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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科48巻10号

2013年10月発行

雑誌目次

誌上シンポジウム 低出力超音波パルス(LIPUS)による骨折治療―基礎と臨床における最近の話題

緒言 フリーアクセス

著者: 神宮司誠也

ページ範囲:P.954 - P.954

 「超音波骨折治療器」は平成5年(1993年)に,「四肢の骨折の治癒促進」を効能効果として薬事上の承認を得ました.承認当初は,長管骨の難治性骨折にのみ保険適用されていましたが,現在,条件付きではありますが,新鮮骨折にも使用できるようになりました.骨折治療におけるスタンダードなオプションとなっていますが,まだまだ新たな試みやさまざまな工夫が行われ続けています.この特集では基礎と臨床における最近の話題を集めて,低出力超音波パルス(LIPUS)による骨折治療に関する最新情報の提供を意図して企画いたしました.

臨床応用における基礎研究

ヒト骨折血腫由来細胞に対する低出力超音波パルスLIPUSの効果

著者: 新倉隆宏

ページ範囲:P.955 - P.959

 われわれは骨折の手術時に採取した骨折部血腫から細胞を分離して実験に供している.これらヒト骨折血腫由来細胞が骨・軟骨・脂肪各系統細胞へ分化し得る多分化能を有することを過去に報告した.低出力超音波パルス(LIPUS)をこの細胞培養系に照射すると,細胞増殖には影響を与えないが,骨・軟骨分化が促進される.ヒトの骨折部の血腫に存在し実際に骨折治癒過程に携わっていると考えられる細胞がLIPUSに応答し,骨・軟骨分化が促進されることが明らかとなった.この結果は,新鮮骨折におけるLIPUSの積極的な使用を推奨し得るものと考えられる.

遷延骨癒合・偽関節に対する経皮的濃縮自家骨髄血移植と低出力超音波パルス併用による治療効果

著者: 三島初 ,   菅谷久 ,   青戸克哉 ,   吉岡友和 ,   酒井晋介 ,   赤荻博 ,   落合直之 ,   山崎正志

ページ範囲:P.961 - P.968

 治療に難渋する骨癒合不全に対し,低出力超音波パルス(LIPUS)を併用した骨髄血移植の治療効果を検討した.施行27症例のうち治療後1年以上経過した17症例(大腿骨10例,脛骨5例,上腕骨1例,尺骨1例)を対象とした.平均年齢は40.7歳で,全例萎縮性変化を伴っていた.12カ月での癒合率は全体で76%,下肢長幹骨では87%であった.本手法は骨新生の材料となる骨髄細胞・成長因子を十分供給し,なおかつLIPUSが初期の分化促進に効果的に作用し骨癒合反応再開に寄与したと考えられる.低侵襲・安全・低コストな本手法は,骨癒合不全に対する有用な治療方法の選択枝の1つであると考えている.

新鮮骨折への臨床応用

地域医療連携による大腿骨近位部骨折に対する低出力超音波パルス(LIPUS)治療

著者: 野村一俊 ,   渡辺充伸

ページ範囲:P.969 - P.972

 大腿骨転子部骨折の骨接合術後に低出力超音波パルス(LIPUS)照射を加えることにより骨癒合を促進できれば,ラグスクリューのカットアウトを減少させることができ,術後の荷重時痛を早期に軽減でき入院期間が短縮できる.一方,LIPUS治療の診療報酬(5,000点)の算定は,開始時に1回しか算定できないため,回復期医療機関のLIPUS治療への理解と協力が得られなければ治療の継続は困難である.理解と協力を得るためには,地域連携クリティカルパスの活用が有用である.

各種創傷被覆材における超音波透過への影響

著者: 成瀬康治 ,   占部憲 ,   内田健太郎 ,   内野正隆 ,   鎌田奈緒子 ,   朝比奈厚 ,   高垣裕子 ,   高相晶士 ,   糸満盛憲

ページ範囲:P.973 - P.979

 超音波骨折治療法が観血的骨接合術後の早期使用へ保険適用が拡大されたことから,創傷処置状態で治療を開始する例も少なくない.そこで低出力超音波パルス(LIPUS)の創傷被覆剤の超音波透過率と,創傷被覆剤透過後の超音波特性の1つであるビーム不均等率を測定し,治療効果への影響を検討した.創傷被覆剤は臨床使用頻度の高いものを7種類使用した.その結果,フィルムタイプ創傷被覆剤はLIPUS照射には適していると考えられた.一方,ハイドロコロイドタイプ,不織布や脱脂綿タイプ創傷被覆剤は空気層を含むためLIPUS照射には適していないと考えられた.

鎖骨骨折に対する低出力超音波パルスLIPUSの効果

著者: 上本宗唯

ページ範囲:P.981 - P.985

 鎖骨骨折は日常よく遭遇する頻度の高い骨折であり,しかもその予後も良好であり,ほとんどが問題なく社会およびスポーツ復帰できる.しかし,早期の復帰は再骨折のリスクもあり,また過度な安静は肩関節に拘縮を来し患者に不利益をもたらすことになる.新鮮鎖骨骨折の保存療法として受傷早期からLIPUSを併用することにより,骨癒合期間を短縮させることはできないものの,疼痛の早期消失が得られることが明らかになった.このことから,肩の可動域制限,肩甲帯周囲筋の萎縮を来さないような積極的なリハビリテーションを進められ,早期に復帰することが可能となった.

難治性骨折への臨床応用

舟状骨骨折への低出力超音波パルスLIPUSの臨床応用

著者: 池田和夫 ,   納村直希 ,   多田薫

ページ範囲:P.987 - P.991

 舟状骨骨折を線状型39例,囊胞型20例,硬化・転位型13例の3型に分け,線状型と囊胞型は骨移植せずスクリュー固定のみを,硬化・転位型には腸骨移植とスクリュー固定を行い,LIPUSを行った.線状型で37例,囊胞型19例に骨癒合を得た.線状型は骨癒合まで2.3±0.2カ月で,硬化・転位型は全例骨癒合し,その期間は5.0±0.7カ月であった.囊胞型でLIPUSを用いない9例の骨癒合期間は3.4±0.5カ月で,用いた10例は2.9±0.2カ月であり,骨癒合までの期間は短い傾向にあった.硬化・転位型はLIPUS併用で全例骨癒合し,囊胞型は併用で骨癒合期間を短縮できる可能性が示唆された.

偽関節と骨延長術への低出力超音波パルスLIPUSの応用

著者: 渡部欣忍 ,   新井通浩 ,   竹中信之 ,   松下隆

ページ範囲:P.993 - P.996

 大規模コホート研究を含む臨床研究の結果では,低出力超音波パルス(LIPUS)照射による遷延癒合・偽関節の治癒率は67~90%と報告されている.しかし,①偽関節が萎縮型である,②骨折部に不安定性がある,③主骨片間の間げきが8~9mm以上である,という特徴をもつ遷延癒合・偽関節にはLIPUSの効果が低い.これに該当する遷延癒合・偽関節に対しては,LIPUSは偽関節手術後の補助療法として使用するのがよいと考えている.

 現行の健康保険制度では,骨切り術や骨延長術に対してはLIPUSを術直後から使用することができない.ランダム化比較臨床試験の結果では,LIPUS照射により延長仮骨の成熟が促進されることが証明されている.骨延長術の術後早期からLIPUSが保険適用されることを期待する.

調査報告

単一施設で実施された脊椎内視鏡手術2,500例の検討

著者: 野村和教 ,   𠮷田宗人 ,   河合将紀 ,   岡田基宏 ,   中尾慎一 ,   麻殖生和博

ページ範囲:P.997 - P.1002

 目的:単一施設で行われた脊椎内視鏡手術の変遷から本法の今後の展望を考察する.

 対象と方法:当院で1998年以降に行われた2,500例の脊椎内視鏡手術(後方手技)を対象とした.時系列で500例ずつの5群に分け,患者の年齢や適応症,術式について調査した.

 結果:初期には若年者の腰椎椎間板ヘルニアの症例が多かったが,後期ほど患者は高齢化し,腰部脊柱管狭窄症の割合が増えた.また頚椎の手術や腰椎再発ヘルニアの手術も増えた.手術時間は次第に短縮し,合併症の割合は減少した.

 結論:手術機器や手技の進歩により,脊椎内視鏡手術の適応は拡大した.

後方進入腰椎椎体間固定術後の骨癒合状態は患者のQOLに影響を与えるか―JOABPEQを用いた評価

著者: 牧野孝洋 ,   海渡貴司 ,   藤原啓恭 ,   石井崇大 ,   米延策雄

ページ範囲:P.1003 - P.1007

 背景:後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)術後骨癒合の有無がQOLに与える影響を日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)を用いて調査すること.

 対象と方法:単椎間PLIFを施行した57例を対象とした.術後6カ月時の単純X線像を用いて,骨癒合判定を行い,術前,術後6カ月のJOABPEQ,JOAスコアおよびVAS値を調べた.

 結果:JOABPEQ獲得量は,疼痛関連障害および社会生活障害において未癒合群は癒合群に比べ有意に少なかった.術後の殿部・下肢痛のVAS値は未癒合群が癒合群に比べ有意に大きかった.

 まとめ:PLIF術後骨癒合の有無は患者のQOLに影響を与える因子であった.

検査法

EOS system―低照射線量による新しい立位放射線撮影機器

著者: 町田正文 ,  

ページ範囲:P.1009 - P.1016

 放射線物理学者,放射線医,整形外科医など複数の分野の連携と協力によりEOS system(日本名:sterEOSイメージング)と呼ばれる新しい医療用画像装置がフランスで開発された.この装置は1992年にノーベル物理学賞受賞のGeorges Charpakが発明したガス式検出器を用いて,X線照射線量の大幅な低下,頭部から足部まで正面と側面の立位画像が同時に得られ,骨・関節のあらゆる部位における冠状面像,矢状面像およびtop-view像などの三次元復元画像が得られる新しい放射線撮影機器である.

Lecture

整形外科における臨床試験のデザインのあり方

著者: 田仲和宏

ページ範囲:P.1017 - P.1024

はじめに

 Evidence based medicine(EBM)という言葉は広く一般にも知られるようになったが,evidenceを創出するための臨床試験の方法論については専門医にもあまり理解されていない.整形外科領域においてもランダム化比較試験の結果が数多く報告されるようになってきたものの,endpointの設定や対象の選択,統計学的手法と結果の解釈などにかなり問題のある臨床試験も多い.

 正しい臨床試験を行うには,正しい方法論に基づく正しいデザインのプロトコール立案が必須である.そのためには,臨床試験の計画段階から,医師のみならず,生物統計家やデータマネジメント,試験の品質管理に携わる種々の専門家の参画が欠かせない.

 本稿では,筆者がグループ事務局を務めるJapan Clinical Oncology Group(JCOG)骨軟部腫瘍グループで実施している臨床試験を題材とし,臨床試験デザインのあり方について概説したい.

整形外科/知ってるつもり

変形性関節症の生物学的マーカー

著者: 山田治基 ,   伊達秀樹 ,   森田充浩

ページ範囲:P.1026 - P.1028

■はじめに

 変形性関節症(osteoarthritis,以下OA)は本邦で800万人以上の患者数が存在するとされている.患者の多くは整形外科医により治療を受けていることから,その治療には整形外科医が大きな責任を負っている.しかしながら,OAは診断基準が明確でなく,ガイドラインの整備も遅れ,骨粗鬆症におけるビスホスホネート製剤のようなアンカードラッグも存在しないのが現状である.OAの評価法については立位単純X線像,MRIなどの画像診断が主として用いられている(図1).OAの発症には,膝関節では下肢アライメント異常や靱帯・半月の損傷,股関節では臼蓋形成不全のような機械的ストレスの亢進が主因とされており,画像診断はこれらの機械的ストレスによる病態を評価するには十分なものである.しかしながら,OAの発症には関節を構成する軟骨,軟骨下骨,滑膜などの組織における代謝異常が大きく関与していることも事実である.たとえば,関節の機能を維持するうえで最も重要な軟骨では,II型コラーゲンやアグリカンなどの主要マトリックスの合成はOA初期には修復反応のため亢進しており,病期の進行に伴い破壊が合成を上回っていくことが知られている.また,OAにおける軟骨の破壊は機械的に起こるのではなく,プロテアーゼなどによるマトリックスの化学的な低分子化に起因する.以上のようなOAにおける軟骨,骨,滑膜などの重要な関節構成体の破壊,修復の活動性を関節液,血液,尿などの体液中に存在する各組織の代謝に関係する分子を測定することによってreal timeで評価する手法が生物学的マーカーである11)

連載 アドバンスコース 整形外科 超音波診断・治療 どこが・どれだけ・どのように・2

脊椎・脊髄術中超音波診断の応用

著者: 佐藤公治

ページ範囲:P.1029 - P.1032

Abstruct

 脊椎・脊髄手術において術中に脊髄の除圧程度を確認するには超音波診断しかない.超音波診断装置は脊髄モニタリング装置や顕微鏡と並び,脊髄手術の三種の神器の一つである.従来の白黒Bモードでは脊髄や髄外腫瘍の形態しか把握できなかったが,技術の進歩により脊髄の血流,髄内腫瘍の局在や栄養血管,そして最近では超音波による脊髄手術ナビゲーションが行えるようになってきた.また穿刺検査や局所治療などインターベンションにも応用可能である.

特別講義 整形外科の歴史・6

「先天性」股関節脱臼の治療史―CDHからDDHへ

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.1034 - P.1037

先天性股関節脱臼の診断をめぐって:晩期診断とその治療

 1930~40年代におけるPuttiの早期治療の呼びかけや,1950年代の北欧における新生児検診と早期治療の動きに,日本の整形外科医は呼応しなかったようにみえる.戦前のドイツ医学,戦後のアメリカ医学への一方的な傾倒とは異なる.なぜか? イタリアや北欧の整形外科学を師表と仰ぐことに抵抗があったのかもしれない.1950年代に始まる飯野・今田らの先駆的な乳幼児検診運動(後述)を除けば,1960年代に入っても,股関節脱臼は股の開きの悪さ(生後3カ月以降)や歩容の異常(幼児~年長児)で気づくことが多かった.つまり新生児期以後ということである.確定診断はX線撮影であるから,Lorenzの時代と変わらないことになる.

 しかし,股関節外科の歴史から言えばSalter(1961),Pemberton(1965)あるいはPauwels(1930s,1976)らによって,治療が困難視された股関節形成不全(acetabular dysplasia)や大腿骨頭の求心性不良に迫る新しい技術が,次々に開発される時代でもあった.いずれも骨関節の成長を妨げない配慮,感染症や軟骨損傷を慮った関節外操作に工夫した跡がみられる(図40~42).

成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴・35

膝関節

著者: 田島卓也 ,   帖佐悦男

ページ範囲:P.1039 - P.1041

診断のポイント

 診断のポイントとして,問診による詳細な病歴や自覚症状(安静時痛の有無など)および運動時の痛みの出現状況の聴取は重要である.また,練習メニューや強度の変化,シューズなどのデバイスの変更,サポーター・テーピングなどの有無なども併せて聴取する.次いで,歩容,下肢アライメント,外見上での膝関節水腫の有無およびその周囲の腫れの有無を確認し,動作時またはストレス時痛などをチェックする.特に痛みが誘発される姿位の確認は重要である.また膝関節周囲の筋力低下や筋萎縮そして隣接関節,特に股関節や足関節のチェックも重要である.次いで,画像検査として単純X線およびMRIなどで順次診断を進める.

