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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科47巻1号

2012年01月発行

文献概要

整形外科/知ってるつもり

生体内吸収性プレートSuper Fixsorb

著者: 酒井昭典1

所属機関: 1産業医科大学整形外科

ページ範囲:P.72 - P.75

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■はじめに

 骨折の治療には,チタン,ステンレスに代表される金属製の骨接合材が広く用いられている.金属製骨接合材は,強固な固定力がある一方で,自由に成形できない,腐食,メタローシス,プレート下でのストレスシールディング,プレート抜去のために再手術を要する,抜去が困難なことがある,などの問題点がある.これらの問題点を克服するために,1990年代から生体内吸収性の骨接合材が開発されてきた.欧米では,ポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA),ポリ乳酸(polylactic acid:PLA),ポリ-L-乳酸(poly-L-lactide:PLLA)が用いられてきた1,2,4).しかし,乏しい固定力,力学強度の早期喪失による骨折部再転位,材料の急速分解による異物反応,X線透過性のために術中コントロールや術後の経過観察が困難,などの欠点が指摘されていた.わが国において,PLLAとハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite:HA)微粒子の複合体が開発され,臨床使用されてきた5,6).材料の強度は向上し,強度は長期間維持されるために骨折部が再転位せず,緩徐に吸収されるために異物反応が生じにくく,HAが含まれているためにX線不透過性となり,過去に指摘されてきた吸収性骨接合材の欠点は克服された.

 われわれは,2008年7月から,PLLAとHAの複合体からなるこのメッシュ状プレートを上肢骨折の治療に用いてきた7,8).メッシュの穴に合う径2.0mmのミニスクリューとメッシュプレート専用のベンダーをタキロン株式会社,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社と共同で開発した.この手術手技の実際と本接合材の利点について報告する.

参考文献

1) Böstman OM:Refracture after removal of a condylar plate from the distal third of the femur. J Bone Joint Surg Am 72:1013-1018, 1990
2) Böstman OM:Absorbable implants for the fixation of fractures. J Bone Joint Surg Am 73:148-153, 1991
3) Furukawa T, Matsusue Y, Yasunaga T, et al:Biodegradation behavior of ultra-high-strength hydroxyapatite/poly (L-lactide) composite rods for internal fixation of bone fractures. Biomaterials 21:889-898, 2000
4) Hughes TB:Bioabsorbable implants in the treatment of hand fractures:an update. Clin Orthop Relat Res 445:169-174, 2006
5) 松末吉隆,新林弘至,青木弥寿弘・他:生体内吸収性高強度HA/PLLA複合体による骨接合術.整形外科50:1405-1411,1999
6) 名井 陽,荒木信人,露口雄一・他:HA/PLLA複合材料よりなる新しい骨親和性・生体内吸収性骨接合材の臨床使用経験.整形外科50:1413-1420,1999
7) 酒井昭典,大茂壽久,山中芳亮・他:生体内吸収性骨接合材を用いた上肢骨折の手術.整・災外52:1011-1016,2009
8) 酒井昭典,大茂壽久,村井哲平・他:吸収性プレートによる上肢の骨折治療.整・災外53:845-850,2010
9) Shikinami Y, Okuno M:Bioresorbable devices made of forged composites of hydroxyapatite (HA) particles and poly-L-lactide (PLLA):Part I. Basic characteristics. Biomaterials 20:859-877, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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