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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科40巻6号

2005年06月発行

雑誌目次

視座

テュトーリアル・システム導入の意義と問題点

著者: 山本謙吾

ページ範囲:P.621 - P.621

 テュトーリアル・システム導入の重要性が昨今盛んに強調されてきている.

 岐阜大学をはじめとするいくつかの大学では先進的にこの制度を取り入れ,学生教育に成功を収めている.その本質は,教員が学生を教えること(Teaching)から,学生が自ら学ぶこと(Learning)への変換である.わが大学においても,その導入にあたって現在,学内においてさまざまな角度から検討が行われ,岐阜大学をはじめとする諸大学に実地見学をさせていただいている.テュトーリアルの特徴(従来の一方通行の講義との比較)として,従来の講義中心型では困難であった「学び方を学ぶ」ことが可能である,知識を一方的に受け入れる知識受入型ではなく「知識を現地調達する(使える知識が取得できる)」,問題点は教員から提示されるのではなく「自分で問題を発見する」,教員が問題を解決するのではなく「抽出した問題を自分で解決する(問題解決型)」,暗記に頼り,応用的な質問に答えられなくなりがちな従来型講義と異なり「考える能力が向上するため,応用的な質問にも答えられる」,などの利点が生まれることが考えられる.さらに講義への出席率が悪い・講義に出ても居眠りをしているという従来の受動型講義と異なり,少人数グループ学習のため,全員が討論や学習に参加する(能動型),グループ学習のためコミュニケーション能力が向上するなどの特徴がある.テュトーリアルとは提示された症例に対して問題点を抽出して自学実習し,これを講義・実習・試験を通して最終的に自分のものにしていくという形式である.

誌上シンポジウム 脊柱短縮術

緒言 フリーアクセス

著者: 清水克時

ページ範囲:P.622 - P.623

 脊椎骨を切除して脊柱を短縮するという考えは新しいものではない.1928年にRoyleは先天性側弯症に対する半椎切除術を初めて記載している.Hibbs(1911)が脊柱変形に対して後方固定術を行って間もない頃,Risser(1955)がcorrective castを使用して特発性側弯症を矯正したはるか以前のことである.脊柱短縮術は脊髄や馬尾に張力をかけないで変形矯正できるという利点がある.その後も,脊柱短縮術は脊柱変形を矯正する技術として引き継がれてきた.Heiningは骨粗鬆症性椎体圧壊に対し,経椎弓根的に骨切除を行い,卵の殻をつぶす(eggshell procedure)ようにして罹患椎体を短縮し,除圧と変形矯正をはかる手術を行った.脊椎インストゥルメンテーションが発達する以前のこれらの手術には大変な困難が伴ったものと推察される.その後,半椎切除術は脊椎インストゥルメンテーションを併用するLeatherman and Dickson(1979)の方法へと進化した.

 Gaines procedureは高度の腰椎分離すべり症である腰椎下垂症Spondyloptosisの治療法である.仙骨の前方,骨盤内に落ち込んだL5椎体を前方進入で切除したのち,後方からL4以上の脊柱を仙骨の上で背側に移動して腰仙部を固定する手術である.Gaines procedureは腰椎の前後の変位を矯正する変形矯正のための脊柱短縮術である.このように脊柱短縮術の対象となる病態は様々であるが,これまでは変形矯正という共通の目的をもっていた.これに対し,ShimizuらはL6の骨巨細胞腫に,脊椎全周切除と短縮術を行い,変形矯正を伴わない,純粋に脊柱を短縮して再建するという方法を示した.脊柱短縮術は,移植骨が最小限ですみ,内固定を最小化,単純化できるという利点をもつ.

脊柱短縮が脊髄に及ぼす影響に関する実験的研究

著者: 小林忠美 ,   川原範夫 ,   藤田拓也 ,   村上英樹 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.625 - P.631

 脊柱短縮が脊髄に及ぼす影響について成犬を用いて実験を行った.12.5mmまでの脊柱短縮では脊髄の走行は直線状に保たれていたが,12.5mmを超える脊柱短縮では脊髄にキンキングが生じた.脊髄の走行が直線状に保たれている5mm,10mmの脊柱短縮時の脊髄血流量は短縮前に比し有意に増加していた.脊髄がキンキング状態にある15mm,20mmの脊柱短縮時には脊髄機能障害が生じていた.脊髄のキンキングが生じる臨界点は1椎体長の64%の脊柱短縮の時点であり,ここまでが脊柱短縮の安全域である.

