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視座
宇宙医学と運動器―整形外科には宇宙へ広がる未来がある
著者: 志波直人1
所属機関: 1久留米大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.213 - P.213
文献購入ページに移動臨床における臥床などの活動性低下は筋骨格系の萎縮や機能低下(廃用性変化)を来すが,宇宙飛行士は無重力によりさらに著しい運動器の廃用を来す.筋骨格系廃用発生のメカニズムは,力学的負荷(メカニカルストレス)の減少によるものであるが,長期宇宙滞在で筋力は飛行前の-20~30%,骨は最大-20%萎縮し,完全回復に3年以上を要したという報告がある.骨格筋は同時に質的変化を来し,疲労しやすい持久力のない筋へと変化する(遅筋の速筋化).1987~1995年の94名の米国宇宙飛行士を対象とした調査では,地球帰還後,骨折26例,重篤な靱帯・軟骨等損傷36例,整形外科的手術28例(うち膝手術19例)であった.これは,筋や骨だけの廃用性変化に止まらず,靱帯や軟骨のメカニカルストレスの著しい減少による脆弱化の結果と考えられている.このため,宇宙での運動器廃用対策は,人類が宇宙で活動する際の重要課題と位置付けられている.これらは,まさしく整形外科領域の問題である.
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