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あとがき フリーアクセス
著者: 黒坂昌弘
所属機関:
ページ範囲:P.758 - P.758
文献購入ページに移動医療と全く違う話で恐縮ですが,このような社会時勢の中で隣国は,核実験やミサイル発射など一連の行動で世界を牽制しています.国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルにより公表された,世界の人権状況をまとめた年次報告書(2009年度版)では,“1990年代後半以降で最悪”という危機的なレベルの食料難に直面する一方,当局は人々の生存に最低限必要な食料を確保する対策さえ怠っているとの報告もありますが,どこまで本当なのかも定かでありません.また,最大の脅威国の米国のクリントン国務長官が“6カ国協議の合意を無視し,近隣国への挑発的で攻撃的な態度をとっているが,そのような行動は報いを受ける”と警告しても,どこ吹く風に見えます.かえってミサイルがこちらに向かって飛んでくるのではないかと心配になったりします.国の基本的な体制が異なるので無茶苦茶なのですが,その体制に振り回される日本の対応は滑稽にさえ見えてきます.“笛吹けど踊らず”いう言い回しと反対に,制度などは無視して“笛を吹いて国民を踊らせる”極意を備えた組織といえます.もちろん医療の世界がこのようなやり方で成功するとは全く思いません.異質な次元の問題ですが,制度を考えるうえでは否が応でも考えざるを得ない側面を含んでいます.“笛を吹かないでも皆が踊る”,よい方向に歯車が向かう,そして国民がよい医療を受けられるのが医療の世界の理想です.病める患者さんに福音をもたらすのはヒポクラテス以来の医師の使命ですから,笛など吹く必要もないはずですが,よい制度が基盤にないと皆が踊る気にもならないので,よいシステムが構築されていくことを切に期待したいものです.
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