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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科41巻12号

2006年12月発行

雑誌目次

視座

医療とは

著者: 宝住与一

ページ範囲:P.1241 - P.1242

 最近,福島県の産婦人科医逮捕事例,富山県射水病院の終末期患者の人工呼吸器を外した例,横浜堀病院の看護師問題に関する家宅捜索の件などは,以前なら何ら問題にならなかったことですが,最近は問題になりだしました.

 なぜ問題になりだしたか.これは,第1に患者さんと医師の信頼関係がうすれたこと,医療の透明化が中途半端なこと,患者さんの権利意識の高まりがあげられるかと思います.

誌上シンポジウム 肘不安定症の病態と治療

緒言 フリーアクセス

著者: 荻野利彦

ページ範囲:P.1244 - P.1245

 肩関節の前方不安定性anterior instability,多方向不安定症multidirectional instabilityや手関節での手根骨不安定症carpal instabilityという疾患名が一般的になってから随分時間が経過した.しかし,肘関節では不安定性,あるいは後外側回旋不安定性posterolateral rotatory instabiloityという用語がしばしば使われているが,肘不安定症あるいは肘関節不安定症という用語はそれほど耳にしないし,日本整形外科学会の用語集にもその記載がない.肘関節に不安定性を生じる疾患としては外傷による脱臼あるいは靱帯損傷がまず頭に浮かぶ.しかし,スポーツ障害や内反肘の長期観察例で肘関節の不安定性が生じることが明らかになり,O'Driscollらにより肘関節外側回旋不安定症という概念が提唱された.同時に,急性の靱帯損傷や慢性の靱帯不全を総称して肘不安定症と呼ぶようになってきている.

 肘関節外傷性脱臼に伴う肘関節内側側副靱帯損傷や,外反ストレスによる外傷性肘関節内側側副靱帯損傷については,損傷時に修復すべきか否かがしばしば問題になる.屈筋回内筋群の断裂を伴う場合は肘関節は高度の不安定性を呈することから,靱帯修復を含めた軟部組織の修復をすべきとの意見が多い.しかし,屈筋回内筋群の断裂を伴わない肘関節内側側副靱帯損傷や不全断裂を保存的に治療した場合の肘関節不安定性の残存する割合や程度は必ずしも明らかではない.

肘内側側副靱帯の機能解剖

著者: 小林明正 ,   二見俊郎 ,   森口尚生

ページ範囲:P.1247 - P.1250

 われわれは,医学生解剖実習用に供された日本人屍体の21肘を試料とし,肘内側側副靱帯の前斜靱帯(AOL),後斜靱帯(POL)および斜走線維(OF)の機能解剖を行った.年齢は77~98歳(平均86歳),男12肘,女9肘,右10肘,左11肘であった.AOLは全肘に存在した.走行形態は上腕骨内上顆基部前面から尺骨鉤状突起部内側前縁に付着する,比較的強靱な単一の索状線維束な組織として観察された.靱帯中央部での平均幅10.0mm,平均厚さ2.5mmであった.POLは全肘に存在し,走行は上腕骨内上顆基部側面でAOL付着部内側から起始し尺骨鉤状突起部内側後縁に停止する扇状を呈していた.その形態には個体差を認め,単一の線維束として観察されたもの15肘,2~3本の線維束のもの4肘,細かな線維束の集合体のもの2肘であった.靱帯中央部での平均幅9.7mm,平均厚さは1.9mmであった.OFはその存在が確認されたもの16肘であった.その走行はPOL尺骨付着部の外側付近から起始し,AOL尺骨付着部の内側付近に付着していた.

肘内側側副靱帯損傷―新鮮単独損傷例の治療

著者: 正富隆

ページ範囲:P.1251 - P.1255

 肘内側側副靱帯(MCL)は外反ストレスに対する第一制動要素として機能し,特に複合損傷においてはその機能が温存されているか否かにより治療法・方針が変わりうる重要な鍵となる靱帯である.しかしその重要性を思うあまり単独損傷においてさえ手術的加療を考慮されやすいのも事実である.下肢における側副靱帯の新鮮損傷は今や保存療法が原則であることから,筆者は肘MCL新鮮単独損傷に対し,保存療法を原則として治療に当たってきた.過去8年間の36例については,当初より3週間の外固定(肘屈曲60°前腕中間位)を施した32例全例について130°以上の屈曲,-10°以上の伸展を獲得し,従前の活動性に約半年で復帰し得た.肘MCL新鮮単独損傷の治療原則は保存療法としてよいと考えられた.

肘関節内側側副靱帯損傷―TJ screw systemによる陳旧例の治療

著者: 藤岡宏幸 ,   奥野宏昭 ,   田中寿一

ページ範囲:P.1257 - P.1260

 肘関節内側側副靱帯損傷に対して小関節の靱帯再建用interference screw(TJ screw,メイラ社製)を開発して靱帯再建を行っている.本法はガイドワイヤーとガイド糸にて移植腱に適切な緊張を加え,骨孔に引き込んだ移植腱を入り口にて皮質骨を介在させてTJ screwで固定する.このため,強固な初期固定力が得られ,移植腱を元の靱帯成分の走行に一致して再建できる.また,再建された靱帯の骨への付着部は組織学的に線維軟骨を介した形態をとる.

肘関節外側側副靱帯の機能解剖―輪状靱帯の組織学的検討

著者: 関敦仁

ページ範囲:P.1261 - P.1266

 肘関節外側側副靱帯は外側側副靱帯と輪状靱帯からなる複合体である.その靱帯結合部の組織学的特徴を把握し,役割について検討した.新鮮凍結保存屍体肘4肘を用いた.輪状靱帯外側部の組織像は,内層では密な線維構造が存在し,滑膜様細胞が点在した.中間層には輪状靱帯に沿う索状構造の横断面を認めた.また,遠位の筋線維が腱線維となり,その索状構造に融合する様子が観察された.中間層と外層で,外側側副靱帯に沿った索状構造を,輪状靱帯中程から滑膜襞を越えて近位部まで認めた.筋から伸びた腱組織が索状構造に融合する様子が観察された.中間層と外層で,外側側副靱帯に沿った索状構造を,輪状靱帯中程から滑膜襞を越えて近位部まで認めた.本結果から,輪状靱帯外側部は3層の索状構造が交錯し,さらに,回外筋腱が輪状靱帯外側部で線維を融合させていた.この結合部を通して,Y型の外側支持機構が回外筋起始腱により補強されていると考えられた.

外側側副靱帯損傷―新鮮例の治療

著者: 今谷潤也

ページ範囲:P.1267 - P.1272

 1991年にO'Driscollらによって肘関節後外側回旋不安定症(以下PLRI)の概念が報告されて以来,外側側副靱帯(LCL)の重要性が再認識されてきている.筆者は1997年にPLRIを呈したLCL損傷新鮮症例の詳細を初めて報告して以来,本不安定症に注目し治療を行ってきた.本稿では当科における新鮮肘不安定症症例の各靱帯の損傷状態を検討するとともに,外側靱帯損傷新鮮例の治療経験からPLRIの発生病態および治療方針について述べる.対象は当科で新鮮肘不安定症として加療された症例89例である.この中でLCL損傷を認めた症例は49例であり,このうちPLRIを呈した症例は10例であった.10例中8例(80%)の症例が内反肘もしくは生理的外反が失われた肘関節に発生していた.最終成績では手術症例で日整会肘関節機能評価法で平均97点とおおむね良好で,不安定性もなくPLRIテストも全例で陰性化していた.術前に損傷状態を正確に把握し,高度に損傷された症例では外側靱帯複合体を確実に修復し早期リハビリテーションを行うことが大切である.

