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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科43巻5号

2008年05月発行

雑誌目次

視座

ブレイブハート

著者: 島田洋一

ページ範囲:P.401 - P.402

 私はブレイブハートという言葉を好んで使う.これは主に自分に対してであって,他人にではない.ここでいうブレイブハートとは,猪突猛進ではなく,冷静で計算され尽くした勇気を意味する.

 札幌の学生時代,ブルース・リー世代である私は,医学生であることを忘れ,ほとんどの時間を空手道の修行に費やした.ついには,全日本学生選手権北海道代表,北海道空手道選手権優勝,さらに,国民体育大会で公開競技から正式競技になった滋賀国体の成年男子軽量級北海道代表まで登りつめることができた.この時代の空手道競技は,国際大会,国体を除くとほとんどが体重に関係がない無差別級の試合で,防具もなかった.私は小柄であったが,大きな相手に立ち向かうことが大好きで,その時の武者震いをブレイブハートと勘違いしていた.医師になってからいかに思い違いをしていたのかを痛切に思い知らされることになる.

誌上シンポジウム 手・肘関節鏡手術の現況と展望

緒言 フリーアクセス

著者: 和田卓郎

ページ範囲:P.404 - P.404

 手関節鏡が手の外科手術に導入されてすでに20年が経過している.その間,手根管症候群,肘部管症候群,ばね指には日本独自の関節鏡視下手術が開発されてきた.しかし,本来の手関節鏡手術に関しては,先輩格の膝関節鏡,あるいは近年に急成長している肩関節鏡に比べ,可能な手術手技が限られている.一方,近年欧米では肘関節鏡手術の有用性が注目されている.しかし,日本の手の外科医の肘関節鏡手術に対する関心は必ずしも高いとはいえない.

橈骨遠位端骨折に対する鏡視下手術の実際―特に掌側プレート固定との併施を中心に

著者: 安部幸雄 ,   藤井謙三 ,   坪根徹 ,   富永康弘 ,   津江和成

ページ範囲:P.405 - P.410

 橈骨遠位端骨折に対し掌側からのロッキングプレート固定が主流となりつつある昨今,鏡視下手術の併用はその煩雑さから敬遠されつつある.今回,関節面の正確な整復,軟部組織の損傷と処置において威力を発揮する鏡視下手術をより簡略化して導入するためにplate presetting arthroscopic reduction technique(PART)を考案し,その手技を詳述した.54例において,イメージ下に整復が得られても鏡視下に転位を認めたのは25%,舟状骨月状骨間靱帯損傷は35.2%,三角線維軟骨損傷は68.5%に合併しており,鏡視下手術併用の重要性を改めて認識すべきである.

外傷性手関節拘縮に対する鏡視下授動術

著者: 服部達哉 ,   角田賢二 ,   中尾悦宏 ,   堀井恵美子 ,   平田仁 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.411 - P.415

 われわれは手関節部外傷に起因した拘縮例に関節鏡を応用し,鏡視下に授動術を試みている.授動術とは橈骨手根関節内に形成された隔壁切除術である.今回,鏡視下関節授動術の治療効果につき述べる.方法としては,全例に関節造影を行い,橈骨手根関節内に隔壁の存在を推測し,関節鏡で全例に隔壁を確認しこれを切除した.術後掌背屈全体で平均22°(背屈9°,掌屈13°)の改善を得た.

三角線維軟骨複合体尺側部損傷に対するoutside-in手技による関節鏡視下縫合術

著者: 恵木丈

ページ範囲:P.417 - P.422

 三角線維軟骨複合体(以下TFCC)は遠位橈尺関節の安定性に寄与する構造体であり,特に靱帯成分である深層が重要である.その収束部であるTFCC尺側部断裂を放置すると遠位橈尺関節不安定性を惹起するので,縫合によって早期に安定化するべきである.理学所見と画像所見から診断を行い,鏡視所見で確定診断を行う.縫合法はoutside-in手技による関節鏡視下縫合術を行い,TFCC付着部をfoveaに誘導するよう縫合針の刺入位置に留意する.術後平均9カ月の経過観察期間では良好な成績を獲得した.最近は遠位橈尺関節(DRUJ)鏡により正確な診断が可能となっており,今後の展開が期待される.

Foveaでの三角線維軟骨複合体損傷に対する鏡視下縫合の実際

著者: 藤尾圭司

ページ範囲:P.423 - P.429

 現在の手の関節鏡の役割について,特に 三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷についてその適応と実際の手術方法について述べる.TFCC損傷の特にPalmar分類1Bにあたる症例は実際には遠位橈尺関節不安定症を起こし,保存的治療では症状の改善が認められず手術に移行することが多い.本稿では,手術方法の変遷について述べたが,現在ではHybrid法が勧められる.いずれの方法も良好な成績を得ることが可能で,平均143.5日の経過観察で80例中60例で痛みが完全に消失しており,残りの症例も重労働時の軽度の痛みを訴えるのみであった.鏡視下TFCC縫合は十分に確立された治療法と考えられた.

肘関節鏡視下の拘縮解離

著者: 稲垣克記 ,   宮岡英世 ,   渡辺幹彦 ,   石川大樹 ,  

ページ範囲:P.431 - P.435

 肘関節鏡視下手術は本邦では近年ようやく普及されてきた術式である.最近まで肘拘縮に対する鏡視下授動術は欧米においても技術的に難しいとされてきた.しかし,正しい術式と手術適応を守れば最小の侵襲で最大の効果をあげることができる.本稿では術式の工夫と問題点さらに成績向上のための今後の課題につき概説した.

変形性肘関節症に対する鏡視下関節形成術―手技と短期成績

著者: 下川寛一 ,   伊藤仁 ,   杉本良洋

ページ範囲:P.437 - P.441

 変形性肘関節症に対して行った鏡視下関節形成術の治療成績について検討した.対象は24例24肘関節,男性15例,女性9例で,手術時平均年齢は63.3歳(31歳から85歳),術後経過観察期間は平均18.9カ月であった.日整会肘機能評価法によるスコア術前平均49.6点が術後84.0点に,関節可動域は伸展-20.6°が-8.8°に,屈曲94.4°が114°に,また握力患健比は術前66%が術後114%に,それぞれ有意に改善していた.QuickDASHを用いた上肢障害評価は術前平均50.0が術後4週で25.3,術後6カ月では24.4にそれぞれ有意に改善していた.術後は理学療法を行うことなく,平均4.9日で術前レベルの可動域まで回復が得られていた.問題となる合併症はなく,本法は術後疼痛が軽く,安全で,迅速な可動域回復が特別な後療法なしに獲得できる有用な治療法である.

変形性肘関節症・リウマチ肘に対する肘関節鏡視下手術

著者: 島田幸造

ページ範囲:P.443 - P.450

 肘関節は関節腔の近くを重要な神経,血管束が走行しており,その一方で上腕筋,上腕二頭筋などの発達した筋群が前方を被っていて,関節内障害の外科的治療を時に困難としている.肘関節鏡は当初手技的に困難とされていたが,手術手技,体位,ポータルの検討などから徐々に安全確実な手技として確立されてきた.特に変形性関節症や関節リウマチによる関節内病変の治療を小侵襲で行えることは,術後の後療法を早め,早期の除痛や機能改善を得る有効な手段となりつつある.われわれの経験では,変形性肘関節症では特にスポーツ由来の障害においてその成績は良好であったが,手技の熟達につれて加齢変性や外傷性の関節症に対しても,一部に直視下の手技を加えることで機能改善が期待できる.また関節リウマチに対する滑膜切除も除痛に効果的で,初期の骨びらんの少ない症例では術後早期に機能改善が得られ,特に有用であった.

上腕骨外側上顆炎に対する鏡視下手術

著者: 辻英樹 ,   和田卓郎 ,   射場浩介 ,   織田崇 ,   山下敏彦 ,   青木光広

ページ範囲:P.451 - P.456

 上腕骨外側上顆炎に対する鏡視下手術について,特に手術手技を中心に概説した.短橈側手根伸筋(ECRB)腱起始部切離術を関節内から低侵襲に行うことが特徴である.また滑膜ヒダ病変の切除を同時に行うことが可能である.当科における成績は自覚的改善度で優12例,良7例,可2例,不可0例であり,これまで報告されている直視下手術,鏡視下手術と同程度の成績であった.われわれは外上顆炎の病因部位とされるECRB腱付着部と滑膜ヒダには解剖学的関連があると考えている.今後この鏡視下手術を重ねていくことによって,外上顆炎の病態がさらに明らかとなり,またさらに有効な手術方法が確立されることが期待される.

論述

連続2椎間後方進入腰椎椎体間固定術の侵襲とリスク

著者: 牧野孝洋 ,   細野昇 ,   向井克容 ,   金子徳寿 ,   海渡貴司 ,   冨士武史

ページ範囲:P.459 - P.463

 連続2椎間後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)を施行した37例(男4例,女33例,手術時平均年齢65歳)を対象に手術侵襲,周術期合併症について調査した.手術時間は244±37分,術中出血量は1,174±663mlであった.血液検査は術後徐々に回復したが術後2週を経過してもヘモグロビン,総蛋白,CRPは術前レベルまでは回復していなかった.合併症は17例(46%)で認められ,うち筋力低下は8例(22%)に発生し,6例(16%)では術後1年を超えて遺残した.2椎間PLIFは高いリスクを伴う術式との認識が必要である.

アテトーゼ型脳性麻痺に伴う頚椎症性脊髄症に対する手術療法の再手術例についての検討

著者: 三原久範 ,   近藤総一 ,   河野心範 ,   新村高典 ,   大成克弘 ,   蜂谷將史

ページ範囲:P.465 - P.472

 アテトーゼ型脳性麻痺に伴う頚椎症性脊髄症は治療に難渋することが多く,当院で初回手術を施行した89例中これまでに27例の再手術例を経験した.術後6カ月以内の早期再手術例は6例あり,固定術後の内固定材の破綻が4例(80例中),椎弓形成術後の症状悪化が2例(4例中)で,いずれもわれわれのアテトーゼ強度分類でGrade 4(徒手矯正不能な強度)以上の症例であった.一方,術後6カ月以上経過後の再手術は21例あり,抜釘を除くと隣接椎間障害(5例)と頭蓋頚椎移行部不安定症(2例)が原因であった.これらに対し現在行っている対策とその効果についても検討を加えた.

境界領域/知っておきたい

生活習慣病と骨代謝

著者: 山口徹

ページ範囲:P.476 - P.479

■はじめに

 生活習慣の欧米化によって,本邦でも肥満症,脂質異常症,糖尿病,およびこれらの病態で構成されるメタボリック症候群などの生活習慣病が急増している.一方,社会の高齢化によって骨粗鬆症も増加しているが,両者の病態は相互に影響を及ぼすことが次第に明らかとなってきた.

国際学会印象記

第5回SICOT/SIROT Annual International Conferenceに参加して

著者: 三澤弘道

ページ範囲:P.480 - P.481

 第5回International Society of Orthopaedic Surgery and Traumatology(SICOT) Annual International Conference(AIC)が,2007年8月29日から9月1日にかけて,北アフリカ,モロッコ王国のマラケシュで開催されました.SICOTはTriennial World Congressが3年に1回,それ以外の年にはAICが世界各地で行われています.2006年の第4回AICは南米のアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催され,President's dinnerの会場で,SICOT日本代表である清水克時先生(岐阜大学)から,マラケシュがすばらしいとのお話を伺って,abstractを送り参加させていただきました.またScoliosis Research Society(SRS)も8月30日の午前中にspinal deformity sessionsとして行われ,Société Marocaine de Chirurgie Orthopédique et Traumatlogique(SMACOT),International Federation of Pediatric Orthopaedic Societies(IFPOS)などのsocietyも学会の一部となっていました.

 学会はDr. Thami Benzakour会長(Zerktouni Orthopaedic Clinic)のもと,国王Mohammed Ⅵの多大な後援で,マラケシュのfive-star garden hotelである“Hotel Mansour Eddahbi”(図1)で開催されました.学会場は旧市街であるred cityの中にあり,周囲は高い城壁で囲まれ,市内観光には都合の良い場所にありました.Red cityの外のモロッコは,最近話題になった映画『BABEL』でブラッド・ピットやケイト・ブランシェットが観光した場面と同じで,どこまで行っても原野で同じ景色,川の周囲だけに緑がある世界でした.8月のモロッコは朝夜は涼しいのですが,日中は想像を絶するほどの暑さでした.

第10回国際肩肘関節学会に出席して

著者: 玉井和哉

ページ範囲:P.482 - P.483

 2007年9月17日~20日,ブラジルで行われた10th International Congress of Shoulder and Elbow Surgeryに参加した.この会議は1980年にロンドンで第1回が行われて以来,3年ごとに開催されているが,南米での開催は初めてである.もともとは肩関節外科のみの学会であったが,確か前回から学会名に肘も入るようになった.

 今回の学会参加の目的は,もちろん演題発表もあるが,もう一つ重要な理由があった.日本は第12回のホスト国として立候補しており,9月16日のBoard Meetingで投票が行われる予定となっていた.たまたま自分が日本肩関節学会の会長であり,会長が参加していないことが話題になっても困るからである.

連載 臨床研修医のための整形外科・17

単純X線画像読影のポイント

著者: 高橋正明

ページ範囲:P.484 - P.493

 単純X線検査は放射線による被曝侵襲を与える検査なので,最低限でも①検査の目的は何か?,②どの部位を特に見たいのか?など,明確な意識をもってオーダーしてください.単純X線画像から多くの情報を得ることができます.しかし,個人の能力によって得られる情報量の差がとても大きいことも事実です.撮影したからには,すみからすみまで穴があくまで読影して,より多くの情報をキャッチしてください.CT検査やMRI検査などでしかわからない情報があることも事実ですが,整形外科医が扱う運動器疾患の基本は単純X線画像の読影です.

小児の整形外科疾患をどう診るか?―実際にあった家族からの相談事例に答えて・13

歩容異常

著者: 亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.494 - P.495

歩容異常

 1歳8カ月になる双子(男女)です.

 10カ月には歩き始めました.検診でひっかかったことはありません(女児).

 1歳過ぎた頃(半年以上前),腰に乗せ抱っこ(よくお母さんがやっている)をしている姿勢で無理に脚をぐいっと開いてしまいました.それ以来,そとまたに脚を開きよろよろ歩くようになりました.その頃から抱っこしても脚は閉じなくなり,ぶらぶらとぶらさがるような状態になりました.1カ月半ほどで,少しずつ脚は閉じて,歩きもだいぶましにはなりましたが,そとまた歩きとなりました.立つ姿勢は脚を開きぎみで立つことがほとんどです.たまにかなり脚を内捻して「気を付け」の姿勢をすることもあります.また,オムツ換え時などに股関節がポキポキ鳴ります.気になり整形外科を受診しました.正面レントゲンで股関節脱臼がないので問題なしと言われました.日に日に脚が外に向いてきている気がします.また,最近は汗をたくさんかいたり,ぼっとしたりすることがあります.腰をおとすような姿勢にもなり,腰をささえて立ったり歩いたり,まるで腰痛持ちの人のようです.股関節脱臼はないとはいわれたものの,子供の歩きや姿勢の変化をみてとても不安な毎日です.子供はかっこ悪い歩きではありますが,元気ではあります.体重は8カ月以来ほとんど増えていません.エコーなどの検査が必要でしょうか.

 素人のため医学的に変なことがあるかもしれませんが,汲み取っていただけたら幸いです.よろしくお願いします.

医者も知りたい【医者のはなし】・29

大分杵築の人・日本天文学の父 麻田剛立(1734-1799)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.496 - P.499

まえがき

 今回は江戸の中期後期に大坂で医師として,また天文学者として活躍した大分杵築の人・麻田剛立のことを述べる.月のクレーター(crater・窪み)には,彼の名前に由来する“Asada crater”(麻田クレーター)が命名されるほど麻田剛立は天文学の分野で活躍した人である.

臨床経験

線維筋痛症とchronic widespread painの比較

著者: 戸田克広

ページ範囲:P.501 - P.505

 線維筋痛症(FM)もchronic widespread pain(CWP)も広範な疼痛を引き起こす症候群であり,有病率は各々約2%,10%以上である.FM患者53人とCWP患者52人の初診時年齢・初発時年齢・性比・外傷後に発症した割合を比較した.FM患者とCWP患者の初診時年齢は51.6歳と54.1歳,初発時年齢は44.4歳と46.5歳,女性の割合は69.8%と76.9%,外傷後に発症した割合は37.7%と34.6%であり,いずれも統計学的有意差はなかった.CWPの一部はFMの前段階と考えている.

経皮的椎弓根スクリューシステムを用いた経椎間孔腰椎椎体間固定術におけるアライメント変化

著者: 三浦一人 ,   松葉敦 ,   二宮宗重

ページ範囲:P.507 - P.513

 X線透視装置のみを併用し,経皮的椎弓根スクリューシステムを用いた経椎間孔腰椎椎体間固定術のアライメント変化について検討した.対象症例は12例で,臨床成績,矢状面アライメント,スクリューの挿入位置,椎間ケージの術後変位について検討した.アライメントは術後有意に改善した.スクリューは椎弓根を逸脱しておらず,椎間ケージの術後変位もなかった.固定椎間のアライメントを改善し,椎間ケージの術後変位を防止するためには十分な椎間開大と多くの骨移植,大きな椎間ケージが必要である.

症例報告

鎖骨・頭蓋異形成症(cleidocranial dysostosis)に発症した後側弯症の1例

著者: 安藤圭 ,   川上紀明 ,   宮坂和良 ,   辻太一 ,   小原徹哉 ,   多々良靖則 ,   野原亜也斗

ページ範囲:P.515 - P.519

 鎖骨・頭蓋異形成症に伴う後側弯症に対し,矯正固定術を施行した.症例は10歳の女児である.生下時に鎖骨・頭蓋異形成症の診断をされ,脊柱変形のため,Risser-Cotrel cast,装具治療で後側弯の進行予防に努めていたが,6歳頃から進行し始め,8歳時には70°台に悪化したため,手術を予定した.単純X線像では,76°の側弯,胸椎66°の後弯,3DCTでは胸椎椎体前方の形成異常,癒合不全を認めた.前後方矯正固定術を行い,胸椎カーブは18°,後弯も25°と矯正された.初診時64°の側弯を認めたが,早期から保存治療を行うことで側弯進行を予防し,10歳時に固定術を行った.

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あとがき フリーアクセス

著者: 糸満盛憲

ページ範囲:P.526 - P.526

 ちょうど桜が満開になった.なぜだか今年は全国に先駆けて東京と静岡で開花し,西日本に広がるという変わった現象が起きている.この時期,卒業式,入学式と大学では多忙な時期であり,病院では退職者が出る一方,新しい研修医が入ってくる季節で,入局者が増えた,減ったという話題でにぎやかになって,悲喜こもごもである.

 報道では「産婦人科や小児科医が足りない」というニュースのみが強調され,全体の医師数が不足していることは故意に伏せられているように思われる.新研修システムが始まって以来,全体の医師不足に加えて後期研修医の外科系離れが顕著になり,整形外科入局者も減少傾向にある.外科系はいわゆる3K職場ということらしい.半日もあれば仕事が終わる精神科と,早朝から深夜まで術前術後の患者管理に追われ,緊急手術などで一睡もできていない状態でも翌日の仕事をせざるをえない外科系各科の医師と比べると,同じ給料でアルバイトし放題の楽な科に流れてしまう.入局者が減ると当然医師一人当たりの仕事量は増えるわけで,ますますストレスフルな環境になっていくといった悪循環になる.実に困った現象が起こっている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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