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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科42巻9号

2007年09月発行

雑誌目次

視座

「捜査関係事項照会書」vs.“個人情報保護”

著者: 三河義弘

ページ範囲:P.841 - P.842

 多種多様な疾患を扱う整形外科診療において,治療した患者が犯罪と関わっている事例に少なからず遭遇する.とくに外傷例に多い.このような場合,通常最寄りの警察署から「捜査関係事項照会書」なる文書が送付されてきて,当該患者の外来,入院における詳細を微に入り細にわたって照会される.こちらは,まるで自らが罪を犯したかのような重い気持ちを抱きつつ,できるだけ正確な回答書を謹んで作成する.なんと言っても,警察からの照会なのだから.しかしながら「???」ちょっと待てよ,という場合がなきにしもあらず.以下に,私の所属する医師会関係の先生から提示された事例を紹介する.

 とある町で新生児の置き去りがあった.それで,警察官がその町のある産科医を訪れ,近々2カ月間に出産予定の妊婦で最近当該医院に来なくなった人の住所,氏名を知りたいと告げた.院長は,はたと考え込んでしまった.もちろん協力したいのは山々だが,例の,個人情報保護法の絡みでどうすればいいのかわからない.もしも提供すれば,警察はその人のところに行って,「お産したか」,「中絶したか」などを尋ねるだろう.中には,家族に知られたくない人もいるかもしれない.当然,その情報は当該医院から出たと患者さん達にはわかるだろう.すると,場合によってはその人達から,院長は「個人情報保護法」違反で訴えられるかもしれない.一応,警察官は「捜査関係事項照会書」を持参してきている.これには,司法警察員名で「捜査のため必要があるので,下記事項につき至急回答願いたく,刑事訴訟法第197条第2項によって照会します」と書いてある.

誌上シンポジウム 骨折治療の最新知見―小侵襲骨接合術とNavigation system

緒言 フリーアクセス

著者: 佐藤徹

ページ範囲:P.844 - P.844

 骨折治療における小侵襲手術療法は最小侵襲プレート固定法(MIPO法)に代表されるように,これまでの治療概念を大きく変えていくものです.大きく展開し,骨折部および骨周辺組織の血行を障害する従来のプレート固定法は合併症も多いことは知られていますが,骨折部の整復操作がうまくいかず,仕方なしに従来法を用いた経験をお持ちの先生も多いことと推察します.今回,田中 正先生にはMIPO法のポイントである観血的整復法についてご説明いただきます.

 骨盤骨折に対する従来の手術法は整形外科領域において最も困難な手術であり,術中出血を含めた合併症もしばしば問題となります.従来法からさらに一歩進んだ小侵襲手術は合併症を減少するためにぜひともマスターしたい方法であり,骨盤輪骨折,寛骨臼骨折に対する小侵襲手術法を澤口 毅先生にお願いしました.

最小侵襲プレート固定法(MIPO)における間接的整復法

著者: 田中正

ページ範囲:P.845 - P.849

 最小侵襲プレート固定法(MIPO)は骨折部をブラインドで操作することが多く,いかに上手に整復を行えるかがポイントになる.MIPOでは通常,間接的整復手技を用いることが多いが,時に経皮的あるいは小切開からの直接的整復を行う必要もある.手術にあたっては,術前プランニング,手術のタイミングや術中体位など,整復を円滑にさせるために考慮しなければならない事項がある.間接的整復法には,牽引力をかけてsoft-tissue taxisを利用して整復するpush-pull法など,インプラント自体を利用するanti-glide plateやreduction screwを用いる整復法など様々な方法があるが,個々の骨折に応じて使い分けなければならない.整復操作に用いる器具には,一般の骨折手術用のものや,MIPO用に開発されたreduction toolがある.これらの中には整復操作後そのまま仮固定できるものもあり,MIPOに非常に有用である.

