icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科42巻10号

2007年10月発行

雑誌目次

視座

一開業医から見た日本の整形外科医療の現状と今後

著者: 川岸利光

ページ範囲:P.959 - P.960

 日本の整形外科学,整形外科医療は大学を中心として卓越した識見を持った,多くの指導者の努力と活躍により大きく進歩し,守備範囲を広げ発展してきた.運動器疾患の専門医として診断から治療そして社会復帰のための運動器リハビリテーションまで一貫して担い,より多くの達成感が味わえるなど,整形外科は他科に見られない多くの魅力が一杯ある.また多くの疾患の最終の治療は手術であるが,脊椎や関節,手の外科など手術治療結果が良好で,患者満足度も高く感謝と信頼を得ているので,それぞれの専門を極めれば整形外科専門病医院として開業することもできる.

 私が整形外科に入局したのは,当時弘前大学教授だった東野修治先生を尊敬し,また教室の多くの先輩に魅力を感じたからである.その後,大学病院や地元の県立病院に14年間勤務した後に開業し20数年が過ぎたが,常に変わらぬ開業医の多忙さを実感している.開業当時は救急体制が整備されていなかったため,交通事故や労災に遭った患者が多く,第一線の臨床医として毎日早朝から晩まで様々な患者を診ていた.開業数年後には専門の脊椎疾患の手術患者が増え午後は専ら手術に入り,夜仕事が終わってから院長としてなすべきマネジメントや外部から依頼のある書類の作成をしてきたが,近年さらに医療安全にかかる会議への出席や提出書類の増加で,トイレに行く時間も惜しい.

誌上シンポジウム 外傷性頚部症候群―最近の進歩

特集にあたって

著者: 馬場久敏

ページ範囲:P.962 - P.963

 昨今のメデイアで話題になっているものに外傷性頚部症候群がある.1960年代に東北大学医学部 飯野三郎教授のグループがこの病態に光をあてられ,むち打ち損傷として広く社会に公表された.その結果,数多くの臨床研究が行われ幾多の知見も明らかになった.筆者が卒業し入局した金沢大学でも昭和40年代に高瀬武平教授の指導で,むち打ち損傷患者の髄液圧測定や皮電図研究が数多く行われたとの歴史を先日改めて伺った(平成19年7月30日,石川県交通保険医協会).その結果は「髄液圧が低下するエヴィデンスは得られなかった」と言うことであった.外傷性頚部症候群のケベック分類ではグレード0~Ⅱに相当するものがいわゆるむち打ち損傷であるが,その呼称は不適切であるとして頚椎捻挫や外傷性頚部症候群として公文書に記載するのが一般的である.

 外傷性頚部症候群は時に永続的あるいは時間軸で変移する多彩な病像を呈する.本邦においては年間20万人程もの人々が交通外傷や産業外傷などでこの傷病名を賦与されるとも言われている.病態の診断はケベック分類に則してなされることもあるが,実際の病状は決してそれに則しているわけではなく,病態の解析には整形外科学以外に神経精神医学,平衡感覚分析医学,cognitive neuroscience,加えて生体運動力学や行動心理学,交通安全医学,などをも含めた広領域研究が必要である.すなわち,病態解析の著しい困難性や医科学的アプローチを省略することなく,またいわゆる“compensatory disease”や“waste-basket syndrome”にカテゴライズしてしまうことをせず,きちんとした医科学的な基礎および臨床研究が必要である.

外傷性頚部症候群の症状の解析に関するmultidisciplinary approach

著者: 金岡恒治

ページ範囲:P.965 - P.968

 交通事故による頚椎捻挫受傷者の急性期症状の多くは自然に寛解していくが,約1割は慢性化し,多彩な症状を呈する外傷性頚部症候群(むち打ち症)に移行する.ここでは外傷性頚部症候群の症状について,急性期と慢性期症状に分け,それらの病態を解明するために行われているmultidisciplinary approachについて紹介する.

