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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科43巻8号

2008年08月発行

雑誌目次

巻頭言

第23回日本整形外科学会基礎学術集会の開催にあたって

著者: 高倉義典

ページ範囲:P.748 - P.749

 本年の10月23日(木)と24日(金)の両日,京都市の国立京都国際会館で第23回日本整形外科学会基礎学術集会を開催いたします.関係者の希望もあり,奈良での開催を考えましたが,この時期は秋の観光シーズンのうえに東大寺の正倉院展開催と重なり,宿泊施設の確保が困難なため,参加の先生方にご迷惑をお掛けするのではないかと考え,京都での開催に踏み切りました.日整会関連学会の京都開催は8年ぶりとなり,久しぶりに秋の京都を楽しんでいただきたく計画しました.

 WHOが中心となり日本整形外科学会が推進する「運動器の十年」も早終末を迎えようとしていますが,骨・関節を中心とする運動器分野における基礎研究は,超高齢化社会を迎えてその重要性が益々高くなってきています.整形外科的生活習慣病である変形性関節症や骨粗鬆症に対する分子生物学的な病態の解明および治療法の開発,損傷したり老朽化した運動器組織の再生および新しく開発された人工材による補塡など,わが国の基礎研究は国際的にも高い評価を受けています.それらの最先端の研究成果を報告して情報交換を行い,それを糧に更なる新しい展開の基盤を確立する場がこの学術集会に課せられた責務と思っています.

誌上シンポジウム 腰椎変性側弯の治療選択

特集にあたって

著者: 田口敏彦

ページ範囲:P.750 - P.750

 従来,脊椎側弯症の治療の主な対象は,小児期から10歳代の特発性側弯症であった.しかし最近では腰椎変性側弯症が注目されるようになってきた.臨床症状が主には変形だけである特発性側弯症に対して,腰椎変性側弯症では,痛みやしびれ,間欠性跛行などの臨床症状を呈し,ADLやQOLを著しく低下させる.また高齢化が進む現在では日常臨床でもよく遭遇する疾患になってきている.

 腰椎変性側弯症が神経症状を有する場合,その原因は椎体の回旋変形や椎間関節の肥厚のための神経圧迫によるものが多い.本症の最も典型的なX線所見の特徴は,L4-5間での椎体の側方すべりとL3-4間での椎体の回旋変形である.中には前額面や矢状面あるいはその両方でのimbalanceがみられるものもある.また前額面の側弯だけでなく矢状面での腰椎前弯の消失も特徴的である.

腰椎変性側弯症に対する固定術を併用しない椎弓切除術の手術成績

著者: 三浦寿一 ,   鷲見正敏 ,   笠原孝一 ,   金村在哲 ,   高畑正人 ,   中谷徹也 ,   井口哲弘 ,   栗原章

ページ範囲:P.751 - P.755

 腰椎変性側弯症に対する固定術の適応を調べるために,固定術を併用しないで椎弓切除術を行った36例の治療成績を検討した.平均年齢は71.6歳,追跡調査期間は5年1カ月であった.JOAスコア(15点満点法)は術前7.2点から調査時10.8点へ改善していたが,Cobb角は術前15.4°から18.4°へと悪化していた.術前Cobb角20°以上,術前側方すべり3mm以上が除圧術単独の成績不良因子となっていた.これらの因子が術前から存在している症例に除圧術を施行する際には,固定術を併用すべきであると考えられる.

腰椎変性側弯症に対する除圧術―従来法と内視鏡下除圧術の比較検討

著者: 麻殖生和博 ,   吉田宗人 ,   山田宏 ,   南出晃人 ,   中川幸洋 ,   川上守

ページ範囲:P.757 - P.763

 腰椎変性側弯症の病態は多彩であり,治療に関する統一した見解は得られていない.以前からわれわれは,腰椎変性側弯症に対する手術適応として,明らかに動的因子の関与が強い場合やforaminal stenosis(椎間孔狭窄)を除外し,脊柱管内のみの除圧で対処可能と判断した場合に除圧術のみで対応してきた.さらに最近では内視鏡を用いて片側進入両側除圧術を行っている.そこで,腰椎変性側弯症に対する従来の除圧術と内視鏡下除圧術の治療成績について比較検討した.除圧術の術後成績はいずれも比較的良好であったが,特に内視鏡下除圧術は,従来では固定術の適応であった症例でも不安定性が増強せず,良好な成績であった.腰椎変性側弯症に対する内視鏡下除圧術は有用であり,手術方法の選択肢のひとつになりうるが,今後のさらなる検討と長期経過観察が必要である.

