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外傷の湿潤治療
著者: 夏井睦1
所属機関: 1練馬光が丘病院傷の治療センター
ページ範囲:P.261 - P.265
文献購入ページに移動外傷の湿潤治療とは,「傷の消毒を止め,創面の乾燥を防ぐ」という2つの原則を守るだけで,どのような皮膚損傷(擦過創,挫滅創,熱傷など)でも簡単に治り,しかも傷跡も残らずきれいという治療である.20世紀の創傷治療の原則が「消毒して乾燥させる」だったのと正反対であるが,理論的に正しいのはもちろん湿潤治療であり,従来の治療に科学的根拠はない.
なぜ消毒をしてはいけないのか.消毒薬は組織破壊薬だからである.消毒薬にはさまざまな種類があるが,いずれもタンパク質を変性することで細胞膜を破壊して殺菌する点で共通している.一方,タンパク質は細菌に特有の物質ではなく,人体においても最重要物質であるが,消毒薬にとっては細菌のタンパク質も人体のタンパク質も違いはなく,消毒薬は細菌のタンパク質のみを変性させているわけでない点に問題がある.したがって,創面を消毒すると消毒薬が創面の細胞を破壊し,傷は深くなる.
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