医者も知りたい【医者のはなし】・59

医聖・田代三喜(1465~1544)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1042 - P.1045

 今回は室町時代に関東の地で活躍し,後に医聖と呼ばれた田代三喜について述べる.彼は1487年に中国・明に渡り12年間滞在して,李東垣と朱丹渓の金・元時代の医学を学び,帰国後に下総(現茨城県の一部)の古河を中心に関八州(関東地方)で医師として活躍した.その後,彼の医学は弟子の曲直瀬道三(1507~1593)によって継承されて京都で花開き,全国に広まっていった.

 三喜の前に中国に留学した医師を挙げると,隋時代に恵日と福因(608年),唐時代には栄叡(733年)が渡り,その後に鑑真が来日した.その後,菅原清(803年)と菅原梶成(838年)が唐に渡った.明になり竹田昌慶(1369年)が渡り,三喜の後に坂浄運(1492~1501年)が渡って,「傷寒論」を日本に最初に伝えたと言われている.しかし,最近の研究では,傷寒論は13世紀にすでに日本に伝わっていて,書物に引用されているという.

臨床経験

腰椎後側方固定術に対するバイポーラーシーラーの有用性についての検討―前向き無作為比較

著者: 福井大輔 ,   川上守 ,   中尾慎一 ,   宮本選 ,   森下詔子 ,   松岡淑子

ページ範囲:P.1047 - P.1052

 背景:新たなディバイスであるバイポーラーシーラーが,腰椎後側方固定術(PLF)において出血量,手術時間,術後疼痛を軽減し得るかを検討した.

 対象と方法:2011年(平成23年)10月以降,PLFの適応症例を対象とし,後方展開までの時間(分),出血量(mL),1椎間あたりの展開時間(分),出血量(mL),Visual Analog Scale(VAS),入院期間を比較検討した.

 結果:PLFで1椎間あたりの後方展開時間の短縮,出血量の減少が得られた.術後の痛みは,明らかな差はなかった.

 結語:バイポーラーシーラーはPLFの後方展開までの手術時間短縮,出血量減少に有用である.

症例報告

早期乳児てんかん性脳症後のWest症候群に合併した右股関節脱臼の1例

著者: 西山正紀 ,   山田総平 ,   中野祥子 ,   西村淑子 ,   浦和真佐夫 ,   二井英二

ページ範囲:P.1053 - P.1056

 難治性てんかんに伴う股関節脱臼の治療は困難である.早期乳児てんかん性脳症を発症し,生後7カ月でWest症候群に移行した1例を経験した.痙攣コントロール中,右股関節亜脱臼が高位脱臼に進行し,3歳4カ月時にハムストリング近位全切離を含む股関節周囲筋解離術で整復した.後療法は,開排装具,外転装具を着用し,4歳7カ月現在,右股関節は安定し,疼痛は消失した.股関節整復後はてんかん症状に改善もみられた.

BCGワクチンによる幼児の上腕骨骨髄炎の1例

著者: 上田康博 ,   三崎智範 ,   石黒基 ,   石田武彦 ,   五十嵐愛子 ,   福田正基 ,   村田淳

ページ範囲:P.1057 - P.1061

 症例は12カ月の男児で,生後3カ月でBacille Calmette-Guérin(BCG)ワクチンを接種された.その9カ月後,感冒様症状が先行した後,右肩を動かさなくなり,単純X線像で右上腕骨近位部に骨溶解像を認めた.針生検で結核菌PCRが陽性となり,遺伝子解析によりウシ型結核菌であるBCG東京株と判明し,右上腕骨BCG骨髄炎と診断した.抗結核薬(INH,RFP)の投与と病巣掻爬を行った.術後1年現在,骨髄炎の再発や成長障害は認めていない.幼小児期の骨髄炎の鑑別においてはBCG菌を考慮する必要がある.

書評

『関節可動域制限(第2版)―病態の理解と治療の考え方』 フリーアクセス

著者: 萩原嘉廣

ページ範囲:P.991 - P.991

 整形外科医としての生活がスタートした頃は,とにかく手術が上手くなることに集中し,がむしゃらに努力をしていたように思う.私の場合は上司にも恵まれ,一般外傷から始まり,脊椎,関節外科など,幅広く経験をさせてもらえる機会を得られた.術前診断,手術方法の選択,そして手術を行い,合併症を伴わずに成功すれば自分なりに満足感を得られていた時期があった.今から振り返ると恥ずかしい限りであるが,これでは患者が満足する治療にはなっていない.そのことに気づかされたのは,整形外科医になってしばらくしてからのことであった.外傷でも関節外科領域でも,関節可動域制限(関節拘縮)が回復しなければ,患者のADLは改善せず,通常の生活に戻れないのである.むしろ関節拘縮の治療に長くかかる場合も多い.

 関節拘縮は「皮膚や骨格筋,腱,靱帯,関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」と定義されており,日常診療で頻繁に遭遇する合併症であるが,その病因はおろか,はっきりとした治療法も確立されていない.超高齢社会となった昨今,要介護者は増加の一途をたどっているが,関節拘縮は介護の大きな妨げになっている現実がある.つまり関節拘縮は整形外科などの運動器を扱う診療科だけの問題ではないのである.

INFORMATION

第17回超音波骨折治療研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.959 - P.959

会期:2014(平成26)年1月25日(土) 13:00~18:00(予定)

会場:クラウンパレス神戸(〒650-0044 兵庫県神戸市中央区東川崎町1-3-5 5階)

   TEL:078-362-1155

第19回スポーツ傷害フォーラム フリーアクセス

ページ範囲:P.1007 - P.1007

日時:2014年1月25日(土)9:00~16:30

場所:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)特別会議室

   大阪市北区中之島5丁目3番51号 TEL(06)4803-5555(代表)

第6回THA再置換セミナー フリーアクセス

ページ範囲:P.1016 - P.1016

日時:2014年(平成26年)3月13日(木)・14日(金)

場所:関西医科大学附属枚方病院 13階 講堂

   大阪府枚方市新町2丁目3番1号 TEL:072-804-0101(代表)

第27回日本創外固定・骨延長学会学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1061 - P.1061

会期:2014(平成26)年3月7日(金),8日(土)

会長:川端 秀彦(大阪府立母子保健総合医療センター整形外科主任部長)

会場:千里ライフサイエンスセンター(〒560-0082 大阪府豊中市新千里東町1-4-2)

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1063 - P.1063

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1064 - P.1064

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.1065 - P.1065

あとがき フリーアクセス

著者: 金谷文則

ページ範囲:P.1066 - P.1066

 猛暑もおさまり,朝夕は快適になりました.今夏は日本各地で35℃以上の猛暑日が連続し,四万十市で最高気温を更新(41.0℃)しました.その他にも集中豪雨とゲリラ豪雨など異常気象に見舞われ,数十年に一度の大災害に対応する特別警報も設定されました.海温上昇に伴い珊瑚の北限も更新され,回遊魚の種類も変化しています.未来のためにも地球温暖化のプロセスの解明と対策が急がれます.

 本号の特集「低出力超音波パルス(LIPUS)による骨折治療」は神宮司先生の素晴らしい企画です.基礎分野ではLIPUSが骨折血腫細胞の軟骨分化と骨分化を促進し,骨分化はBMP-7の関与によりさら促進されることが報告され,これは偽関節や遷延治癒骨折に加えて新鮮骨折に対する有効性を裏付ける研究です.また骨髄血移植との併用の効果も示されました.臨床面では,鎖骨骨折で癒合までの期間の短縮,舟状骨骨折で高い骨癒合率が示されています.創傷被覆材のフィルムタイプはLIPUS治療に影響は少なく,ハイドロコロイドタイプは適さないことが示されました.多発外傷で骨折部に創傷被覆材を貼付する場合の指標になります.大腿骨近位部骨折に対するLIPUS治療は,骨癒合を促進させることにより術後の早期荷重を可能にし,入院期間を短縮することができますが,LIPUSの診療報酬算定が開始時の1回しかできないため,回復期医療機関の理解と協力が必要であり,地域連携パスの構築と活用が重要なことが示されました.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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