骨盤輪骨折,寛骨臼骨折における小侵襲固定法

著者: 澤口毅 ,   楫野良知

ページ範囲:P.851 - P.857

 骨盤輪骨折・寛骨臼骨折の骨接合術では,大きな展開に伴う合併症も少なくない.そのため仙腸関節脱臼や仙骨骨折に対するiliosacral screwなどのX線透視下の経皮的スクリュー固定が行われている.しかし,このような経皮的スクリュー固定は安全領域が狭く,誤刺入による合併症や長時間のX線透視による放射線被曝が懸念される.これに対して,fluoroscopy based navigationは整復操作を伴う手術においても手術の正確性,放射線被曝量の減少,手術時間の短縮が期待できる方法である.骨折手術では長いドリルやガイドピンを使用するため,しなりによる誤差を生じやすく,それを解決する工夫としてドリルガイドのナビゲーションや剛性の高いガイドピンが有用である.また透視画像が不鮮明な場合には,経皮的スクリュー固定にこだわることなく,従来どおり展開した手術が必要である.

術中CTとNavigation systemを用いた骨接合術

著者: 戸田一潔 ,   伊藤康夫 ,   長谷川康裕 ,   矢形幸久 ,   冨岡正雄

ページ範囲:P.859 - P.867

 術中CTとナビゲーションシステムを用いた骨接合術が可能となってきた.その用途としては大きく分けて,

1.手術の安全性を獲得しつつ,全身への侵襲を小さくするための手術への応用.

 当院では現在主に脊椎骨折などで,椎弓根スクリューを挿入し椎体間固定を行う際,および今回症例を提示する骨盤骨折の後方要素不安定性を再建するための仙腸関節経皮的スクリュー挿入による仙腸関節固定などに用いている.

2.骨折部への侵襲を小さくし,かつ整復を確かにするための手術への応用.

 特に関節内骨折に用いることが有意義であると思われる.当院では手関節部・舟状骨骨折の経皮的スクリュー固定,膝関節・脛骨近位端骨折の観血的整復内固定,および今回症例を提示する踵骨骨折の観血的整復内固定などに用いている.

大腿骨近位部骨折に対するNavigation systemを用いた治療法

著者: 鈴木浩之 ,   高田直也

ページ範囲:P.871 - P.875

 X線透視を基盤としたナビゲーションは,1990年代後半より外傷外科手術で使用されており,本邦でも近年,整形外科領域での使用報告が増加している.

 われわれは2005年から大腿骨転子部骨折に対しナビゲーションシステム下にガンマネイル法を施行している.平均手術時間は48.7分,平均術中透視時間は0.4分であり,手術時間はやや従来法よりも延長しているが,透視時間はかなり短縮できている.ナビゲーションシステムのメリットは術中透視時間の短縮とインプラントの安全,正確な挿入である.今後の課題もあるが,手術に有用なものは積極的に導入されるべきであり,今後,外傷を含めさらに広く普及していくことになるであろう.

Navigation systemを用いた骨折治療法

著者: 塩田直史 ,   佐藤徹

ページ範囲:P.877 - P.884

 骨折治療におけるnavigationは,fluoroscopy navigationとCT based navigationの2種類存在する.Fluoroscopy navigationは,同時に多方向のイメージ像を確認しながらリアルタイムでスクリューやドリルの刺入を行うことができる.上腕骨近位部骨折・骨盤骨折・大腿骨転子部骨折・大腿骨骨幹部骨折をはじめ髄内釘手術に有用である.CT based navigationは術中3D-CT MPR(multiplanar reconstruction)にて得た3方向のaxial,sagittal,coronal像が画面に同時表示され,リアルタイムで3D-CT MPR像の中をスクリューやドリルが進んでいくように表示される.手舟状骨・大腿骨頚部骨折の骨接合術・距骨骨折・各関節内骨折に有用である.また,その応用である術中3D-CT MPRの使用も関節内骨折に有効である.

上肢変形治癒骨折に対するコンピュータ支援三次元矯正手術

著者: 香月憲一 ,   米田昌弘 ,   佐々木康介 ,   高岡邦夫

ページ範囲:P.885 - P.892

 CT検査機器,コンピュータやソフトの開発,進歩により三次元画像のイメージングが可能となり,変形治癒骨折に対するコンピュータ支援三次元矯正手術が可能となってきた.当教室では市販のソフトであるMagics®とMimics®(ともにMaterialise Japan社製)を用いた三次元シミュレーションと実物大立体模型による術前計画を行い,三次元的に正確な矯正手術を行うためのシステム開発を行っている.これまで上肢変形治癒骨折22症例に応用し,良好な成績を得た.本方法は正確な術前計画が行えるだけでなく,患者や家族への説明が容易であり,医学生や研修医への教育上有用など多くの利点がある.問題点として,設備にかかるコスト,計画通りの正確な手術を行うための何らかのナビゲーションシステムが必要などの点がある.これらの問題点を克服し,さらに開発が進めば,低コストで正確な矯正手術が行える有用な治療手段になる可能性を持っている.

論述

三次元下肢アライメント測定システムを用いた人工膝関節コンポーネントの設置位置評価

著者: 佐藤卓 ,   渡辺聡 ,   大森豪 ,   古賀良生 ,   清徳則雄

ページ範囲:P.893 - P.902

 独自に開発した三次元下肢アライメント測定システムによる人工膝関節置換術(TKA)のコンポーネント設置位置評価法とその概念を紹介し,実際にTKAを施行した35膝での評価を行うことでその有用性を検討した.三次元的に設定した一定の尺度で評価すると,大腿骨,脛骨両コンポーネントとも内外反角度は良好だったが,目標設置角度が一定でない屈曲伸展角度や,術中の制御が困難な回旋角度はばらつきが多かった.術前後の顆部形状変化も含め,従来の二次元的評価では検討不可能な項目も多く,今後のTKAにおけるさらなる科学的解析に有用であるものと考えられた.

大腿骨頚部・転子部骨折後の歩行獲得と自宅退院の関連―術後2週目における評価

著者: 菅野伸樹 ,   後藤あや ,   安村誠司 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.903 - P.906

 大腿骨頚部・転子部骨折患者の入院中での歩行獲得の有無が,自宅退院に与える影響を評価した.対象者は,2004年12月1日から2005年11月30日の期間に福島市内の1つの病院を受診した113名である.術後2週間以内での平行棒もしくは歩行器での歩行獲得の有無が自宅退院に与える影響を性別や年齢などを補正要因として,多変量解析で分析した.その結果,歩行が獲得できた場合に対して,歩行が獲得できない場合の自宅退院できない危険率は3.09(95%信頼区間:1.15-8.35)であった.すなわち,術後2週間以内での歩行獲得の有無は,自宅退院の可否を予測する因子の1つであると考えられる.

連載 臨床研修医のための整形外科・9

骨・軟部腫瘍

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.908 - P.913

 今回は,整形外科医が扱う疾患の中で専門性が高く迂闊に手が出せない骨・軟部腫瘍について説明します.骨腫瘍(①原発性骨腫瘍,②続発性骨腫瘍,③骨腫瘍類似疾患)と軟部腫瘍に分けて話を進めて行きます.

 

*悪性骨・軟部腫瘍は致死性の疾患です!

 一般病院に勤務している整形外科医が悪性骨・軟部腫瘍を疑った時,『いかに早く専門医のいる病院に患者を紹介できるか』が重要な役割となります.自分の病院でMRI検査やCT検査を行ったために,1カ月間紹介が遅れたなんてもってのほかです!悪性腫瘍ではないかと疑ったら,オーベンに相談して早く信頼できる専門病院へ患者を紹介しましょう.

小児の整形外科疾患をどう診るか?─実際にあった家族からの相談事例に答えて・5

先天性膝関節脱臼

著者: 亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.914 - P.915

相談例(先天性膝関節脱臼)

 初めまして.東京在住のXXと申します.予定日から3週遅れで生まれたのですが,足に異常が認められます.状態は股関節から胸に向けて足が屈折して戻らず,膝も逆に曲がり足首も曲がっています,今,里帰り出産でいるのですが,こちらの先生はまだ何の説明もしてくださいません.心配でどうしようもありません.どうしたらよいでしょうか?

 どうかご指導お願いいたします.

臨床経験

脊索腫に対する仙骨全摘後の再建術の工夫

著者: 遠藤徹 ,   吉田宗人 ,   川上守 ,   安藤宗治 ,   南出晃人 ,   中川幸洋 ,   麻殖生和博 ,   延與良夫 ,   岡田基弘 ,   中尾慎一

ページ範囲:P.917 - P.921

 仙骨脊索腫に対する仙骨全摘術後の再建術に独自の工夫を行った.仙骨全体および左腸骨まで及ぶ巨大な脊索腫に対して,仙骨全再建方法はシャンツスクリューをL4・L5椎体に刺入する前方要素の再建および椎弓根スクリューを使用した後方再建を併用した.仙骨全摘術後の再建術において強固な支持性を得るためには前方再建も行うことが望まれるが,シャンツスクリューを使用した脊柱再建術は,良好な前方支持性を獲得できるとともに,手術操作をより簡便に行える方法である.

姿勢観察による脊柱sagittal balanceの評価

著者: 阿部友和 ,   松山幸弘 ,   永谷元基 ,   林満彦 ,   森友洋 ,   牧本卓也 ,   吉原永武 ,   酒井義人 ,   中村博司 ,   片山良仁 ,   今釜史郎 ,   伊藤全哉 ,   簗瀬誠 ,   石黒直樹

ページ範囲:P.923 - P.926

 体表ランドマークからspinopelvic alignmentが評価可能か否かをX線計測上で対比し検討した.対象は健常成人男性10名(平均年齢29.3歳,身長174.1cm,体重71.6kg)である.体表ランドマークは,C7棘突起・上前腸骨棘(ASIS)・上後腸骨棘(PSIS)・大転子に設置し,JacksonらのHA-C7バランスとpelvic angle(PA)とC7棘突起からの垂線-大転子間距離(大転子-C7棘突起バランス),ASISとPSISを結んだ線と水平線からなる角度(A-P角)を各々比較し相関を調べた.結果はHA-C7バランスと大転子-C7棘突起バランスはr=0.699,PAとA-P角はr=0.553であり相関を認めた.体表ランドマークからJacksonらのパラメータが推測可能であった.X線撮影せずに姿勢評価が可能と考えられ,理学療法領域における治療効果判定の指標となると考えられた.

大腿骨ステム周囲骨折に対するCable-Ready® plate systemを使用した治療

著者: 寺島照雄 ,   坂野真士 ,   山口仁 ,   長谷川幸治

ページ範囲:P.927 - P.933

 人工股関節置換術後の大腿骨ステム周囲骨折に対して,Zimmer社Cable-Ready® plate systemを使用し治療した症例を臨床成績,X線所見について調査検討した.対象は2001年9月~2004年10月の期間に手術治療した6例6股である.1例に一期的に骨接合とロングステム再置換を行い,1例に骨癒合が得られた後にセメントステムへ再置換を行った.全例が骨癒合し,術後疼痛は軽減し満足な結果が得られた.Cable-Ready® plate systemは骨折部の強固な固定が可能であり有用な方法と考えられた.

症例報告

Marfan症候群に伴う脊柱後側弯症の治療経験

著者: 野原亜也斗 ,   川上紀明 ,   宮坂和良 ,   辻太一 ,   小原徹哉 ,   安藤圭 ,   山元拓哉

ページ範囲:P.935 - P.940

 Marfan症候群に対する手術治療は,易出血性で心血管系異常を伴うため合併症発生率も非常に高い.筆者らは高度の脊柱後側弯(kyphosing scoliosis)を呈し,血液型がO型Rh(-)であったため治療に難渋した症例を経験したので報告する.症例は12歳6カ月の男児で胸椎カーブ81°,胸腰椎カーブ106°のダブルメジャーカーブを認め,側面像にて46°の後弯を認めた.手術は二期的に計画したが,術中出血の多さから三期的(前方―後方―前方矯正固定術)にせざるを得なかった.Marfan症候群の側弯手術は固定範囲が広く侵襲も大きい.またそのため術前の全身および脊柱変形の評価,また小児循環器科,麻酔科との連携が非常に重要である.

重粒子線治療を行った仙骨原発線維肉腫の1例

著者: 中島浩敦 ,   浦川浩 ,   吉岡裕 ,   都島幹人 ,   鎌田正

ページ範囲:P.941 - P.944

 症例は25歳の女性で,1年前から右腰殿部痛があった.単純X線像上,仙骨右外側部に地図状の骨透亮像を認め,単純CTでは,骨溶解像の周囲に不規則な辺縁硬化像を認めた.単純MRIでは,T1・T2強調像ともに低信号で,脊柱管内への進展が認められた.針生検組織で,線維肉腫と診断された.重粒子線治療を選択し,線量70.4GyEを照射した.照射後2年の現在,疼痛は消失し,ADL障害はない.重粒子線治療は,切除非適応症例だけでなく,切除に伴う機能損失が極めて大きい症例に対しても,切除に代わりうる可能性がある.

頚椎術後硬膜外血腫を契機に発見された第Ⅹ・XIII凝固因子欠乏症の1例

著者: 高見正成 ,   山田宏 ,   玉置哲也 ,   大宝英矢

ページ範囲:P.945 - P.948

 今回われわれは,術前スクリーニング検査に異常がなく特異的な頚椎術後硬膜外血腫を起こし,初めて凝固因子欠乏症と判明した症例を経験した.症例は69歳の男性で過去に出血傾向はなかった.問題なく椎弓形成術を行ったが,術後に異常な後出血を起こした末,硬膜外血腫を形成し神経症状が悪化したため,血腫除去術を行った.術後精査で先天性第Ⅹ・XIII凝固因子欠乏症と判明した.術後異常な後出血を認めた場合,本症を疑う必要がある.本症は新鮮凍結血漿が有効で,診断がつく前に緊急回避的処置として投与を考慮すべきである.

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あとがき フリーアクセス

著者: 清水克時

ページ範囲:P.956 - P.956

 <連載>「臨床研修医のための整形外科」第9回目は「骨・軟部腫瘍」がテーマです.私は一昨年から2年間,日本整形外科学会の専門医試験担当理事の仕事をさせていただきました.試験問題を作る仕事です.毎年,専門医試験の後に受験者の感想をアンケートにして集計しますが,そのなかに「頻度の低い腫瘍の問題が多いのに,頻度の高い外傷の問題が少ない」,「もっと外傷の配分を高くしてくれたら高得点がとれるのに」という感想をしばしば見受けます.外傷の多い一般病院に勤務しておられる受験生が多いためだと思います.一般病院で日常的に外傷をたくさんみていると,その谷間に致死性の悪性骨・軟部腫瘍が隠れてしまうことがあるので,専門医の資格試験としては,この配分を変えるわけにはいきません.著者の高橋正明先生が強調しておられるように,悪性骨・軟部腫瘍を疑うこと,疑ったら一刻も早く専門病院に紹介することが大切です.本稿を読んで,骨・軟部腫瘍の知識をもつことが大切なことはもちろんですが,同時に卒後研修の一時期に大学病院や腫瘍専門病院で悪性骨・軟部腫瘍を集中的に経験することが必要と,改めて感じました.

 誌上シンポジウムは「骨折治療の最新知見―小侵襲骨接合術とNavigation system」がテーマです.この分野の進歩には,術中CT,透視可能な手術台など,高額な設備が必要です.この点について,複数の著者が論文の中で指摘しておられます.高額な設備投資や集学的医療の実現には,外傷医療の集約化,保険点数の再評価など政治,経済にかかわる問題を含み,医師の配置にも影響します.しかし従来わが国では,腫瘍の分野と違って,外傷医療の集約化が進んでいません.外傷医学の進歩に見合った外傷医療の集約化は,改めて議論すべき大きな問題ではないかと思います.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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