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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科40巻3号

2005年03月発行

文献概要

最新基礎科学/知っておきたい

キメラ抗体

著者: 石川悟1 西本憲弘1

所属機関: 1大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学

ページ範囲:P.274 - P.277

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■はじめに
 1975年にマウスモノクローナル抗体作成法6)が公表されて以来,特定の抗原に対するモノクローナル抗体の生産が可能となった.この技術のおかげで,均一で高い抗原特異性と親和性を持ち,しかも安定して供給することが可能なマウスモノクローナル抗体を得ることが可能になり,抗体を用いることによる創薬が実現し,世界中でその開発が行われている.
 1980年代に,マウスにヒト抗原を免疫することで得られたマウスモノクローナル抗体を用いた癌に対する治療が行われた.しかし,マウス抗体がヒト免疫系に異物として認識されhuman anti-mouse antibody(HAMA)が誘導され,投与したマウスモノクローナル抗体が短時間で血液中より消失し治療効果が激減してしまう.そこでHAMAの誘導を避け,高い治療効果を狙って,ヒト抗体に近い生物学的薬剤としてキメラ抗体が作られた.キメラ抗体はマウスモノクローナル抗体の定常領域をヒト免疫グロブリンの定常領域に置換したマウス・ヒトキメラ型抗体で,遺伝子組み換え技術によって構築された9).キメラ抗体に引き続き,CDRグラフティング技術を用いて,可変部位の中でも抗原認識に最も重要である相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)のみをヒトの免疫グロブリンに移入し,マウス由来の蛋白をより少なく改変したヒト化抗体が開発され4),さらにはファージディスプレー法10)などを用いることによってマウス由来蛋白を全く含まない完全ヒト型抗体の作製も可能になった.次々と新しいモノクローナル抗体が作製され,開発段階にあるバイオ医薬品に占めるモノクローナル抗体医薬品の数はワクチンに次いで第2位の位置にまでなった.これらの抗体製剤は癌や自己免疫疾患などの治療に使われ始めており,今後さらに開発が進み,様々な疾患に対して応用されることが予想される.今回は主に抗体医薬品として広く使われ始めているキメラ抗体について紹介する.またキメラ抗体の次の世代のモノクローナル抗体として期待されるヒト化抗体についても紹介したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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