icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科48巻12号

2013年12月発行

文献概要

--------------------

あとがき フリーアクセス

著者: 内藤正俊

所属機関:

ページ範囲:P.1256 - P.1256

文献購入ページに移動
 来年で10年目を迎える卒後臨床研修制度は,「医師としての人格の涵養」,「プライマリ・ケアの基本的な診療能力の修得」,「アルバイトせずに研修に専念できる環境の整備」を基本的な考え方として構築されています.後者の2つについては達成されているようですが,肝心の「医師としての人格の涵養」についてはいかがでしょうか.“鉄は熱いうちに打て”という諺がありますが,研修開始後の数年間が医師としての最も“熱い”時期です.この時期に医学・医療の果たすべき社会的役割や責任感を習得するためには,昼夜を厭わない利他的な生活習慣に慣れる必要がありますが,現在のような形でこれらのことを身に付けられるのか疑問です.また投げ遣りな診療や不誠実な言動を戒めてくれる,親身になった先輩の叱責が欠かせませんが,数カ月後には他の診療科へ移動する研修医に対し愛情を込めた指導は望むべくもありません.医師としての人格的な欠陥を持ったまま冷めた鉄となった専攻医が増えているような気がしています.

 さて,今月号の誌上シンポジウムは“慢性疼痛と原因療法―どこまで追及が可能か”です.整形外科受診者の主訴のほとんどが痛みであり,慢性疼痛で来院される患者も少なくありません.また整形外科の治療後に発症することもあります.いったん慢性疼痛が発症すると,症状が多彩な難治性疾患になります.筆者も術後に複合性局所疼痛症候群を発症させた苦い経験があります.薬物療法,理学療法,神経ブロックのすべてが無効でした.患者の来院時には筆者の胃も痛むようになり,途方に暮れていた時にPolyglycolic acid-collagen tubeによる末梢神経再生を目にしました.失礼を顧みず,その患者を本シンポジウムの最後を飾っておられる稲田有史博士に藁をもすがる思いで紹介しました.完璧に症状が消失して戻ってきた患者の笑顔に接した時の,牢獄から解放されたような安堵感と治療方法の進歩に対する感動を今も覚えています.今月号はこの慢性疼痛と原因療法についての最新の知識を蓄えるのに絶好の機会です.他にも豊富な話題と実際的に役立つ知識が満載されています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら