特集 脊椎脊髄病学 最近の進歩 2005(第33回日本脊椎脊髄病学会より)
原著論文
コンピュータを活用した骨化巣計測法を用いた後縦靱帯骨化症の術後骨化進展に関する多施設共同研究
著者:
千葉一裕1
山本逸雄2
平林尚1
岩崎幹季3
後藤博史4
米延策雄5
戸山芳昭1
所属機関:
1慶應義塾大学整形外科
2山本クリニック
3大阪大学整形外科
4久留米大学整形外科
5国立病院機構大阪南医療センター
ページ範囲:P.403 - P.412
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後縦靱帯骨化症による進行性の脊髄症状に対し,手術が施行された後も骨化が進展し神経症状が再燃することがあるため,術後の骨化進展を正確に評価することは重要である.しかし,骨化進展と術後成績との相関を厳密に調査した研究は少ない.その理由として骨化進展の判定基準や骨化巣の大きさを正確に計測する方法がないことが挙げられる.今回,われわれが開発したコンピュータを活用した骨化巣計測法を用いて本症術後の骨化進展出現率を調査した.対象は,全国13施設で後縦靱帯骨化症に対して後方除圧術を受け,術後2年以上の経過観察が可能であった患者のうち,術直後,1年後,2年後の頚椎単純側面X線が入手可能な131名である.独立した判定委員会にて各時点のX線計測ならびに骨化進展の判定を行った.術直後のX線に比し,1)長軸,前後方向のいずれかで2.0mm以上の骨化進展が1カ所でもあった場合,2)長軸,前後方向のいずれかで2.0mm以上の骨化巣が新たに出現した場合,3)分節あるいは混合型の骨化巣が進展により連続化した場合,骨化進展ありと判断した.骨化進展出現率は術後1年で38.9%,術後2年で56.5%であった.若い年齢層ほど術後1年時に有意に高い骨化進展出現率を示した.また,混合型は分節型と比べ術後2年時に有意に高い骨化進展出現率を示した.本研究は信頼性が確認された新しい骨化巣計測法を用いて術後骨化進展出現率を調査した初めての全国規模多施設共同研究である.今回の調査で得られた骨化進展出現率は従来の報告とも矛盾せず,今後,骨化進展と術後成績の相関を検討する際の基礎的データとなり得る.