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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科41巻8号

2006年08月発行

文献概要

誌上シンポジウム 腰部脊柱管狭窄症―最近の進歩

緒言 フリーアクセス

著者: 清水克時1

所属機関: 1岐阜大学整形外科

ページ範囲:P.852 - P.852

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 今回,「腰部脊柱管狭窄症」を誌上シンポジウムのテーマにとりあげたのには2つ理由があります.1つは整形外科を受診する腰部脊柱管狭窄症の患者さんが増えたことです.単に高齢者の数が増えただけではありません.この疾患がライフスタイルを制約し,人間の尊厳にかかわる問題として重要性が認識されるようになった,いいかえれば患者さんの意識が高くなったという面もあります.もう1つは,血流改善剤であるプロスタグランジンE1(PGE1)がこの疾患に有効であると認められるようになり,保存的治療に大きな武器が加わったことです.腰部脊柱管狭窄症の治療には,保存的治療と手術があります.まず保存的治療を行って効果が不十分な場合には手術を検討します.手術は保存的治療に比べ成功率が高く,効果も劇的ですが,稀に合併症が起こることがあります.一方でこの疾患では痛みとしびれが問題になるだけで,この疾患自体では命の危険はありません.また手術の時期に手遅れはなく,高齢でも手術は可能です.したがって治療法を決めるのは患者さん自身の人生に対する考え方です.保存的治療があまり効果がない場合,腰痛や下肢痛を我慢しながら制限された生活を送るのか,または自由に出かけたり旅行をしたりといった屋外の活動性を,手術によって獲得するのか,患者さん自身の選択が必要です.保存的治療で効果のない場合には早目に手術医に紹介し,手術に関する情報を患者さんに提示して理解を助けることが必要です.プライマリ・ケア医と整形外科専門医の病診連携を円滑にするため,腰部脊柱管狭窄症の診断サポートツールが考案されました.診断サポートツールの目的は,プライマリ・ケア医がこの疾患を効率的にスクリーニングし,早期診断を可能にすることです.このため,プライマリ・ケアの現場で簡便に入手できる病歴と診察所見のみで点数化を図っています.診断サポートツールで疑いありと判定された患者さんには,整形外科専門医による鑑別診断が必要です.そのため,このツールが普及すると腰部脊柱管狭窄症について,プライマリ・ケア医との病診連携がさらに進むと予想されます.

 この誌上シンポジウムが病診連携の主役となる整形外科の若手医師,一般整形外科医に役立つことを願っています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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