icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科41巻1号

2006年01月発行

文献概要

症例報告

壊死性筋膜炎の所見を認めなかった劇症型A群連鎖球菌感染症(TSLS/toxic shock-like syndrome)の1例

著者: 中西美紗1 横田和典1 下瀬省二1 越智光夫1 酒井浩2 出口奈穂子2 谷川攻一2 新田泰章3

所属機関: 1広島大学医学部整形外科 2広島大学医学部附属病院救急部・集中治療部 3済生会広島病院整形外科

ページ範囲:P.77 - P.81

文献購入ページに移動
 今回われわれは早期の減張切開によって救命しえた,壊死性筋膜炎を伴わない劇症型A群連鎖球菌感染症(TSLS)を経験したので報告する.患者は感冒様症状が出現した翌日にプレショック状態に陥り,当科ICUに搬送された.右下肢の壊死性筋膜炎が疑われ,緊急に減張切開を行った.手術中の所見から壊死性筋膜炎は否定されたが,術中採取した浸出液の培養でA群連鎖球菌が検出された.術後抗生剤を変更し,炎症所見,血圧の改善を認めた.本症例は壊死性筋膜炎の所見を認めないTSLSであったが,手術により病巣確認,減圧,検体採取ができ,その後の治療に役立った.また,下肢筋肉内圧上昇から生ずる二次障害を予防することができた.本症は特別な基礎疾患のない患者においても病態が急速に進行し,迅速な治療を行わなければ極めて致死率が高い疾患であるため,化膿性軟部組織炎に全身状態の悪化がみられた時点で早急に手術に踏み切ることが重要である.

参考文献

1)福田奈津恵,伴 政雄,花垣博史:毒素性ショック症候群.日形会誌23:721-726, 2003
2)原 久浩,臼井康雄,杉本 格・他:劇症型A群溶連菌感染症の2例.中部整災誌45:885-886, 2002
3)Kawaguchi T, Igaki N, Kinoshita S, et al:A new therapeutic strategy for streptococcal toxic shock syndrome:A key target for cytokines. Intern Med 42:211-218, 2003
4)三好 徹,内山竹彦:劇症型A群レンサ球菌感染症の発症機序について.臨床病理48:580-587, 2000
5)志関雅幸,戸塚恭一,内山竹彦:A群レンサ球菌感染症とスーパー抗原.臨床と微生物23:59-64, 1996
6)清水可方:激症型A群レンサ球菌感染症.治療80増刊:828-829, 1998
7)清水可方:激症型A群レンサ球菌感染症.逓信医学52:269-290, 2000
8)Stevens DL, Tanner MH, Winship J, et al:Severe group A streptococcal infections associated with a toxic shock-like syndrome and scarlet fever toxin A. N Engl J Med 321:1-7, 1989
9)The Working Group on Severe Streptococcal Infection:Defining the group A streptococcal toxic shock syndrome. JAMA 269:390-392, 1993
10)内山竹彦:スーパー抗原性細菌毒素と疾患.最新医学56:128-134, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら