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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科43巻6号

2008年06月発行

雑誌目次

誌上シンポジウム 胸椎後縦靱帯骨化症の治療―最近の進歩

特集にあたって

著者: 中村耕三

ページ範囲:P.528 - P.529

 後縦靱帯骨化症(OPLL)は重篤な脊髄障害を来す疾患である.1975年に厚生省特定疾患調査研究班の対象疾患に指定され,これまで,疫学,病態などのほか,治療法についても主に日本において多くの報告,検討がなされてきている.

 頚椎OPLLについては,全例が脊髄症を発症するわけではないこと,発症に動的因子の関与が考えられていることから,神経学的な異常所見がない状態では保存的方法が優先されている.しかし,いったん中等度以上の脊髄症を発症した場合には,手術治療のほうが経過観察例より自立度が高いことから,一般に外科治療が選択される.外科治療には,前方法と後方法があり,その適応となる状況は異なるが,基本的な成績の差はみられていない.治療についてはほぼ一定した見解が得られている.

胸椎後縦靱帯骨化症に対する手術成績に影響を与える因子の検討―多施設後ろ向き研究

著者: 松本守雄 ,   千葉一裕 ,   戸山芳昭 ,   竹下克志 ,   星地亜都司 ,   中村耕三 ,   有水淳 ,   藤林俊介 ,   平林茂 ,   平野徹 ,   岩崎幹季 ,   金岡恒治 ,   川口善治 ,   井尻幸成 ,   前田健 ,   松山幸弘 ,   三上靖夫 ,   村上英樹 ,   永島英樹 ,   永田見生 ,   中原進之介 ,   野原裕 ,   岡史朗 ,   阪本桂造 ,   猿橋康雄 ,   笹生豊 ,   清水克時 ,   田口敏彦 ,   高橋誠 ,   田中靖久 ,   谷俊一 ,   徳橋泰明 ,   内田研造 ,   山本謙吾 ,   山崎正志 ,   横山徹 ,   吉田宗人 ,   西脇祐司

ページ範囲:P.531 - P.538

 胸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対する34施設の多施設後ろ向き研究調査の結果を報告した.症例は手術後1年以上の追跡調査が可能であった154例(男性62例,女性92例,平均年齢56.8歳)である.JOAスコアの平均改善率は37%であり,modified Frankel分類で一段階以上の改善が得られた症例は107例(69.5%)であり,手術により一定の改善が得られていた.成績に関与する因子はインストゥルメンテーションの併用,上位胸椎部のOPLLであった.術後脊髄症状の悪化18例(11.7%),硬膜損傷・髄液漏34例(22.1%)などの合併症の発生が多くみられた.

胸椎後縦靱帯骨化症の手術的治療―局所骨化角が与える影響について

著者: 伊藤圭吾 ,   湯川泰紹 ,   堀江裕美子 ,   加藤文彦 ,   名古屋脊椎グループ

ページ範囲:P.539 - P.542

 胸椎後縦靱帯骨化症の外科的治療は,治療方法に対する一定の見解がない.今回,名古屋脊椎グループでの多施設研究で症例を集積し,最狭窄部位上下椎での頭側椎体後上縁と尾側椎体後下縁と骨化最頂点を結んだ角を局所骨化角(LOA)と定義し,手術戦略の定量化を試みた.名古屋脊椎グループに登録された31例を対象とした.改善率は術後LOA 28°未満では56.0%であり,術後LOAが28°以上では38.1%と有意に不良であった.術後後弯の増強によるLOAの悪化も念頭に入れ,術後LOAが28°未満になるような手術計画をたてるのが望ましいと思われる.

胸椎後縦靱帯骨化症に対する間接的後方除圧矯正固定術―術後成績は予測できる

著者: 松山幸弘 ,   酒井義人 ,   片山良仁 ,   今釜史郎 ,   伊藤全哉 ,   若尾則充 ,   石黒直樹

ページ範囲:P.543 - P.547

 後弯矯正を広範囲椎弓形成とインストゥルメントを使用して行う一期的後方除圧矯正固定術は,間接的な脊髄除圧が可能であり比較的安全な手技といえる.術中の除圧操作や,除圧後に生じる後弯進行によって,脊髄障害が生じていることが術中の脊髄モニタリング(CAMP)で明らかとなった.術中脊髄モニタリング悪化を認めた群の術後成績は認めなかった群と比較して有意に悪かった.易損性の脊髄に永久的な障害を加えないよう術中CMAPは必須であり,低下を認めた場合は早急に対処しなければならない.

胸椎後縦靱帯骨化症における前方除圧術の治療成績

著者: 進藤重雄 ,   中井修 ,   大谷和之 ,   相馬真 ,   佐々木真一 ,   沼野藤希 ,   三宅論彦 ,   山浦伊裟吉

ページ範囲:P.549 - P.556

 後縦靱帯骨化は脊髄を前方より圧迫し,一般に胸椎部は後弯であることから,胸椎後縦靱帯骨化症の観血的治療は前方除圧が合理的であり,当科では胸骨縦割アプローチまたは経胸膜進入による前方除圧術を第1選択としている.当科での胸椎後縦靱帯骨化症に対する前方除圧術を行った20例の成績につき調査した.画像的に良好な除圧が得られており,手術成績も平均改善率60%と良好であった.前方進入前方除圧術はアプローチ,手術椎間数など一部に制約があるものの手術効果の点で有効な術式である.

胸椎後縦靱帯骨化症に対する後方進入前方除圧術の治療成績と成績不良因子に関する検討

著者: 高畑雅彦 ,   鐙邦芳 ,   伊東学 ,   小谷善久 ,   須藤英毅 ,   三浪明男

ページ範囲:P.557 - P.562

 脊椎後方進入前方(全周性)除圧固定術は,胸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対するきわめて合目的な術式であるが,同時に麻痺増悪などの危険性も高いことが報告されている.当科では2003年までに30例に本術式を行い,JOAスコア改善率平均49.5%と良好な成績を得ているが,術直後の麻痺増悪を10例に認めた.悪化した麻痺は徐々に改善することが多かったが,最終的に4例の麻痺は術前以上には改善しなかった.これら成績不良例の病態,経過について詳しく検討したところ,5椎体以上の全周性除圧が有意な危険因子であった.このことから,広範囲の胸椎OPLLの場合でも,後方進入全周性除圧は嘴状骨化巣など限局的な範囲にとどめるべきと考えられた.

胸椎後縦靱帯骨化症に対するdekyphosisを加えた脊髄全周除圧術

著者: 村上英樹 ,   富田勝郎 ,   川原範夫 ,   岡山忠樹 ,   出村諭 ,   羽藤泰三

ページ範囲:P.563 - P.569

 胸椎の後縦靱帯骨化(OPLL)に対する脊髄全周除圧術において,第1ステップでわれわれは若干の胸椎後弯の矯正(dekyphosis)を加えている.このdekyphosisにより脊髄は後方移動し,第2ステップの前方手術では,OPLL切除をより安全に行うことができ,また,除圧範囲が限定されるためless invasiveな前方手術が可能となった.われわれの考案したdekyphosisを加えた脊髄全周除圧術は手間のかかる二期的手術ではあるが,現在の胸椎OPLLに対する手術の中で,最も安全・確実で,かつ最大限に脊髄の回復が期待できる術式と考えている.

レヴュー

著者: 馬場久敏

ページ範囲:P.570 - P.571

 「胸椎後縦靱帯骨化症の治療」のシンポジウムが第36回日本脊椎脊髄病学会学術集会(2007年,金沢市)で採択され,除圧や脊髄の生体力学および血行状態,画像診断の読み方からみた術式の吟味,さらに後弯矯正とinstrumentationの方法について,当該病態の治療のfront lineで活躍する施設・術者から,従来にはない「一層踏み込んだ」発表と討議が行われた.この病態に関しては日本整形外科学会や他の会期の日本脊椎脊髄病学会,中部日本整形外科災害外科学会などでも何度かパネル討議などが行われたが,今回はシンポジウム参加者も350名を超し,演者も最前線の外科医であったので,一層の白熱したシンポジウムであった.Moderatorは中村耕三教授(東京大学・厚生労働省「脊柱靱帯骨化症研究班」主任研究者)と馬場が務めた.なおこの極めて難治的な病態に関して,「脊柱靱帯骨化症研究班」では多施設共同研究が平成17年度から行われており,多数例のcritical reviewが松本守雄研究主査(慶應義塾大学)を中心に鋭意行われている.

 「胸椎部 後縦靱帯骨化症(OPLL myelopathy)」は言うまでもなく脊椎外科学分野では最も治療が困難な病態である.1970年代までは主として椎弓切除術が一般的であったが,1980年代に入り慶應義塾大学グループなどによって「前方除圧固定」の成績発表が行われだした.手術顕微鏡やsurgical airtomeの導入,脊髄モニタリングの併用によって手術成績も向上した.1980年代に入り「後方進入前方除圧術」(大塚訓喜 信州大学元助教授)が報告される一方,黄色靱帯骨化(OLF)合併例(OPLL・OLF合併例)という脊髄の菲薄度が極限に達した状態に対する直視下の「脊髄全周除圧術circumspinal decompression」が,富田勝郎助教授(現,金沢大学医学部附属病院長)によって初めて第16回日本脊椎外科研究会(1987年,東京)で報告され,1990年前後はそれらの2つの術式が斯界の大きな注目を集め,また多くの追試もなされた.筆者も数多くの富田勝郎教授の「脊髄全周除圧手術」の助手を務めさせていただき,その手技は教授の英文論文(Spine 15, 1990)に詳しく,その延長上に後述するdekyphosis stabilization(Kawahara N, et al. Spine 33, 2008)が生き続いている.

整形外科/基礎

超高分子量ポリエチレンケーブルを用いたG-rod segmental spinal instrumentation(SSI)法の強度特性

著者: 杉田誠 ,   武井寛 ,   橋本淳一 ,   仲野春樹 ,   荻野利彦

ページ範囲:P.573 - P.578

 これまで筆者らは転移性脊椎腫瘍の後方除圧固定術として,G-rodを用いたsegmental spinal instrumentation(G-rod SSI法)を行いその有用性を報告してきた.本研究ではG-rod SSI法のsublaminar wireとしてチタンケーブルと超高分子量ポリエチレンケーブル(UHMWPEケーブル)を用いた強度比較試験を行った.繰り返し試験,破壊試験ともに,UHMWPEケーブルによる固定法はチタンケーブルによる固定法と同等の固定力を持ち,高い弾性力を持ち合わせていた.UHMWPEケーブルを用いたG-rod SSI法は固定隣接椎間へのストレスを軽減させうる方法と考えられた.

座談会

ICD改訂と整形外科医療

著者: 里見和彦 ,   石名田洋一 ,   望月一男 ,   伊藤芳毅 ,   川上紀明

ページ範囲:P.581 - P.589

里見 本日お話するICDとは,International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsの略で,WHO(世界保健機関)の疾病,傷害および死因統計分類,つまり疾病分類です.過去5回の修正が行われ,1990年にICD-10が決議され,その後も小改訂を繰り返し,現在は2003年版が使われています.各病院の病歴室では,患者さんの退院時にICD-10を使って疾病を分類しています.

 ICDは当初の17章から21章に増え,3桁・4桁分類,大~小分類と,約14,000分類の疾病があります.その中で整形外科疾患については1300番代が「筋骨格系および結合組織の疾患」,1900番代「骨折」,1700番代の「先天性奇形,変形および染色体異常等」があります.

最新基礎科学/知っておきたい

関節リウマチの疾患関連遺伝子PADI4

著者: 山本一彦

ページ範囲:P.592 - P.594

■関節リウマチの遺伝要因

 関節リウマチ(RA)は,関節滑膜を中心とする全身性の自己免疫現象と炎症を特徴とし,滑膜細胞の異常増殖と骨,軟骨破壊に至る原因不明の慢性疾患である.発症や病態の進展には,複数の遺伝要因1)および環境要因が関連する,いわゆる多因子疾患の一つである.遺伝要因に関しては主要組織適合遺伝子複合体HLAがもっとも寄与度は大きいとされているが,それ以外の非HLA領域の遺伝要因の検索は,病態の解明と新しい治療法の開発に重要である.近年,主として遺伝疾患で解析されてきた疾患に関与する遺伝子解析が,種々の方法の発展から,ありふれた疾患でも可能となりつつあり,原因に関係する遺伝要因が明らかとされつつある.

 免疫応答におけるHLAの重要性はすでに多くの報告がある.RAに関してはクラスⅡ分子のHLA-DR1DR4が関連を示すことが従来から知られている.さらに,DR抗原のβ鎖をコードするHLA-DRB1の対立遺伝子の*0101,0401,0404,0405などが関連していることが明らかになっている.そして,これらの対立遺伝子において超可変領域に相当する第70-74残基がQ/KRRAAという共通のアミノ酸配列(shared epitope)であることが判明し,「shared epitope仮説」が提唱された2).このことから,shared epitopeをもつクラスⅡ分子が,RA特異抗原を提示しやすいのではないかという可能性が考えられる.

国際学会印象記

第37回Neuroscience meetingに参加して

著者: 北村和也

ページ範囲:P.596 - P.597

 Neuroscience meetingは米国Society for Neuroscience(SfN)が1971年から毎年開催する世界規模の神経科学学会で,2007年は11月3日から7日までの5日間にわたり,カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・コンベンションセンターで開催されました.参加人数は毎年増加しており,今回はなんと約3万2000人が世界中から参加しました.

 学会は毎朝8時30分にスタートし,ポスター発表,口頭発表に加え,世界的に有名な神経科学者によるワークショップや13のレクチャー,46のシンポジウムが開かれました.さらにはテーマ・疾患ごとに様々なサテライトイベントも開催され,遅くは夜10時まで活発な議論が交わされるという盛りだくさんな学会です.内容も神経発生学や神経生理学,行動学といった基礎的研究から,神経疾患・外傷に対する治療の開発といった比較的臨床色を持った研究まで多岐にわたります.大きく6つにテーマ分けられ,半日単位のセッション数は5日間で938(!)にもなります.すべての演題を見て回るなど到底不可能で,学会冊子も日ごとに分けて作られ電話帳のような厚さです.インターネットから演題検索ソフトをダウンロードして興味のある演題をピックアップし,自分のスケジュールを立てて巨大な学会場を動き回る,といった感じです.サンディエゴ・コンベンションセンターはまさに巨大,ぶち抜きワンフロアになっている1階展示場はなんと約4万9,000mm2もあり(東京ドームがすっぽり入ります),そのすべてを使ってポスター発表とメーカー展示が行われます.どこに何があるのか,自分が今どこにいるのかを理解することから学会が始まりました.

連載 臨床研修医のための整形外科・18【最終回】

徒手検査

著者: 林俊吉 ,   高橋正明 ,   照屋徹

ページ範囲:P.600 - P.605

 今回は診察時に有用な徒手検査について,これまでに出てきた検査も含めて採り上げます.徒手検査だけでおおよその診断が付くことも多いので,しっかり覚えましょう.

小児の整形外科疾患をどう診るか?─実際にあった家族からの相談事例に答えて・14

炎症性(外傷性)斜頚

著者: 亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.606 - P.607

炎症性(外傷性)斜頚

 私のこどもは,現在,2歳8カ月になります.

 ちょうど,1歳のときに頭を強く打って,頭部打撲と首の捻挫の診断が出ました.

 診断していただいた時には,整形外科の先生でしたが,X線検査でも異常がないとの説明でしたので,安心していました.1週間ぐらいして,少し頭が傾いているのに気付き,何度か小児科の先生に相談しましたが,成長過程もあり観察するしかないとのお話でした.

 頭部打撲と首の捻挫から1年以上経ちますが,左側に頭が斜頚しているのと,少し左足がつま先歩きします.このまま様子を見ていて良くなるのでしょうか.

 頭部打撲と首の捻挫が原因かはわかりませんが,何か内科的な病気でもあるのでしょうか.助言していただける内容があれば教えてください.

 もし,問題があるようであれば,専門医の先生をご紹介いただけませんでしょうか.

臨床経験

Modular rotating-hinge knee systemの膝蓋大腿関節の適合について―人工膝関節再置換術例の検討

著者: 佐々木知行 ,   赤石孝一 ,   金森茂雄 ,   片野博 ,   植山和正

ページ範囲:P.609 - P.616

 人工膝関節(TKA)再置換術に使用したmodular rotating-hinge型TKAの膝蓋大腿関節の適合について検討した.対象は女性6膝(平均年齢76.5歳)で,術後1年に臨床成績(JOAスコア)と膝蓋大腿関節の適合を評価した.JOAスコアは術前36.7点から術後64.2点に改善していた.膝蓋大腿関節は適合良好1膝,傾斜3膝,亜脱臼2膝(33%)であった.膝蓋大腿関節の適合性にはコンポーネントの設置,インプラントのkinematicsや構造など,種々の因子が関与している.

症例報告

リウマチ肩において急速に上腕骨頭の圧潰を生じた1例

著者: 後藤晃 ,   不動一誠 ,   吉川秀樹 ,   菅本一臣

ページ範囲:P.617 - P.622

 関節リウマチ(RA)患者で,急速に上腕骨頭が圧潰した症例を経験したので報告する.症例は57歳の女性で,2004年から手関節にRAを発症し,当科初診時Steinbrocker Stage Ⅲ Class Ⅱの状態であった.プレドニン10mg/日,リウマトレックス6mg/週を2年間投与されていたが,2006年12月から右肩痛が出現して徐々に増悪し,その後4カ月間の短期間で上腕骨頭の圧潰を来し,人工骨頭置換術を施行した.RAで急速に上腕骨頭が圧壊したという報告はないが,本症例では術中所見から軟骨下骨内に旺盛なパンヌスの浸潤がみられ,これが骨の脆弱性を引き起こし,非荷重関節である上腕骨頭に圧潰を呈したのではないかと考えられた.

肩関節脱臼骨折に腋窩動脈損傷を合併し上肢麻痺を呈した1例

著者: 田中大 ,   新戸部泰輔 ,   若井裕司 ,   大鹿周佐

ページ範囲:P.623 - P.626

 肩関節脱臼に腋窩動脈損傷を合併した稀な症例を経験したので報告する.症例は88歳の女性である.2006年11月に転倒し受傷した.左肩と左股関節の疼痛があり,翌日に当科を受診し,入院となった.左上腕骨近位端の4 part前方脱臼骨折と左大腿骨転子部骨折が認められた.入院後2日目に左手指の自動運動不能となり,皮膚蒼白,橈骨動脈の触知が不能となった.血管造影で腋窩動脈の閉塞が認められ,左腋窩―上腕動脈バイパス術を行った.血流再開時から橈骨動脈の拍動が触知され,術後10カ月経過した時点で循環障害は認められていない.

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あとがき フリーアクセス

著者: 富田勝郎

ページ範囲:P.634 - P.634

 今の季節,花と新緑に輝き,蝶や小鳥が楽しそうに飛び回る景色を眺めていると,なぜかわれわれにもファイトが湧いてきます.私たち整形外科医も日整会を中心に,まさに大忙しの学会シーズンです.学会場内で発表や討論を聴いていると,年齢差を忘れて「こうすればもっといいのかな,ああいう考えもありうるナー」などと,自分だけの空想の世界に浸ってしまいます.超多忙な毎日から逸脱したこのひと時こそが,日頃の臨床で気がかりだった疑問に答えを見つけたり,新しい着想を秘かに練ったりして楽しむることができる,“ぜいたくな知的ゲーム”の時間です.

 しかし会場からロビーに出て,似た年代の先生方に会うと,どちらから言うともなしに「イャー,お元気?今は大学病院も経営,経営で疲れますよネー」「治療の沙汰も金次第じゃ,まともなディスカッションできないよね」「今の医療崩壊,だれが責任取るのだろう?」「この引き金となった初期研修医制度,なんとか軌道修正できないものかねえ」といった現実的なフラストレーションを吐き合う場になってしまいます.しかし,このようにお互いに苦労していることを確かめ励まし合うのも,また楽しからずや!安らぎと情報交換のまたとない機会なのです.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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