icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科40巻7号

2005年07月発行

雑誌目次

視座

整形外科における再生医療とアンチエイジング

著者: 和田佑一

ページ範囲:P.743 - P.744

 日本や欧米などの経済先進諸国では,栄養補助食品の市場が急拡大し,高齢化の進展とともに健康ブームは高まるばかりである.こうした背景のもと,近年,細胞の分化誘導の進歩や細胞増殖因子の同定が進むにつれ,先端医療技術は再生医療という新たな分野を生み出し,これに対する高齢者と高齢者市場を中心とした社会からの期待は大きいように思われる.

 本誌40巻3号で帖佐悦男先生(宮崎大学)がご指摘のように,整形外科の分野でも運動器にかかわるすべての組織の再生が試みられている.私は恩師である守屋秀繁先生(千葉大学)のご指導のもと,スポーツ外傷に対する治療手段の1つとして15年ほど前から半月板と関節軟骨の培養や移植の研究を行っているが,一般の方からの質問は高齢に伴う変性の治療に関するものが大多数であるのが実際である.

論述

整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問表(BS-POP)―妥当性の検討

著者: 渡辺和之 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一 ,   丹羽真一 ,   増子博文

ページ範囲:P.745 - P.751

 われわれは,整形外科患者に対する精神医学的問題を評価するための簡易質問表(BS-POP)を作成した.今回,BS-POPの質問表としての妥当性を,MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)と比較して検討した.BS-POP医師用はMMPIの心気症尺度とヒステリー尺度と相関があり,BS-POP患者用はMMPIの心気症尺度,抑うつ尺度,およびヒステリー尺度と相関があった.これらの結果からBS-POPは,精神医学的問題を評価する妥当性を有することが証明された.

胸腰椎部骨粗鬆症性脊椎破裂骨折に対するハイドロキシアパタイトを用いた局麻下経皮的椎体形成術

著者: 浦山茂樹

ページ範囲:P.753 - P.762

 胸腰椎部の骨粗鬆症性脊椎破裂骨折に対し,整復後に骨量が著しく減少した椎体内前方部にハイドロキシアパタイトを充填し,1~6年(平均2.2年)追跡した.対象は25例で,24例が骨癒合し,体動時腰痛は27週以内に全例で消失した.椎体前方圧縮率は術前中央値48%であった.術直後5%にまで改善したが最終観察時19%になった.脊柱管内陥入骨片占拠率は術前中央値18%が最終時10%となり,占拠率20%以上の新鮮例がよく回復した.腰痛は早期に消失し,椎体圧縮率や脊柱管面積は改善し,本法は骨粗鬆症性破裂骨折に有用な方法と思われる.

整形外科/基礎

In vivo 3次元腰椎運動解析―腰椎回旋に伴うカップリングモーション

著者: 藤井隆太朗 ,   向井克容 ,   細野昇 ,   坂浦博伸 ,   石井崇大 ,   岩崎幹季 ,   菅本一臣 ,   吉川秀樹

ページ範囲:P.763 - P.769

 In vivoでの3次元腰椎回旋運動解析は,従来の方法では高精度な解析は困難であった.今回,われわれは3D-MR画像を用いた新しい非侵襲的3次元動態解析システムを使って,体幹回旋時の腰椎3次元運動を解析したので報告する.各椎間の平均回旋角度は片側1°~2°であった.腰椎の回旋運動はL1/2~L4/5において回旋と反対方向の側屈,T12/L1とL5/S1において回旋と同方向の側屈を伴っていた.また腰椎の回旋はL1/2~L5/S1で前屈を伴い,T12/L1で後屈を伴った.われわれの解析結果はin vivoでの2方向X線撮影を用いたPearcyらの報告と同じ傾向であったが,in vitroでの新鮮屍体を用いたPanjabiらは下位腰椎(L4/5,L5/S1)では回旋と同側方向への側屈を伴ったとしており,L4/5においてPanjabiらの結果とは異なっていた.

調査報告

交通事故によるCRPS(complex regional pain syndrome)の判例検討

著者: 小久保亜早子 ,   山内春夫

ページ範囲:P.771 - P.777

 CRPS(complex regional pain syndrome)に関する交通事故の損害賠償判例18例を賠償科学的に分析した.後遺障害は重く(14級から5級),賠償額は高額なもの(平均1704万円)になっていたが,6例は心因的素因減額をされていた.診断までの期間は平均8カ月かかっており,6例は症状固定後に診断されていた.CRPSの診断を争点とした例は8例,うち3例は鑑定によってCRPS診断を否定されていた.CRPSは早期治療が重要な疾患なので,当初の診断はoverdiagnosisでもよいが,加害者側の理解を得て被害者の心因的要素によるCRPSの悪化を防ぐためには,骨シンチグラフィーや皮膚血流量などの客観的基準による診断を推奨する.

器械

Pin-sleeve systemを用いたtension band wiring法の経験

著者: 武村康 ,   江成勝 ,   朝倉靖博 ,   永井英 ,   山口重貴 ,   権藤宏

ページ範囲:P.779 - P.783

 目的:Tension band wiring法は骨端部の筋,靱帯付着部の骨折に対する優れた骨接合法として広く普及している.しかし,内固定材による様々な合併症の問題は未解決であり,治療に難渋することも少なくない.そこでわれわれはpin-sleeve systemを用いた骨接合術を行ったところ良好な成績を得たので報告する.対象:2001年2月から2004年5月までの間に当科においてpin-sleeve systemを用いて手術を施行した症例は肘頭骨折4例,足関節果部骨折15例,および膝蓋骨骨折5例であった.結果:X線学的評価では全例骨癒合は良好に得られた.また,pinの逸脱は1例も認めなかった.結語:Pin-sleeve systemは有用なimplantと思われた.

追悼

津山直一先生を悼む

著者: 中村耕三

ページ範囲:P.784 - P.785

 東京大学名誉教授津山直一先生が2005年2月5日逝去されました.先生は神戸のお生まれで甲南高等学校から東京帝国大学に進まれ,1946年に医学部医学科を卒業,翌年東大病院整形外科副手,ついで文部教官助手になられました.1954年に東京医科歯科大学整形外科助教授となられ,55年にイギリス,56年にドイツへ留学されました.1958年に東大に戻られ,東大病院分院に整形外科を開設されました.

 1965年,故三木威勇治名誉教授の跡を継がれ,整形外科学講座の第4代主任教授となられました.1972年からは東大病院リハビリテーション部の部長を併任されました.先生は学部学生は無論のこと,整形外科学教室,リハビリテーション部において,教育,指導に熱心にあたられ,1984年に定年退官されるまでの19年間に多くの人材を育てられました.

連載 整形外科と蘭學・14

大江医家と栗崎流免許

著者: 川嶌眞人 ,   カトリーナ・シバタ

ページ範囲:P.786 - P.789

■大江医家

 モラロジーの創立者,廣池千九郎は慶応2年(1866)大分県中津市に生まれ,若いころは歴史家を志していた.中津城五代目の藩主 奥平昌高は藩の儒学者倉成龍渚の提言を入れて,寛政2年(1790)に藩士の文武修練の場として進脩館という学校を設立した.この学校で学んだ多くの藩士や医師がその後に蘭学者として活躍することになったが,明治4年(1871)の廃藩置県に伴い,廃校の憂き目に会い,和漢の蔵書数千部は中津高等小学校に移管されていた.廣池千九郎は明治18年(1885),2月(19歳)より6年間にわたってこれを読破し,明治24年(1891)には「中津歴史」を刊行した.

