998年の米国におけるヒト胚性幹(ES)細胞株の樹立,2003年4月14日のヒトゲノム解読完了が契機となり,一層盛んになってきました.

 日本再生医療学会によると「再生医療」とは,「機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して,細胞を積極的に利用してその機能の再生をはかるもの」と説明されています.整形外科の分野では,関節軟骨,骨,神経や椎間板など運動器にかかわるすべての組織の再生が試みられており,将来は,再生した組織や臓器の移植が可能になることが期待されています.

論述

胸椎・腰椎後方instrumentation手術後感染例の検討

著者: 安井哲郎 ,   近藤泰児 ,   穂積高弘 ,   新井真 ,   東川晶郎 ,   永瀬雄一

ページ範囲:P.233 - P.237

 胸椎・腰椎後方instrumentation手術を行った302例中13例(4.3%)に術後感染が生じ,うち11例(85%)はメチシリン耐性菌感染であった.長時間手術・大量出血・多椎間手術が感染の危険因子であった.また当該部位の手術既往・放射線照射の既往も危険因子と考えられた.一方,年齢・術中創洗浄量には有意な差はなかった.抗生剤の全身投与のみでは感染は治癒しなかった.術後2週間以内の感染発症例では病巣掻爬により感染を鎮静化させ得たが,術後2週間以降の発症例では内固定材抜去を要した症例が多かった.

術後無症候性深部静脈血栓症の発生頻度および肺塞栓症との関係

著者: 施徳全 ,   須藤啓広 ,   長谷川正裕 ,   松峯昭彦 ,   近藤哲士 ,   榊原紀彦 ,   塩川靖夫 ,   内田淳正

ページ範囲:P.239 - P.245

 下肢,骨盤手術症例の術前と術後に超音波法を用いて検査し,患者の同意を得て手術側に静脈造影を行った131例について,近位型深部静脈血栓症(DVT)の有無と発生部位,臨床症状との関係,血管の閉塞程度と臨床症状の関係および肺塞栓症(PE)との関係を調べた.症候性DVTと無症候性DVTの発生頻度は42%と21%であった.完全閉塞型による症候性と無症候性DVTが76.2%と29.4%,部分閉塞型による症候性と無症候性DVTが23.8%と70.6%であった.症候性と無症候性DVTによるPEの発生頻度は23.8%と23.5%であった.術後無症候性DVTの早期診断が重症PEの予防に重要であると思われた.

前十字靱帯再建膝における大腿骨側骨孔位置が再建靱帯に与える影響

著者: 市場厚志 ,   小田幸作 ,   岸本郁男

ページ範囲:P.247 - P.252

 前十字靱帯(ACL)再建術後膝のMR像を用いて,大腿骨側の骨孔位置が再建靱帯に与える影響を評価した.骨付き膝蓋腱の両端をpoly-L-lactide acid(PLLA)製interference screwで固定し,術後6カ月以上経過した27例27関節を対象とした.MR像冠状断を用い,顆間窩での大腿骨側骨孔位置,再建靱帯と関節面とのなす角,後十字靱帯(PCL)とのインピンジメントを調べた.再建靱帯の評価は,冠状断,矢状断で再建靱帯のvolume,tension,signalの各項目について点数化したMRI評価点にて行った.大腿骨骨孔位置は低い位置(右膝時計表示で11時より10時に近い位置)にあるほうが再建靱帯のMRI評価点は良好であった.再建靱帯の関節面とのなす角度が低いほうがPCLとのインピンHジメントを避けられていた.

調査報告

頚椎後縦靱帯骨化症患者の特定疾患申請に関する実態調査

著者: 松永俊二 ,   林協司 ,   米和徳 ,   小宮節郎

ページ範囲:P.253 - P.256

 頚椎後縦靱帯骨化症の手術適応は診療科の違いにより必ずしも統一したものではない.特に最近,症状が発現する以前に予防的手術を行う施設もある.本論文では鹿児島県における頚椎後縦靱帯骨化症の診療科別による申請状況の実態を知る目的で平成14年(2002)度の特定疾患申請のための調査表を検討した.対象は84名であり,年齢は49~73歳,平均59.4歳であった.骨化型は分節型31名,連続型29名,混合型24名であった.診療科別では整形外科が61名と最も多く,脳神経外科が17名,神経内科が5名,その他が1名であった.重症認定が20例であったが,その85%は整形外科からの申請であった.また,整形外科以外の診療科では分節型骨化の症例が多かった.今回の調査により,整形外科からの申請に比べ脳神経外科からの申請患者は軽症である傾向があることがわかった.手術適応の違いによる差である可能性もある.

総説

加齢と骨変化

著者: 山崎聡 ,   増原建作 ,   清野佳紀

ページ範囲:P.257 - P.264

 骨粗鬆症における問題点は,高齢者の自立を阻害する脊椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折である.このような骨折を予防するためには,成長期における骨量を増加させ,できるだけ高い最大骨量を獲得することが重要である.小児期の予防対策と退行期骨粗鬆症に対する早期診断と治療が,患者のQOL低下を防止すると考えられる.骨粗鬆症に対しては原則として薬物療法を行い,骨量や骨代謝マーカーをモニタリングしながら,個々の症例に対して有効性のある薬剤をできるだけ長期間継続することが望ましい.本稿では小児期の骨変化にも着目し,加齢と骨変化について述べる.

連続講座 整形外科領域の再生医療⑥(最終回)

脊髄

著者: 中村雅也 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.265 - P.270

 近年の神経科学,特に幹細胞生物学の目覚ましい進歩により,これまで不可能と考えられてきた脊髄再生への期待が高まっている.本稿では,脊髄再生の基礎研究の現状を細胞移植療法とそれ以外に分けて概説し,さらに現在行われている損傷脊髄の再生を目指した臨床治験について言及した.細胞療法に加えて軸索伸展阻害因子の抑制,神経栄養因子などの治療法を,脊髄損傷の程度や高位,時期などに応じて組み合わせ,さらに効果的なリハビリテーションを行うことが脊髄損傷に対する再生医療を確立するために重要である.

追悼

古屋光太郎先生のご逝去を悼む

著者: 四宮謙一

ページ範囲:P.272 - P.273

 東京医科歯科大学整形外科名誉教授古屋光太郎先生のご逝去にあたり心よりご冥福をお祈りいたします.古屋先生は昭和31年3月,東京医科歯科大学医学部を卒業後に医学研究科に進学され,その後終生にわたり骨・軟部腫瘍の研究に従事されました.昭和52年に初代青池勇雄教授の後継者として整形外科学講座教授に就任され,平成8年3月まで19年にわたり整形外科学および大学の発展のために貢献されてきました.
 古屋先生のご業績は骨・軟部腫瘍の診断と治療,股関節外科治療法の開発の大きく2つに分類されます.骨肉腫のX線像と病理組織所見を対比して亜分類を試み,予後との関係を明らかにしました.また治療法として切除範囲基準を作成し,化学療法と治癒的広範切除による患肢温存手術を行い,その結果5年生存率を70%以上に向上させました.また,悪性軟部腫瘍に関しては診断基準の確立,予後と組織型・手術法の重要性を明らかにし,治癒的広範切除術により治療成績を向上させました.

