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視座
臨床研修制度のもたらしたもの
著者: 浜西千秋1
所属機関: 1近畿大学医学部・整形外科学
ページ範囲:P.947 - P.948
文献購入ページに移動日整会の紹介は日本(以下略)胸部外科学会,病理学会の後で,脳神経外科学会,医学放射線学会の前であった.私の大声に誘われたかたくさんの方が立ち見でも聞いておられたが,半数は暇な病院の関係者のようであった.私の講演では,研修医の売り手市場がいつまで続くと思うのか,なぜ研修システムが確立し,しかもこの3年間で改善が著しい大学病院管理型研修をまず選ばないで,こんな会場をうろうろしているのか,今春入局した研修1期生と同じ選択行動をとると将来,供給過多でダンピングの対象になること,これから一層需要が増す技術修練の必要な科が勧められること,専門医資格以外に博士号も希望する35%の研修医のために大学では社会人大学院入学の門戸が広がりつつあることなどを主に述べた.整形外科に関してアピールした点は,今後患者さんの数と医師の需要がどうしようもなく増加する,将来開業しやすい,リハビリテーション医やリウマチ医への内科的特化が可能,手術は守備範囲が広く型通りの術式が少ない,手術全てにアイディアと工夫が求められる,技術修練は慌てる必要がないなどで,そのほかにも思いつく限りを述べた.しかしいずれにしてもアメリカのような,医師が症例から医療事故顛末まですべてを含めた分厚い履歴書(CV)を作成し,個別にアタックしなければ就職もできない不信の状況が作られつつあること,その間隙を縫うように,市場原理の利ざやかせぎで,こういった斡旋企業がすでに100社以上も名乗りを挙げている状況は医療破壊以外の何物でもないこと,などを再確認させられた思いである.これまで長年積み上げてきた,個々の医師の技術を担保し,リスクマネジメントを行い,僻地医療を維持してきた,極めて精緻な医局の役割を瓦解させた責任はどこにあるのか.一挙に市場原理の渦中に放り出された研修医と病院の焦りと疑念,あるいは怒りが燃え上がっているようなフェア会場であった.
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