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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科46巻8号

2011年08月発行

文献概要

視座

新臨床研修制度の光と影

著者: 渡辺雅彦1

所属機関: 1東海大学医学部外科学系整形外科学

ページ範囲:P.687 - P.687

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 新しい臨床研修制度が2004年4月からスタートし,すでに7年が経過した.プライマリ・ケアを中心とした幅広い診療能力の修得を目的とした2年間の初期臨床研修を行い,その間の給料を保証しアルバイトを禁止するものである.私はインターン制度が終わりしばらくした1987年に医師になり,そのまま卒業した慶應義塾大学の整形外科学教室に入局した.全くの無給であり,国家試験の発表と同時に外病院の当直にひやひやしながら出かけたのを思い出す.当時の慶應は大学で1年間研修を受け,2年目から関連病院へ出向したが,他科の研修は1年目に3カ月間の麻酔科研修のみであった.関連病院で早くから多くの整形外科の手術を教えていただくメリットはあったが,2002年からお世話になっている東海大学では以前から救命救急・麻酔科を必修に,将来の志望科以外の複数科を2年間で研修するスーパーローテーションを施行しており,整形外科医でありながらいろいろな他科の知識や技術を有する医師が多いことに驚いた.

 給与を得て,患者さんの全身管理に役立つ整形外科以外の疾病や手技を修得できることは,まさに新臨床研修制度の光の部分であろう.しかしながら,以前から指摘されていることではあるが,マッチング制度により研修先をより自由に選択することが可能になったために,大学の医局離れと都市部への集中による地方での医師不足を招く結果となった.さらに,私が最近危惧しているのは,医師の気質の問題である.私も当然医師を職業とし生活の糧を得ているが,医師には患者さんのためであったり,自分のスキルアップや研究のためであったり,所得に直接結びつかないことも多くある.そして,それらの活動を積極的に行うことが医師として成長していく過程で不可欠であることを,先輩であるメンターたちから見習い教わっていく.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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