外傷性頚部症候群の生体力学的解析の進歩

著者: 小谷善久

ページ範囲:P.969 - P.975

 外傷性頚部症候群の病態を明らかにする目的で,ボランティア,屍体頚椎または全身屍体,ダミーなどを用いた高加速度衝突実験による生体力学的解析が行われている.近年それらの成果として,衝突時の頚椎異常動態や損傷組織候補の特定に関する様々な新知見が報告されている.頚椎動態では頚椎柱全体が伸展状態となる前の衝突後早期の段階で,下位頚椎のみが過前弯となることでC5-6付近の椎間損傷が発生する説が有力となっている.また同様の高加速度衝突において,下位頚椎の椎間関節包や椎骨動脈に生理的範囲を越えた伸長が起こることも報告されている.これら様々な頚椎構成要素に関する近年の生体力学的解析の進歩について総説を述べる.

外傷性頚部症候群のケベック分類からみた治療指針の樹立

著者: 川上守

ページ範囲:P.977 - P.981

 1995年にケベックむち打ち症関連障害特別調査団が作成した重症度分類は,頚部愁訴,理学神経学的所見,脊椎の構築学的異常の有無からなされている.神経所見を伴うGradeⅢや骨折や脱臼のみられるGradeⅣを除いたGrade 0からⅡがいわゆるむち打ち損傷である.どのGradeでも耳が聞こえない,めまい,耳鳴り,頭痛,記憶障害,嚥下障害,顎関節痛などの脳・自律神経系の多彩な症状が出現することを認めている.外傷性頚部症候群はこれら多彩な症状が伴う場合に一般に用いられることが多い.GradeⅠやⅡで頚部愁訴のみであれば一時的な症状であり,永続的な障害をほとんど残さず一定期間で問題なく回復する.また,ケベックガイドラインにそって治療可能である.しかしながら,多様な病態を有する外傷性頚部症候群では安心感の保証のみでは治療に難渋することが多い.多様な病態の解明とそれに沿った治療指針の樹立が望まれる.

外傷性頚部症候群と特発性低髄液圧症候群

著者: 遠藤健司 ,   山本謙吾 ,   内田健二 ,   高橋佳子 ,   吉村真奈

ページ範囲:P.983 - P.993

 近年,むち打ち損傷後に低髄液圧症候群類似症状が生じることが発表され,社会的に注目されている.従来より外傷後に類似症状が発生しているという報告はあるものの,「むち打ち損傷後に発生する低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」は,既存の「低髄液圧症候群」の概念を拡大していることや,病態に関する基礎的データは不十分であることから医学界で受け入れられていない.しかし,問題点を非難し続けるだけでは,遷延化するむち打ち損傷の解決にはならない.本稿では,従来からの特発性低髄液圧症候群と二次性低髄液圧症候群と,むち打ち損傷後に発生する脳脊髄液減少症について最新の知見を述べる.

外傷性頚部症候群の画像診断

著者: 松本守雄 ,   戸山芳昭 ,   千葉一裕

ページ範囲:P.995 - P.999

 外傷性頚部症候群の多彩な臨床症状の病態解明に種々の画像診断法が用いられている.単純X線は基本的な画像検査であり,骨傷の有無のスクリーニングに不可欠である.X線側面像で明らかとなる頚椎弯曲は病的意義を持たないことが多い.MRIは軟部組織の描出に有用であり,靱帯損傷が描出される場合もあるが,稀である.椎間板変性所見は多くの場合,急性の外傷性変化ではなく加齢変化を反映している.以上のことから,急性期の本症に対するMRIの診断的意義は限定的と考えられる.認知障害などの脳障害の把握に,最近ではsingle photon emission computed tomography(SPECT)やポジトロン断層法(PET)などが用いられているが,まだその診断的価値については明らかではない.

 今後,外傷性頚部症候群の病態解明における種々の画像検査法の診断的意義を改めて検討していく必要がある.