臨床経験

腰椎変性すべり症に対するpedicle screw併用後側方固定術の長期成績

著者: 森英治 ,   芝啓一郎 ,   植田尊善 ,   大田秀樹 ,   加治浩三 ,   弓削至 ,   河野修

ページ範囲:P.791 - P.798

 腰椎変性すべり症に対するpedicle screw併用後側方固定術後9年以上経過し,直接検診できた31例(男10例,女21例,平均年齢59.8歳)を対象として長期成績を調査した.骨癒合率は100%であったが,術後得られた矯正位は保持されていなかった.平均改善率は54.1%であった.良好な成績を維持した例以外では成績低下因子として隣接高位問題があり,再手術を要した6例(再手術前平均改善率10.6%)と隣接関与症状あり7例(平均改善率24.2%)がみられ,小さな前弯位や後弯位固定角,既存狭窄状況の関与が示唆された.

L5-S1椎体骨棘を伴った椎間孔外狭窄に対する後方除圧術の成績

著者: 松本守雄 ,   千葉一裕 ,   石井賢 ,   小川祐人 ,   高石官成 ,   中村雅也 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.799 - P.803

 L5-S1椎体骨棘を伴った椎間孔外狭窄症例に対する顕微鏡あるいは内視鏡を用いた後方除圧術の成績について検討した.対象は8例(男6例,女2例,平均年齢61歳)で,全例強度の下肢痛を呈していた.手術は後方からの仙骨翼部分切除を行った.5例は顕微鏡下に,3例は内視鏡下に手術を行った.全例で術後下肢痛の消失あるいは軽減が得られたが,顕微鏡下に手術を行った1例で再発を生じ,後方除圧固定術が追加された.明らかな手術合併症は認めなかった.L5-S1椎体骨棘を有する椎間孔外狭窄症例に対する後方アプローチによる仙骨翼部分切除は,十分な除圧範囲の確保に留意すれば,低侵襲で有用性の高い手術法と思われた.

高齢者の足部に発生する脆弱性骨折の特徴

著者: 松尾真二 ,   伊藤和生 ,   鍋田裕樹 ,   濱田一範 ,   嘉野真允 ,   花岡秀人 ,   山下敏彦

ページ範囲:P.805 - P.810

 高齢者の足部に発生する脆弱性骨折は,早期診断が難しく見逃されることが多い.われわれは,足部の脆弱性骨折8人,10例の臨床像をまとめた.

 1)全例女性で,平均年齢72.8歳であった.

 2)10例の内訳は,踵骨5例,中間楔状骨2例,立方骨1例,舟状骨1例,外側楔状骨1例であった.

 3)病歴および理学所見には,本骨折を疑わせる重要な特徴があった.

 4)全例に原発性骨粗鬆症の合併を認めた.

 MRIは,本骨折の早期診断に非常に有力であった.高齢者が原因不明の足部痛を訴えた場合,脆弱性骨折は鑑別診断の1つとして重要である.

症例報告

尺骨急性塑性変形に伴う橈骨頭脱臼の1例

著者: 辻井雅也 ,   飯田竜 ,   高北久嗣 ,   畠中節夫 ,   松本衛 ,   浦和真佐夫 ,   細井哲 ,   平田仁

ページ範囲:P.813 - P.817

 われわれは比較的稀な尺骨の急性塑性変形を伴う橈骨頭脱臼の1症例を経験した.症例は7歳,女児で主訴は左肘関節痛であった.転倒した際に肘関節伸展位で手掌をついて受傷し,X線像にて橈骨頭脱臼を認めた.また,前腕に疼痛は認めなかったが,前腕X線像にて尺骨のacute plastic bowingを認めた.橈骨頭脱臼は徒手整復にて容易に整復され,再脱臼も認めなかったため保存的治療とし,経過は良好である.

肝膿瘍,腹壁膿瘍に化膿性椎間板炎,腸腰筋膿瘍を合併した関節リウマチの1例

著者: 山中一 ,   宮本和寿 ,   後藤憲一郎 ,   村田泰章

ページ範囲:P.819 - P.822

 肝膿瘍,腹壁膿瘍に化膿性椎間板炎,腸腰筋膿瘍を合併した関節リウマチ(RA)の1例を経験した.症例は72歳のRAの男性.右下腹部の発赤,熱感,右大腿部痛が出現した.CT,MRIにて肝膿瘍,腹壁膿瘍,両側腸腰筋膿瘍,L3/4の化膿性椎間板炎を認めた.経皮的ドレナージを5回行ったが,起炎菌が同定されず,徐々に全身状態が悪化し,肺炎にて死亡した.Compromised hostの場合,膿瘍治療において,全身状態を考慮しながら,より早期に積極的な観血的治療が必要な場合もあると考えられた.

しびれを主訴とした肘窩部ガングリオンによる橈骨神経麻痺の1例

著者: 東航 ,   井上秀也 ,   横田直正 ,   清水直史

ページ範囲:P.823 - P.826

 上肢のしびれを主訴に受診した場合,ときに漫然と経過をみることがある.症例は38歳,男性.主訴は,突然発症した前腕から手指のしびれであった.某医で頚椎MRIと頭部CTを行ったが,異常がなく当院神経内科を紹介され受診予定であった.受診前日,本人が肘窩部の腫瘤に気付き,当科でガングリオンの診断後手術を行い,速やかに症状が改善した.肘窩部でのガングリオンによる橈骨神経麻痺の報告はほとんど手指伸展障害を主訴としていた.本症例のように,しびれを主訴とした肘窩部ガングリオンの報告は少なかった.

腓骨神経麻痺と膝外側側副靱帯不全を伴った特発性近位𦙾腓関節亜脱臼の1例

著者: 相木比古乃 ,   大野和則 ,   山下敏彦

ページ範囲:P.827 - P.831

 特発性近位𦙾腓関節亜脱臼に腓骨神経麻痺と外側側副靱帯不全を合併した症例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で膝外側の痛みと下腿のしびれ感を主訴に来院した.ストレステストで近位𦙾腓関節前方不安定性および膝外側不安定性がみられた.膝腓骨神経딵離術,腓骨骨幹部骨切り術,近位𦙾腓関節固定術を行い自覚症状は消失した.しかし初回手術で骨癒合が得られず再手術を要した.近位𦙾腓関節固定術においては強固な固定性を得るため固定材料や固定方法,外固定期間などを慎重に検討する必要がある.

高ALP血症を呈した原発不明播種性骨髄癌症の1例

著者: 須佐美知郎 ,   穴澤卯圭 ,   矢部啓夫 ,   森岡秀夫 ,   森井健司 ,   渡部逸央 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.833 - P.837

 骨盤の造骨性変化,貧血,ALP高値を呈し,生検後,急速にDIC(disseminated intravascular coagulation)が進行した播種性骨髄癌症の1例を経験したので報告する.症例:58歳,男性.他院でALP高値,骨盤の造骨性変化,骨シンチグラムでびまん性の集積像を指摘された.腸骨より生検術を施行したところ,貧血と血小板減少が急激に進行しDICに移行して死亡した.播種性骨髄癌症は,一般的に腰背部痛,貧血,血小板減少を特徴とし,高ALP血症を呈する場合もある.原因不明の腰背部痛に貧血,血小板減少,高ALP血症を認めた場合,播種性骨髄癌症も考慮すべきと考えた.

腰仙部移行椎の横突起による神経根障害の治療経験

著者: 辻王成 ,   鈴木裕彦 ,   吉野興一郎 ,   大長省博

ページ範囲:P.839 - P.843

 腰仙部移行椎の横突起による神経根障害の1例を経験した.症例は74歳,女性で左殿部から左下腿後面痛を主訴で受診した.理学所見では左S1神経根障害を呈した.全脊柱撮影にて,腰仙部移行椎,仙骨翼と移行椎横突起との関節面形成を確認した.神経根造影にて左側に移行椎椎間孔外で,移行椎神経根が圧迫されている所見を認め,椎間孔外での神経根障害と考え手術を施行した.神経孔外の神経根を確認したところ,頭側から横突起骨棘による圧迫を認めた.術後早期に症状は消失した.本症例では神経根造影が診断に有用であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら