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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科46巻11号

2011年11月発行

雑誌目次

視座

“Shibire”,“しびれ” Common unknown symptom

著者: 牛田享宏

ページ範囲:P.995 - P.996

 脊椎外科や手外科などの整形外科医療に携わっていると“しびれ”を訴える患者の多いことに気がつくだろう.整形外科疾患では脊椎疾患,絞扼性神経障害以外にも腱鞘炎やテニス肘,内科疾患では糖尿病や抗癌剤治療後の神経障害でもみられるし,日常生活でも正座をした際や変に腕を敷き込んで寝てしまった場合に,可逆性にしびれが引き起こされる.整形外科的には神経圧迫が原因と考えられることが多いため,神経除圧術などが行われるが,触覚や痛覚などの感覚や運動機能が回復しても,しびれは大抵の場合残存する.時として悪化したりすることがあるから本当に始末に負えない.というわけで患者さんに“どうしてしびれるのですか?”と問われると,“神経に圧迫があるから…”と答えたりするが,既に除圧を行っていたりすると,それも言えない.そもそもよくわかっていないので,整形外科や神経内科などの一般的な教育プログラムに入っているわけもなく“しびれは残りやすいんです”などとしか説明のしようがない.

 さて,このような“しびれ”は,そもそも「ビリビリ」,「チリチリ」,「ジーン」というような言葉で表現されることが多いが,多くの人が使うこれらの表現が本当に同じ感覚経験かどうかは誰も知り得ない.先日来日されたKiel大学神経内科のBaron教授は“shibire”は様々な病態をひとつの言葉として表現したものであり,少なくとも神経がhyperになっているものとhypoになっているものがあるというお話をいただいた.私も“しびれ”についてわかっているとは言いがたいが,いろいろなこれまでの知見や諸先輩方の考えを総合して,現在自分が考えている病態について述べてみたい.

論述

骨粗鬆症性椎体偽関節に対する広範囲後方固定併用手術の成績―前方支柱骨移植とハイドロキシアパタイトブロックを用いた椎体形成術の比較

著者: 大橋正幸 ,   佐藤慎二 ,   和泉智博 ,   勝見敬一

ページ範囲:P.997 - P.1001

 背景:骨粗鬆症性椎体偽関節の手術においては前方支持機構再建が重要であるが,報告により術式は様々であり,これらを単純には比較できない.

 対象と方法:4~6椎間の後方固定術を併用した27例を対象とし,前方支柱骨移植術を施行した12例と,ハイドロキシアパタイトブロックを用いた椎体形成術を施行した15例を比較した.

 結果:手術時間や出血量といった手術侵襲は前者で有意に大きく,矯正損失や臨床成績には有意差を認めなかった.

 まとめ:広範囲後方固定併用時の前方支持機構の再建方法は椎体形成術で十分と考えられた.

調査報告

脊柱側弯症学校検診で発見された側弯症の自然経過

著者: 檜山建宇 ,   加藤俊明 ,   今井重信 ,   武内鉄夫 ,   渡辺仁美 ,   飯塚健児 ,   赤見恵司 ,   高橋克明 ,   西村和博 ,   菅原秀樹

ページ範囲:P.1003 - P.1010

 目的:脊柱側弯症学校検診で発見された軽度特発性側弯症の自然経過を調査し,地域の整形外科クリニックで経過観察するうえで参考となる指標があるかについて検討した.

 対象と方法:過去16年間に10°以上の側弯症で観察期間が12カ月以上の237例を対象に,最終観察時Cobb角が初診時から5°以上変化したものを改善,悪化とし,5°未満の変化を不変として評価した.

 結果:結果は改善例16.5%,不変例61.6%,悪化例21.9%であった.

 まとめ:初診Cobb角15°以上でRisser sign 0,1,2のものは進行悪化する傾向が大きく,経過観察するうえで一つの指標と思われた.

Lecture

運動・スポーツと骨

著者: 岩本潤

ページ範囲:P.1011 - P.1017

 十分なカルシウム摂取と適切な運動は骨の健康維持・増進に必要不可欠である.運動・スポーツ活動で骨量を維持・増加させるためには荷重と筋力が重要であり,小児や青年ではジャンプ運動/競技が,閉経後女性ではウォーキング,ランニング,エアロビクス,ジャンプなどの荷重運動や筋力トレーニングが効果的であることが報告されている.荷重,特にジャンプは筋力を介して骨に大きなメカニカルストレスを与える.骨の健康維持・増進のためには,成長期から生涯を通じての十分なカルシウム摂取と適切な運動・スポーツ活動の継続が望まれる.

整形外科/知ってるつもり

最近の筋電図診断

著者: 正門由久

ページ範囲:P.1018 - P.1021

■はじめに

 神経生理学的検査は,神経伝導検査,針筋電図検査などからなる.診察で疾患を疑い,その確定診断,鑑別診断,治療経過の詳細をさぐるなどを目的としてオーダーされていると思われる.本稿では,特に針筋電図検査について述べる.

最新基礎科学/知っておきたい

癌幹細胞

著者: 武内章彦 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.1022 - P.1026

■癌幹細胞とは?

 近年,癌の病態に関する研究として,“癌幹細胞”という概念が注目されている.癌の発生や維持,治療の抵抗性など,これまで無秩序に増殖し,異なる性質を獲得した腫瘍細胞の集団と思われていた癌組織が,そのもととなる幹細胞により制御されているという画期的な概念(cancer stem cell model)であるが,近年,種々の癌腫において癌幹細胞の研究が急速に発展しつつある.癌組織はheterogeneousな集団からなり,それぞれの細胞が無秩序に増殖して細胞塊を形成し,浸潤・転移する能力を持っているとする“stochastic/clonal evolution model”がこれまで提唱されてきた21)

 “Cancer stem cell model”の概念は,癌組織の中でごく限られた細胞のみが細胞塊を形成し,浸潤・転移する能力を持っているとするもので,古くは1963年にBruceら5)や1977年にHamburgerら13)に提唱されていた.しかし近年の細胞表面マーカー解析技術や細胞分離技術の進歩により1997年にBonnetら4)が急性骨髄性白血病において,細胞表面マーカーであるCD34+CD38-細胞が癌幹細胞であることを同定し,正常の造血細胞と同様に白血病組織の中で,癌幹細胞を頂点とするヒエラルキーが存在することを証明し,この概念の正当性を示した4).さらに2003年にAl-Hajjら2)が乳癌においてCD44+CD24-/low細胞を癌幹細胞として同定してから,固形癌においても癌幹細胞の研究が注目され発展した.現在までに,大腸癌8),脳腫瘍24),膵臓癌19),胃癌28)などでその存在が報告されている.

連載 医者も知りたい【医者のはなし】・48

江戸中期の医師(3) 香川修庵(1683~1755)(その1)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1028 - P.1030

■はじめに

 第46回で「古方派」の医学の祖の1人である後藤艮山を述べ,第47回で艮山の弟子である香川修庵の儒学の師伊藤仁斎について述べた.今回第48回は,やっと本命の香川修庵について述べる.

 香川修庵は,後世に有名になった吉益東洞と山脇東洋の先輩にあたり,修庵なくしてこの2人の存在はなかったであろうと思われる.修庵は,儒学で伊藤仁斎に,医学では後藤艮山に強い影響を受け,儒学と医学の基本の精神が同じであって,特に“仁”の心で「一本」に結ばれているとの信念から,号を「一本堂」と称し,自分の学問所に「一本堂」と名付けている.この修庵は,艮山の下で医学を研鑽し,書を残さなかった艮山の医学の考えを後世に伝え,さらに勉強した教えや考えを吉益東洞と山脇東洋たちに伝えた.そして,京都の吉益東洞と山脇東洋たちの学習塾を巣立った多くの医師たちが全国で活躍して,古方派医学が江戸の医学の一大勢力へと発展していった.このように,香川修庵とその師・後藤艮山は,日本医学史上における重要人物であると考えられている.

臨床経験

ポータブル超音波診断装置を用いた青少年期野球肘検診―福島県での取り組み

著者: 大歳憲一 ,   菊地臣一 ,   松尾洋平 ,   紺野慎一 ,   関口拓矢 ,   鴫原智彦 ,   矢吹省司

ページ範囲:P.1033 - P.1039

 福島県内の小中学生310名(小学生81名,中学生229名,年齢8~15歳,平均年齢13歳)を対象にポータブル超音波診断装置を用いた野球肘検診を行った.肘痛の既往は148名47.7%の選手に認められた.超音波検査により,内側上顆の形態異常が169名54.5%,上腕骨小頭部の形態異常が4名1.3%に認められた.内側上顆の形態異常は,肘痛の既往,内側上顆の圧痛,肘関節可動域制限,および外反ストレステストと有意な関連が認められた.ポジション別では投手,捕手経験者において器質障害の発生率が高かった.

大腿骨転子部/転子下骨折症例と人工骨頭置換術症例における早期手術の有用性の検討

著者: 大石強 ,   鈴木大介 ,   坂野友啓 ,   本多洋介

ページ範囲:P.1041 - P.1049

 大腿骨近位部骨折に対する早期手術における有用性につき検討した.対象は受傷後7日以内に手術を施行した50歳以上の大腿骨転子部/転子下骨折430例と,大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行した220例である.早期手術を転子部/転子下骨折症例では受傷後1日以内,人工骨頭置換術症例では受傷後2日以内と定義した.転子部/転子下骨折症例で早期手術群は通常手術群に比して術後入院期間が短縮された(早期vs.通常:39.3±24.2 vs. 44.8±27.2日.p<0.05).人工骨頭置換術症例では通常手術群に抗凝固薬/抗血小板薬内服症例が多かったが,術中出血量は早期手術群に多かった(早期vs.通常:164.2±150.5 vs. 126.5±101.5日.p<0.05).両症例群とも術後合併症には早期手術群と通常群で差はなかったが,周術期血清アルブミン値は早期手術群が通常群に比して術後1日目と術後2週で有意に高値であった.大腿骨近位部骨折に対する早期手術は,入院期間の短縮と術後の血清アルブミン低下を防ぐ点で有用である.

症例報告

脛骨顆間隆起骨折の線維性癒合後7年経過後の再骨折

著者: 峯孝友 ,   伊原公一郎 ,   河村洋行 ,   瀬戸隆之

ページ範囲:P.1051 - P.1054

 陳旧性脛骨顆間隆起骨折では,膝伸展時の疼痛や膝関節の前方動揺性や伸展力の減少を来すことが多い.本症例は小児期に脛骨顆間隆起骨折を受傷し,線維性に癒合後,無症状に経過して,7年後にスポーツ活動で再骨折を来した.骨接合術時の問題点は,骨片が巨大化しており,解剖学的整復が困難なことと,骨片の転位による前十字靱帯(ACL)の短縮であった.術後伸展制限が残存したが,抜釘と顆間窩形成術により改善した.本症例のように骨片の巨大化,ACL短縮を伴う場合には,骨接合時に一期的な顆間窩形成術が必要である.

プロスポーツ選手の頚髄症に対する後方内視鏡下除圧術の経験

著者: 井口智揮 ,   中川幸洋 ,   吉田宗人 ,   山田宏 ,   橋爪洋 ,   南出晃人 ,   西秀人 ,   河合将紀 ,   岩崎博 ,   筒井俊二 ,   木岡雅彦

ページ範囲:P.1055 - P.1059

 頚髄症を呈し,競技の継続が困難であった40歳のトッププロ競艇選手に対し,低侵襲の頚椎後方内視鏡下除圧術(posterior cervical microendoscopic laminoplasty:以下CMEL)を施行した.術後2カ月で競技に復帰し,3カ月で優勝も果たした.術後3年の現在も競技中の症状の誘発・増悪は認めず,トッププロとして頚髄症発症以前から競技レベルを落とすことなく活躍している.高いパフォーマンスが要求されるプロスポーツ選手の頚髄症に対して,CMELは競技復帰・継続のための有効な治療法となる.

股関節痛からアルカプトン尿症の診断に至った1例

著者: 濱田貴広 ,   志田純一 ,   井口明彦 ,   山口徹 ,   佐々木大 ,   村上剛志 ,   有薗剛

ページ範囲:P.1061 - P.1065

 アルカプトン尿症はチロシン,フェニルアラニンの代謝経路での産物であるホモゲンチジン酸が組織に蓄積し黒色変色,退行変性を来す常染色体優性遺伝の代謝性疾患である.今回われわれはアルカプトン尿症性股関節症の症例を経験したので報告する.症例は特に既往歴のない69歳の女性で,軽微な外傷で股関節の急激な破壊を来し,人工股関節置換術を施行した.術中所見で骨頭,臼蓋軟骨の黒色変色を伴っており,術後にアルカプトン尿症との診断に至った.この症例を通して本疾患の特徴,病態,鑑別疾患などを文献的に考察し報告する.

テニスによる自家筋力で発生した上腕骨内側上顆骨折の1例

著者: 鈴木拓 ,   山中一良 ,   宮崎馨 ,   佐々木孝

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 患者は13歳の男性で,テニスのサーブを打った瞬間に右肘に激痛が出現し,プレー続行不可能となった.単純X線像でWatson-Jones分類TypeIIの上腕骨内側上顆骨折を認め手術を施行した.自家筋力による内側上顆骨折は野球,腕相撲では比較的多くの報告があるが,テニスのサーブにおける骨折は稀な症例である.テニスのサーブは投球動作と類似しており,本骨折は投球骨折と同様のメカニズムで発症したと考えられる.

シネMRIが術前診断に有用であった梨状筋症候群の2例

著者: 稲田大悟 ,   小谷俊明 ,   南昌平 ,   永原健 ,   根本哲治 ,   赤澤努 ,   古志貴和

ページ範囲:P.1071 - P.1076

 梨状筋症候群に対し術前診断にシネMRIを撮像した2例を経験したので報告する.シネMRIとは同一断面の画像を動画で経時的変化を観察する手法であり,梨状筋症候群に対する初めての動的画像診断法である.撮像シーケンスはfast imaging employing steady state acquisition(2D FIESTA)法を用い,股関節を外旋位から内旋位に動かしながら高速撮像し,最大内旋位で梨状筋による坐骨神経の圧迫を認めた.本法は梨状筋による坐骨神経に対する動的な圧迫を示し術前診断に有用であった.

大腿静脈内へ異物が迷入した1例

著者: 渡邊裕規 ,   山田邦博 ,   飯田充昭 ,   志田拓也 ,   高畠裕司 ,   徳永綾乃 ,   平野典和

ページ範囲:P.1077 - P.1080

 体外から金属片が刺入し,その一部が大腿静脈内に迷入した症例を経験したので報告する.症例は29歳の男性で,電気修理作業中に部品が爆発し,左大腿部に痛みを感じた.救急部受診時,左大腿部に約1cmのそうがあったが出血はなかった.X線やCTで異物が左大腿深部に存在することがわかり,手術室で除去を試みた.術中にX線透視で位置を確認していたところ,異物が移動したため,直ちに血管造影室に移動し異物が血管内にあることを確認した.血管内治療interventional radiology(IVR)により低侵襲に摘出可能であった.

書評

『図解 腰痛学級 第5版』 フリーアクセス

著者: 山下敏彦

ページ範囲:P.1081 - P.1081

 本書の初版が発刊されたのは1986年である.筆者は初版以降,改訂のたびに本書を買い替えており,もう20年以上も愛読していることになる.当時まだ研修医だった筆者にとって,図が多くコンパクトに腰痛を解説した本書は,非常に魅力的だった.初版から4版は,各項目が基本的に見開き2ページ(左が図,右に解説文)にまとまっており,日常の腰痛診療で疑問に思うこと,より詳しく知りたいことに明解に答えてくれた.筆者の患者への説明(ムンテラ)は,ほとんど本書の内容を基にしていた.したがって,川上俊文先生は,筆者にとっての腰痛診療の先生であるといっても過言ではない.

 今回の改訂で,本書は思い切ったバージョン・アップを遂げている.筆者が気に入っていた見開き2ページの形式が廃止されたのはやや残念だが,図と写真が多用されている特長は変わらないし,2色刷りで読みやすく工夫されている.そして,何より内容がより広範かつ多角的なものとなりボリュームも大幅にアップしている.もはや,これまでの一般向けの解説書というイメージはなく,腰痛に関する立派な「成書」であるといってよい.疼痛の神経学的・薬理学的メカニズムから脊柱のカイネティクスまで,最新の知見が取り入れられており,川上先生のup-to-dateな文献・情報の収集力,分析力には感服する.しかし,初版以来貫かれてきた,語りかけるような平易な記述は健在である.布団の硬さからタバコや性生活の可否に至るまで,外来で患者から訊かれて答えに窮するような質問も,Q&A形式にして随所にまとめて掲載されている.このような,どの教科書を捲っても書いていないことこそ,実は患者や一般臨床医が知りたいことなのである.

INFORMATION

第31回整形外科バイオマテリアル研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1026 - P.1026

会期:2011年12月3日(土)

会場:京王プラザホテル(〒160-8330 東京都新宿区西新宿2-2-1)

第17回スポーツ傷害フォーラム フリーアクセス

ページ範囲:P.1030 - P.1030

日時:2012年1月28日(土)

場所:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)特別会議室

   大阪市北区中之島5-3-51

第118回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1049 - P.1049

テーマ:未来整形外科への布石

会期:2012年4月6日(金)~7日(土)

会長:吉川 秀樹[大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)]

会場:大阪国際会議場

第15回超音波骨折治療研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1070 - P.1070

会期:2012(平成24)年1月21日(土) 13時~18時(予定)

会場:東京ステーションコンファレンス サピアタワー6階 601号室

   (東京駅八重洲北口直結) 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目7-12

   TEL:03-6888-8080

第38回日本臨床バイオメカニクス学会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1076 - P.1076

会   期:2011年(平成23年)11月18日(金)・19日(土)

会   場:神戸ポートピアホテル(〒650-0046 神戸市中央区港島中町6丁目10-1)

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1083 - P.1083

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1084 - P.1084

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.1085 - P.1085

あとがき フリーアクセス

著者: 内藤正俊

ページ範囲:P.1086 - P.1086

 来月には平成24年度診療報酬改定の総額の改定率が決まることになっています.ご承知のように保険診療の対価は診療報酬点数表による“公定価格”であり,その改定率は医療機関に重大な影響を与えます.従来,わが国は低価格にも拘わらず高レベルの医療水準を維持してきました.平成9年(1997年)から平成13年(2001年)までのGDPに対するわが国の医療費の割合は8%で,OECDでは最低レベルでした(米国13.9%).一方,平均健康寿命や乳幼児死亡率などは世界のトップレベルを維持しています.ところが平成13年から現場を無視した医療費削減政策により,改定率が平成14年度(2002年)から4度も連続して引き下げられました.その結果,バッシングなどで忍耐の限界にあった医療従事者が経済的にも蹂躙され,危機的状況になりました.平成22年度(2010年)の診療報酬改定で漸くマイナス改定から脱しましたが,いまだに青息吐息の状態です.高レベルの医療水準を維持するためには医療機関の健全経営が不可欠です.東日本大震災の復旧・復興が優先課題ですが,改定率が少なくともマイナスに戻らないよう祈っています.

 さて,今月号の視座に“しびれ”についての卓見があります.確かに“しびれ”は各人各様であり,病態を正確に把握することが困難なことが少なくありません.牛田先生が指摘しているように,神経メカニズムに基づいた定量的な診断学や治療に向けた新しいアプローチの開発が今後必要でしょう.そのほか,超高齢社会となっているわが国では骨粗鬆症や癌がある患者を治療する機会が増えており,そのために知っておきたい論文も掲載されています.論述には骨粗鬆症性椎体偽関節に対する広範囲後方固定併用手術の成績が纏められています.臨床経験には大腿骨近位部骨折に対する早期手術の有用性について論じられ,最新基礎科学には“癌幹細胞”という画期的な概念についてのわかりやすい概説があります.他に側弯症に関する調査報告,スポーツ医学に関するLECTURE,最近の筋電図についての“知っているつもり”,ポータブル超音波診断装置を用いた青少年期の野球肘検診,興味ある症例報告など豊富な話題で溢れています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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