外傷性頚部症候群の治療

著者: 田口敏彦 ,   村上英樹

ページ範囲:P.1001 - P.1005

 外傷性頚部症候群に対しては,様々な治療法が行われており,いまだ確立されていないのが現状である.本症の多くは適度な期間の鎮痛剤やNSAIDsと適切な経過観察とで対応できるが,慢性化したものでは,治療に難渋することも事実である.本症の治療は様々な治療法を組み合わせて行われていることが多く,個々の治療法の有効性について検討することは非常に困難である.また,本症のように画像所見に乏しく疼痛が主体となる疾患では,EBMを求めるには難しい点も否めない.したがってここに紹介した論文のエビデンスレベルは必ずしも高くはないが,貴重な臨床研究を総括することは日常臨床においても,今後の治療法の進歩においても有用であり意味のあることと考え,外傷性頚部症候群の治療の検討を行った.

調査報告

腰部脊柱管狭窄に伴う自覚症状―術前後での変化 前向き研究

著者: 加藤欽志 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一 ,   大谷晃司

ページ範囲:P.1007 - P.1011

 腰部脊柱管狭窄で手術を行った55例に対し,安静時症状と歩行で誘発される症状の改善度の差異について検討した.術後1年での安静時症状の残存率は57%であり,歩行時出現症状の残存率は31%であった.症状別では,下肢のしびれが残存しやすい傾向にあり,特に,安静時の下肢のしびれは腰痛と下肢痛に比して残存しやすかった.症状の残存に関与する因子は手術時年齢と馬尾障害の有無であった.腰部脊柱管狭窄の手術時には,術前に患者に対してこれらの点について十分に説明する必要がある.

頚髄症における術前の頚部愁訴―前向き研究

著者: 畑下智 ,   菊地臣一 ,   矢吹省司 ,   大谷晃司 ,   岩渕真澄

ページ範囲:P.1013 - P.1019

 圧迫性頚髄症に対し手術を施行した59名の,術前の頚部愁訴をNeck Pain and Disability Scaleを参考にして,前向きに調査した.術前から何らかの頚部愁訴を有する症例が80%に認められ,その頚部愁訴の程度は,正常人と比較すると明らかに高度であった.しかし,圧迫性頚髄症における術前の頚部愁訴の程度は,JOAスコアといった従来の頚髄症の重症度の評価法とは有意な相関関係を見出せなかった.圧迫性頚髄症の症例では,術前より何らかの頚部愁訴が存在することが多く,その評価方法にはJOAスコアとは異なった,独立した評価方法が必要である.

連載 臨床研修医のための整形外科・10

整形外科外来で出会うその他の重要疾患

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.1020 - P.1025

 これまで外来で整形外科医が出会う疾患について診察室編(1.頚椎疾患,2.肩関節疾患,3.腰椎疾患,4.膝関節疾患,5.肘関節疾患,6.足と足関節疾患,7.手の外科疾患,8.股関節疾患,9.骨・軟部腫瘍)で説明してきました.今回は,重複する点があるかもしれませんが,言い忘れたことや,ぜひ知っていてもらいたい疾患について記載します.

医者も知りたい【医者のはなし】・26

大村益次郎(1824-1869)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1026 - P.1030

まえがき

 その昔,司馬遼太郎が明治維新のときに官軍側で大活躍した医師・大村益次郎のことを書いた「花神」を読んだことがある.彼は長州出身の蘭医学者であったが,ときの流れで最後は西郷隆盛とともに,倒幕の総帥の1人になり,陸軍最高責任者として活躍した.今回9月の大阪での学会のとき,明治2年に益次郎が京都で怪我をして運ばれた大坂仮病院跡,恩師緒方洪庵のお墓の横に眠る益次郎の足塚,益次郎の遺言でできた大阪府病院(大阪大学医学部の前身)と陸軍医学校跡を訪ねた.花神とは中国の言葉で「花咲爺」のことである.明治維新の時代に突如現れ,維新を成功させ(枯れ木に花を咲かせ),そして去っていった大村益次郎を表現するのに,最適の言葉と司馬遼太郎が使った.

確認したいオリジナル・9

Baker囊胞とは膝窩部の囊胞のことか?(1)

著者: 鳥巣岳彦

ページ範囲:P.1031 - P.1031

 “関節液が貯留し関節内圧が高まると,関節液は交通路が存在する関節近傍の滑液包に流入する.また,関節包の抵抗減弱部より関節滑膜が脱出し滑液囊胞を形成する場合がある”.Bakerに不朽の名声を与えた原著(1877)の題名が“On the formation of synovial cysts in the leg in connection with disease of the knee joint.”であったがゆえに,Baker 囊胞と言えば膝関節の膝窩囊胞と解釈されている.素描入りの8症例報告であるが,その一症例を示す(図).

