臨床整形外科42巻1号

2007年01月発行

誌上シンポジウム 変形性膝関節症―最近の進歩

疼痛の原因組織からみた変形性膝関節症の手術療法選択

著者： 佐粧孝久¹

所属機関： ¹千葉大学大学院整形外科

ページ範囲：P.29 - P.34

　変形性膝関節症の手術療法を選択する際に，どの組織が疼痛の原因となっているかを考慮し分類することにより，適切な治療法が選択できることを提案した．疼痛の原因となりえるのは半月板，軟骨デブリス，関節包など軟部組織および軟骨下骨である．特に軟骨下骨は進行例において疼痛の発現に関与しており，疼痛の原因自体ともなっていることを示した．したがって軟骨下骨に明らかな変化が出現しているような症例では手術時に軟骨下骨を切除することになる人工膝関節置換術が適切な治療法であるといえる．また，軟骨下骨の変化が少ない例ではそれぞれの組織に対応した手術法を選択することも念頭に置くべきと考えた．さらに，軟骨下骨に生じる病理学的変化はMRIで捉えることが可能であり，変形性膝関節症の重症度の指標となっていることを示した．この指標に基づく治療法選択も将来的には可能となることも併せて示した．

参考文献

1）Arnoldi CC, Djurhuus JC, Heerfordt J, et al：Intraosseous phlebography, intraosseous pressure measurements and 99mTC-polyphosphate scintigraphy in patients with various painful conditions in the hip and knee. Acta Orthop Scand 51：19-28, 1980

2）Hannan MT, Felson DT, Pincus T：Analysis of the discordance between radiographic changes and knee pain in osteoarthritis of the knee. J Rheumatol 27：1513-1517, 2000

3）Moriya H, Sasho T, Sano S, et al：Arthroscopic posteromedial release for osteoarthritic knees with flexion contracture. Arthroscopy 20：1030-1039, 2004

4）Ogino S, Sasho T, Suzuki M, et al：Origin of osteoarthritic knee pain-immunohistochemistrical analysis of subchondral bone. Trans ORS 31：246, Chicago, IL, 2006

5）Saito T, Koshino T：Distribution of neuropeptides in synovium of the knee with osteoarthritis. Clin Orthop Relat Res 376：172-182, 2000