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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科47巻5号

2012年05月発行

文献概要

視座

整形外科医,基礎研究,生きもの

著者: 妻木範行1

所属機関: 1京都大学iPS細胞研究所(CiRA)増殖分化機構研究部門

ページ範囲:P.401 - P.401

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 基礎研究を行う理由は,その成果が数年~数十年先,あるいはもっと先に疾患の治療に役立つことにあるのでしょう.整形外科領域で基礎研究をしなくなれば,例えば,変形性関節症や骨系統疾患の薬の開発といった目標は夢に終わると思われます.神経,心臓,肝腎膵などの分野では基礎研究者がいますが,整形外科領域の臓器である骨格を専門にする基礎研究者は少なく,日本では整形外科医がその基礎研究を支えてきました.医師が基礎研究をするのは日本の特徴と言われますが,整形外科はまさにその通りです.もっとも,現実に直面している患者さんの役に(すぐには)立たないし,自分の手術の技量や給料が上がるわけでもないのに,時間を作って基礎研究をするのは,面白いからという整形外科医が多いと思います.人工関節置換術や骨接合術をしていると材料を扱う感覚になりがちですが,骨や軟骨は生きものです.医学部学生の生物科学概論の授業で,生きものの定義を学びます.生きものは細胞でできており,細胞とは共通のしくみを持っているものとされています.一人の人間のすべての細胞は同じ遺伝子をもち,そこから蛋白を作りだすしくみはすべての生きものに共通です.私の場合,基礎研究を始めて生きものの醍醐味を感じたことから,ずるずると研究を続けてきました.整形外科医が基礎研究を行う場合,いつかは基礎研究をやめて整形外科の臨床に専念します.人により,30歳ごろまでだったり,40歳台まで続けたり様々です.個人の側からは医者人生の一時期を基礎研究に捧げ,研究領域の側からみればそれら個々の研究成果が繋がって領域として進歩しているのが日本の整形外科基礎研究の実体でしょうし,これからもそうだと思います.そして個人の側では,生きもののしくみを深く体験することは,その医師のその後の診療に役立つと思うのですが,いかがでしょうか.基礎研究のおもしろさを知るには,まずやってみるのが一番だと思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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