論述

健常者に対する10秒テストの疫学調査―圧迫性頚髄症患者との比較

著者: 立原久義 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一 ,   大谷晃司

ページ範囲:P.1275 - P.1279

 1,168人の一般住民を対象に疫学調査を行い,加齢に伴う10秒テストの正常値の推移と,年代別カットオフ値を求めた.さらに,左右差の意義とテスト手技自体の再現性についても検討した.その結果,加齢に伴い10秒テストの実施可能回数は低下していた.年代別のカットオフ値は,30歳代では24回,40歳代では23回,50歳代では21回,60歳代では17回,70歳代では16回,80歳代では15回であった.左右差のカットオフ値は2.1回であり,頚髄症患者では約40%の症例に左右差が存在していた.10秒テストは,健常者と頚髄症患者に対して十分な再現性を有していた.

腰痛と腰椎変性所見の関連―疫学的検討

著者: 竹谷内克彰 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一 ,   大谷晃司

ページ範囲:P.1281 - P.1284

 2002年度福島県南会津郡舘岩村(現南会津町)の総合検診を受診した65歳以上の高齢者を対象に,問診により腰痛の有無,腰椎X線撮影により腰椎変性所見を評価し,それらの関連性を検討した.その結果,腰痛の有無との間に有意な関連が認められたのは腰椎前弯角とすべりの有無であったが,相関関係は小さかった.すなわち,腰痛の有無に影響を及ぼす因子として腰椎変性の関与は小さい.この事実は,器質的要因以外の因子が腰痛に関与している可能性を示唆している.

手術手技/私のくふう

偽関節に対する交差骨切り術

著者: 渡辺雄 ,   工藤勝司 ,   大田博人 ,   達城大 ,   松元征徳 ,   山田泰之 ,   本部浩一 ,   江夏剛

ページ範囲:P.1287 - P.1295

 われわれは25症例27骨の偽関節(遷延治癒も含む)に対して偽関節部を交差する骨切り術(cross osteotomy,以下CO)を行うことにより全例に骨癒合を得ることができた.COは従来の偽関節手術に比べて手術手技が簡単で骨癒合期間も新鮮骨折の骨接合術の時の骨癒合期間とほとんど変わらなかった.臨床成績には満足しているがCO後の偽関節部の仮骨形成の機序は明らかではない.

最新基礎科学/知っておきたい

Toll-like Receptor

著者: 高木理彰 ,   高窪祐弥 ,   玉木康信

ページ範囲:P.1296 - P.1298

 生体防御を司る免疫系には,病原体など外界異物の生体内への侵入を非自己として認識し排除する機能がある.免疫系は獲得免疫と自然免疫に大別される.脊椎動物は獲得免疫機構を備える.獲得免疫に関する研究からは抗原を非自己として認識するT細胞やB細胞の存在が明らかとなった.さらにその抗原受容体としてT細胞受容体,免疫グロブリンがそれぞれ同定されて,その認識機構が明らかにされてきた.獲得免疫の研究は長らく免疫学研究の主役でもあった.一方,獲得免疫を持たない無脊椎動物や植物は自然免疫のみで病原体など非自己を認識し,それを排除するシステムで身を守っている.1989年,Janeway5)は哺乳類の自然免疫にも非自己を認識する受容体があることを予想した.Lemaitreら8)によってショウジョウバエの初期発生過程の形態形成に関与する因子としてクローニングされた受容体Tollが真菌感染防御に必須であることが1996年に明らかになった.ショウジョウバエは自然免疫しか持たない.ついで1997年にTollのホモログが哺乳類に同定され,Toll様受容体(Toll-like receptor,TLR)と命名された9).このような過程を経てTLRの免疫応答への関与が次第に明らかとなっている.