脊髄係留症候群に対する脊柱短縮術

著者: 田中靖久 ,   国分正一 ,   小澤浩司 ,   松本不二夫 ,   相澤俊峰 ,   星川健

ページ範囲:P.633 - P.637

 脂肪脊髄髄膜瘤を原因とする脊髄係留症候群の成長終了・成人例に対して,1995年,国分は従来の発想を転換し,脊柱を短縮して脊髄の緊張を緩める方法を報告した.その手術を行った9例(15~53歳,平均28歳)の成績を調査(手術~調査時:平均3年)した.8例で,症状あるいは神経学的障害における改善がみられた.改善した症状・神経学的障害の多くは,手術の直近に生じていたものであった.脊柱短縮術の一層の成績向上のために,発症後早期にあるいは麻痺がいまだ軽症にとどまっている段階で手術に踏み切ることが望ましい.

胸腰椎破裂骨折に対する脊柱短縮骨切り術―荷重分担分類による選択

著者: 石橋賢太郎 ,   中村聡 ,   小川真司 ,   田中靖久 ,   国分正一

ページ範囲:P.639 - P.645

 胸腰椎破裂骨折に対する新しい後方の術式として脊柱短縮骨切り術を考案し,2椎間固定で行っている.荷重分担分類で7点以上の症例の術式は,破裂椎の前方の高さに合わせて椎弓根基部から隣接上位と下位の椎間関節を全て切除する.前方が上位椎と破裂椎を椎体どうしで,後方が2椎間の後側方固定で骨癒合させるものである.一方,6点以下の症例の術式は,骨切り範囲を破裂椎の椎弓根の上半分と隣接上位の椎間関節のみにする.上位椎とは椎体どうしで,下位椎とは椎間関節固定で骨癒合させるものである.さらに2椎間の後側方固定を追加する.

腫瘍脊椎骨全摘術における脊柱短縮

著者: 川原範夫 ,   富田勝郎 ,   小林忠美 ,   村上英樹 ,   赤丸智之 ,   羽藤泰三 ,   上田泰博

ページ範囲:P.647 - P.650

 腫瘍脊椎骨全摘術後の脊柱再建時に7~8mm程度(1椎骨の約20%)の脊柱短縮を行っている.対象は胸椎高位の40例であった.脊髄硬膜のキンキングを認めた症例はなかった.術前に比べ,1椎骨切除では切除部分の平均22.2%(7mm)の脊柱短縮を認めた.2椎骨切除では,13.4%(8.3mm),3椎骨切除では8.4%(8.6mm)であった.神経症状の悪化を認めた症例はなかった.術前不全麻痺を認めた22例中20例は術後Frankel分類で1段階以上回復した.脊柱支持性は保たれていた.脊髄にとって安全域である7~8mm程度の脊柱短縮は,より安定した脊柱支持性をもたらすとともに,脊髄血流を増加させ脊髄麻痺の回復に有利に働く.

論述

高齢者の頚椎症性脊髄症の病態―C4前方すべりの重要性について

著者: 菅尚義 ,   宮崎昌利 ,   秋山寛治 ,   吉田省二 ,   三原茂

ページ範囲:P.653 - P.663

 高齢者の頚椎症性脊髄症(頚髄症)の病因として,C4前方すべりの重要性についてX線学的に検討した.20~60歳代までの10代ごとに20例,70代は80例,80代は30例,それに70歳以上で手術した28例の計238例につき,椎間の可動域角,椎体のすべり,C5椎体上縁の水平線に対する傾斜角,C1-5間前弯度(頚椎全体C1-7間前弯角に対する,C1-5間前弯角の比)を求め,それぞれの関係を調べた.椎間の可動域角は40代以上では,その最大レベルがC4-5間に移り,70代になるとC4前方すべりの頻度,C5椎体上縁の傾斜角,またC1-5間前弯度が増加してくる.C5傾斜角とC1-5間前弯度の間にはすべての年代で相関が認められた.C5傾斜角とC4前方すべりでは70代においてのみ相関を認め,C4後方すべりとは全年齢で相関は認められなかった.C1-5間前弯度とC4前方すべりの間においても70代にのみ相関が認められ,C4後方すべりとは全年齢で相関は認められなかった.以上の結果から高齢者において,C5-7の可動域角の低下と姿勢の前傾化によってC1-5間前弯度が増加し,頭部が後方へ回転して,C4を前方へすべらせる力として作用していると考えられる.この病態は70歳以上(特に75歳前後)で認められることが多かった.

握力測定姿勢・肢位の違いによる握力値と再現性の検討

著者: 渡邉忠良 ,   金内ゆみ子 ,   井田英雄

ページ範囲:P.665 - P.671

 目的:立位・坐位,肘伸展・肘90°屈曲における握力値と再現性について検討した.方法:成人健常男女各20名を対象とし,Smedley式握力計を用い,立位肘伸展,立位肘90°屈曲,坐位肘伸展,坐位肘90°屈曲の姿勢で,各3回握力値を計測した.結果:女性非利き手を除き,握力値は男女とも立位肘伸展位が坐位肘90°屈曲より高値を示し,再現性は,異なった姿勢・肢位での測定より,同一姿勢・肢位で高値であった.結語:再現性の高めるためには同一姿勢,肢位での握力測定が必要と考える.

腰部脊柱管狭窄症に対する保存的治療 リマプロストの臨床効果―多施設前向き研究

著者: 松山幸弘 ,   吉原永武 ,   辻太一 ,   酒井義人 ,   中村博司 ,   後藤学 ,   川上寛 ,   稲生秀文 ,   川上紀明 ,   松原祐二 ,   金村徳相 ,   佐藤公治 ,   安藤智洋 ,   宮坂和良 ,   石田義博 ,   原田敦 ,   神谷光広 ,   青木正幸 ,   鈴木喜貴 ,   佐藤崇 ,   牧野光倫 ,   大脇義宏 ,   米田實 ,   米田忠正 ,   岩田佳久 ,   石黒直樹

ページ範囲:P.673 - P.680

 プロスタグランジンE1(以下PGE1)の誘導体で,経口投与可能なリマプロストの基礎研究において,本剤が馬尾の血流を増加させることにより神経伝導速度の改善を促し,腰部脊柱管狭窄症患者の神経性間欠跛行に有効であることが報告されている.保存療法のなかでも重要な位置づけのリマプロストの腰部脊柱管狭窄症に対する効果を,今まで研究されていないQOLへ与える影響に関して,SF-36を用いて多施設前向き研究で確認した.また腰痛,下肢痛へ与える効果も,患者本人が記載するVASスケール,フェイススケールを用いて患者側からみた主観評価を新たに試みた.結果は,投与群67例において非投与群26例と比較して有意にJOAスコア,腰痛,下肢痛のVAS,SF-36の体の痛み,活力,社会生活機能の3項目においてよい改善が得られた.これはPGE1の血管拡張作用,血小板凝集抑制作用,赤血球変形能亢進作用などに基づく強力な循環改善作用が効果を示した結果と考える.

検査法

椎体骨折の原因診断(腫瘍性・骨粗鬆症性)―骨吸収マーカー(尿中NTx)を用いた補助診断

著者: 飯塚高弘 ,   野田和王

ページ範囲:P.681 - P.685

 脊椎圧迫骨折は腫瘍性椎体骨折か骨粗鬆症性椎体骨折かの鑑別が困難なことがある.転移性骨腫瘍は骨組織を破壊しながら拡大していくために,骨吸収マーカーが上昇する.新規椎体骨折で来院した患者45例(平均年齢70.4歳)について治療開始前に尿中NTxを検査した.腫瘍性椎体骨折症例において有意にNTx(腫瘍群109.2,骨粗鬆症群70.2)は高値を示した(p=0.0337).また転移巣が増加するほどNTxは増加する傾向にあった(p=0.0586).NTxが高値を示した際には腫瘍性椎体骨折を疑って精査を行う必要がある.

整形外科/知ってるつもり

複合性局所疼痛症候群 complex regional pain syndrome:CRPS

著者: 真下節

ページ範囲:P.686 - P.687

 複合性局所疼痛症候群(CRPS,complex regional pain syndrome)は神経因性疼痛の1つに分類され,神経損傷や骨,筋肉組織の傷害によって引き起こされる知覚神経,運動神経,および自律神経・免疫系の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群である(図1).CRPSにはtypeⅠとtypeⅡがあり,以前からそれぞれ反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)とカウザルギーと呼ばれていたものである.CRPSは症候群であり,その診断は次に示すような国際疼痛学会(IASP)の診断基準を満たすかどうかによってなされる.

国際学会印象記

第5回日米加欧整形外科基礎学会合同会議に参加して

著者: 福士純一

ページ範囲:P.688 - P.689

 2004年10月10日から13日までの4日間,カナダはアルバータ州のバンフにて第5回日米加欧整形外科基礎学会合同会議が開催されました.会長はカルガリー大学Kevin Hildebrand教授です.本学会はその名の通り,日本,米国,カナダそしてヨーロッパのOrthopaedic Research Societyが一同に会す学会で,3年に1度,各地区の持ち回りで主催されているものです.第1回は1991年,今回と同じくバンフ,第2回は米国・サンディエゴ,第3回は浜松,第4回はギリシャのロードス島で行われました.今回は再びカナダの主催となり,第1回目に大好評であったバンフで再度の開催となったとのこと.参加者は約400名,そのうち約100名が日本からの参加者だったようです.

 バンフのシンボルといえば,中世ヨーロッパの古城のような外観のフェアモントスプリングスホテル,そのホテルのカンファレンスセンターが今回の会場でした(図1).今年の学会は,4つのシンポジウムに,4つのワークショップ,20のセッションが企画されました.シンポジウムは毎日午前中に大会場にて開催され,それぞれtendon to bone healing,intervertebral disc degeneration,cartilage repairそしてhip fractureというテーマで講演がなされ,大変に有意義でありました.ワークショップは,初日,3日目の午後に2つずつ行われ,mesenchymal stem cells,implant loosening,computer assisted orthopaedic surgeryそしてbiomarkersという4つのテーマについての最新の話題を含んだ討論が行われました.またセッションにおいては,関節形成術,バイオメカニクス,変形性関節症,骨折治癒,摩耗,ティッシュエンジニアリング,幹細胞,椎間板といった様々な領域での研究発表がなされました.日本からはシンポジウムとワークショップにそれぞれ1題ずつ,セッションに14題が採用されていました.

連載 医者も知りたい【医者のはなし】 14

西洋医学の伝来事始 ルイス・デ・アルメイダ―その2・西九州での布教活動

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.690 - P.693

■はじめに

 本誌3号(40巻3号)に,ポルトガルのルイス・デ・アルメイダ(図1)が天文21年(1552)に来日し,豊後府内で育児院と100床の病院を建て,外科医として活躍したところまでを述べた.アルメイダが大分で行った医療行為は,彼が日本で活躍した最初のほんの一部である.

 アルメイダの足跡を訪ねてみると,彼が西九州でいかに医療を施しながら,精力的にキリシタンの布教活動を行っていたかを理解することができる.さらに豊臣秀吉時代と徳川初期時代の肥後,天草,長崎,大村の歴史を知ると,アルメイダが日本の歴史にいかに大きな影響を及ぼしていたかを知ることができる.

臨床経験

原発性骨粗鬆症におけるリセドロネートの治療成績

著者: 高田潤一 ,   射場浩介 ,   片平弦一郎 ,   高橋貢 ,   橋本英樹 ,   大野富雄 ,   山下敏彦

ページ範囲:P.695 - P.698

 女性の原発性骨粗鬆症(229例,平均71.0歳)におけるリセドロネートの治療効果を検討した.12例の新規骨折が発生し,そのうち5例は治療開始6カ月以内であった.腰椎骨密度は,12カ月後に平均5.3%増加し,尿NTXは,6カ月後には平均27.6%減少した.治療開始時に骨折リスクが高いと評価された症例の79.0%は6カ月以内に最小有意変化を示した.リセドロネートは新規骨折発生の抑制,腰椎骨密度の増加やNTXの抑制効果において優れた効果が認められ,骨粗鬆症治療の第一選択薬の1つとして有用であるといえた.

大腿骨遠位発生悪性骨腫瘍に対する膝蓋骨半割による関節外切除術例の検討

著者: 土谷一晃 ,   中村卓司 ,   井形聡 ,   勝呂徹 ,   亀田典章 ,   蛭田啓之

ページ範囲:P.699 - P.705

 大腿骨遠位発生悪性骨腫瘍に対し膝蓋骨半割による関節外切除を行い腫瘍用人工関節で再建した8例について術後機能などから問題点を検討した.症例は骨肉腫4例などで,切除縁評価はwide 7例,marginal 1例であり,平均8年6カ月の経過で再発はなかった.機能評価(ISOLS)は平均88%であり,膝の伸展力は6例が良好で,2例は不良であった.本手術は膝関節内浸潤の判定が困難な大腿骨遠位悪性骨腫瘍などに適応があり,伸展機能の維持には四頭筋腱の適切な緊張やmechanical axisの調整が必要である.

小児化膿性股関節炎の治療経験

著者: 中瀬順介 ,   天谷信二郎 ,   青竹康雄 ,   五之治行雄 ,   加藤仁志 ,   三輪真嗣

ページ範囲:P.707 - P.711

 小児化膿性股関節炎は早期診断・加療が重要である.小児化膿性股関節炎7例に発症後早期に切開排膿を行い,良好な成績を得たので報告する.早期診断に関しKocherの予測因子を用いて単純性股関節炎群と比較し,Kocherの予測因子の有用性を検討した.発症から排膿までは平均3日で,片田の判定基準では良が2例,優が5例であった.Kocherの予測因子は有用であった.関節穿刺で明らかな膿の排出を認めないときでも,Kocherの条件を3項目以上満たすときには,関節切開術を考慮すべきと考える.

症例報告

手掌に発生した巨大な血管平滑筋腫の1例

著者: 辻井雅也 ,   平田仁 ,   大角秀彦 ,   川本雅渉 ,   西村淳喜 ,   瀬戸正史 ,   内田淳正

ページ範囲:P.713 - P.716

 血管平滑筋腫は中年女性の下肢に好発する.手における血管平滑筋腫は比較的稀であり,また血管平滑筋腫は有痛性であるために2cm以下で摘出術を施行されることが多い.われわれは非常に稀な手掌発生で腫瘍径が5cmの巨大な血管平滑筋腫を経験した.症例は72歳,男性で20年以上前に腫瘤に気づいたが,疼痛なく放置し,徐々に増大した.腫瘍は単純摘出術を施行され,病理組織診断にて血管平滑筋腫と診断された.

ウシ型結核菌(BCG)が原因と考えられた幼児の上腕骨結核性骨髄炎の1例

著者: 大歳憲一 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一 ,   宍戸裕章

ページ範囲:P.717 - P.721

 症例は4歳,男児で,生後4カ月で左上腕部にBCGを接種した.その19カ月後から誘因なく左肩痛が出現し,化膿性骨髄炎と診断され,抗生剤投与により速やかに症状は消失した.しかし,2年後に左肩痛が再発し,穿刺により一部粕状の黄白色の膿を認めたため,結核性骨髄炎を疑い,直ちに病巣掻爬術を施行した.組織学的には乾酪壊死が存在し,結核性骨髄炎と診断されたが結核菌は検出されなかった.本症例では周囲に結核罹患者が存在しないことと結核感染に伴う呼吸器症状や全身所見がないことからBCG接種が原因と推察された.

Scaphocapitate fracture syndromeの1例

著者: 高木岳彦 ,   松村崇史 ,   白石建 ,   上田誠司 ,   森山一郎 ,   別所祐貴 ,   辻収彦 ,   船尾陽生

ページ範囲:P.723 - P.728

 症例は19歳,男性.舟状骨,有頭骨骨折を認め,有頭骨近位骨片は約180°回転転位していた.手関節背側より骨折部を展開し,有頭骨骨片を整復し,screw固定を行った.術後7カ月の現在,手関節可動域は良好で日常生活に支障はない.本例は稀な手根部外傷であるが,手関節過伸展時に橈骨背側縁が有頭骨背側に衝突して骨折し,手関節を中間位に戻すと近位骨片が回転転位する機序が考えられている.無腐性壊死や偽関節の予防のためには早期の観血的整復固定が重要であり,長期的には変形性関節症の合併に注意が必要である.

悪性軟部腫瘍と鑑別を要した異物肉芽腫の4例

著者: 中村知樹 ,   松峯昭彦 ,   楠崎克之 ,   内田淳正

ページ範囲:P.729 - P.733

 四肢体幹部の軟部に発生した異物肉芽腫で外傷から長時間を経て増大してきたものは画像診断上,悪性軟部腫瘍との鑑別が困難である.今回,われわれはMRIにおいて悪性軟部肉腫と鑑別を要した異物肉芽腫の4例を経験した.それぞれ外傷歴があったが最長で37年,最短で4年を経過して発生しており,術前に異物が確認できた例はなかった.MRIでは比較的大きな腫瘤を形成し,多彩な画像所見を示したため悪性軟部腫瘍との鑑別が困難であった.いずれの症例も最終診断は病理組織検査に頼らざるを得なかった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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