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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科47巻9号

2012年09月発行

雑誌目次

視座

医療安全を巡る患者との齟齬

著者: 大川淳

ページ範囲:P.821 - P.821

 現在,整形外科診療科長とともに,大学附属病院全体の安全管理の責任者を任されています.そこで悩まされるのは,「医療事故」という言葉です.医療事故は,国民にとってはいまだに過失とイコールですが,国立大学附属病院長会議の定義では,過失の有無にかかわらず診療上患者に発生した死亡,生命の危険,病状の悪化などの身体的被害・苦痛などとされています.この定義からすると,医療上不可避であった合併症も「医療事故」に含まれます.ところが,「事故」という言葉が一人歩きして,合併症であっても過失が背景にあるに違いないと誤解されることが少なくありません.ほとんどの医師は利用可能な医療資源をできる限り有効に使って最良の医療を提供できるように努力していますが,いまだに国民との間に埋めがたい溝があるように感じます.

 私たちは患者の自己決定権を保証する目的で,インフォームド・コンセントを充実させてきました.整形外科手術では院内感染,骨癒合不全や神経合併症などが一定の頻度で発生することを説明し,最近では肺梗塞で生命に影響する可能性にも言及します.そのうえでサインをもらい手術に望みますが,ひとたびこうした合併症が実際に起きると,そんなことが起きるのであれば手術をしなかった,過失があるはずだというクレームを受けることになります.もちろん,一部には技術的にも人間的にも未熟な医師が関わる医療事故があることを否定しません.ただ,最終的な結果が悪ければ,過失の有無とは無関係にすべて医師や病院に責任を求める姿勢は,私の理解を超えるときがあります.

誌上シンポジウム 脊椎脊髄手術の医療安全

緒言 フリーアクセス

著者: 松山幸弘

ページ範囲:P.822 - P.822

 脊椎脊髄外科医にとって,最もつらいことは術後の麻痺であります.

 また,この術後麻痺は患者さんにとっても大きなダメージを与え,場合によっては人生を左右することもあります.したがって,術後麻痺はできる限り発症しないよう,私たちは最大限の努力をする必要があります.

術中脊髄モニタリングのアラームポイント―日本脊椎脊髄病学会モニタリング委員会報告

著者: 小林祥 ,   松山幸弘 ,   四宮謙一 ,   川端茂徳 ,   安藤宗治 ,   寒竹司 ,   齊藤貴徳 ,   高橋雅人 ,   伊藤全哉 ,   村本明生 ,   藤原靖 ,   木田和伸 ,   山田圭 ,   和田簡一郎 ,   山本直也 ,   里見和彦 ,   谷俊一

ページ範囲:P.823 - P.827

 経頭蓋電気刺激筋誘発電位Br(E)-MsEPは,最も汎用されている術中脊髄機能モニタリングである.しかし,定まった警告基準(アラームポイント)がない.われわれはBr(E)-MsEPの振幅70%の低下をアラームポイントと定め,多施設前向き研究を行った.その結果578例を対象とし,true positiveは18例(3.1%),false positiveは43例(7.4%),false negativeは2例(0.3%)であった.感度は90%,特異度は91.7%であり,振幅低下70%をアラームポイントとした場合に良好な成績が得られた.

胸椎後縦靱帯骨化症に対する後方除圧矯正固定術―術後麻痺回避のポイントと後方進入脊髄前方除圧術

著者: 今釜史郎 ,   伊藤全哉 ,   安藤圭 ,   平野健一 ,   田内亮吏 ,   村本明生 ,   松井寛樹 ,   松本智宏 ,   松山幸弘 ,   石黒直樹

ページ範囲:P.829 - P.835

 胸椎後縦靱帯骨化症(胸椎OPLL)は高度脊髄障害を呈することが多く,術後下肢麻痺のリスクが非常に高い.当科では,後方から広範囲椎弓形成術・椎弓切除術とインストゥルメントを併用した後弯矯正固定術を同日に行う一期的後方除圧矯正固定術を行い良好な成績を得ている.本稿では術後麻痺の回避や良好な手術成績を得るための術前~術後の注意点,術中脊髄モニタリング,さらに後方進入脊髄前方除圧術の内容,タイミングについて述べ,当科での胸椎OPLL手術における安全対策を紹介する.

脊髄髄内腫瘍の術中脊髄モニタリング―白質障害と灰白質障害の違いを含めて

著者: 藤原靖

ページ範囲:P.837 - P.843

 髄内腫瘍摘出術では易損性の高い脊髄を切開して手術するため,術中脊髄モニタリングが必須となる.髄内腫瘍のモニタリングに際しては,白質障害(索路障害)と灰白質障害(髄節障害)の違いに注意する必要がある.白質障害が広範囲の電位低下を起こすのに対して,灰白質障害は手術髄節に限局した部分的な電位低下を来す.中下位頚椎手術では上肢筋,胸腰椎移行部手術では下肢筋を広くモニタリングすることが重要である.

―脊柱変形―小児

著者: 鈴木哲平 ,   宇野耕吉

ページ範囲:P.845 - P.847

 小児脊柱変形手術の医療安全においては,術後の詳細な神経学的評価が困難なことも多く,術中脊髄モニタリングの重要性は非常に高い.ナビゲーションの利用は重度,もしくは先天性側弯症のような複雑な3次元的変形においては,アンカー設置のみならず,理想的な骨切りを行ううえで有用性が高い.周術期管理においては必要に応じて挿管管理を継続することや,てんかん,喘息といった既往症のコントロールに留意する.低体重・低栄養の患児も多く,感染リスクを考慮した術前の高カロリー輸液,インプラント設置部位や術後の皮膚状態に留意する.

―脊柱変形―特発性側弯症

著者: 山田圭 ,   猿渡敦子 ,   密川守 ,   佐藤公昭 ,   永田見生

ページ範囲:P.849 - P.856

 特発性側弯症の手術は,椎弓根スクリューを多用した術式によって良好な矯正が可能となった.しかし,矯正操作が脊髄に与える侵襲は大きくなり,神経合併症の危険が存在する.また椎弓根スクリューによる神経血管合併症も多い.脊髄モニタリングは神経合併症予防に有効だが,複数以上のモニタリング手段を併用することが望ましい.またナビゲーションは椎弓根スクリューの逸脱予防に有効だが,頂椎付近では逸脱の危険性が残存している.周術期には出血に対して自己血の準備,自己血回収装置の使用が有効である.また疼痛管理,呼吸器合併症,上腸間膜動脈症候群の注意も必要である.

―脊柱変形―成人側弯症

著者: 長谷川智彦 ,   大和雄 ,   小林祥 ,   戸川大輔 ,   安田達也 ,   松山幸弘

ページ範囲:P.857 - P.864

 成人側弯症の特徴と,手術治療について思春期特発性側弯症との相違点を提示し,成人側弯症手術の特性について言及した.また,成人側弯症の矯正固定手術における安全性を高めるために,当科で行っている方策のうち,多数筋モニターによる脊髄,神経根モニタリングと術中2D,3Dイメージ取得可能なO-armイメージ下でのナビゲーションを用いた矯正固定手術について,参考症例を提示し,その有用性について述べた.また術中,術後の出血低減のために行っている7つの方法,注意点について述べた.

腫瘍脊椎骨全摘術の周術期管理のポイント

著者: 村上英樹 ,   出村諭 ,   加藤仁志 ,   林寛之 ,   白井寿治 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.865 - P.868

 われわれは脊椎悪性腫瘍,特に転移性脊椎腫瘍患者の生存率の向上を目指して,これまで局所根治のみを目的としていた腫瘍脊椎骨全摘術(TES)に腫瘍凍結免疫を応用し,術後のがん免疫増強が同時に期待できる新しい手術を開発し施行している.この手術は以前に比べて侵襲が小さくなってきてはいるものの,この手術を安全に行うためには周術期管理に精通していなければならない.そこで周術期管理のコツを出血対策,髄液漏・胸水貯留対策,感染対策,術後肋間神経痛対策の4つに分けて述べる.

手術手技/私のくふう

経腸骨稜アプローチで対応したhigh iliac crestを伴った左第5腰椎-第1仙椎椎間孔部狭窄症の1例

著者: 前田孝浩 ,   山田宏 ,   岩崎博 ,   筒井俊二 ,   木岡雅彦 ,   吉田宗人

ページ範囲:P.869 - P.872

 症例は76歳の男性で,左下肢痛と間欠跛行を主訴とする左第5腰椎-第1仙椎(L5-S1)腰椎椎間孔部狭窄の1例である.脊椎内視鏡下後方除圧術を計画したが,high iliac crestの存在により椎間孔外からの円筒レトラクターの適正設置が妨げられ,神経除圧に際して峡部・椎間関節の破壊が懸念された.そのため,われわれは脊椎内視鏡下に腸骨稜を掘削することで円筒レトラクターの通過路を作製し,峡部・椎間関節を温存したまま椎間孔内外の神経除圧を達成することに成功した.本アプローチはhigh iliac crestを伴う症例において医原性不安定症を回避する一手法として推奨できる.

連載 知ってますか?整形外科手術の変遷・6

先天性橈尺骨癒合症に対する手術

著者: 荻野利彦 ,   射場浩介

ページ範囲:P.874 - P.880

病態,臨床像と手術適応

 本症は,先天性の近位橈尺骨癒合に起因する前腕の回内位強直が主症状である.稀に遠位橈尺関節癒合や,橈骨と尺骨が全長にわたり癒合する場合がある.癒合には部分強直と完全強直がある.前腕の強直角度は様々である.完全強直例の多くで,手関節部での回旋代償運動の存在により前腕の回旋がある程度できるようにみえる13).X線像では近位橈尺関節の癒合が認められる.骨癒合の長さは様々であり,成長により伸びる場合もある.橈骨と尺骨の癒合の程度は,軟骨性癒合,皮質骨のみの癒合から,両骨の癒合部に皮質骨がなく骨髄を共有しているものもある.橈骨頭は形態と位置が正常に近いものから,骨頭の著しい変形を示すものや,前方にほとんど脱臼してみえる例もある.本症による障害は,乳児であれば「頂戴」の動作ができない.就学前の児童では手の掌面で水がすくえない,箸の持ち方がおかしい,茶碗をうまく持つことができないなどを訴える.年長児では,逆手での鉄棒の握り,野球での転がってきたボールの捕球などのスポーツ動作の不自由を訴えるものが多い.非利き手罹患の場合に障害を訴えるものの頻度が高い5)

 治療では,前述の日常生活動作あるいはスポーツ活動で障害を訴える場合,あるいは,これらの障害の出現が極めて強く予想される場合に手術適応になる.手術法は回旋運動を再建する授動術と前腕不良肢位矯正を目的とした回旋骨切り術に大別される.以下,両手術法の変遷について述べる.

成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴・22

鼡径部痛

著者: 川添浩史 ,   帖佐悦男

ページ範囲:P.881 - P.884

診断のポイント

1) 活動性の高い10代男子,外傷の既往なし.

2) 左鼡径部の運動時痛.

 競技スポーツに関連した痛みの診断においては,痛みが発生するタイミングやポジションなど,競技特異性を考慮しなければならない.また練習時間などの活動状況も十分に把握し診断を行わなければならない.

整形外科最前線 あなたならどうする?・9

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 渡邊孝治 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.885 - P.888

症例

患者:73歳,男性

主訴:右膝からの排膿

既往歴:C型肝炎,前立腺肥大症

現病歴:11歳時に右下肢の開放骨折を受傷し,多数回の手術を受けた.28歳時に変形治癒に対して矯正骨切り術,41歳時に脛骨近位部の骨部分切除と植皮術を受けた.右下肢は成長障害により短縮し足関節は脚長差による尖足拘縮を認め,膝関節は大腿骨遠位・脛骨近位の骨端の変形と変形性関節症のため,可動域は伸展-25°,屈曲50°程度であった.2010年4月,近くの病院の整形外科で膝の関節水腫に対し穿刺を受け,穿刺部の皮膚が潰瘍化し形成外科に紹介となった.形成外科で保存的に加療を行ったが潰瘍は治癒せず,6月に大腿部よりの皮弁形成術を施行した.術後に皮弁が壊死し排膿を認め,培養でMRSAが検出された.7月,潰瘍部のデブリドマン・持続洗浄を行った(図1)が,感染の鎮静化を得られず,排膿を持続し11月に紹介され受診した.

医者も知りたい【医者のはなし】・53

―東京女子医科大学創始者―愛と至誠に生きた吉岡彌生(1871~1959)奮闘記

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.892 - P.897

■はじめに

 私が東京女子医科大学の存在を知ったのは,昭和38年(1963)に九大医学部を卒業して,東京の立川米空軍病院で1年間,インターンを行ったときである.われわれ18人のインターン仲間に,東京女子医大卒の吉岡美奈子さんがいた.そのとき,何のために女子専門の医学校があるのか?と不思議に思った.その後,渡辺淳一の小説,昭和45年(1970)初版の「花埋み」を読んで,吉岡彌生が明治33年に東京女医学校(東京女子医科大学の前身)を創設するころは,女性が医師になることが,いかに難しいかを知った.吉岡彌生女史伝記編纂委員会の依頼で伝記記者・神崎清が,古稀に近い彌生に密着取材して自伝風に書いた「吉岡弥生傳」が,昭和16年(1941)に出版された.さらに彌生の長男博人によって,文章が現代仮名遣いに改められて,改訂版として昭和41年(1966)に発行された.それを筆者が読んだのは,20年ほど前であろうか? その後,彌生の人生に魅かれて,いろいろと文献を読み,彼女の生家とお墓を訪ねたことがある.

 今回は,彌生が東京女医学校を創るところを中心に述べる.参考文献には,「彌生」と「弥生」の両方が使われている.筆者自身,名前「木村專太郎」の「專」の旧字に,特別のこだわりを持っているので,あえて「彌生」を選んだ.

 明治17年(1884)に医術開業試験に名称が変わった日本の医師国家試験において,翌年の明治18年(1885)に,「花埋み」の主人公・荻野吟子の合格により日本に女医第一号,彼女から数えて27人目に女医・吉岡彌生が明治25年(1892)に誕生した.彌生が24歳の明治28年(1895)に,4歳年上のドイツ語塾・東京至誠学院経営者兼塾長の吉岡荒太と結婚した.しかし,明治32年(1899)に,主人の荒太が糖尿病で倒れ,翌年ドイツ語学院は閉鎖された.当時,彌生は東京至誠医院を開業していた.明治33年(1900)に,彌生が学んだ長谷川泰の経営する医学校・済生学舎(後の日本医科大学)は,風紀の乱れを理由に女子の医学勉学を不許可とし,在学中の女学生をも閉め出した.女性の医学への門戸が全く閉ざされたことを知った彌生は,女医学校の設立を決心し,主人・荒太の理解と協力を得て,同年にわが国最初の女医養成機関・東京女医学校を創設した.その後,医学校は明治45年(1912)に,東京女子医学専門学校に昇格した.その後,彌生は女医教育,女性の教養と地位の向上に努めたが,第二次世界大戦の敗戦後に一時公職を追放された.しかし,昭和27年(1952)に,彼女は女子医専から世界で唯一残る女子医学校に昇格した東京女子医科大学の学頭に就任した.

臨床経験

踵骨骨折における腓骨筋腱脱臼の合併率―3D-CTを用いた検討

著者: 小林洋 ,   茂呂貴知 ,   小平俊介 ,   鈴木幹夫 ,   吉田友彦

ページ範囲:P.899 - P.902

 Three-demensional computed tomography(3D-CT)を用いて踵骨骨折に伴う腓骨筋腱脱臼を検討した.踵骨骨折の手術症例43例を対象とし,術前にCTを撮影した.43例中9例に腓骨筋腱脱臼が認められた.機序として,上腓骨筋支帯の断裂や,足関節外果の靱帯付着部の剝離骨折により,腓骨筋腱の前方要素の不安定性を生じて腓骨筋腱脱臼が生じると考えられた.踵骨骨折の治療においては,腓骨筋腱脱臼の合併の有無を検査する必要がある.また,3D-CTは腓骨筋腱脱臼の有無を確認するのに有用である.

症例報告

上腕骨大結節骨折に対する8の字鋼線締結法後に,裂離型大結節骨折を生じた1例

著者: 入江悠子 ,   鈴木一秀 ,   西中直也 ,   牧内大輔 ,   永井英 ,   筒井廣明 ,   三原研一

ページ範囲:P.903 - P.907

 肩関節前方脱臼骨折に伴う上腕骨大結節骨折に対し,軟鋼線による8の字鋼線締結法を施行後に,裂離型大結節骨折を生じたため再手術に至った1例を経験したので報告する.本症例は,本来骨密度の低い大結節の骨折に,脱臼骨折に伴う血行障害と骨膜損傷を来したことで骨脆弱性が進行し,裂離型大結節骨折を生じたものと考えた.本骨折の術後に早期からの骨萎縮像を認めた場合には同部位の裂離骨折を生じる可能性が示唆された.

投球時に上腕骨内顆骨折と肘関節脱臼を受傷したリトルリーガーの1例

著者: 米山友貴 ,   田鹿毅 ,   小林勉 ,   山本敦史 ,   篠崎哲也 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.909 - P.913

 投球動作により上腕骨内顆骨折と肘関節脱臼を受傷した10歳男児のリトルリーガーの稀な1例を経験した.滑車核出現以前であったため,単純X線所見による上腕骨内顆骨折の確定診断は困難であったが,肘関節造影および,MRI検査が診断に有用であった.骨折型はMilch TypeⅠに分類され,Kirschner鋼線を用いてZuggurtung法で固定した.発傷機転としては,第1に局所的には投球動作時における肘関節への外反ストレスと屈筋群の骨端部への牽引力,肘頭から滑車部への剪断力,そして滑車核が生じる以前の骨端部の物理的な脆弱性が考えられた.第2に運動連鎖の観点からは,下肢体幹筋力の低下,筋柔軟性の低下が投球時に肘関節の負荷を増大させたことが考えられた.

先天性多発性関節拘縮症に合併した脊柱側弯症の3例

著者: 西山雄一郎 ,   渡辺航太 ,   細金直文 ,   戸山芳昭 ,   千葉一裕 ,   松本守雄

ページ範囲:P.915 - P.919

 背景:先天性多発性関節拘縮症に合併した脊柱側弯症の手術成績は不良と考えられてきた.

 対象と方法:本症に合併した側弯症に対し後方矯正固定術を行った3例を対象に,手術治療成績を検討した.

 結果:術前主カーブの可撓性は17%,12%,22%と著しく低下していた.さらに全例に拘束性換気障害を認めた.術後の矯正率は72%,74%,23%であった.周術期に腸閉塞,心肺停止を各1例経験した.

 結語:本症に合併する側弯症は可撓性が低く矯正が困難である.また,拘束性換気障害を伴うため,周術期の呼吸管理が重要である.

上腕三頭筋皮下断裂の2例

著者: 菅沼省吾 ,   多田薫 ,   土屋弘行 ,   小林歩

ページ範囲:P.921 - P.925

 緒言:われわれは,比較的稀な上腕三頭筋皮下断裂の2例を経験したので報告する.

 症例:症例1は14歳の男児で,転倒して受傷し,受傷後8カ月時に当科を紹介受診した.陳旧性上腕三頭筋皮下断裂の診断で保存的に加療し,機能障害なく治癒した.症例2は56歳の男性で交通事故で受傷した.上腕三頭筋皮下断裂の診断で手術を行い,機能障害なく治癒した.

 考察:本外傷は見逃されやすく,診断にはflake signの同定が重要である.若年者や活動性の高い症例には手術療法を選択すべきであるが,それ以外の症例は慎重に手術適応を判断すべきである.

INFORMATION

第4回日本レックリングハウゼン病学会学術大会 フリーアクセス

ページ範囲:P.907 - P.907

会期:2012年11月4日(日) 午前9時50分より

会場:慶応義塾大学 三田キャンパス 北館ホール(〒108-8345 東京都港区三田2-15-45)

第6回 股関節鏡フォーラム フリーアクセス

ページ範囲:P.913 - P.913

日時:2012年12月9日(日)10時~16時

会場:THE GRAND HALL(〒108-0075 東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー3F)

   TEL:03-5463-9971

2013 ICJR (International Congress for Joint Reconstruction) Fukuoka フリーアクセス

ページ範囲:P.925 - P.925

会期:2013年4月12日(金),13日(土)

会場:ヒルトン福岡シーホーク〔〒810-8650 福岡市中央区地行浜2-2-3〕

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.927 - P.927

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.928 - P.928

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.929 - P.929

あとがき フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.930 - P.930

 猛暑が続いていますが,ロンドンオリンピックでの日本選手の活躍をテレビで観戦して元気をもらった人も多いのではないでしょうか? 「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利である」との考えに立ったスポーツ基本法が2011年に成立してから最初のオリンピックです.たくさんのメダルの獲得が期待されます.

 今月号の視座では,東京医科歯科大学の大川 淳先生が「医療安全をめぐる患者との齟齬」と題して病院の安全管理の立場から意見を述べておられます.『医療事故』の定義は国立大学附属病院長会議においては,過失の有無に関わらず診療上患者に発生した死亡,生命の危険,病状の悪化などの身体的被害・苦痛などとされていますが,国民にとってはいまだに過失とイコールと考えられている,と述べられています.実際に起こった事故を,一般の人は医療事故と思い,場合によっては医療側の過失があるのではないかと考えます.しかし,調べてみると病気のために不可抗力の事故も多くあります.インフォームド・コンセントが十分になされていても,いったん事故が起こると治療を受けるのではなかったなどとクレームがつくこともあります.それを防ぐためにも患者との信頼関係を築き上げることが重要ですが,多くの医療機関で入院期間の短縮を目標の一つにあげており,信頼関係を築くことも次第に困難になっています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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