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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科48巻3号

2013年03月発行

雑誌目次

視座

宇宙医学と運動器―整形外科には宇宙へ広がる未来がある

著者: 志波直人

ページ範囲:P.213 - P.213

 向井千秋宇宙飛行士の監修した『宇宙飛行士は早く老ける?』(朝日新聞社)という単行本がある.NASAなどの宇宙医学の研究成果が和訳され,宇宙飛行士の身体変化がわかりやすく解説されている.宇宙飛行士に起こる運動器・筋骨格系の機能低下(廃用性変化)が,加齢による衰えよりもはるかに早く発生する,ということでのタイトルである.

 臨床における臥床などの活動性低下は筋骨格系の萎縮や機能低下(廃用性変化)を来すが,宇宙飛行士は無重力によりさらに著しい運動器の廃用を来す.筋骨格系廃用発生のメカニズムは,力学的負荷(メカニカルストレス)の減少によるものであるが,長期宇宙滞在で筋力は飛行前の-20~30%,骨は最大-20%萎縮し,完全回復に3年以上を要したという報告がある.骨格筋は同時に質的変化を来し,疲労しやすい持久力のない筋へと変化する(遅筋の速筋化).1987~1995年の94名の米国宇宙飛行士を対象とした調査では,地球帰還後,骨折26例,重篤な靱帯・軟骨等損傷36例,整形外科的手術28例(うち膝手術19例)であった.これは,筋や骨だけの廃用性変化に止まらず,靱帯や軟骨のメカニカルストレスの著しい減少による脆弱化の結果と考えられている.このため,宇宙での運動器廃用対策は,人類が宇宙で活動する際の重要課題と位置付けられている.これらは,まさしく整形外科領域の問題である.

誌上シンポジウム 創外固定の将来展望

緒言 フリーアクセス

著者: 土屋弘行

ページ範囲:P.214 - P.214

 今や創外固定は,整形外科の諸問題を解決する大変有用な方法として認知されるようになりました.Ilizarov創外固定器の導入や単支柱型創外固定器の進歩により,低侵襲的骨接合術や脚延長術はもちろんのこと,これまで治療に難渋してきた高度の粉砕骨折や変形,感染性偽関節,骨髄炎,腫瘍切除後の骨欠損,関節拘縮などの治療が可能となりました.最近では,リング型創外固定器の発展型であるTaylor spatial frame(TSF)が出現し,より治療が行いやすくなっています.

 また,これまで創外固定を実践応用してきた経験の中で,種々の問題点や課題を見出し,さらに創外固定を用いた治療を進化させるいくつかの方法が試みられています.この誌上シンポジウムでは,既に臨床的にも応用され読者諸氏にすぐにでも役立つあるいは近々応用可能になるものの特集を組みました.延長仮骨の成熟促進を目的とした培養骨髄細胞移植,創外固定装着期間の短縮を目指したプレートへのコンバージョン手術,TSFの矯正精度を向上させる方法,一番出遅れていた足の外科への応用,CT/有限要素解析を用いた延長仮骨の経時的骨強度予測と,いずれも大変興味深い領域の論文です.これらの論文をお読みいただければ,医学が日々進歩していることを実感していただけると思います.

培養骨髄細胞移植を併用した骨延長術

著者: 鬼頭浩史

ページ範囲:P.215 - P.219

 骨延長術では仮骨形成が促進されれば,治療期間が短縮し合併症が減少することが期待される.われわれは培養骨髄細胞と多血小板血漿の移植による細胞治療を開発し,これまで100骨以上に本法を併用した骨延長術を施行してきた.軟骨無形成症に対する治療では,従来法と比較してhealing indexおよび治療を要する合併症の頻度は有意に減少した.本法は厚生労働省高度・先進医療評価会議で承認され,ヒト幹細胞指針に基づく再生医療としては本邦初の保険併用が認められた細胞治療であり,従来の同種骨あるいは自家骨移植の代用となり得る可能性を秘めている.

創外固定器から抗菌ヨード担持チタンプレートへのコンバージョン手術の治療成績

著者: 松原秀憲 ,   白井寿治 ,   渡邊孝治 ,   野村一世 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.221 - P.228

 大腿骨6肢,脛骨13肢に対し,創外固定器抜釘と同時に当科で開発した抗菌ヨード担持チタンプレート(iodine-supported titanium allay plate,iPlate)へのコンバージョン手術を施行した症例を検討した.偽関節が8肢,変形矯正後が11肢であった.9肢で自家骨移植を行った.全例で骨癒合を獲得することができた.コンバージョン手術は,創外固定装着期間を短縮し,創外固定関連の合併症を減らすことができ有用である.iPlateは,コンバージョン手術で最も危惧される感染の合併症を減らすことができ,創外固定の将来展望に新しい道筋を示せる.

Taylor spatial frameの矯正精度―単一施設・単一術者による手術例における後ろ向き解析

著者: 中瀬尚長 ,   濱田雅之 ,   河井秀夫

ページ範囲:P.229 - P.234

 Taylor spatial frame(以下,TSF)による矯正手術を行った28例の矯正精度について後ろ向きに検討した.手術時年齢は10~70(平均32.8)歳,男21例・女7例で,内訳は,大腿骨12例・脛骨16例,偽関節を含む陳旧性骨折8例・骨切りを行い骨延長による矯正を行った症例20例であった.術前後の角状変形,側方変位,回旋,骨長差といったパラメターはすべて術後改善を認め,ほぼ全例で基準値の範囲内に収まる矯正位が獲得された.各パラメター間の矯正精度の検討では,平均値において回旋矯正の精度が98.9%と最も高く,Kruskal-Wallis検定では,回旋変形矯正群と骨長矯正群の間に有意差が認められた.

足部足関節部と創外固定

著者: 宇佐見則夫

ページ範囲:P.235 - P.240

創外固定の進歩

 創外固定は整形外科領域では開放骨折や粉砕骨折,比較的最近では骨延長などに用いられてきたが,操作性が簡略化し,ここ数年でさらなる進歩を遂げて,適応範囲を広げ有用性を増している.われわれが行っている創外固定の応用について述べる.

CT/有限要素法解析を用いた仮骨強度の経時的予測

著者: 大橋暁 ,   大西五三男 ,   岡﨑裕司 ,   佐藤和強 ,   松本卓也 ,   別所雅彦 ,   金子雅子 ,   飛田健治 ,   中村耕三 ,   田中栄

ページ範囲:P.241 - P.246

 創外固定法は仮骨延長法や骨折の固定に有用な固定法である.しかし,創外固定の抜去の可否を決定する明確な指標がないために,仮骨強度を創外固定のピンやワイヤーなどを介して予測する方法がこれまでに報告されている.一方,抜去後の骨強度評価については通常X線像による定性的な評価が行われているが,荷重の可否や荷重量の決定に至るための定量的な評価は行われていないのが現状である.われわれは,CT/有限要素法を用いて骨折後の仮骨や延長仮骨の強度予測解析を経時的に行い,仮骨の成熟度の評価や荷重量の決定などの判断に用いている.本稿では,CT/有限要素法解析を紹介し,実際の症例を供覧する.

論述

単椎間腰椎椎体間固定術の獲得局所前弯角―PLIFとTLIFとの比較

著者: 勝見敬一 ,   山崎昭義 ,   大橋正幸 ,   庄司寛和 ,   須原靖明 ,   佐藤雄

ページ範囲:P.247 - P.251

 背景:腰椎椎体間固定術症例の獲得局所前弯角を後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF),経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)間で比較した.

 対象と方法:対象はL5/Sに同一の馬蹄型ケージを用いて椎体間固定術を施行した51例とした.PLIF群(24例),TLIF群(27例)の2群に分け,術前・術直後で比較した.

 結果:PLIF群は前弯角が術前5.6°から術直後12.9°へ増大し,TLIF群では術前9.8°から術直後11.5°に増大しており,PLIF群で有意に獲得前弯角が大きかった.

 まとめ:本研究から,L5/Sでの前弯獲得が必要な症例では,PLIFを選択すべきである.

手術手技/私のくふう

Cobb角40°以上の胸腰椎・腰椎変性後側弯症に対する矯正固定術における新しいアンカー(sacral-alar-iliac fixation)

著者: 加藤相勲 ,   小西定彦 ,   松村昭 ,   林和憲 ,   玉井孝司 ,   新谷康介 ,   香月憲一 ,   中村博亮

ページ範囲:P.253 - P.259

 背景:仙椎から仙腸関節を貫通させ遠位部を腸骨とする新しいスクリュー固定方法(sacral-alar-iliac fixation:以下,SAIF)が成人脊柱変形例に対する後方矯正固定手術において有用であるかを検討した.

 対象と方法:Cobb角40°以上の胸腰椎・腰椎変性後側弯症6例を対象とした.術前後の臨床成績,骨癒合,矯正率を検討した.

 結果:JOAスコアは術前11.3点,最終診察時21点(改善率54.9%)であった.全例,腰仙椎間の骨癒合が得られ,皮膚トラブルはなかった.Cobb角の矯正率は68.1%で良好であった.

 まとめ:SAIFは重度脊柱変形に対する矯正固定術における有用な遠位部アンカーである.

Lecture

外傷の湿潤治療

著者: 夏井睦

ページ範囲:P.261 - P.265

外傷の湿潤治療とは

 外傷の湿潤治療とは,「傷の消毒を止め,創面の乾燥を防ぐ」という2つの原則を守るだけで,どのような皮膚損傷(擦過創,挫滅創,熱傷など)でも簡単に治り,しかも傷跡も残らずきれいという治療である.20世紀の創傷治療の原則が「消毒して乾燥させる」だったのと正反対であるが,理論的に正しいのはもちろん湿潤治療であり,従来の治療に科学的根拠はない.

 なぜ消毒をしてはいけないのか.消毒薬は組織破壊薬だからである.消毒薬にはさまざまな種類があるが,いずれもタンパク質を変性することで細胞膜を破壊して殺菌する点で共通している.一方,タンパク質は細菌に特有の物質ではなく,人体においても最重要物質であるが,消毒薬にとっては細菌のタンパク質も人体のタンパク質も違いはなく,消毒薬は細菌のタンパク質のみを変性させているわけでない点に問題がある.したがって,創面を消毒すると消毒薬が創面の細胞を破壊し,傷は深くなる.

整形外科/知ってるつもり

有人宇宙飛行と骨

著者: 大島博

ページ範囲:P.266 - P.269

■有人宇宙飛行の過去と未来

 人類は,太古の昔から宇宙に行くことを夢みてきた.アメリカとロシアは,第2次世界大戦後の東西冷戦を背景に宇宙開発に着手した.1961年ガガーリン(ロシア)は人類初の有人宇宙飛行を,1965年,レオーノフ(ロシア)は宇宙服を着た船外活動に成功した.ロシアに先を越されたアメリカは,月への有人宇宙飛行を国の威信をかけて推進し,1969年,アームストロング(アメリカ)は月面踏破した.その後,スペースシャトル(アメリカ)とミール(ロシア)時代を経て,2000年から15カ国が参加する国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)で宇宙滞在が開始され,4人の日本人も約6カ月間滞在してさまざまな宇宙実験を行ってる.ポストISSには,月・火星への有人宇宙飛行,日本独自の有人宇宙船,および一般人の宇宙旅行が想定されている.数年後に予定されるサブオービタル宇宙旅行(高度100kmを超えて宇宙を往還し,約4分間の無重力を体験)には,世界中から約600人が申し込んでいる.商業宇宙旅行が活発化すれば,宇宙船は進化し,コストは低下する.

連載 知ってますか?整形外科手術の変遷・12

椎間板内療法

著者: 持田讓治

ページ範囲:P.271 - P.276

はじめに

 椎間板内療法(intradiscal treatment)の歴史を述べる際には,保存的治療と手術的治療の両方にまたがる内容の解説が必要となる.本稿では,椎間板内への酵素や薬剤の注入(狭義の椎間板内療法と仮称),経皮的髄核(椎間板)摘出術,レーザー椎間板蒸散法,intradiscal electrothermal treatment(therapy)などを紹介する.経皮的アプローチや内視鏡的アプローチによる椎間板ヘルニア摘出術に関しては,本稿では椎間板内療法として含めていない.また,各治療法の最初の発表者について歴史的に議論を呼ぶことがあるが,本稿では発表者のpriorityを最重要としながら,その発表論文がどの程度引用され,評価されたかという観点から,ScopusやPubMedのcitation indexなどを参考として論文の選択をした.

整形外科最前線 あなたならどうする?・15

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 奥田真也 ,   山崎良二 ,   小田剛紀

ページ範囲:P.277 - P.282

症例

患者:20歳 男性

主訴:起立歩行困難,腰背部痛,両下肢しびれ

現病歴:突然の腰背部痛と両下肢しびれ,運動障害を生じ,急速に進行し起立歩行が困難となり,当科を紹介され受診した.

成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴・28

足部

著者: 河原勝博 ,   帖佐悦男

ページ範囲:P.283 - P.285

診断のポイント

1) 足底部の痛み(踵の内側部)

2) 痛みは朝の1歩目が最も強い.

3) 競技は剣道で,足底部には発赤,腫張などは認めない.

臨床経験

橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定と屈筋腱皮下断裂の危険因子―Reduction and distal fixation first techniqueの有効性について

著者: 加藤直樹 ,   酒井宏哉

ページ範囲:P.287 - P.295

 背景:これまで橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート術後の屈筋腱皮下断裂の原因として,遠位骨片の背側転位の残存,スクリューの弛み,プレートの設置不良や遠位部の軟部組織での被覆不足などが挙げられてきた.また遠位設置型は腱とプレートが接触する危険性が高く,可能な限り避けるべきだとする報告も多い.

 対象と方法:5例の橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート術後の長母指屈筋腱皮下断裂例を経験した.

 結果:断裂までの期間は6カ月から4年2カ月であり,全例骨癒合が得られていた.5例中3例ではプレートが近位設置されていたが,遠位骨片の回旋転位の残存によるプレート遠位尺側の浮き上がりを認め,同部での摩耗が断裂原因として考えられた.

 まとめ:合併症を避けるためには,整復後に,まずプレート遠位と遠位骨片を密着させたうえで内固定するreduction and distal fixation first technique(R&D法)が有効であると考えられた.

人工骨頭置換術における前外側進入法の有用性―後外側進入法との比較検討

著者: 仁枝祐一 ,   金森茂雄 ,   近藤祐一 ,   宮川貴樹 ,   川島健志 ,   高澤真 ,   伏見一成

ページ範囲:P.297 - P.300

 背景:人工骨頭置換術において,手術進入法の違いによる術後短期成績への影響を検討した.

 対象と方法:大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を行った30例のうち,後外側進入法を行った例11股(PL群)と前外側進入法を行った例19股(AL群)を比較した.

 結果:手術時間はAL群でやや長かったが,出血量に差はなかった.ステム設置アライメントはAL群で軽度屈曲外反位に設置される傾向であった.

 まとめ:術後早期の歩行能力は,AL法がやや良好な傾向であった.AL法は手術に若干のコツを要するが,早期離床が期待できる有用な進入法と考えられた.

人工膝関節置換術における大腿骨頭中心マーキングの重要性―大腿骨コンポーネントの冠状面アライメントの正確性に関する検討

著者: 杉森端三 ,   北村憲司 ,   兼氏歩 ,   松本忠美

ページ範囲:P.301 - P.307

 背景:人工膝関節置換術(TKA)では,コンポーネントを正確なアライメントで設置することが重要であるが,大腿骨コンポーネントを冠状面において機能軸に対し垂直に設置することは容易ではない.

 対象と方法:TKAにおいて大腿骨頭中心をマーキングせずにガイドのみを使用して大腿骨遠位骨切りを行った30例,骨頭中心をマーキングして骨切りを行った30例,ナビゲーションを用いた30例それぞれについて,大腿骨コンポーネントの冠状面設置角度を調査した.

 結果:非マーカー群で87.9±3.7°,マーカー群で89.6±1.0°,ナビ群で90.1±1.3°であり,マーカー群とナビ群では機能軸にほぼ垂直な角度で設置されていた.

 まとめ:TKAにおいては骨頭中心のマーキングは正確なアライメントを獲得するために推奨される方法である.

脊椎手術後の疼痛に対するプレガバリンの早期投与の検討

著者: 池上仁志 ,   久津間智允 ,   木下哲也 ,   森下恭資 ,   村添與則 ,   朝日盛也 ,   熊倉剛 ,   田中行夫 ,   新山和寿 ,   斉藤和裕

ページ範囲:P.309 - P.313

 背景・目的:脊椎手術後の疼痛管理は,患者のQOLに大きく影響する.これまでのNSAIDsによる治療に加え,プレガバリンを用いることで,疼痛管理の向上を図ることが可能か検討を行った.

 対象と方法:脊椎疾患の手術を受けた患者34例をロキソプロフェン単独群(以下,単独群)とロキソプロフェンとプレガバリン併用群(以下,併用群)の2群に割り付けを行い,VAS値の変化と患者による印象について評価した.

 結果:併用群においてVAS値と患者による印象評価の高い改善効果が認められた.併用群において,めまい,眠気,ふらつき,浮腫の副作用が認められたが服薬中止に至る症例はなかった.

 まとめ:脊椎手術後の疼痛に対する早期プレガバリンの投与は有用である.

INFORMATION

2013 ICJR (International Congress for Joint Reconstruction) Fukuoka フリーアクセス

ページ範囲:P.234 - P.234

会期:2013年4月12日(金),13日(土)

会場:ヒルトン福岡シーホーク〔〒810-8650 福岡市中央区地行浜2-2-3〕

第53回関東整形災害外科学会 フリーアクセス

ページ範囲:P.251 - P.251

日時:2013年3月28日・29日

会場:マロニエプラザ(栃木県宇都宮市)

第25回日本整形外科超音波学会 フリーアクセス

ページ範囲:P.265 - P.265

テーマ:明日から役立つ運動器超音波医療の最新情報

会 長:佐藤公治(名古屋第二赤十字病院 副院長 整形外科・脊椎外科部長)

会 期:2013年7月6日(土)

会 場:ウェスティンナゴヤキャッスル http://www.castle.co.jp/wnc/

    〒451-8551 愛知県名古屋市西区樋の口町3-19

2013年国際骨代謝学会・日本骨代謝学会 第2回合同国際会議 フリーアクセス

ページ範囲:P.313 - P.313

会長:〈合同国際会議〉Henry Kronenberg(ハーバード大学)

   野田 政樹(東京医科歯科大学難治疾患研究所分子薬理学)

   〈第31回学術集会〉吉川 秀樹(大阪大学)

会期:2013年5月28日(火)~6月1日(土)

会場:神戸ポートピアホテル・神戸国際会議場・神戸国際展示場

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.315 - P.315

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.316 - P.316

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.317 - P.317

あとがき フリーアクセス

著者: 戸山芳昭

ページ範囲:P.318 - P.318

 平成23年3月11日14時46分に発生した,あの忘れることのできない東日本大震災から早2年が経ちました.2万人弱の方が犠牲となり,いまだに数千人の行方不明者がいらっしゃいます.そして,30万人強の方々が今なお避難生活を余儀なくされています.放射性物質の除染作業もほとんど手付かずの状況にあり,特に子供への影響や高齢者の健康状態悪化,心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含めた精神面の問題など多方面に亘る健康面の問題から,社会・経済・環境面まで,復旧復興にはほど遠い状況下にあるのが現状です.そこで2年経った現在,この未曾有の大震災を皆さんがそれぞれに振り返り,現状を直視し,一人の国民として,医師として,整形外科医として何ができたか,どう行動してきたか,どうあるべきであったかをもう一度見つめ直すよい機会かと思います.この大震災で日本に,日本人に投げかけられた課題は極めて大きいはずです.

 さて,正確に計測,記録されている世界で発生した大きな地震は,1960年のチリ大地震のマグネチュード9.5が最大級で,以下,1964年のアラスカ沖地震9.2,2004年のスマトラ沖地震9.1,そして,1952年のカムチャッカ沖地震と今回の東日本大震災が9.0でした.東日本大震災では太平洋プレート全域が数メートル押し上げられ,津波の最大高は何と37m,そして,津波による浸水域は561km2(山手線内側面積の約9倍),建物全壊12万8,914戸,半壊・一部損壊・浸水家屋約117万戸,インフラなどの被害総額約17兆円,農林水産業の被害総額約2兆円と言われています.また当時,32カ国の大使館が一時閉鎖となり,発生後1週間で24万人の在日外国人が国外退去しました.投入された自衛隊派遣総人数は10万人強で,アメリカ軍の支援もありました.世界中からボランティアも多数集まり,被災者への支援を惜しみなく行ってくれました.また,日本中から医療支援も積極的に展開されました.犠牲になった2万人の中には医師20名,看護師16名も含まれており,住民を守り,誘導し,安否を確認するため,危険を顧みずにそれぞれの職を遂行して犠牲になった方々もおられました.そして今,何より問題となっているのが「レベル7」の福島原発事故に伴う大量の放射性物質漏洩です.広範囲の汚染地域がいまだ手付かず状態で,放出されたセシウム137は広島原爆の168倍とも言われています.すべてを科学的に検証し,公開し,次世代に亘る健康管理が求められています.ここまでの現実を直視し,現時点で,それぞれの立場,視点から見つめ直しておくことが必要かと思われます.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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