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雑誌文献

臨床整形外科44巻1号

2009年01月発行

文献概要

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あとがき フリーアクセス

著者: 戸山芳昭

所属機関:

ページ範囲:P.118 - P.118

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 新年明けましておめでとうございます.今年こそ,医学会・医療界にとって良い年でありますことを願っております.しかし,昨年を振り返ってみますと,本当に多難な1年でした.地球規模では,温暖化現象などの環境問題や頻発した大地震などの自然災害,石油高騰によるエネルギー問題,食の安全と食糧危機問題,米国のサブプライム問題を引き金に世界中に広がった金融・経済危機とそれに続く大企業の経営危機・倒産,世界的に多発したテロと戦争,新型インフルエンザ流行の恐怖,等々…….米国による一極支配が終焉を迎える中,その判断はともあれ,世界的に統制がとれずに地球規模での危機が迫っている予感がいたします.わが国でも,アメリカ経済不況の影響による経営危機,大企業の経営悪化と就職難,政治不信,教育崩壊,無差別殺人,小児虐待,大麻問題と倫理面の欠如,少子高齢化,等々…….中でも政治不信はひどいものです.官僚がやり玉に挙げられてきましたが,本当は政治が,政治家が最も重症のような気がいたします.

 さて,医学会,医療界ではどのような1年であったでしょうか.医療界も散々な1年であったと思います.医療崩壊と地域医療の壊滅,医師不足,産科・小児・救急医療崩壊,医療過誤多発,病院経営破綻,母体たらい回し事件(これはマスコミの表現であり,本当は「入院不可能」とでも言うべきです),年金制度崩壊,後期高齢者医療混乱,等々.そして極めつけは,「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」と全国知事会議で総理大臣自らが医師に対して発言した言葉です.全く言語道断であり,すべての医師が怒り心頭と思います.日本医学会も早速に謝罪と訂正を申し入れ,全国医学部長病院長会議も総理大臣宛に抗議文を提出しました.「こんな日本に誰がした……」と本当に言いたいところです.でも,新年ですから明るい話題も載せましょう.北京オリンピックでの日本人の活躍,ノーベル物理学賞・化学賞の受賞,世界中を駆けめぐったiPS細胞,等々.少しは希望が持てる感じもいたします.そして,政府が行った施策は,今年度から全国700名弱の医学部定員増,産科・小児科・救急・女性医師優遇措置,地域医療活性化政策,救急体制構築,等々です.また,優れたわが国の基礎医学の重点化,集中化を図るためにグローバルCOEプログラムや幾つかの拠点形成が成されました.そして,その基礎医学の成果を臨床応用に向かわせるための施策としてスーパー特区も選定されました.日本の医学・医療が世界と戦うための体制作りかと思いますが,アメリカと比べれば規模が全く違います.アメリカのように莫大な研究費の支援や人的・物的支援を行わない限り,あっという間に追い越されてしまうはずです.政府は,ぜひとも医学・医療に対して国家的戦力を立て,世界と戦えるだけの支援を行うべきです.日本の基礎医学は世界と十分戦える力を持っています.知恵を持っています.今年こそ,日本の医学・医療の夜明けの年としたいものです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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