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あとがき
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著者:
黒坂昌弘
所属機関:
ページ範囲:P.1038 - P.1038
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新聞紙上の報道を見ると,毎日のように尖閣諸島のニュースで溢れかえっている.どの国でも,領土問題になると国民感情も高ぶり,皆が熱くなるのが手に取るように伝わってくる.実際に,中国や韓国の整形外科医と話をしていても,領土問題の話になると,非常に高ぶる気配をみせる医師までいる.どれだけの税金が,このような領土問題で使われているかを考えると,時間と,お金と,労力の無駄遣いのような気もしてくる.お互いに,歴史をひも解いて主張しあえば,どんな議論でもできそうな気もするし,同じアジアの隣国と無駄な緊張を高めたりするより,力を合わせて世界の国々と競うほうが,ずっと生産的ではないかとも思える.いっそのこと,尖閣諸島や竹島は,半分半分に分けてお互いの権利を認めてみてはどうかとも思うが,この話をして納得する隣人がいないので,無理な妄想なのかも知れない.尖閣諸島をお金で買うなら,日本の固有の土地である,北方領土問題にはどうして力が入らないのか,不思議な感じがするのは,私一人なのかと自問してしまう.しかし,世界のニュースをみると,尖閣諸島のことなどはほとんど触れられていない.たとえば,USA Todayのニュース記事では,イスラム教徒のアメリカへの怒り,Obama and Romneyの選挙戦,NFLアメリカンフットボールの開幕などが話題の中心であり,世界の関心がバラバラなことがわかる.
それでも健康,運動器疾患に対する関心の高まりは,世界中のどの人々も認める一致した見解である.日本の厚生労働省も運動器疾患の重要性を認識せざるを得ないよう,日本整形外科学会を中心とした整形外科医が十分なエビデンスを構築し,欧米に比較して遅れを取らないように努力をしていくことが重要な課題と考えられる.