 哺乳類のTLRは病原体由来の種を超えて保存された抗原を認識して宿主の自然免疫応答を誘導する1).現在,哺乳類では13種類のTLRが報告され,樹状細胞(dendritic cell:DC)やマクロファージなどの自然免疫系の細胞に発現するとされる11).TLRの細胞表面や小胞体の膜外領域にはロイシンに富んだ塩基配列の繰り返し部分があり病原体などの分子パターンを認識している.また細胞内領域にはインターロイキン(IL)-1受容体の細胞内領域と相同性の高い領域を有し,Toll/IL-1 receptor(TIR)ドメインと呼ばれている.現在,TIRドメインを有する5種類のアダプター分子,MyD88,TIRAP,TRIF,TRAM,SARMが知られている.その下流のシグナル伝達経路もIL-1受容体と同様の分子によって担われることが知られ,TLRは様々な微生物の特異的な構成成分を認識して細胞内シグナル伝達経路を活性化する.TLRにより開始されるシグナル伝達はcaspase-1の活性化によるIL-1β,IL-18の産生,NF-κBの活性化に伴うTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン産生,さらにIRF(interferon regulatory factor)の活性化によってもたらされるⅠ型IFNの産生を誘導する(図1).このような反応はナチュラルキラー細胞やマクロファージの活性化を誘導して自己免疫応答を増強する.同時にⅠ型IFNの産生によって誘導される遺伝子群のなかの補助刺激分子CD80,CD86,CD40やIP-10などのケモカインリガンドの発現を誘導して引き続く獲得免疫応答にも影響する2)

国際学会印象記

第4回SICOT・SIROT国際カンファレンスに参加して

著者: 大西量一郎

ページ範囲:P.1300 - P.1301

 私は2006年8月23日から26日にかけて,アルゼンチン,ブエノスアイレス市内のHilton Buenos Airesにおいて開催されました,第4回SICOT(国際整形外科災害外科会議)・SIROT(国際整形外科災害外科基礎医学会)国際カンファレンスに参加させていただく機会を,この度いただきました.SICOTといいますと,整形外科領域では最も大きな国際学会の1つであることは,私がいうまでもありません.今回,私自身,このような大きな国際学会に参加させていただくことは初めてですし,しかも開催地は,はるかアルゼンチン,ブエノスアイレス.私のもっていたアルゼンチンのイメージと申しますと,ミュージカルや映画にもなった「エビータ」,タンゴ,そしてサッカーのマラドーナといったもので,このお話をいただくまでまったく関心などない国でした.日本から非常に遠いこの国へは,日本からの直行便はなく,成田からトロント,ワシントンを経由して入国し,帰路はサンパウロ,フランクフルトを経由して中部国際空港に戻るという,合計40時間以上にわたる空の長旅となりました.このような飛行機を乗り継いでの1人での海外旅行の経験は全くなく,正直不安もありましたが,大学卒業旅行に行けなかった私にとっては,15年遅れの憧れの卒業旅行といった気分で,非常に楽しみにしておりました.

 8月20日に成田を出発し,トロントへ到着.トロントのホテルで1泊して,ワシントン経由で,ブエノスアイレス空港に到着いたしました.ブエノスアイレスは日本とは逆で,季節は冬で,コートが必要という情報を得ておりましたが,思ったより暖かく,過ごしやすい気候でした.手に入れたガイドブックには,ブエノスアイレスは治安があまりよくないから気をつけろと記載してありましたが,はじめてみる異国の景色にそのような不安を感じることはありませんでした.夜になって,すでに現地入りしていた彦根市立病院の小川先生と食事をしながら情報収集をしたのですが,この国の人は野菜をあまり食べないようで,ステーキの1人分がとても大きく,味付けは塩コショウのあっさり目で,ビールはアルコールが入っていないではと思えるほどで,酒に弱い私でも全く酔えませんでした.

連載 日本の整形外科100年 11(最終回)

わが国の整形外科の展望

著者: 廣谷速人

ページ範囲:P.1302 - P.1306

はじめに

 わが国の大学に初めて整形外科学教室が設立されて今年で100年が経過し,日本整形外科学会(日整会)が学術集会として発足してから80年の歳月が過ぎた.この間さまざまな苦難を克服して大きく成長したわが国の整形外科は,今後どのような道を歩むのであろうか.ここに,いささかの提案を交えてその展望を述べたい.

臨床経験

腰椎・仙椎部巨大神経鞘腫の治療成績

著者: 福田健太郎 ,   中村雅也 ,   小川祐人 ,   高石官成 ,   松本守雄 ,   千葉一裕 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.1309 - P.1314

 腰椎・仙椎部巨大神経鞘腫12例の治療成績を検討した.JOAスコアは有意に改善したものの,膀胱直腸障害のスコアに有意な改善はみられなかった.Cellular type schwannomaと診断された1例を除き細胞増殖能は低く,再発をみていない.骨切除の範囲に関わらず脊柱再建は全例で行わなかったが腰椎のアライメントに大きな変化はみられていない.少ないながら再発例があるため,本腫瘍は多少骨切除量が大きくなっても全摘出すべきであり,その結果不安定性を来して,脊柱再建を余儀なくされる例は少ないと思われた.

閉経後骨粗鬆症におけるリセドロネート治療開始後2年間の骨吸収マーカーの変化

著者: 高田潤一 ,   井本憲志 ,   射場浩介 ,   上野栄和 ,   中島門太 ,   山下敏彦

ページ範囲:P.1315 - P.1318

 閉経後5年以上経過した骨粗鬆症患者40例を対象に,リセドロネート単剤治療後2年間の尿中Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)の変動について検討した.治療開始後3カ月でNTXは低下し,2年後のNTX値は,40例中35例が基準値内(9.3~54.3)を示した.今回の結果から,リセドロネート単剤投与は早期に骨吸収マーカーを低下させ,その後2年間にわたり骨代謝回転を安定した範囲内に維持する効果が示された.しかし,約13%の症例においては,2年後に基準値を逸脱する症例が見られ,慎重な経過観察と他剤との併用を考慮すべきである.

転移性胸椎腫瘍に対するsublaminar wiringによる後方固定術の成績

著者: 石井正悦 ,   和田英路 ,   石井崇大 ,   河井秀夫

ページ範囲:P.1319 - P.1322

 転移性胸椎腫瘍に対するsublaminar wiringによる後方固定術23例,24手術の成績を検討した.手術は後方除圧後,上下3椎弓をwireとrodで固定した.特にわれわれはT-saw tubeと糸を利用しwire設置を工夫している.14例が90日以上生存し,麻痺はFrankel AがCに,Frankel Cが1例を除きD以上に改善した.術前疼痛がDenis P4およびP5の例はすべて1段階以上の改善が得られた.平均307日の余命中の約84%の期間で座位が可能で固定効果が持続していた.

症例報告

低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病に伴う大腿骨頚部病的骨折に対する治療経験―1例報告

著者: 菅野伸樹 ,   菊地臣一 ,   青田恵郎 ,   矢吹省司

ページ範囲:P.1323 - P.1326

 低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病(X-linked hypophosphatemic rickets:以下XLH)は,わが国で最も頻度の高いくる病である.われわれは,XLHに合併したGarden分類でStage Ⅲの大腿骨頚部病的骨折に対し,観血的骨接合術を行った1例を経験した.症例は42歳の女性である.軽微な外傷後から左股関節痛を自覚して,当科を受診した.血液生化学検査と画像所見から,XLHに伴った大腿骨頚部病的骨折と診断した.活性型ビタミンD3投与による低リン血症の補正後に,コンプレッションヒップスクリュー(compression hip screw:CHS)による骨接合術を行い,術後7カ月の時点で骨癒合が得られた.術後3年の時点では,骨頭壊死や新たな骨折の発生も認められず,経過良好である.

胸髄腫瘍摘出後脊柱後弯症の1例

著者: 安藤圭 ,   川上紀明 ,   宮坂和良 ,   辻太一 ,   小原徹哉 ,   野原亜矢斗

ページ範囲:P.1327 - P.1331

 小児脊髄髄内腫瘍において椎弓切除,放射線治療を受けた後,成長に伴い後弯を主とした脊柱変形が進行していくことはよく知られており,その治療に困難を極める例も少なくない.筆者らは胸髄腫瘍術後高度後弯変形を経験し前後方矯正固定術を行った.症例は11歳の男児で,他院にて胸髄髄内腫瘍摘出の際,頚椎椎弓形成術,胸椎椎弓切除術が行われた.その後に腫瘍摘出前の胸椎後弯変形51°が8カ月で110°と進行した.術前にhalo牽引を行い神経学的に変化なく矯正が可能であることを確認し,二期的に後方矯正固定-前方固定術を行い,良好な結果を得た.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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