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あとがき フリーアクセス
著者: 戸山芳昭
所属機関:
ページ範囲:P.118 - P.118
文献購入ページに移動さて,医学会,医療界ではどのような1年であったでしょうか.医療界も散々な1年であったと思います.医療崩壊と地域医療の壊滅,医師不足,産科・小児・救急医療崩壊,医療過誤多発,病院経営破綻,母体たらい回し事件(これはマスコミの表現であり,本当は「入院不可能」とでも言うべきです),年金制度崩壊,後期高齢者医療混乱,等々.そして極めつけは,「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」と全国知事会議で総理大臣自らが医師に対して発言した言葉です.全く言語道断であり,すべての医師が怒り心頭と思います.日本医学会も早速に謝罪と訂正を申し入れ,全国医学部長病院長会議も総理大臣宛に抗議文を提出しました.「こんな日本に誰がした……」と本当に言いたいところです.でも,新年ですから明るい話題も載せましょう.北京オリンピックでの日本人の活躍,ノーベル物理学賞・化学賞の受賞,世界中を駆けめぐったiPS細胞,等々.少しは希望が持てる感じもいたします.そして,政府が行った施策は,今年度から全国700名弱の医学部定員増,産科・小児科・救急・女性医師優遇措置,地域医療活性化政策,救急体制構築,等々です.また,優れたわが国の基礎医学の重点化,集中化を図るためにグローバルCOEプログラムや幾つかの拠点形成が成されました.そして,その基礎医学の成果を臨床応用に向かわせるための施策としてスーパー特区も選定されました.日本の医学・医療が世界と戦うための体制作りかと思いますが,アメリカと比べれば規模が全く違います.アメリカのように莫大な研究費の支援や人的・物的支援を行わない限り,あっという間に追い越されてしまうはずです.政府は,ぜひとも医学・医療に対して国家的戦力を立て,世界と戦えるだけの支援を行うべきです.日本の基礎医学は世界と十分戦える力を持っています.知恵を持っています.今年こそ,日本の医学・医療の夜明けの年としたいものです.
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