最新基礎科学/知っておきたい

キメラ抗体

著者: 石川悟 ,   西本憲弘

ページ範囲:P.274 - P.277

■はじめに
 1975年にマウスモノクローナル抗体作成法6)が公表されて以来,特定の抗原に対するモノクローナル抗体の生産が可能となった.この技術のおかげで,均一で高い抗原特異性と親和性を持ち,しかも安定して供給することが可能なマウスモノクローナル抗体を得ることが可能になり,抗体を用いることによる創薬が実現し,世界中でその開発が行われている.
 1980年代に,マウスにヒト抗原を免疫することで得られたマウスモノクローナル抗体を用いた癌に対する治療が行われた.しかし,マウス抗体がヒト免疫系に異物として認識されhuman anti-mouse antibody(HAMA)が誘導され,投与したマウスモノクローナル抗体が短時間で血液中より消失し治療効果が激減してしまう.そこでHAMAの誘導を避け,高い治療効果を狙って,ヒト抗体に近い生物学的薬剤としてキメラ抗体が作られた.キメラ抗体はマウスモノクローナル抗体の定常領域をヒト免疫グロブリンの定常領域に置換したマウス・ヒトキメラ型抗体で,遺伝子組み換え技術によって構築された9).キメラ抗体に引き続き,CDRグラフティング技術を用いて,可変部位の中でも抗原認識に最も重要である相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)のみをヒトの免疫グロブリンに移入し,マウス由来の蛋白をより少なく改変したヒト化抗体が開発され4),さらにはファージディスプレー法10)などを用いることによってマウス由来蛋白を全く含まない完全ヒト型抗体の作製も可能になった.次々と新しいモノクローナル抗体が作製され,開発段階にあるバイオ医薬品に占めるモノクローナル抗体医薬品の数はワクチンに次いで第2位の位置にまでなった.これらの抗体製剤は癌や自己免疫疾患などの治療に使われ始めており,今後さらに開発が進み,様々な疾患に対して応用されることが予想される.今回は主に抗体医薬品として広く使われ始めているキメラ抗体について紹介する.またキメラ抗体の次の世代のモノクローナル抗体として期待されるヒト化抗体についても紹介したい.

連載 整形外科と蘭學・12

華岡青洲の麻沸湯について

著者: 川嶌眞人

ページ範囲:P.278 - P.280

 先に整骨医奥田万里がマンダラゲ(図1)の実を活用して整骨の際に麻酔剤として用いていたと述べたが(小誌39巻10号),麻酔の歴史を調べてみると,華岡青洲以前に既に整骨医が古くから利用していたことは明らかである.
 華岡青洲(1760~1835)は宝暦10年(1760),大坂で南蛮流外科を学んだ華岡髄賢の長男として和歌山県那賀町西野山字平山に出生,通称は雲平と呼ばれていた(図2).天明2年(1782),古医方を吉益南涯(1750~1813)に学び,蘭方外科を大和見立(1750~1827)に学んだ.大坂の医師,永富独嘯庵(1732~1766)の「漫遊雑記」(1764)に「乳癌は直らぬとされているが,オランダの書によれば,その初期であれば切除が可能だとある.」と記載されているところを読んだことから,いつの日か乳癌手術を行いたいと思うようになった.

医者も知りたい【医者のはなし】 13

西洋医学の伝来事始 ルイス・デ・アルメイダ―その1・ポルトガルから大分へ

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.282 - P.286

■はじめに
 私は昭和50年代に大分県別府市の国立亀川病院と日田市の日田中央病院に勤務したことがある.そして大分市の医師会病院「アルメイダ病院」の名前に興味を抱き,室町時代の終わりに来日した南蛮外科医アルメイダ(1525-1583)のことを調べた.彼のことを昨年末福岡県医師会雑誌に投稿し,好評であったので,手を加えて皆様にお知らせする.

臨床経験

手根管症候群の自覚症状と電気生理学的所見の関係

著者: 辻井雅也 ,   平田仁 ,   長倉剛 ,   椙本淑子 ,   森田哲正 ,   佐野哲也 ,   藤澤幸三 ,   内田淳正

ページ範囲:P.287 - P.290

 手根管症候群(以下CTS)の手術例を対象に術前の有症状期間,自覚症状の重症度,電気生理学的検査の関係について検討した.対象は41例で有症状期間をもとに早期群(<3カ月),中間期群(4~6カ月),進行期群(7~12カ月)に分けた.自覚症状としての夜間痛,日中痛,睡眠障害は早期群,中間期群では進行期群に比べて有意に強かった.電気生理学的検査はいずれの症状とも相関せず,各群間にも差は認めなかった.これらのことからCTSの早期には神経外組織に由来する症状がある可能性が疑われた.

