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あとがき フリーアクセス
著者: 荻野利彦
所属機関:
ページ範囲:P.1164 - P.1164
文献購入ページに移動この雑誌の編集委員のお一人である糸満盛憲先生が主催された今年の東日本整形災害外科学会の特別講演で,宇沢弘文先生(東大名誉教授)の「社会的共通資本としての医療を現実のものとするために」という講演を聴く機会に恵まれました.医療の現場に市場原理主義が導入された結果,日本の医療がいま全般的危機に陥っている状態にあり,多くの医師やその他の医療従事者たちが志を守って,医の道を歩むことが極めて困難な状況に追いやられていることなどを話されました.講演の後の質疑では,医師がストライキでも行うと多くの人が問題に気づき解決に向かう可能性があるようなことも話されました.私が今月号のあとがきを書くことになっていたので,宇沢先生のお話について少し書こうと思って学会から帰ってきました.郵便物をみて,本号の視座で川崎協同病院の秋山典彦先生が宇沢先生の考えを文中で引用しておられるのを知りました.奇遇です.秋山先生が述べておられるごとく,医療の専門家である医師が科学的知見に基づいて医療政策に積極的に提案すべきであると思います.同時に医療機関が高い水準の医療を維持するためには少しお金がかかることを皆が知る必要があります.
本号には3編の論述,2編の臨床経験,5編の症例報告などの興味深い論文と連載などが載っています.その他に読み応えのある論文として腰野富久横浜市大名誉教授の変形性関節症の研究が掲載されています.また,新しい治療法として,肩関節前方脱臼に対する強内旋位固定法の論文が掲載されています.症例数は多くありませんが素晴らしい発想です.このような新しい試みが,安定した結果が出る治療法として検証され,広く用いられるようになるとよいなと思います.
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