臨床整形外科45巻7号

2010年07月発行

紹介

静脈血栓塞栓症予防のためのリスクレベルに応じた予防調査票

著者： 高平尚伸¹² 内山勝文³ 高相晶士¹³ 藤田護¹³ 内野正隆³ 岡田貴充¹³ 福島健介³ 河村直¹³ 中澤俊之¹³ 井村貴之¹³ 相川淳³ 占部憲³ 糸満盛憲³

所属機関： ¹北里大学東病院運動器外科 ²北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科 ³北里大学医学部整形外科

ページ範囲：P.603 - P.607

　われわれは当診療科の術式から勘案されたリスクレベルに応じて推奨予防法が呈示される予防調査票を作成し，静脈血栓塞栓症(VTE)対策に取り組んでいる．利点は，全入院患者に対してVTEリスクを漏れなく評価することが可能で，結果的にVTE予防の実施率の向上が期待できる．また，臨床の現場における混乱を回避できる．さらに，個々の患者ごとに適正なVTE予防法を選択できる可能性がある．しかし，各患者に対して最適な予防法が実施されているかは不明であり，今後得られたデータを分析するとともに，システムを改変していく必要がある．

参考文献

1) Fuji T, Ochi T, Niwa S, et al:Prevention of postoperative venous thromboembolism in Japanese patients undergoing total hip or knee replacement:2 randomized, double-blind, placebo-controlled studies with 3 dosage regimens of enoxaparin. J Orthop Sci 13:442-451, 2008

2) Fuji T, Fujita S, Ochi T:Fondaparinux prevents venous thromboembolism after joint replacement surgery in Japanese patients. Int Orthop (SICOT) 32:443-451, 2008

3) 冨士武史，藤田　悟：股関節骨折手術施行後の静脈血栓塞栓症の予防に対するFondaparinux Sodiumの有用性．骨折30：206-209，2008

4) 冨士武史，藤田　悟：股関節骨折術後の静脈血栓塞栓症予防に対するエノキサパリンの有用性と安全性．Hip Joint34：679-682，2008

5) 藤田　悟，冨士武史，三井忠夫・他：股関節または膝関節置換術後における深部静脈血栓症および肺塞栓症の発生頻度：予見的多施設共同研究．整形外科51：745-749，2000

6) 藤田　悟：整形外科周術期の肺塞栓症．Ther Res24：616-617，2003

7) Geerts WH, Pneo GF, Heit JA, et al:Prevention of venous thromboembolism. 7th ACCP Conference on Antithrombotic and Thrombolytic Therapy. Chest 126:338S-400S, 2004

8) Geerts WH, Bergqvist D, Pineo GF, et al:Prevention of venous thromboembolism. American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines (8th Edition). Chest 133:381S-453S, 2008

9) 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会(編)：肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン(第1版)．メディカルフロントインターナショナルリミテッド，東京，2004

10) 黒岩政之，古家　仁，瀬尾憲正・他：本邦における周術期肺塞栓症の発生頻度とその特徴―2002年度周術期肺血栓塞栓症発症調査報告．第一報．麻酔53：454-463，2004

11) 黒岩政之：周術期肺血栓塞栓症の現状．臨床麻酔30：916-924，2006

12) 黒岩政之，古家　仁，瀬尾憲正・他：2004年周術期肺塞栓症発症調査結果からみた本邦における周術期肺血栓塞栓症発症頻度とその特徴―(社)日本麻酔科学会肺塞栓症研究ワーキンググループ報告．麻酔55：1031-1038，2006

13) 中村真潮，山田典一，冨士武史・他：深部静脈血栓症予防戦略―臨床決断分析の応用．綜合臨牀54：2339-2345，2005

14) 日本整形外科学会肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン改訂委員会　編：日本整形外科学会静脈血栓塞栓症予防ガイドライン(第1版)．南江堂，東京，2008

15) 塩田直史，新藤正輝，橋本晋平・他：骨折後の肺塞栓症発症状況に関する前向き研究．骨折31：858-861，2009

16) 高平尚伸，新藤正輝，塩田直史・他：骨折後の肺血栓塞栓症発症状況の現状：2001－2002年における日本骨折治療学会会員および所属施設を対象としたアンケート集計結果．骨折26：39-43，2004

17) 高平尚伸：「抗凝固療法の現状と今後の展開」，4．整形外科領域での静脈血栓塞栓症予防，(1)股関節全置換術と股関節骨折手術．International Review of Thrombosis3：36-40，2008

18) 高平尚伸，内山勝文，高崎純孝・他：人工股関節置換術における静脈血栓塞栓症に対するフォンダパリヌクスの使用成績．日本人工関節学会誌38：214-215，2008

19) 高平尚伸：周術期のDVT管理を識る，整形外科領域．特集深部静脈血栓症―どう診て，どう治す．Heart View8：52-57，2009

20) 高平尚伸，内山勝文，高崎純孝・他：VTE予防を念頭においたTHA術後の年齢別の比較―どうしたら抗凝固薬を安全に使用できるか．日本人工関節学会誌39：248-249，2009