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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科44巻10号

2009年10月発行

雑誌目次

視座

恩師を持とう

著者: 松本秀男

ページ範囲:P.971 - P.972

 「恩師はいるだけで幸せである.」これは私の恩師の言葉です.「恩師はいると,それなりに大変なことも多い.」と言い返しておきました.

 整形外科医はやはり外科医です.したがって,一人前になるためには,知識だけではなく,どうしても技術の習得が必要になります.最近は様々なシミュレーション装置などができていますし,手術手技のトレーニング設備なども発達していて,技術の習得に力を発揮しています.しかし外科医は,やっぱり最後は実際に手術の助手を務めて,先輩の技術を学ばない限り,成長はありえません.そして,今度は先輩に助手に入ってもらって,様々なアドバイスを受けながら手術の執刀医をさせてもらうことで,大きく成長します.「技術は教わるのではなく,盗め!」とよく言われますが,実際は教わるほうがはるかに楽ですし,近道です.ある先生が長い時間をかけて作り上げてきた技術を,「ここはこういう理由でこのようにしている.」と教わるほうが,完成した技だけを横から見て学ぶより,はるかに早く自分のものにできます.

誌上シンポジウム 整形外科術後感染の実態と予防対策

緒言 フリーアクセス

著者: 山本謙吾

ページ範囲:P.974 - P.974

 近年の生体材料分野での著しい進歩に伴い,人工関節,脊椎インストゥルメンテーションなど大きな金属が体内に挿入される頻度が高くなりました.しかし整形外科手術は無菌的手術がほとんどであり,ひとたび術後深部感染が生じると治療期間の延長とともに大きな機能障害をもたらし,患者の精神的・肉体的苦痛,また医療経済面での損失も計り知れません.われわれは常にこの術後感染の危険性を念頭に置き,細心の注意を払いながら周術期の管理に臨まなければなりません.

 米国予防疾病管理センター(CDC)より手術部位感染防止ガイドラインが発表されて以来,根拠に基づいた予防対策が国内外において論じられるようになりました.剃毛が否定され,手洗いが簡略化され,術後の抗菌薬投与が不要とされ,毎日の創消毒も不要といわれてきました.しかし多くの規制が緩むにつれ,人の動きがさらにこの規制ラインを低下させ重大な問題が生じることだけは避けなければなりません.手洗いの簡略化がやがて手洗いのいいかげん化に,創がドレッシングされたまま確認されず感染の発見の遅れに,ということがないよう注意しなければなりません.手術部位感染(SSI)予防の基本は周術期の清潔操作であり,すべてのスタッフが感染予防に対する高い意識を共通して持って行動することが重要であります.

整形外科領域における術後感染の疫学―日本整形外科学会学術研究プロジェクト調査より

著者: 正岡利紀 ,   山本謙吾 ,   石井良章 ,   飯田寛和 ,   松野丈夫 ,   里見和彦 ,   豊島良太 ,   鳥巣岳彦 ,   宮岡英世 ,   勝呂徹 ,   早乙女紘一 ,   四宮謙一 ,   河原和夫 ,   今給黎篤弘

ページ範囲:P.975 - P.980

 本邦における人工関節置換術後および脊椎インストゥルメンテーション術後の感染症発症率および発症率に影響するリスク因子について調査検討した.人工関節置換術後感染率は1.36%,脊椎インストゥルメンテーション術後の感染率は3.73%であった.手術時間・出血量は大きなリスク因子であるが,その他の様々な因子が複雑に絡み合いながら,術後感染を引き起こすと考えられ,すべての因子に細心の注意を払いながら,手術・周術期管理に臨むことが重要と考えられる.

整形外科術後感染における術前患者背景とその対策―主に関節リウマチ患者について

著者: 野中藤吾 ,   西坂文章 ,   斉藤政克 ,   福田寛二 ,   浜西千秋

ページ範囲:P.981 - P.985

 整形外科手術に限らず術後感染発症に対する術前の患者背景には種々の因子があり,その中でも生物学的製剤を使用している関節リウマチ患者や糖尿病を合併している患者の手術部位感染(SSI)には注意を要する.当科において,生物学的製剤加療中に整形外科手術を施行された28例38部位について検討したところ,3症例に術後SSI様所見を認めた.このうち2例は糖尿病を合併しており,1例は術前のインフリキシマブ休薬期間が10日であった.このような免疫不全因子が重複している症例では,なお一層SSI発症の危険性を念頭に置かなければならない.

整形外科手術における抗菌薬投与方法

著者: 小谷明弘

ページ範囲:P.987 - P.989

 抗菌薬の投与量は,抗菌薬の組織移行性と細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)により決定される.耐性菌を誘導しないためには,骨組織内でMICを上回るように十分量の抗菌薬を短期間使用することが重要である.しかし,骨組織への移行率は技術な問題があり正確にはわかっていない.侵襲の少ない小手術は別として,人工関節置換術における投与量,投与期間の短縮は,いまだ十分なエビデンスがないので,今後の研究課題である.また,抗菌薬の選択は,それぞれの施設での手術部位感染(SSI)の起炎菌,薬剤感受性を知ったうえで選択することが重要である.

整形外科手術術後感染に対する術前・術後対策

著者: 石井隆雄 ,   龍順之助

ページ範囲:P.991 - P.996

 運動器疾患を扱う整形外科において,術後感染はいったん発症すると治療に難渋し,著しい機能障害を引き起こす可能性があり,周術期における感染対策は重要である.日本整形外科学会よりエビデンスに基づいた骨・関節術後感染ガイドラインが作成され,以前に比べて術前清拭,手洗い法,周術期における抗菌薬の投与方法,術後創処置に対する考え方などはかなり変化してきており,これらを十分認識して診療を行う必要がある.

手術部位感染に対する術中対策

著者: 高橋寛 ,   横山雄一郎 ,   飯田泰明 ,   勝呂徹 ,   和田明人

ページ範囲:P.997 - P.1001

 手術部位感染(surgical site infectoin,SSI)に関与する因子は多岐にわたる.環境を含めた医療従事者側の因子,内科的疾患の既往,嗜好品などの患者側の因子に大きく分けられる.これらに関する予防対策は,術前,術中,術後の対策に分けることができる.本稿では,術中にわれわれが行っている対策に関して述べた.術中の対策は,医療従事者の服装,手術手技,患者の全身管理,手術室環境に分けられる.SSIの発生率を低下させるためには,これらに関してスタッフが一丸となって注意し,対応しなくてはならない.

整形外科領域における手術部位感染症対策としての手術室環境

著者: 宍戸孝明 ,   正岡利紀 ,   山本謙吾

ページ範囲:P.1003 - P.1007

 整形外科手術としての感染防御対策のうち手術室環境に関連し重要と思われる要因に対して概説した.一般手術室は清浄度クラスⅡ以上が求められるが,人工関節や脊椎インストゥルメントの手術の際にはバイオクリーンルームの使用が望ましい.手術室入室スタッフに対する対策として,手洗いの方法,手術室入室スタッフの人数,手術室での服装や清潔観念の統一,さらには術野の清潔操作などにも注意が必要になる.手術室環境の整備に対し整形外科領域におけるエビデンスは十分とはいえず,多施設での大規模なサーベイランスによるデータの蓄積が望まれる.

生体材料における工夫―銀系抗菌生体材料の開発

著者: 馬渡正明

ページ範囲:P.1009 - P.1015

 整形外科術後感染予防に対する取り組みの一環として,われわれが研究している銀形抗菌生体材料の開発について紹介する.銀は無機系抗菌剤として,広い抗菌スペクトラムと高い抗菌性を持ち,かつ低毒性を示すことが報告されている.この銀を金属チタン表面にコーティングする方法を複数考案した.その一つが酸化銀を添加したハイドロキシアパタイトをフレーム溶射する方法である.これまでの結果から十分な抗菌性が得られ,かつ明らかな毒性は認められておらず,また骨結合能も有しており,良好な成果が得られている.今後の実用化に向けてさらに研究を進めている.

論述

運動器に関する疫学調査―南会津スタディ第5報:住民検診参加者における腰痛患者のRoland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)得点からみた通院群と非通院群との比較

著者: 渡辺和之 ,   菊地臣一 ,   大谷晃司 ,   紺野愼一 ,   矢吹省司 ,   五十嵐環 ,   恩田啓 ,   山内一矢 ,   二階堂琢也 ,   竹谷内克彰 ,   高橋一朗 ,   立原久義 ,   高山文治

ページ範囲:P.1017 - P.1022

 腰椎検診参加者433名を対象にして,腰痛有訴者が整形外科で通院治療を受ける要因を検討した.「腰痛あり」と回答した263名のうち,通院治療中であったのは41名,15.6%であった.Roland-Morris Disability Questionnaire日本語版(以下RDQ)と腰痛のvisual analogue scale(VAS)を検討した結果,通院群は非通院群と比較して,腰痛によるQOLの障害が高度であり,痛みの程度が強かった.単純X線所見には有意差がなかった.RDQの各質問項目の検討により,通院群では,非通院群と比較して,家での仕事や移動に関する障害が多いことが判明した.

調査報告

臼蓋形成不全における潜在性二分脊椎の検討

著者: 森本忠嗣 ,   前田和政 ,   重松正森 ,   園畑素樹 ,   井上充 ,   馬渡正明 ,   佛淵孝夫

ページ範囲:P.1023 - P.1026

 本邦における臼蓋形成不全と潜在性二分脊椎の関係について検討した.対象は寛骨臼移動術を行った臼蓋形成不全223例(以下AD群)(全例女性,平均年齢39歳)であり,産婦人科手術例167例(平均年齢36歳)を対照群とした.2群の潜在性二分脊椎の合併率について調査した.潜在性二分脊椎の合併率はAD群23.3%,対照群8.4%であった(p<0.01).臼蓋形成不全の発生には遺伝的要因による腰仙椎から骨盤にかけての形成不全の可能性があることが示唆された.

連載 手術部位感染の基本・7

ドレーン・縫合糸

著者: 毛利靖彦 ,   小林美奈子 ,   大北喜基 ,   楠正人

ページ範囲:P.1028 - P.1030

はじめに

 整形外科領域および一般外科領域で,手術中,医療従事者側がかかわる手術部位感染(SSI)発生危険因子として,縫合糸,ドレーンがあげられる.今回は,縫合糸・ドレーンの適正使用について概説する.

医者も知りたい【医者のはなし】・36

シーボルトの弟子・日本眼科学の父 阿波の人・高 良斎(1799-1846)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1032 - P.1035

■はじめに

 高良斎(こうのりょうさい)はシーボルトの高弟で,当時の最新の西洋眼科技術を身に付け,日本人として最初に散瞳薬を記述した眼科医であった(図1).不幸にも文政11年(1828)8月にシーボルト事件が発覚し良斎も連座したが,シーボルトが文政12年(1829)12月に帰国した2カ月後に長崎居町払いの刑を言われ,故郷阿波の国(現在の徳島県)へ帰ってきた.そして養父の眼科医高錦国を助け,眼科診療を行った.しかし当時の日本ではどこでもそうであったように,阿波の国でも伝統の漢方医学が盛んで,オランダ医学は受け入れられなかった.そのために大坂(大阪)に出て眼科を開業し,蘭学を教え,多くの和蘭書を翻訳し活躍した.しかし弘化3年(1846)に48歳の若さで,脳出血のために他界した.

臨床経験

腰仙椎移行部の椎間孔外狭窄症に対する後方侵入脊椎内視鏡手術の治療成績

著者: 山田宏 ,   吉田宗人 ,   南出晃人 ,   中川幸洋 ,   河合将紀 ,   岩﨑博 ,   遠藤徹 ,   安藤宗治 ,   麻殖生和博 ,   延與良夫 ,   中尾慎一

ページ範囲:P.1039 - P.1047

 腰仙椎移行部の椎間孔外狭窄症に対する後方侵入脊椎内視鏡手術の治療成績について検討した.対象は術後2年以上の追跡が可能であった19例である.再手術を要した1例を除く全例で根性坐骨神経痛と間欠跛行の消失が得られ,最終調査時の日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準(JOAスコア)を用いた平均改善率は56.3%であった.再手術の原因は同時に合併する椎間孔内狭窄病変の除圧不足であった.脊椎内視鏡は体深部に位置する本疾患には最適の手術手技と考えられ,過去の術式にはない多くの利点を有している.したがって今後は標準術式となる可能性がある.

症例報告

骨セメントを用いた経皮的椎体形成術椎体の再圧潰の検討

著者: 町田正文 ,   相川大介 ,   飯塚慎吾 ,   加藤裕幸 ,   池上健 ,   金子慎二郎 ,   宝亀登 ,   福田健太郎 ,   竹光正和 ,   塩田匡宣 ,   山岸正明 ,   斉藤正史

ページ範囲:P.1049 - P.1055

 最近,骨粗鬆症性椎体骨折に対し骨セメント(polymethylmetacrylate:PMMA)を用いた椎体形成術(vertebroplasty:VP)が積極的に行われており,その有用性が報告されている.その一方,術中合併症としてPMMAの漏出による神経障害や肺塞栓が,また術後短期合併症として隣接椎体骨折が多く報告されている.われわれは形成椎体の再圧潰によるPMMAの脱転,後弯変形の増強による背部痛および椎体後壁の圧迫による神経障害を呈した2例に対し,PMMAを摘出すると同時に除圧,矯正および前方固定術を施行し,症状の改善を得たので再圧潰の機序を含めて報告する.今後,術後経過観察中にPMMAによる形成椎体の再圧潰や再骨折による症状の発現が増えることが予想されるため,適応症例を厳選すると同時に長期の経過観察が重要と思われる.

術後重度の上腸間膜動脈症候群を合併した高度側弯症の1例

著者: 高尾恒彰 ,   前田健 ,   土井俊郎 ,   播广谷勝三 ,   松本嘉寛 ,   芝啓一郎 ,   増本幸二 ,   岩本幸英

ページ範囲:P.1057 - P.1061

 脊柱変形手術後の上腸間膜動脈(SMA)症候群発生頻度は0.5~4.7%と報告されており,その危険因子として高度変形,低体重などが知られている.症例は22歳の男性で,消化管手術後のイレウスの既往を持つ高度側弯症に対して二期的矯正固定術を施行した結果,SMA症候群による重度のイレウスを合併し,消化管の観血的治療で改善した.多くの場合保存的に治癒するが,本症例のように消化管手術後イレウスの既往を有する場合,脊柱変形矯正手術により十二指腸閉塞を来す可能性がある.

Shprintzen-Goldberg症候群に伴った側弯症の4例

著者: 岡田英次朗 ,   松本守雄 ,   渡辺航太 ,   塩野雄太 ,   飯塚慎吾 ,   戸山芳昭 ,   千葉一裕 ,   小崎健次郎

ページ範囲:P.1063 - P.1069

 Shprintzen-Goldberg症候群に合併した側弯症に対し手術を施行した4例を報告する.手術時年齢は平均7.3歳,主弯曲Cobb角は平均103.5°であり,全例で胸腰椎部の後弯変形を伴っていた.手術方法は,growing rod法(2例)および後方矯正固定(2例)であった.インプラントの脱転・創感染をそれぞれ2例に認めた.本症候群に伴う脊柱変形は進行性であり早期治療が望ましいが,手術には多くの困難が伴う.特にgrowing rod法を施行時には,骨の脆弱性のため,インプラントの脱転の可能性が高く十分な注意が必要である.

術後脛骨内顆骨折を生じた人工膝単顆置換術(UKA)の2例

著者: 金子卓男 ,   加藤正二郎 ,   逸見治 ,   関口昌貴 ,   大谷崇裕 ,   泉田良一 ,   砂川隆英 ,   松本秀男

ページ範囲:P.1071 - P.1075

 人工膝単顆置換術(UKA)術後,数カ月以内に脛骨高原骨折に至った2症例を手術手技を踏まえ報告する.2症例ともに外傷歴,感染徴候は認めず,術後早期に観血的整復固定術を施行した.早期に骨折に至った要因として脛骨前方皮質へのコンポーネントの設置が正確性に欠けたこと,脛骨側でのセメント不足,コンポーネントの叩きすぎ,脛骨顆間隆起内側縁での縦切りが深くなったことが要因と考えた.

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あとがき フリーアクセス

著者: 戸山芳昭

ページ範囲:P.1082 - P.1082

 今,日本の医療を取り巻く環境は極めて厳しい状況下にあり,間違いなく曲がり角に来ている.先日,2008年時調査による我が国の平均寿命が報告されたが,女性は86.05歳で連続24年世界一,男性は79.29歳で,前年より1ランク下げ世界第4位であった.このように,わが国はそれなりに豊かで世界でもトップの長寿を享受できる国になったが,この長寿は民族性,食,環境,教育,経済力などに加えて,高い医療の質と医療関係者の努力,そして,国民皆保険制度などによるところが大きい.その結果,少子化と相俟って,世界に類を見ない超高齢化が進んでいる.数年後には65歳以上の高齢者比率は30%(約3300万人),2050年には40%に達すると推測され,少子化,労働人口激減という大変な人口構造になる.そして医療界では,ここ数年,わが国の総医療費は33兆円強と対GDP比8%程度に押さえられ,OECD平均に比べても2%程度低い.さらに医師不足,地方医療の崩壊,小児・産科・救急医療崩壊,医療訴訟急増…等々が現実化している.今こそ,日本の医療体制,医療制度そのものを根本から見直す時期に来ている.ここで対策を講じないと,以前のイギリスで起こった医療崩壊と同様な経過を辿ることが危惧される.ところで,国民10万人に対する医師数は日本が206人,OECD平均は300人であり,民主党は政権交代になれば医師数を単純に1.5倍にすると公約している.そして,OECD並みに医療費比率を引き上げようとしている.しかし,数字合わせだけで,崩壊寸前にあるわが国の医療が改善するとは思えない.日本と米国の医療制度は大きく異なってはいるが,ここで単純に比較してみると,総医療費GDP比率は日本8.1%,米国15.3%,病院数は9,200と6,400,病床数/1,000人は12.8床と3.6床,在院日数は28.3日と6.7日,医師数/bedsは15.6人と77.8人,同様に看護師数/bedsは42.8人と230.0人,そして女性医師比率は14.3%と21.8%である.このデータを皆さんはどのように判断するか.米国もオバマ大統領が医療改革を公約に掲げているが,両国とも極めて困難な医療環境に陥っていることは事実である.解決策は何か.その基本はすべての国民がそれぞれの医療制度,問題点などを根本から理解し,健康維持のため国民自らが医療費を含めた相当の痛みを伴う覚悟をすることである.そしてこの医療改革には,医療側の置かれた環境を根本から改革していく国の施策が必要である.そのためには,医療側と行政,そして国民が一体となって医療改革を進める以外に道はない.21世紀の日本の医療を崩壊させないためにも,今がその最後のチャンスである.食,環境,エネルギー,教育,経済と同様に日本の医療,特に高齢者医療の問題は大きい.

 さて,本号のシンポジウムでは「整形外科術後感染の実態と予防対策」が取り上げられている.計画通りに進んだ手術も,術後感染により患者への負担は倍増し,時には信頼関係が失われて訴訟問題へと発展することすらある.本稿では特に術後感染に対する予防対策が詳細に記載されており,少しでも術後感染を生じさせないためにもぜひ参考にしていただきたい.さらに「臨床経験」や「症例報告」にもそれぞれ示唆に富んだ論文が掲載されている.秋の学会シーズンの中,移動中の飛行機や列車の中で本誌をご一読いただけると幸いである.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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