 その8年後,Bakerは新たな論文(1885)を発表し,関節腔からの滑液包への関節液の流入は膝関節以外に,肩関節,肘関節,股関節,足関節でも認められたとそれぞれの症例を報告し,次のように結んでいる.

小児の整形外科疾患をどう診るか?─実際にあった家族からの相談事例に答えて・6

単純性股関節炎

著者: 亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.1032 - P.1033

相談例「単純性股関節炎」

 初めまして,先日6歳になったばかりの娘のことでご相談させてください.

 走る時に左足を引きずるような感じになりました.つまったように走ります.歩くときは気が付きません.整形外科で,レントゲンをとってもらい,骨盤にも,骨にも異常はありませんでした.足の長さも同じでした.「様子を見ましょう」ということです.

 しかし,幼稚園でマラソンがあり,やはりうまく走れず,先生や他のお母さんから,「足が痛いの?」と聞かれました.左足でケンケンをすると,バランスを崩します.少ししか足を持ち上げられません.仰向けに寝て,両足を折り曲げて,伸ばすとき,私が両手で足の裏を押さえてみると,左足の力が弱いです.曲げるときには,股から外側に少し開いてしまいます.走るときは左足がやや遅くなり,左膝を前に出すとき上半身が前屈します.ハードルを飛ぶような感じです.正座はできます.屈伸などもゆっくりなら平気ですが,早くすると,左足が痛いといいます.小柄で9月時点で身長101.4cm,体重16.1kgだったのが,12月に103.7cm,体重16.5kgです.身長が急激に伸びたせいなのかわかりません.小児整形外科が近くにありませんので,心配になりご相談させていただきました.

臨床経験

縦割式椎弓形成術に用いたセラミックスペーサーの転位

著者: 海渡貴司 ,   細野昇 ,   金子徳寿 ,   行方雅人 ,   牧野孝洋 ,   冨士武史

ページ範囲:P.1037 - P.1043

 棘突起縦割式椎弓形成術を施行した86名を対象に単純X線,CTでの椎弓スペーサー(HA)の脱転,持ち上げた椎弓の術後位置変化,その危険因子を検討した.HAの42%では高さが,38%では回旋角度が変化し,34%では椎弓の開大角度が変化した.HAの高さ・回旋,椎弓の開大角度ともに変化の大きい群では術直後のHAの設置位置が棘突起の先端により近かった.これらの転位は4カ所の可動部位を持つ形成脊柱管の力学的脆弱性に由来しているものと推察された.HAの転位による神経症状の悪化は認めなかった.

症例報告

両側膝蓋骨形成不全に伴う恒久性膝蓋骨脱臼に対し両側内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)再建術を施行した1例

著者: 岡田尚之 ,   市川亨 ,   西脇正夫 ,   畔柳裕二 ,   米谷俊朗 ,   野村栄貴 ,   井上元保 ,   戸松泰介

ページ範囲:P.1045 - P.1050

 両側膝蓋骨形成不全に伴う恒久性膝蓋骨脱臼に対し両側内側膝蓋大腿靱帯(以下MPFL)再建術を施行した.症例は22歳の女性で,主訴は両膝関節痛・脱臼感であった.左大腿骨開放骨折を来し手術加療した際の単純X線写真で,右膝蓋骨完全欠損,左高度膝蓋骨低形成を認め,MRIで,両側に脱臼した膝蓋骨様組織を認めた.骨折治療後,症状が増強し改善なく,両側のMPFL再建術を施行した.人工靱帯でMPFLを再建したところ,術後経過は良好である.膝蓋骨形成不全に伴う膝蓋骨脱臼に対してもMPFL再建術は有効であった.

