icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科42巻12号

2007年12月発行

文献概要

書評

運動器の痛み診療ハンドブック―山下敏彦●編集 フリーアクセス

著者: 米延策雄1

所属機関: 1大阪南医療センター

ページ範囲:P.1201 - P.1201

文献購入ページに移動
 「人の痛みがわかる」.何気なく聞き流せば,もっともな慣用句である.しかし,アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』風に解説すれば,「医療従事者や政治家がしばしば口にする枕詞のひとつ.後ろに医療,教育あるいは政治などの言葉が続く.深い意味を持たない.マスコミ関係者は否定形を先の言葉に付け,罵りの意味を持たせる」とはならないか.感覚は生理学・解剖学の領域にあるが,知覚は精神・心理の領域にあり,したがって,「痛み」は極めて個人的であり,当然ながらわかり難い.それでも情緒の関係の中で,痛みの訴えを聞けば,それを傾聴し同情することで痛みをみる.しかし,医学の知識を持つわれわれは,痛みの訴えを解剖学,生理学の切り口からアプローチする.そして,ときにこのレベルで終わる.だが痛みを訴える患者は,検査を求めているのではなく,痛みに苦しんでいることをわかって欲しいのであり,ヘルニア摘出を求めているのではなく,手術をしてでも苦痛をなくして欲しいのである.

 本書の編者はシュバイツァー博士の言葉“「痛み」は,人間にとって「死」そのものよりも恐ろしい重圧である”を引いて,痛みの治療の重要さを強調している.運動器疾患の症候の多くは「痛み」である.しかし,機能の評価に重きを置いて,計れない「痛み」をしばしば軽んじていることはないだろうか.『運動器の痛み診療ハンドブック』〔山下敏彦(編)南江堂〕は整形外科における痛みの診療,そして研究の重要さを深く認識した医師が設立した「整形外科痛みを語る会」のメンバーが中心となって執筆されたものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら