誌上シンポジウム 骨粗鬆症性脊椎骨折の病態
緒言
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著者:
星野雄一1
所属機関:
1自治医科大学・整形外科
ページ範囲:P.302 - P.302
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骨粗鬆症を背景とする高齢者における骨折は,ほぼ全例が入院となる大腿骨頚部骨折では発生率,治療成績,予後などの実態が比較的よく把握されている.一方,脊椎骨折は必ずしも入院とはならないために,実態の全貌を捉えることが難しく,これまでの議論は必然的に手術例を中心とするものであった.もちろん,このような問題点は従来から指摘され,日本脊椎脊髄病学会でも保存的治療を含めた検討が継続的に行われてきているが,知見は単発的,断片的であり,未解明な点が多い.たとえば,骨粗鬆症性脊椎骨折に対する保存的治療として,軟性コルセットが無意味であることはいくつかの施設から報告されているが,この知見が普及しているとはいえない.また,経皮的椎体形成術が世界的に流行しているが,その適応にはいまだ一致した見解がない.即時的除痛が得られることから,2週間程度の安静で改善するはずのものにも不必要な手術が行われているのが現状である.すなわち,骨粗鬆症性脊椎骨折に対して最適な治療が行われているとは限らないのが現状であり,これに適切に対処するには,その病態の正確な把握と,病態に沿った治療法の普及が重要なのである.
骨粗鬆症を背景とする脊椎骨折に関し,以下の点の解明が急務であると考えられる.すなわち,本疾患の頻度はどのくらいか,偽関節の発生頻度はどのくらいか,偽関節を予測できる方法はないのか,偽関節あるいは下肢麻痺に対する治療はどうするのか,さらには現在行われている治療法の問題点は何か,などが重要な研究課題なのである.これらの中でも特に,偽関節となる病態が解明されれば,1~2週間の安静のみでよい保存療法,それではだめな場合に低侵襲で行う椎体形成術,下肢麻痺発生に対しては手術,などの適応が明確になる可能性が高く,最重要の課題であると思われる.