骨斑紋症の兄弟例

著者: 多喜祥子 ,   山崎征治 ,   今村進吾 ,   二井英二 ,   内田淳正

ページ範囲:P.1051 - P.1054

 斑点状骨硬化陰影を特徴とする極めて稀な骨系統疾患の1つである骨斑紋症の兄弟例を経験したので報告した.症例は,21歳の男性で,右手関節痛のため腱鞘炎と診断されたが,X線検査で,骨盤部・長管骨の骨端から骨幹端に多数の斑点状骨硬化像を認めた.骨斑紋症と診断し,兄と母に検査を行ったところ,兄にも同様の斑点状骨硬化像を認めた.骨斑紋症はほとんどが無症状であるため偶然に発見される場合が多い.常染色体優性遺伝とされているが,原因は不明である.通常は治療を必要とせず,予後は良好とされており,本症例も治療を必要としなかった.

先天性第5腰椎すべり症の1例―脊椎矢状面配列の変化

著者: 野原亜也斗 ,   川上紀明 ,   宮坂和良 ,   辻太一 ,   小原徹哉 ,   多々羅靖則 ,   安藤圭

ページ範囲:P.1055 - P.1059

 筆者らは,脊椎矢状面配列異常を来した先天性第5腰椎高度すべり症の症例を経験したので報告する.症例は8歳の女児で,dysplastic typeのすべり症を認め,腰仙椎は局所後弯を,胸椎は前弯位を呈していた.L5/S1単椎間後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)を施行し,slip angleは術前50°から術後24°に改善した.PLIFによる腰仙角の矯正により,胸椎は正常範囲内の後弯が形成された.先天性腰椎すべり症は,腰仙椎の後弯とそれに伴う胸椎前弯による脊椎矢状面配列の異常を引き起こし,すべりの矯正のみならず腰仙椎後弯の矯正が手術治療の鍵であると考えられた.

--------------------

あとがき フリーアクセス

著者: 富田勝郎

ページ範囲:P.1066 - P.1066

 いつの間にか暑苦しい酷暑も台風も過ぎ去り,さわやかな秋の日和となりました.今月号が皆さんの手に届くころには姦しかった参議院選挙も自民党総裁選もやや落ち着いて穏やかな政局となっているでしょうか.国会はマスコミに煽られず日本の舵取りとしてもっと大局に立って重要議題を議論してほしいものですが,唯一,期待をもたせてくれた話題は厚生労働大臣に舛添要一氏が任命されたことです.

 医療の現場は今,未来不安定なものである病気の治療を前にして,患者の過大な期待と医師本来の献身的な使命感が打ち砕かれそうな風潮との狭間で疲れ切っています.さらに医療費抑制政策をなんとか凌ごうとする必死の病院経営努力をあざ笑うかのように,医療制度も急激に地盤沈下しつつあります.「こんな医療でいいのか日本!」と,医師会側からも大学病院側からも,整形外科方面からも“生の声”を届けたい気持ちです.今の日本,健康は水と同じく確保されているかのように錯覚し,病気を治すのには車を直すよりも金をかけない…,医療費も安ければ医師の技量評価も安すぎます.もっと技量評価を正当に行い,医療の原価計算もやりなおして,報われるようにすべきだと思うのですが…,「現場は医療崩壊現象が起こっている」とおっしゃっている舛添氏のこと,“医療政策の流れ”の一部でも変えてほしい,と願ってしまうのは小生だけでしょうか.と思っていたところ早速,今月号の視座に「開業医から見た,日本の整形外科医療の現状と今後」という貴重な意見(川岸先生)が寄せられました.さっそく今月号を国会や舛添氏に届けたらいかがでしょうか.

 また,このところにわかにメディアで話題になっている「脳脊髄液減少症」に関係して,ついに外傷性頚部症候群の誌上シンポジウムとしてその具体的な姿が現されてきました.日整会,日本脊椎脊髄病学会などが努力して「真実は何か?」を追求し,冷静に立ち向かっている姿を感じます.

 そのほかいつもながら各分野,各切り口からの寄稿に感謝いたします.

 

 まあカリカリせずに食欲の秋,読書の秋,スポーツの秋を楽しみましょうか….

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら