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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科47巻12号

2012年12月発行

雑誌目次

視座

「トキメキ」の医者人生を

著者: 赤木將男

ページ範囲:P.1159 - P.1160

 哲学者は,人生とはなんぞや,真とは,善とは,と思索を巡らせるのが仕事ですが,ニーチェの考え方は極めてポジティブです.私なりに彼の考えを一言で述べると,生きることの価値とは「カブトムシを採りに暗い森に入って行く子供のようにワクワク感とトキメキを求めること」であり,「それ以外にはあり得ない」となります.とてもわかりやすいものですね.しかし,同時に子供のように生きることの難しさも述べています.

 縁者に医師を持たない私は,医業というものを全く知らずに,この世界に足を踏み入れました.無知かつ自由であり,卒後10年間の整形外科医としての生活は毎日がワクワク感とトキメキに満ちていました.未知の世界(暗い森のなか)へ分け入り,患者と向き合い手術という技術をもって問題を解決する(カブトムシを採る).苦労も当然あるわけですが,何も考えずとも新米医師として充実した毎日を過ごしていたように思います.しかし,10年目を過ぎた頃から簡単には子供のようにトキメクことができなくなります.病態や治療法に関する歴史と先人の努力を知り,現状の問題点を洗い出し,何とかそれを越える手立てはないか,「不屈の魂」を持って「前を目指さ」なければ,ワクワクできなくなります.トキメクためには途方もない努力が必要になって来るのです.時には疲れ果てて,ぼんやりとすることがあります.そんな時に,悪魔のように耳元で囁くのが「ニヒリズム」です.「そんなに頑張って何になるの? 何が楽しくて,そんなに苦労しているの? 誰かに利用されているだけじゃない?」です.新選国語辞典によると,ニヒリズムとは「真理・実在などを否定」し「道徳や宗教の価値・規範を認めず,すべての権威・制度などを否定し,個人を束縛から解放しようとする立場」となっています.諦めにも似た楽観主義的思考法と考えられます.このニヒリズムの甘い果実を口にすると,確かに前へ進むことの苦痛から解放され自由になります.ニーチェはこの「ニヒリズム」を徹底的に否定しました.

誌上シンポジウム 高位脛骨骨切り術の適応と限界

緒言 フリーアクセス

著者: 齋藤知行

ページ範囲:P.1162 - P.1162

 変形性膝関節症(OA)は罹患患者数の増加により,その病態解明と治療法の確立が求められる退行性膝関節疾患である.多くの症例では大腿四頭筋筋力増強訓練などの保存療法により対応可能であるが,保存療法に抵抗する例や側方動揺などの不安定性を認める例では手術療法の適応となる.OAの手術療法には関節鏡視下デブリドメン,高位脛骨骨切り術,単顆片側置換術,人工関節置換術があり,臨床症状やX線学的病期により手術術式が選択される.その中で高位脛骨骨切り術(HTO)は正確な手術の要求と複雑な後療法のため,近年手術件数は減少し,人工膝関節置換術が標準的な治療となりつつある.しかし,超高齢社会となった現在では,高齢者の生活様式や社会活動への参画の程度など多様であり,余暇にスポーツ活動の継続を希望するなど,手術には除痛ばかりでなく膝関節機能の改善を求める例も増加している.

創外固定器を用いた片側仮骨延長法(Hemicallotasis)

著者: 中村英一

ページ範囲:P.1163 - P.1170

 内側型変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術は,近年避けられる傾向にあり,その手術件数も徐々に減少してきている.その理由として,①より正確な手術手技が求められること,②後療法が煩雑であること,③入院が長期化すること,④経年的に成績が悪化すること,⑤人工膝関節置換術に比べ手術点数が低いことが挙げられる.一方,medial open-wedge typeの術式の一つである片側仮骨延長法による脛骨骨切り術(Hemicallotasis:HCO)は,従来の高位脛骨骨切り術に比べ,低侵襲であること,早期から関節運動や荷重歩行が可能であること,術後に徐々に矯正するため正確なアライメントの獲得が容易であること,術後脛骨近位部の変形が少ないことなどの利点を持つことより,近年注目されつつある.本稿では,これまでわれわれが行ってきたHCOにおける取り組みについて紹介し,HCOからみた脛骨骨切り術の位置づけを再考するとともに,現在の適応と限界について述べる.

Opening wedge法

著者: 熊谷研 ,   齋藤知行

ページ範囲:P.1171 - P.1175

 Opening wedge法による高位脛骨骨切り術(HTO)は近年,強固な内固定材の開発とともに再び着目されるようになった.膝関節内側コンパートメントの単一障害である内側型変形性膝関節症や大腿骨内側顆に病変が限局する特発性膝骨壊死症で,かつ立位膝外側角185°以下,伸展制限15°未満がよい適応となる.本術式の限界点として,矯正角度の増大に伴い膝伸展機構に影響を及ぼすこと,前額面での単純な変形のみの矯正にとどまることなどが挙げられる.以上の点を考慮すれば,骨切り部の安定化により後療法を加速化することが可能で,これまでのHTOの後療法の複雑さや長期化を回避できる術式と考えられる.

変形性膝関節症に対する脛骨顆外反骨切り術

著者: 寺本司

ページ範囲:P.1177 - P.1183

 千葉は1989年,内側型変形性膝関節症(内側型膝OA)に対して脛骨内側から顆間隆起に向かって骨切りし,下腿を外反する脛骨顆外反骨切り術(TCVO)を考案した.今回はTCVOの有用性と適応ついて報告する.TCVOを行った内側型OA101例,104膝,病期分類は北大分類で3期15膝,4期60膝,5期29膝であった.JOAスコア,%MAとも改善した.TCVOは中等度から高度の可動域の良好な内側型膝OAに最もよい適応があり,患者の活動性,社会的環境なども考慮して適応を決めるべきと考える.

Closed wedge法

著者: 眞島任史 ,   安田和則 ,   青木喜満

ページ範囲:P.1185 - P.1189

 Closed wedge法による高位脛骨骨切り術(HTO)の適応は,膝内反変形,若年者,北大病期分類OA stage Ⅱ,ⅢおよびⅣの軽症例で,術前の日常生活の活動性が高く,術後も同様の活動性を希望する症例である.長期成績からみた成績不良例の4割は矯正不足であった.Stage Ⅳの症例や,膝蓋大腿関節の関節症の存在は成績を低下させる.筆者らが行っている逆V字型HTOは,楔状HTOに比較して矯正損失が有意に少なく,切除骨片が小さく脛骨近位のbone stockが約40%温存されるという利点がある.さらに,HTO後TKAを行うにあたって,脛骨コンポーネントの外側変位が少なく有利である.

長期成績から

著者: 瀧澤勉 ,   秋月章 ,   堀内博志 ,   山崎郁哉

ページ範囲:P.1191 - P.1194

 外側楔状閉鎖型高位脛骨骨切り術の長期成績は良好で,本邦の長期成績は高位脛骨骨切り術の限界を示していると思われる.外側楔状閉鎖型高位脛骨骨切り術後10年を過ぎるころから人工膝関節置換術を行う症例が増え,内反変形が進行する症例だけでなく,膝外側角が良好でも人工膝関節置換術を行う症例がみられた.一方,内側楔状開大型高位脛骨骨切り術の術後成績も良好であり,本法はさらに早期荷重が行える利点がある.しかし術後に脛骨後傾角の増大および膝蓋骨の低位化が生じ,これらが長期成績にどのように影響するかは解明されておらず今後の課題である.内側楔状開大型高位脛骨骨切り術の適応は膝外側角が185°,屈曲拘縮が10°以内の活動性の高い比較的若年者で,それ以上の高度変形は外側楔状閉鎖型高位脛骨骨切り術の適応と考えている.さらに最近の人工関節置換術の進歩から,高位脛骨骨切り術のみではなく,年齢と変性度さらに患者の活動度を考慮し治療法の選択を行うべきと考える.

論述

変形性股関節症における神経障害性疼痛と股関節機能

著者: 園畑素樹 ,   森本忠嗣 ,   染矢晋佑 ,   河野俊介 ,   北島将 ,   馬渡正明

ページ範囲:P.1195 - P.1200

 背景:本研究の目的は,変形性股関節症(変股症)患者の疼痛における神経障害性疼痛の頻度と機能障害の程度を調査することである.

 対象と方法:変股症患者89例94股を対象とし,神経障害性疼痛のスクリーニングツール(簡易調査票)と日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hipスコア)を用いて評価した.

 結果:変股症患者の30%に神経障害性疼痛を認めた.簡易調査票とJOA hipスコアには有意な相関を認めた.

 まとめ:変股症の疼痛には,侵害受容性疼痛だけでなく神経障害性疼痛も含まれていた.また,神経障害性疼痛の股関節機能障害への関与が示唆された.

境界領域/知っておきたい

小児科領域からみた小児の成長障害

著者: 有安大典 ,   長谷川奉延

ページ範囲:P.1202 - P.1206

はじめに

 成長障害とは,「低身長(身長SDスコアが標準身長と比較して-2SDあるいは3パーセンタイル未満)」,または「成長率が低下(成長速度が標準値の-1.5SD未満)」した状態と定義される.小児科領域での成長障害は,遺伝的要因(骨系統疾患・奇形症候群・先天性代謝異常症),内分泌学的要因(成長ホルモン分泌不全・甲状腺ホルモン分泌不全・Cushing症候群),環境要因(栄養不良・愛情遮断),医原的要因(外因性ステロイド・放射線治療),特発性(明らかな原因の認められないもの)などの多彩な原因で起こりうる.本稿では,前半で患者に病的な成長障害があるか否かを判断する方法を概説し,後半で整形外科医が臨床の場で遭遇することの比較的多いと思われる疾患において詳細を述べる.

高尿酸血症と痛風

著者: 山中寿

ページ範囲:P.1208 - P.1211

痛風と高尿酸血症の動向

 痛風はその特徴的な関節炎により整形外科医には広く知られている疾患である.わが国においては明治以降に初めて記載された比較的歴史の浅い疾患であるが,高度成長期以降にその患者数は増加し,現在では日常診療で遭遇することが多いcommon diseaseの一つになった.

 痛風の治療体系はかなり確立されており,わが国ではガイドラインも整備されて,日常診療においても治療の標準化が進んだ疾患と言ってよい.しかしながら,痛風診療をめぐっては様々な風説の類もあり,誤解されている点も多く,必ずしも正しい知識が徹底しているとは言えない点も指摘せねばならない.

整形外科/知ってるつもり

神経因性膀胱

著者: 内山智之 ,   山口千晴 ,   布施美樹 ,   山本達也 ,   榊原隆次 ,   山西友典

ページ範囲:P.1212 - P.1217

■はじめに

 神経因性膀胱とは,神経疾患による排尿障害の総称であり,症状名や症候名,疾患名でもない.また膀胱とあるが,膀胱の機能障害のみではなく,尿道を含めた下部尿路,さらにはその支持組織,骨盤底筋群などの神経因性の障害に基づく排尿障害すべてを示す用語である.

 最近,泌尿器科領域をはじめとして,国際禁制学会(ICS)から報告された新しい用語基準1)に従い,従来の排尿症状を下部尿路症状(lower urinary tract symptom),また排尿障害,膀胱障害などを下部尿路障害(lower urinary tract dysfunction)という用語に統一する動きがあるが,神経内科およびその他の領域では,これらの用語はまだ浸透しておらず,英語でもbladder dysfunctionなどの用語が用いられることが多い.神経因性膀胱も,英語ではneurogenic bladderまたはneurogenic bladder dysfunctionがいまだ一般的である.

連載 知ってますか?整形外科手術の変遷・9

踵骨骨折の手術

著者: 廣谷速人

ページ範囲:P.1218 - P.1222

踵骨骨折治療の歴史

 変形した,おそらくは骨折したと思われる踵骨は新石器時代(8,000~7,000年前)のフランスや,中期サクソン期(600~900A.D.)のイギリスの遺跡で発見されている30)が,踵骨骨折の医学的記述はHippocrates(ca. 460B.C.)14)に始まり,高所からの落下の際に発生して壊死に陥りやすいことを中心とした記述を残している.しかし,骨折という認識は1720年3,6,8)以降になされたものの,医学的に確かめられたのは,1839年のNorrisの解剖報告からであるとされている6).その後,Malgaigne(1850)16)は関節内骨折の存在を明らかにした(図1).

 1894年にX線が発見されてからは病態が明らかとなり,観血的に治療されるようになった3,6).Goff8)によれば1938年までに41の術式が発表されたという.なかでも,Leriche(1913)は観血的に整復してステープルとスクリューで内固定を行い3,6,23),Böhler(1929)2)はねじクランプ(Schraubenzwinge)(図2)と鋼線牽引によって整復している.ついでWesthues(1935)31)は骨釘による整復手技を発表したが(図3),この手技は今日なお広く利用されている.なおvon Stokum(1912)は距踵関節固定術を初めて報告した3)

整形外科最前線 あなたならどうする?・12

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 石井賢

ページ範囲:P.1223 - P.1227

症例

患者:73歳,男性

主訴:両下肢不全麻痺(起立困難),膀胱直腸障害.

既往歴:冠動脈疾患(重症三枝病変),大動脈狭窄症,糖尿病(インシュリン使用),骨粗鬆症.

現病歴:6カ月前に自宅で尻もちをついた際に腰背部痛が出現した.次第に脊柱後弯変形が出現し腰背部痛も継続するため,2カ月前に他院整形外科を受診となる.初診時は杖歩行による独歩が可能であり外科的治療はハイリスクであると判断され,コルセットによる保存療法を実施された.1カ月前から進行性の両下肢麻痺と膀胱直腸障害が出現し,起立が困難となったため当科を紹介され入院となる.

成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴・25

足関節部

著者: 小島岳史 ,   帖佐悦男

ページ範囲:P.1229 - P.1231

診断のポイント

 まずは,問診による受傷状況の詳細な聴取である.受傷状況(内返し,外返しなど),また靱帯断裂や骨折の場合,患者本人が断裂音を自覚したり,「ボキッと音がした」と表現することがある.次いで外見上での腫脹の有無を確認し,局所の圧痛位置を調べる.次いで画像検査として単純X線(正面・側面像)を行う.本疾患(後述)を疑ったら単純X線両斜位像を追加し,確定診断がつかない場合はCTなどで診断を進める.レギュラー選手かどうか,出場目標としている大会時期なども詳しく聴取し,治療方針の参考とするべきである.

臨床経験

強直股に対する前方進入法による人工股関節全置換術の治療成績

著者: 老沼和弘 ,   三浦陽子 ,   金山竜沢 ,   白土英明

ページ範囲:P.1233 - P.1237

 前方進入法を用いて9例9関節の強直股に対し人工股関節全置換術(以下,THA)を施行した.術後平均追跡期間は,2.6(0.5~6.4)年である.平均手術時間68.7分,術中出血量376ml,術後入院期間13.6日であり,主訴であった腰痛または膝関節痛は軽減し,全例,T字杖による独歩が可能となり退院した.術後5週以内に脱臼が1例発生した.強直股に対するTHAは手術手技の難易度が高いとされているが,前方進入法では,通常の手技手順で正確なインプラントの設置が可能であり,短期成績も良好であった.

変形性膝関節症における人工膝関節全置換術前後の3次元歩行解析―片側置換術前後の比較

著者: 白勝 ,   舟崎裕記 ,   国見ゆみ子 ,   野村進 ,   丸毛啓史

ページ範囲:P.1239 - P.1243

 背景:両側の変形性膝関節症に対して片側の人工膝関節置換術(TKA)を行った症例の術前後における歩行の3次元動作解析を行い,非手術側の術前の日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(JOAスコア)が術後の歩行に与える影響について検討した.

 対象と方法:症例は26例,手術時年齢は平均74歳であった.

 結果:術前の非手術側のJOAスコアが60点以上の群では,術後は術前と比べて歩行における様々な因子が改善したが,60点未満の群ではこれらの改善はほとんど認めなかった.

 まとめ:本手術による歩行因子の改善は,非手術側の術前のJOAスコアに大きく影響を受ける可能性が示唆された.

症例報告

後方矯正固定術後に重度の冠状面off balanceを生じた成人期特発性側弯症の1例

著者: 西田光宏 ,   渡辺航太 ,   細金直文 ,   戸山芳昭 ,   千葉一裕 ,   松本守雄

ページ範囲:P.1245 - P.1249

 患者は44歳の女性で,ダブルカーブの成人期特発性側弯症に対し,後方矯正固定術を施行した.術後次第に冠状面のoff balanceが進行し,46歳時に歩行障害が出現した.初回手術時の胸椎カーブの矯正が腰椎カーブより不良であったこと,可動椎間でのバランスの代償が生じなかったことがoff balanceの原因と考えられた.再手術では,腰椎カーブのCobb角が増加する方向に骨切りし,歩行障害は改善した.成人期特発性側弯症に対する後方矯正固定術では,冠状面バランスの調整に留意する必要があると考えられた.

インフリキシマブが奏効した乾癬性関節炎の1例

著者: 上杉和秀 ,   山岸栄紀 ,   茂呂貴知 ,   鈴木幹夫

ページ範囲:P.1251 - P.1254

 インフリキシマブ(infliximab:IFX)が有用であった乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)の1例を経験した.症例は53歳の男性で,四肢・体幹の隆起性紅斑と多関節炎を主訴とし,当院を受診した.PsAと診断し,シクロスポリンと塩酸エピナスチン,NSAIDsの投与を行ったが,寛解は得られなかった.IFXの投与により,関節炎と紅斑はほぼ消失し,Disease Activity Score (DAS) 28-CRPが4.70から1.52に低下した.Psoriasis Activity and Severity Index(PASI)スコアは37から2.4に低下した.関節リウマチ同様,コントロール不良のPsAに対し,生物学的製剤の使用を積極的に検討すべきである.

脊椎内視鏡手術でサルベージが可能であった難治性腰痛とみなされていた腰椎多数回手術例(MOB)の1例

著者: 寺口真年 ,   山田宏 ,   河合将紀 ,   筒井俊二 ,   前田孝浩 ,   吉田宗人

ページ範囲:P.1255 - P.1259

 腰椎手術後の遺残症状は多様であるが,いわゆる腰痛に関しては有効な治療手段を講じることができず,漫然と保存的治療を継続していることが少なくない.今回われわれは,難治性腰痛に対して神経根ブロックを試みたところ,患者の満足する十分な除痛効果を確認できた腰椎多数回手術(MOB)症例を経験した.このため,神経根性腰痛と診断し,脊椎内視鏡を用いてサルベージ手術を追加したところ良好な結果を得た.われわれが経験したように,神経根性腰痛は確かに存在するため,難治性腰痛の治療に際しては,本病態の可能性も十分に検討しなければならない.

書評

『みえる腰痛:体性感覚構造図―運動器疼痛の診断のための示説(DVD-ROM付)』 フリーアクセス

著者: 星地亜都司

ページ範囲:P.1201 - P.1201

 私にも単著発刊の経験があり,専門書・手術書の編集執筆経験もあるが,それらは,通常の臨床経験や臨床研究に基づく,言ってみれば,日々手術数をこなし,データをためて努力すれば,発想が貧困でも書ける内容のものであった.このたびそのような通常の発想を超越した素晴らしい書籍が高橋弦氏のご努力により誕生した.高橋氏のご発表や論文については,何度か拝聴・拝読し,ずっと気になっていた.いつか栃木での御講演を依頼したいと考えていた折,この春に開催された日本脊椎脊髄病学会での書籍販売場でこの本の表紙が目に飛び込み,早速入手した.

 「複雑さに挑む科学―多変量解析入門」(柳井晴夫ほか,ブルーバックス,1976)という30年以上前に出版された統計の入門書には,今では当たり前の,統計学的な手法を用いて世の中の複雑な現象を最適なモデル作成によって説明しようとしたことが書かれている.マーケティング調査などでもそのような手法が当たり前にように実施されている昨今である.その当たり前のことが一昔前には当たり前ではなかった.高橋氏はいろいろな部位に起因する腰痛の最適化モデルを美しく表現され,永遠のテーマとも言える腰痛の合理的な解明に挑んだのである.

INFORMATION

第16回超音波骨折治療研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1175 - P.1175

会期:2013(平成25)年1月19日(土)

   13:00~18:00(予定)

会場:東京ステーションコンファレンス

   〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー5階

   TEL:03-6888-8080

第54回乳児股関節エコーセミナー フリーアクセス

ページ範囲:P.1259 - P.1259

期日:平成25年2月25日(月),26日(火)

主催:日本整形外科超音波研究会,教育研修委員会

会場:新潟県はまぐみ小児療育センター(〒951-8121 新潟市中央区水道町1-5932)

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欧文目次 フリーアクセス

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1261 - P.1261

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1262 - P.1262

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.1263 - P.1263

あとがき フリーアクセス

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.1264 - P.1264

 今年最後の12号のあとがきを,11月1日に記しています.歳を取るごとに,歳月は勝手に来て,一瞬の裡に去って行ってしまいます.“人間の生命は「ひとつ」と数える暇もない”(シェークスピア)を実感します.

 夢を語るよりも,思い出に浸ることが多くなると,人は「老人」に分類されるといいます.ただ,歳を重ねることは,必ずしも悪いことばかりではありません.人はいくつもの断念を積み重ねて歳を取っていきます.その結果,若い時にはみえなかったこともみえるようになります.「何かを得るには何かを捨てなければならない」は,ここでも真実です.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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