肩鎖関節脱臼に対する烏口肩峰靱帯移行術の治療経験

著者: 中村順一 ,   永瀬譲史 ,   阿部功 ,   國府田正雄 ,   村上宏宇

ページ範囲:P.291 - P.294

 肩鎖関節完全脱臼に対しては一般的に観血的治療が行われる.当院では烏口鎖骨靱帯再建を目的として烏口肩峰靱帯を肩峰付着部で切離・移行し,靱帯のみをBunnel法にて鎖骨に縫着する術式を行っている.12例の成績は川部らの評価法で優8例,良4例であり,文献にみられる骨片付きで靱帯を移行する術式と本法の間に再脱臼率の差はなかった.本法は自覚的にも他覚的にも満足度の高い成績であり,有用であると考えられた.

症例報告

スノーボードによる膝外側半月板損傷

著者: 北圭介 ,   天野大 ,   林史郎 ,   夏梅隆至 ,   塩崎嘉樹 ,   中村憲正 ,   堀部秀二

ページ範囲:P.295 - P.299

 スノーボードによる膝外傷において重度な軟骨損傷を伴った外側半月板単独損傷を経験したので報告する.症例は3例でいずれも上級者であり,ジャンプ着地時に受傷していた.受傷後,水腫や疼痛が3カ月以上持続したため関節鏡を施行した.半月板は全例中節部の横断裂であり,さらに外側大腿𦙾骨関節に軟骨下骨層近くまで至る比較的深く広範囲の軟骨損傷を全例に認めた.最近スノーボード用のジャンプ台が流行しているが,それに伴い今回のような外傷が今後増加することが予想され,予防対策および治療法の確立が今後の課題になると思われる.

関節内注射後に発生した化膿性肩関節炎の2例

著者: 鈴木貴士 ,   清水一郎 ,   若林健 ,   横井隆明 ,   大幸俊三 ,   龍順之助 ,   鳥山正人

ページ範囲:P.301 - P.305

 症例1は70歳,女性.近医にてステロイドの肩関節内注射を3回施行後,肩の疼痛が増強し約4週間後に当院を受診した.化膿性肩関節炎の診断で観血的洗浄,滑膜切除術を施行し,術後1年3カ月では日常生活に支障なく改善した.症例2は49歳,女性.症例1と同院にてステロイドの肩関節内注射を施行後,肩の疼痛が増強し,約6週間後に当院を受診した.同診断で観血的洗浄,滑膜切除術を施行し,術後1年3カ月では関節可動域制限を伴っているが,概ね臨床症状は改善した.本症例は同院同時期に不適切な消毒による肩関節内注射によって発症したと思われる.関節節内注射をする場合,十分な消毒を行う必要がある.

胸椎急性硬膜外血腫の2例

著者: 長縄敏毅 ,   杉山誠一 ,   若林英 ,   若原和彦 ,   細江英夫 ,   清水克時 ,   日置暁

ページ範囲:P.307 - P.311

 症例は49歳の女性と72歳の男性である.前者は,突然の背部痛と両下肢のしびれを自覚.来院時,Frankel Bであった.MRIではTh1~Th2高位で脊髄は硬膜外血腫により後方から圧排されていた.急性硬膜外血腫を疑い緊急除圧術を施行し,麻痺はFrankel Eに回復した.後者は,心房細動でワーファリンを内服.腹痛を自覚後,対麻痺となった.来院時,Frankel Bであった.MRIではTh9~Th11で脊髄は硬膜外血腫により後方から圧排されていた.緊急除圧術の適応と判断したが,保存療法にて対麻痺の改善を認め,血腫は発症後3週で完全消失し,麻痺はFrankel Eに回復した.経時的に麻痺が進行・不変であれば早期手術治療,軽快すれば保存治療を選択する余地があると考える.

末期変形性股関節症の同側に生じた大腿骨転子下骨折の3例

著者: 服部高子 ,   津田隆之 ,   佐藤巌 ,   大木智香子 ,   難波二郎 ,   小島崇弘

ページ範囲:P.313 - P.316

 変形性股関節症(OA)に生じた大腿骨転子下骨折を3例経験したので報告する.OA患者の同側に生じる大腿骨頚部骨折では,内側骨折よりも外側骨折が生じやすいと言われている.OAが存在すると大腿骨頚部と寛骨臼後面のimpingementを起こすだけの十分な可動域がないこと,大腿骨骨頭および頚部の骨硬化,さらに大腿骨の骨粗鬆化のために,外側骨折が生じやすいものとされている.今回の3症例は,非常に高齢で同様の骨折形態をとっていた.OAに加えて強い骨粗鬆化が転子下骨折の原因と考えられた.

好酸球性肉芽腫が疑われた小児頚椎破壊性病変の1例

著者: 古矢丈雄 ,   山崎正志 ,   大河昭彦 ,   天野景冶 ,   田村晋 ,   新籾正明 ,   橋本光宏 ,   渡邊光弘 ,   村上正純 ,   守屋秀繁 ,   西須孝 ,   亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.317 - P.321

 4歳,男児の第5頚椎に発生した頚椎破壊性病変の1例を報告する.患児は頚部痛で発症し,その後両前腕痛を訴えた.両側下肢腱反射は亢進していた.単純X線像で第5頚椎椎体の圧潰を認めた.MRIで同椎体の圧潰および,第3頚椎~第7頚椎レベルの脊柱管内に脊髄を前方から圧排する腫瘤を認めた.好酸球性肉芽腫を疑い,生検を行った.病理組織像では好酸球性肉芽腫の典型像は得られなかったが悪性疾患は否定された.治療としてハローベスト固定による保存療法を施行した.自覚症状は早期より消失し,良好な臨床経過を得た.

胸椎転移を主症状とした腎盂尿管腫瘍の1例

著者: 本田久樹 ,   清水健治 ,   小林晏 ,   秋末敏宏 ,   清原稔之 ,   三井敏文

ページ範囲:P.323 - P.327

 急速進行性麻痺を呈した稀な腎盂尿管腫瘍の胸椎転移の1例を経験した.症例は43歳の女性で背部痛を主訴とし,血検でCA 19-9が高値を示し,尿細胞診で異型性を示す移行上皮を認めた.補助診断で第3胸椎の破壊を認め,精査で腎盂尿管移行部に腫瘍が存在した.生検にて腎盂尿管腫瘍の胸椎転移と診断した.手術は麻痺の急速悪化に対し後方除圧・固定術を施行した.本症は稀な悪性腫瘍で,脊椎症状を主訴とする報告は剖検例2例のみである.本症は泌尿器科的症状に乏しく,脊椎転移が主症状となる病態の存在に注意が必要である.

人工膝関節再置換術後のMRSA感染に対し同種大腿骨を用いて膝固定術を行った1例

著者: 勝見敬一 ,   佐藤慎二 ,   小泉雅裕 ,   神田俊浩 ,   日向野行正 ,   河内俊太郎 ,   田西信睦

ページ範囲:P.329 - P.332

 人工膝関節再置換術(TKA)後のMRSA感染に対し同種大腿骨を用いて膝固定術を行った1例を経験した.症例は72歳,男性.2000年,他院にて左TKAを施行されている.2002年TKAの弛みを指摘され当院に紹介となる.感染も疑い二期的にrevision TKAを施行するも,術後感染徴候が明らかとなり,MRSAが検出された.その後のデブリドマン・人工関節の抜去で感染の鎮静化を得たが,その結果生じた広範な骨欠損部を補塡し患肢の温存と脚長の維持を目的に同種大腿骨を用いた膝固定術を施行し,現在まで良好な成績を得ている.

坐骨神経部に発生した慢性増大性血腫の1例

著者: 福岡昌利 ,   穴澤卯圭 ,   矢部啓夫 ,   森岡秀夫 ,   三浦圭子 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.333 - P.337

 慢性増大性血腫(choronic expanding hematoma,以下CEH)は,1カ月以上の経過で徐々に増大する血腫と定義されている.今回われわれは,坐骨神経部に生じたCEHの1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性.1997年12月に坐骨神経痛を呈する左大腿部の腫瘤を認め,翌年3月に摘出術を施行されCEHと診断された.術後症状は消失したが,術後3年で腫瘤の再発と坐骨神経痛および軽度の麻痺症状を認めた.MRIによりCEHの再発と診断し,再度摘出した.手術後約1年の現在,再発は認めない.また,自験例においてMRI像はCEHの診断に有用であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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