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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科41巻2号

2006年02月発行

文献概要

臨床経験

脊椎骨肉腫の“en bloc”切除標本から得た新知見―病理から手術へのフィードバック

著者: 村上英樹1 富田勝郎1 川原範夫1 土屋弘行1 山口岳彦2

所属機関: 1金沢大学医学部整形外科 2札幌医科大学病理診断学

ページ範囲:P.183 - P.189

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 3例の脊椎骨肉腫(脊髄を含めて切除した再手術例,脊髄を含めて切除した初回手術例,術前化学療法が奏効した初回手術例)を一塊として全摘出する機会を得た.その大割切除標本を病理学的に詳細に検討した結果,臨床的に有益ないくつかの知見を得ることができた.まず,硬膜は腫瘍浸潤に対する強いバリアとなっていたが,硬膜という強いバリアでも,腫瘍の脊柱管内への浸潤が長期にわたると,バリアは徐々に破壊されてくることが明らかとなった.さらに,骨肉腫では腫瘍と硬膜の間に偽被膜は存在せず,腫瘍は硬膜と癒着していた.よって実際の手術の際には,腫瘍を硬膜から慎重に剝離しなければ硬膜表面に腫瘍が残存することが懸念される.ただし,術前化学療法が奏効していた症例では,腫瘍の表面に反応性偽被膜が形成されており,手術での剝離は容易であった.また,初回手術後の瘢痕組織はバリアとはなっておらず,瘢痕内に腫瘍が浸潤していた.よって再手術の際には,できる限り瘢痕も含めた切除が必要であるといえる.脊髄に関しては,1カ月も完全麻痺が続いた場合には,病理学的に脊髄はすでに壊死に陥っており,回復の見込みは全くないことが証明された.

参考文献

1)平野朝雄,冨安 斉:神経病理を学ぶ人のために第4版,pp7-10,医学書院,東京, 2003
2)Kawahara N, Tomita K, Fujita T, et al:Osteosarcoma of the thoracolumbar spine:total en bloc spondylectomy. J Bone Joint Surg Am 79:453-458, 1997
3)Kawahara N, Tomita K, Tsuchiya H:Total en bloc spondylectomy:A new surgical technique for malignant vertebral tumors. In:Watkins RG(ed):Surgical Approach to the Spine, 2nd ed. pp309-325, Springer-Verlag, New York, 2003
4)Tomita K, Kawahara N, Baba H, et al:Total en bloc spondylectomy. a new surgical technique for primary malignant vertebral tumors. Spine 22:324-333, 1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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