変性側弯を伴う腰部脊柱管狭窄症の腰仙椎アライメントと術後成績

著者: 上杉昌章 ,   青田洋一 ,   大関信武 ,   金子貫一郎 ,   岩村祐一 ,   近藤総一 ,   三原久範 ,   河野心範 ,   戸口淳 ,   中村潤一郎 ,   齋藤知行

ページ範囲:P.765 - P.769

 変性側弯を伴う腰部脊柱管狭窄症の手術成績に腰仙椎アライメントが与える影響を後ろ向きに調査した.対象と方法:手術症例88例(除圧単独22例と除圧固定66例)の腰仙椎X線像と術後成績を調査した.結果:固定群のJOAスコア改善率不良群は術後のplumb lineの側方偏位が大きかった.また仙骨終板傾斜角が増加した群で再手術の頻度が高かった.結語:全額面のバランス不良の強い側弯は矯正すべきだが,後弯矯正時は隣接障害などの危険があり手技上の工夫が必要と考えられた.

腰椎変性側弯症に対する術式選択の変遷とその術後成績

著者: 千葉一裕 ,   松本守雄 ,   中村雅也 ,   高石官成 ,   石井賢 ,   辻崇 ,   渡辺航太 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.771 - P.777

 われわれは腰・下肢痛,神経障害を有する腰椎変性側弯症患者に対して,側弯度や回旋度を含めた変形の程度,不安定性や進行性の有無,神経障害形式に患者の年齢や活動度などを加味しつつ,開窓術と椎弓根スクリュー併用の多椎間矯正固定術を使い分けてきた.しかし,急速な高齢化による患者構成の激変に対応すべく,内視鏡視下や棘突起縦割式椎弓切除術などの低侵襲後方除圧術や改良されたインプラントによる短椎間の後方進入椎体間固定術などを選択肢に加え,術式選択基準に修正を加えてきた.こうした治療戦略による術後成績は従来のものと比較して遜色のないものであり妥当と思われた.

Cobb角50°以上の腰椎変性側弯症に対する手術成績―術式選択と固定範囲に関する考察

著者: 岩﨑幹季 ,   奥田真也 ,   坂浦博伸 ,   大島和也 ,   吉川秀樹

ページ範囲:P.779 - P.787

 Cobb角50°以上の腰椎変性側弯症11例に対する手術成績を調査した(追跡期間:平均3年8カ月).矯正術を選択しなかった2例で術前の下肢痛は改善し,矯正固定術を選択した9例中7例で腰痛が改善した.側弯矯正率は,前方法3例と後方法3例では術直後平均67%,78%と良好な矯正を獲得できたが,追跡時には平均35%,67%と矯正損失を認めた.一方,前方・後方法3例では平均66%を追跡時まで維持していた.合併症は矯正固定術を選択した9例中6例に認め,前方固定術後早期に後方からの固定延長を2例に要したが,その他に経過観察中に再手術を要した症例はなかった.

調査報告

運動器に関する疫学調査―南会津スタディ第1報:腰部脊柱管狭窄の頻度と腰痛関連QOLとの関係(横断研究)

著者: 大谷晃司 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一 ,   矢吹省司 ,   五十嵐環 ,   恩田啓 ,   山内一矢 ,   二階堂琢也 ,   竹谷内克彰 ,   高橋一朗 ,   立原久義 ,   高山文治 ,   渡辺和之

ページ範囲:P.789 - P.796

 腰部脊柱管狭窄による下肢症状を有する頻度は,加齢とともに増加することが予想されている.しかし,その実態は明らかになっていない.今回われわれは,東北腰部脊柱管狭窄研究会で作成された腰部脊柱管狭窄の診断ツールを用い,地域住民における実態調査を行った.同時に,腰痛関連QOL尺度であるRoland-Morris Disability Questionnaire日本語版も調査した.対象は,同年代の人口の21.5%に当たる地域住民1,862名である(最多年代層は70歳代).本調査により,腰部脊柱管狭窄は加齢とともにその頻度は増大することが判明した.そして,腰部脊柱管狭窄の存在は,腰痛関連QOLを低下させることが明らかになった.

連載 小児の整形外科疾患をどう診るか?─実際にあった家族からの相談事例に答えて・16

上腕骨顆上骨折

著者: 亀ヶ谷真琴

ページ範囲:P.800 - P.801

上腕骨顆上骨折

 はじめまして.

 小学3年生9歳の息子の骨折についてご相談いたしたくメールをさせていただきました.

 息子は,先日遊びに出た先で自転車に乗っていて転倒してしまい,痛くて右腕が動かないと泣きながら帰って参りました.その日は水曜日でいつも受診させていただいている整形外科医院はお休み,翌日は祝日でした.仕方なく,まだ診察時間内だった近くの内科に事情を話し,右手肘周辺のレントゲンを撮ってもらいました.そこで写った写真では,骨折はしていないでしょうとの診断でした.それでも,肘が曲がらない,肘の少し上が痛いと本人は言い,その間にも二の腕の下部付近は少しずつ腫れてきたのですが,処方されたシップ剤を貼って,休日を過ごす間に痛みは和らいだようでした.3週ほど経って,まだ腕は90度程度しか曲がらないというので,さすがにおかしいと思い,整形外科医院を受診したところ,その場で先生に叱られました.整形の先生が撮ったレントゲンには,はっきり骨折の痕が写っていました.診断は,上腕骨顆上骨折でした.その上,既に3週間経っていたので,骨はつき始めており,肘の関節の一部分がほぼまっすぐの形でくっついてしまっていると言われました.もう手術をしなくては治らないので,大学病院に行きなさいと言われ,紹介状をいただき慌てて翌日に大学病院に行きました.

 しかし,大学病院の先生の診断では,現段階での手術はむしろ難しいとのことでした.子供の場合は,骨が正しい方向に成長していく可能性も捨てられないため,関節自体も固くなっている今はそのリハビリをしながら,今現在の骨折が治るのを待って,その骨の状態でできるだけ動くように訓練し,それでも日常生活に支障があるようならば,手術を考えますとのことでした.

 こういった子供の症状の場合,すぐに手術をしたほうがよいのでしょうか.それとも大学病院での診断のように,リハビリで様子を見たほうがよいのでしょうか.最初に骨折ではないと言われて安心してしまい,整形に行かなかったことがつくづく悔やまれてなりません.お忙しいところ大変恐縮ですが,一言でもお返事を頂けましたら幸いです.

医者も知りたい【医者のはなし】・30

肥後熊本藩医・熊本最初の種痘施行者 高橋春圃(1805-1868)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.802 - P.805

はじめに

 高橋春圃は,幕末に活躍した蘭法医で,熊本で初めて種痘を行った人物である.シーボルトの弟子で湯布院出身の医師・日野鼎(てい)哉(さい)が天保元年(1830)に肥後(現在の熊本)を訪れたときに,彼から牛の種痘のことを学び,蘭方医学に興味を抱くようになった.その後,嘉永元年(1848)に来日したオランダ商館医モーニッケ(Otto G. J. Mohnike 1814-1884)は,種痘のために牛の天然痘の痘漿(とうしょう)を持参したが,シーボルトが文政6年(1823)に持って来たときと同様に,長い船旅で中のウイルスは死滅していた.

 その嘉永元年にモーニッケは天草に行き,種痘のことを説いた.そのことを聞いた高橋春圃は直ちに天草に赴いたが,すでにモーニッケは去った後であった.佐賀藩主・鍋島直正の依頼でモーニッケは牛痘苗を輸入し,嘉永2年(1849)に種痘が長崎で成功した.その報に接した春圃は,直ちに長崎に赴いてモーニッケに種痘法を学び,熊本で種痘法を成功させ,その普及に努めた功労者である.安政4年(1857)にオランダ軍医・ポンペ(Johannes L. C. Pompe van Meerdervoort 1829~1908)が,長崎において日本の医師に医学を教えたときに,当時55歳の高橋春圃は,ポンペ塾開講の3年後の万延元年(1860)年に長崎に赴き,ポンペの門下生になった.

 春圃は,明治維新後,昔から熊本に存在した伝統ある医学校「再春館」を廃止して,新しい医学校を発足させる原動力となった陰の立役者でもある.この新医学校に長崎医学校からマンスフェルトが招聘され,後の明治日本医学界の重鎮になった細菌学の北里柴三郎と緒方正規,そして産婦人科学の功労者・浜田玄達が巣立ったことは有名である.

臨床経験

人工股関節全置換術における簡便で効果的な周術期疼痛管理プロトコールの検討

著者: 前田ゆき ,   齊藤正伸 ,   西本俊介 ,   大島万里子 ,   小山毅 ,   米延策雄 ,   森下誠治

ページ範囲:P.807 - P.812

 初回人工関節置換術(THA)35例に0.1mgモルヒネを加えた脊椎麻酔で手術を施行し,12時間は除痛効果のあるこのくも膜下モルヒネと術翌日からCox-2阻害剤の定期的内服を組み合わせた疼痛管理プロトコールを用いて,術後の疼痛,早期歩行の達成を評価した.術当日はくも膜下モルヒネの効果で全例疼痛はなく,術翌日には71%の患者が歩行可能となった.その後も歩行に支障のない範囲の動作時痛で経過し,術後20日以内で88%の患者が杖歩行50m以上可能であった.このプロトコールはTHA後の除痛,早期リハビリテーションに有用であった.

後期高齢者脊椎手術後に生じたせん妄症例の検討

著者: 石川和彦 ,   太田吉雄 ,   武井寛 ,   杉田誠

ページ範囲:P.813 - P.816

 後期高齢者の脊椎手術を行った80例を対象として,せん妄を呈した症例の頻度および危険因子を調査した.危険因子として脳疾患の既往,服薬していた薬品数,抗不安薬や抗コリン薬の内服,手術時間,術中出血量,術翌日ヘモグロビン値,術後1週の血清ナトリウム値,総蛋白値,術後酸素飽和度,さらに解熱までの期間を調べ検討した.術後せん妄発生率は22.5%であった.せん妄の発生が有意に高い因子は,術後低酸素血症,解熱までの期間延長,長い手術時間が挙げられた.せん妄は単なる精神症状としてとらえるべきでなく,全身的な症候の一症状として認識するべきと考えられた.

症例報告

橈骨遠位端に生じたサルモネラ骨髄炎の1例

著者: 喜多川孝欽 ,   篠崎哲也 ,   柳川天志 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.817 - P.820

 われわれは基礎疾患を伴わない橈骨遠位端サルモネラ骨髄炎を経験した.症例は18歳の女性で主訴は右手関節痛であった.単純X線像で橈骨遠位端に溶骨性変化を認め,CTでは皮質骨まで達する境界不明瞭な溶骨性変化を呈する腫瘤を認めた.腫瘤性病変はMRIのT1強調像で低信号,T2強調像で不均一な高信号を呈した.CTガイド下針生検術を行ったところ,病理検査で炎症細胞浸潤と線維化を認め,培養でSalmonella O7が同定された.便培養は陰性であった.骨移植を併用しない病巣掻爬と抗生剤投与で治療を行ったが経過良好である.

膝蓋腱再断裂後3カ月の陳旧例に対し再再建術を行った1例

著者: 森山一郎 ,   中村光一 ,   松村崇史 ,   白石建

ページ範囲:P.821 - P.825

 膝蓋腱断裂は通常早期に治療され陳旧例となることは稀である.陳旧性の膝蓋腱再断裂症例に対する観血的治療を経験したので報告する.症例は34歳の男性で,7年前に左膝蓋腱を断裂し,Leeds-Keio人工靱帯を用いて治療された.今回,再受傷し左膝蓋腱再断裂と診断され,受傷後約3カ月でLeeds-Keio人工靱帯で再再建術が行われた.膝蓋上囊のはく離と外側膝蓋支帯を切離し膝蓋骨を元位置へ整復できた.手術後7日で可動域訓練,21日で全荷重歩行を開始した.手術後約3年の現在,四頭筋筋力,可動域は十分に回復し,スポーツ活動も可能である.

椎弓切除後の頚椎亜脱臼に椎弓根スクリュー固定術が有用であった1例―三次元的X線透視法を用いて

著者: 町野正明 ,   湯川泰紹 ,   伊藤圭吾 ,   堀江裕美子 ,   中島宏彰 ,   加藤文彦

ページ範囲:P.827 - P.831

 頚椎椎弓根スクリュー(以下PS)の登場により後方のみでの短分節再建が可能になった.今回われわれは,椎弓切除術後に外傷によって頚椎亜脱臼を生じ,PS固定術を行った症例を経験したので報告する.われわれは,三次元的X線透視を用い,PS固定術を施行した.術後CTでスクリュー刺入位置は良好であり,順調に骨癒合も得られている.PSの刺入精度を上げるため,今日ではナビゲーションシステムが導入されている.しかし,椎弓切除例ではリファレンスアームが立てづらいため,ナビゲーションを用いてPS刺入することは困難である.三次元的X線透視下で正確にpedicle axis viewを確保し,PS刺入点と角度に十分な注意を払えば,今回のような解剖学的指標の乏しい症例においても安全にPS刺入を行うことができる.頚椎椎弓切除後に亜脱臼を生じた症例に対し,三次元的X線透視法を用いたPS固定術は有用であった.

特異的遺伝子転座を認めず胞巣状構造を呈した横紋筋肉腫の1例

著者: 李貴東 ,   生越章 ,   堀田哲夫 ,   川島寛之 ,   遠藤直人 ,   梅津哉 ,   今井千速 ,   窪田正幸 ,   奥山直樹 ,   平山裕 ,   小川淳 ,   浅見恵子 ,   岩渕晴子

ページ範囲:P.833 - P.837

 胞巣状構造を呈するが特異的遺伝子転座を認めない横紋筋肉腫1例を経験したので報告する.症例は1歳2カ月の女児で,針細胞診で横紋筋肉腫と診断し,広範切除を行った.術後組織病理学所見では,胎児型の部分と胞巣状構造が混じったパターンであった.典型的胞巣型と異なり,線維性間質に乏しく,大量の横紋筋芽細胞が混在するのが特徴であった.胞巣型に特異的なt(2;13)またはt(1;13)の転座を認めなかった.術後6年9カ月の現在,多発性転移を認め,再発と軽快を繰り返し,現在化学療法中である.

神経根症を呈した第7頚椎Langerhans細胞組織球症の1例

著者: 二村尚久 ,   中島浩敦 ,   内堀充敏 ,   米川正洋

ページ範囲:P.839 - P.843

 症例は52歳の男性で,約1カ月前から発熱に続く頚部痛と左上肢痛があった.単純X線像上,第7頚椎の椎弓根陰影が不明瞭で,単純CTでは,椎体から椎弓根に骨融解を認めた.単純MRIでは,椎体はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号で,脊柱管内への進展を認めた.切開生検組織で,Langerhans細胞組織球症と診断された.Langerhans細胞組織球症は小児発生が多いが,成人にも発生することがある.疼痛や腫脹を呈することが多く,本症例のように神経根症状を呈する例は稀である.

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あとがき フリーアクセス

著者: 荻野利彦

ページ範囲:P.850 - P.850

 北京オリンピックが近づいて各国で予選が行われています.今年は水泳の水着が話題になりました.日本予選でもアメリカの予選でもレーザー・レーサーという水着を着るとさらに速く泳げて,世界新記録が続出しました.オリンピックの本番でどのようなことになるか楽しみです.安定した良い結果を出すことを目標にするという点では,競技スポーツと整形外科の手術にも共通点があります.手術を含む綿密な治療計画,術者の技術の修練,器具の改良や開発など常に心がける必要があります.いずれも安全第一に考えなければなりません.

 後期高齢者医療制度が問題になってからしばらく経過しました.先日の新聞に「市場原理主義が導入され,競争原理,自己責任,経済優先で,美しく優しかった日本は,急に冷たいぎすぎすした国になってしまったこと.その病状の1つが,強引な医療費の削減に表れたこと」が書かれていました.前述の通り医療も良い結果を出すことが要求されますが,医療体制も含めてその底流には,患者さんあるいは他者への優しさと思いやりが必須です.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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