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雑誌文献

臨床整形外科48巻3号

2013年03月発行

文献概要

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あとがき フリーアクセス

著者: 戸山芳昭

所属機関:

ページ範囲:P.318 - P.318

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 平成23年3月11日14時46分に発生した,あの忘れることのできない東日本大震災から早2年が経ちました.2万人弱の方が犠牲となり,いまだに数千人の行方不明者がいらっしゃいます.そして,30万人強の方々が今なお避難生活を余儀なくされています.放射性物質の除染作業もほとんど手付かずの状況にあり,特に子供への影響や高齢者の健康状態悪化,心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含めた精神面の問題など多方面に亘る健康面の問題から,社会・経済・環境面まで,復旧復興にはほど遠い状況下にあるのが現状です.そこで2年経った現在,この未曾有の大震災を皆さんがそれぞれに振り返り,現状を直視し,一人の国民として,医師として,整形外科医として何ができたか,どう行動してきたか,どうあるべきであったかをもう一度見つめ直すよい機会かと思います.この大震災で日本に,日本人に投げかけられた課題は極めて大きいはずです.

 さて,正確に計測,記録されている世界で発生した大きな地震は,1960年のチリ大地震のマグネチュード9.5が最大級で,以下,1964年のアラスカ沖地震9.2,2004年のスマトラ沖地震9.1,そして,1952年のカムチャッカ沖地震と今回の東日本大震災が9.0でした.東日本大震災では太平洋プレート全域が数メートル押し上げられ,津波の最大高は何と37m,そして,津波による浸水域は561km2(山手線内側面積の約9倍),建物全壊12万8,914戸,半壊・一部損壊・浸水家屋約117万戸,インフラなどの被害総額約17兆円,農林水産業の被害総額約2兆円と言われています.また当時,32カ国の大使館が一時閉鎖となり,発生後1週間で24万人の在日外国人が国外退去しました.投入された自衛隊派遣総人数は10万人強で,アメリカ軍の支援もありました.世界中からボランティアも多数集まり,被災者への支援を惜しみなく行ってくれました.また,日本中から医療支援も積極的に展開されました.犠牲になった2万人の中には医師20名,看護師16名も含まれており,住民を守り,誘導し,安否を確認するため,危険を顧みずにそれぞれの職を遂行して犠牲になった方々もおられました.そして今,何より問題となっているのが「レベル7」の福島原発事故に伴う大量の放射性物質漏洩です.広範囲の汚染地域がいまだ手付かず状態で,放出されたセシウム137は広島原爆の168倍とも言われています.すべてを科学的に検証し,公開し,次世代に亘る健康管理が求められています.ここまでの現実を直視し,現時点で,それぞれの立場,視点から見つめ直しておくことが必要かと思われます.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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