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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科48巻6号

2013年06月発行

雑誌目次

視座

学会に「ときめく」演題を

著者: 根尾昌志

ページ範囲:P.543 - P.544

 最近大きな学会が今ひとつ面白くない.新しい視点から物事を捉えた「なるほど! そうかも!?」と思うような演題が少なくなっているからだと思う.

 学会発表と論文発表は似て非なるものである.最近は学会発表でもevidence based medicineの概念に基づいた多施設臨床研究が増えており,これは確かに素晴らしいことには違いない.しかし,統計学的に処理された多施設臨床研究の後ろには,みえないものが数多くある.各施設の「真の」手術適応はどうだったのか? 各施設の手術手技は均一なのか? 術前,術後の成績評価は誰が行い,それは標準化されているのか? などである.雑誌に発表された論文であればある程度検証もできようが,最近の短い学会抄録,短時間の発表でそれを判断するのは不可能である.しかし,学会発表を審査する側からすれば,10例のケースシリーズと200例の多施設臨床研究であれば後者によい点を付けざるを得ないし,私自身もそうしている.学会発表の審査をしていると,なかには症例数は少ないが「目の付けどころが秀逸で面白い」と思う抄録が混ざっており,そういう発表に出会うのを楽しみに審査しているといっても過言ではない.そういった演題には高い点数をつけることにしているが,いざできあがった学会のプログラムを開けてみると,結局採用されていない,といったことも時に経験する.多施設臨床研究はほとんど学会発表に採用されるが,本来はきちんとした論文にすべきものである.皆の勉強になるので,もちろん学会でも発表すべきであろうが,目を見張るような新しい結論とはならず,そのため学会でのディスカッションも通り一遍のものにならざるを得ない.そのような立派な研究は,シンポジウムや主題などに集め,一般演題の中に,もしかしたら大化けする心ときめく演題を散りばめてみると学会が盛り上がるのではないか.そして,そうしたセッションから,何かひとつでも新しい概念が発信されればその学会の価値があったと言えるだろう.これは必ずしも小さな学会や研究会の役目というわけではないと思う.

論述

Instrumentationを併用した後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)後に腰仙椎装具は必要か―前向き無作為化比較試験

著者: 藤原啓恭 ,   海渡貴司 ,   牧野孝洋 ,   石井崇大 ,   米延策雄

ページ範囲:P.545 - P.551

 背景:近年のinstrumentation技術の発展により力学的に強固な固定が後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)では可能となったが,後療法における装具の必要性についての検討は行われていない.

 対象と方法:今回われわれは2椎間以下のPLIF施行患者30例を無作為に装具装着群と非装着群に分類し,術後早期の臨床・画像成績を比較検討した.

 結果:術後1週時点での腰痛visual analogue scaleが装具装着群で有意に低値であったが,固定椎矯正損失,日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)改善率と,日本整形外科学会腰痛疾患治療評価質問票(JOABPEQ)有効率,Rolland-Morris Disability Questionnaire,Short Form-36,周術期合併症について両群間での有意差を認めなかった.

 まとめ:重度の骨粗鬆症症例・多椎間固定を除くPLIFの術後装具装着は期間短縮または簡略化できる可能性がある.

調査報告

腰部脊柱管狭窄による神経根障害に対する除圧術の手術成績と心理的要因―整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(BS-POP)を用いた検討.前向き研究

著者: 渡邉和之 ,   大谷晃司 ,   二階堂琢也 ,   加藤欽志 ,   矢吹省司 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一

ページ範囲:P.553 - P.557

 背景:腰部脊柱管狭窄において,術前の整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(以下,BS-POP)と手術による症状の改善度との関係を検討した.

 方法:腰仙椎部神経根障害に対して椎弓骨切り術を行った腰部脊柱管狭窄38例を対象とした.対象を術前のBS-POPで,正常群と異常群に分けて前向きに比較検討した.

 結果:術前のBS-POPによる評価で,異常群は9例,正常群は29例であった.術後成績をみると,BS-POP異常群では,正常群と比較して,術後下肢痛numerical rating scale(NRS)が高く,下肢痛NRSの改善率が低く,下肢痛の残存が有意に多かった(p<0.05).すなわち,BS-POP異常群は,BS-POP正常群と比較して,手術による下肢痛の改善が得られにくいと言える.

 結論:術前におけるBS-POPによる評価は手術成績不良例をスクリーニングできる可能性がある.

Lecture

三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷

著者: 中村俊康

ページ範囲:P.559 - P.563

TFCCの構造とTFCC損傷の概説

 三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex:TFCC)は三角線維軟骨(triangular fibrocartilage:TFC)を中心として,その周囲の靱帯組織を含む尺側手関節の支持性に関して要となる線維軟骨-靱帯複合体である.立体的には尺側手根骨を支持する遠位componentであるhammock構造部,尺骨小窩および尺骨茎状突起基部からほぼ垂直に起始し,TFCC近位面を走行し,橈骨尺骨切痕に停止する橈尺間を直接支持する三角靱帯(真の橈尺靱帯),尺側側副靱帯として機能する尺側手根伸筋腱腱鞘床と尺側関節包で構成される(図1)9).手関節の重要な機能である支持性と可動性の両立に極めて重要な役割を果たす軟部組織である.また,その損傷は外傷および加齢変性に伴い発生する,頻度が高い疾患である.外傷性断裂は交通事故や転落,橈骨遠位端骨折などで生じる.変性損傷は尺骨の相対長が橈骨よりも長いplus varianceを呈する尺骨突き上げ症候群に発生することが多い3)

 現在,広く用いられているPalmer分類10)では,外傷性損傷をClass 1,変性損傷をClass 2に分類し,Class 1は損傷部位によって1A:中央部損傷,1B:尺側部損傷,1C:遠位部損傷,1D:橈側損傷に細分類し,Class 2はTFCの変性の程度と月状骨三角骨間靱帯損傷の合併の有無で細分類している.また,近年,背側損傷2)などのPalmer分類に含まれないTFCC損傷の報告もあり,分類の修正が必須である.

最新基礎科学/知っておきたい

JAK阻害剤トファシチニブ(tofacitinib)

著者: 小嶋俊久

ページ範囲:P.564 - P.568

■はじめに

 メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤の導入により,この10年で,わが国においても関節リウマチ(以下,RA)の治療は大きく変化した.エビデンスに基づく,再現性の高い治療が可能となっている.生物学的製剤も現在6種類が本邦においても承認され,実臨床において使用可能である.一方で,多くの生物学的製剤のclinical trialのなかでも治療反応性の得られない症例が10~20%は存在する.治療抵抗症例への新たなアプローチ,また,注射剤に勝る利便性など経口の新規低分子抗リウマチ薬(DMARD)の開発への期待は大きい.

 今回,ここ数年世界的に開発治験が進められ,2012年11月にアメリカ食品医薬品局(FDA)で承認された(本邦でももちろん治験が行われた),JAK阻害薬トファシチニブ(tofacitinib)について,その薬理作用,および臨床成績について概説したい.

連載 知ってますか?整形外科手術の変遷・15

脊柱後弯症の手術(第3回/全3回)

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.570 - P.577

重度角状後弯,後側弯の矯正骨切り術

 結核性脊椎炎,先天性奇形,外傷などの後遺症として生じる後弯は重度のangulation typeとなるため,円背型と異なって,ごく最近まで前方+後方のcombined operationにより取り組まれてきた.以下,代表的な手術を紹介したい.

特別講義 整形外科の歴史・2

「先天性」股関節脱臼の治療史―CDHからDDHへ

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.578 - P.583

早期治療:1歳未満,できれば新生児期に

 1930年代後半から,Lorenz法の股関節脱臼の遠隔成績不良が相次いで報告され始めた.Severin71)は1941年に,330例454関節のフォロー(5~27年の追跡)から,X線上で大腿骨頭が正常と判定できるのはせいぜい10%にとどまると報告した(表1).年長児の無理な整復操作も一因とされた.

 診断と治療の遅れに対して早期治療(新生児~乳幼児)を提唱し,その目覚ましい成果を国際社会に訴えたのはイタリアの整形外科医Putti(1880~1940)(図1)であった65,66).歩き始めた子供のびっこに気づいてようやく治療を始めるという,世界的な常識に挑戦したわけである.先進国(ここでは英国)における標準的治療の実例を前回(48巻5号)述べたが18),年長児における脱臼股関節の整復は難しい手技の1つであった.革命的な非観血治療の開発者として知られたLorenzは,その適応年齢を広げ過ぎていた.そのために行く先々でさまざまなトラブルを起こす.再脱臼以外にも,無理な整復操作の結果,大腿骨骨折や大腿神経・坐骨神経の麻痺などを惹き起こす例が多くて不評だった.20世紀初頭に米国を訪れた彼は,各地で大歓迎を受けたが,整形外科学会の記録は芳しいものではなかった73)

医者も知りたい【医者のはなし】・57

名古屋玄医(1628~1696) 漢方古方派医学の祖

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.584 - P.586

■はじめに

 名古屋玄医は,京都で活躍し,漢方に新しい流れを呼び起こした医者である.それまでは,田代三喜や曲直瀬道三に代表される「後世派医学」と呼ばれる医学が主流であったが,玄医は昔からの『傷寒論』の基本に立ち返った治療に戻した.黒田藩の貝原益軒より3年先輩の医者である.

整形外科最前線 あなたならどうする?・18

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 柳川天志

ページ範囲:P.587 - P.589

症例

患者:68歳,男性

主訴:尾骨部痛

既往歴:胃癌,大腸癌

現病歴:2009年3月から尾骨周辺に疼痛を自覚していた.前医で撮像したCTで仙骨の腫瘍性病変を指摘され,4月に当科を紹介され受診した.MRIでは骨外浸潤を伴う仙骨病変を認め(図1),生検で脊索腫の診断となった.手術治療と重粒子線治療の両者の説明を行ったが患者は手術治療を選択したため,2009年5月に骨腫瘍摘出術を行った.その後,2011年3月のフォローアップのMRIで仙骨の上位まで浸潤する再発腫瘍が確認された(図2).手術による摘出は侵襲が大きくなると判断されたため,2011年5~6月に重粒子線治療を行った.経過は良好であったが,2011年11月に患部に腫脹と疼痛を自覚し,その後に同部から排膿を認めたため当院を再診した.

成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴・31

膝関節

著者: 山本惠太郎 ,   帖佐悦男

ページ範囲:P.591 - P.594

診断のポイント

 まずは問診(医療面接)による詳細な病歴や自覚症状の聴取である.既往歴でOsgood-Schlatter病などの骨端症の有無も聴取する.他覚的検査として,腫れや膝蓋跳動の有無,圧痛,可動域制限などをチェックする.局所の圧痛を調べる場合は,患者の訴えた疼痛部位を最後に行うとして,周囲から丹念に診るべきである.次いで,Lachmanテストや内・外反ストレスなどの不安定性テスト,可能ならMcMurrayテストやApleyテストなどの疼痛誘発テストを行う.この際も,必ず健側との左右差を確認する.画像検査として単純X線撮影(正面・側面・軸位の3方向に加え顆間窩撮影も有用)からCT,MRIなどで順次診断を進める.

臨床経験

加温処理骨移植を用いた骨軟部腫瘍切除後の再建とその成績

著者: 村田秀樹 ,   高橋満 ,   片桐浩久 ,   和佐潤志 ,   鈴木隆辰 ,   保坂聖一 ,   下山哲生

ページ範囲:P.595 - P.601

 背景:骨・軟部腫瘍切除後に加温処理骨を用いた再建法の有用性について明らかにすること.

 対象と方法:当施設で加温処理骨移植を用いて再建を行った骨軟部腫瘍20例(発生部位は下肢17例,骨盤3例)に対し腫瘍学的予後,術後患肢機能,合併症について検討した.

 結果:最終経過観察時,無病生存(CDF):13例,腫瘍なし生存(NED):2例,腫瘍あり生存(AWD):1例,病死(DOD):4例であった.19例(95%)に骨癒合が得られ,平均骨癒合期間は8.8カ月であった.術後患肢機能はほぼ術前に想定した歩行能力を獲得した.局所再発は全例に認めず,合併症は35%であった.

 まとめ:Inlay-graftや血管柄付骨移植を併用するhybrid typeは骨癒合・機能ともに良好な成績であるが,高率に合併症が発生するとされる臼蓋周囲の腫瘍切除後や,intercalary graft単独でも,罹患骨の状態や患者の予後予測などを考慮して適切な治療を選択すれば,良好な成績を得ることが可能である.

Wagstaffe-Le Fort骨折とTillaux-Chaput骨折の病態,診断,治療法

著者: 久我尚之 ,   花田麻須大 ,   水城安尋 ,   志田義輝 ,   萩原博嗣

ページ範囲:P.603 - P.610

 背景:前下脛腓靱帯裂離骨折の腓骨側はWagstaffe-Le Fort骨折(WF骨折),脛骨側はTillaux-Chaput骨折(TC骨折)と呼ばれ,その発生頻度,病態,治療法は明確でない.

 対象と方法:足関節果部骨折190例を後ろ向きに調査した.

 結果:Orthopaedic Trauma Association(OTA)分類44-A,B,CにおけるWF骨折の発生頻度は2%,10%,0%,TC骨折は0%,9%,32%だった.小骨片や損傷靱帯の処置は行われていなかったが,臨床的不安定性は生じていなかった.

 まとめ:WF骨折は主にOTA分類44-Bに,TC骨折は主にOTA分類44-Cに発生する.診断にはCTが必須である.当骨折に対する手術適応は転位した巨大骨片,関節内陥入などに限られるべきと考える.

β-リン酸三カルシウム(β-TCP)を用いた脊椎固定術の骨癒合評価と臨床成績

著者: 富田誠司

ページ範囲:P.611 - P.616

 背景:後側方固定術(PLF)にβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)を併用した報告は散見されるが,後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)を併用したPLFにβ-TCPを併用した報告はない.

 対象と方法:PLIFを併用したPLFにβ-TCPを併用した群と局所骨のみの群で骨癒合率と臨床成績を調査した.

 結果:臨床成績は両群に差はなかったが,骨癒合率は多椎間固定ではβ-TCP併用群は局所骨のみの群に比べ有意に増加した.

 まとめ:β-TCPは骨形成の早期の足場として有用な骨補塡材料であると考える.

症例報告

外傷性の橈骨動脈断裂に対して動脈吻合を行った血管型Ehlers-Danlos症候群の1例

著者: 多田薫 ,   菅沼省吾 ,   瀬川武司 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.617 - P.620

 症例は35歳の男性で,血管型Ehlers-Danlos症候群の既往があり,31歳時から34歳時にかけて動脈破裂に伴う四肢のコンパートメント症候群を3回発症していた.手関節部の切創による右橈骨動脈損傷に続き右前腕のコンパートメント症候群を発症したため,筋膜切開術と血管吻合術を施行した.血管型Ehlers-Danlos症候群例は治療に際して血管の脆弱性が問題となるが,四肢の外傷に伴う血管損傷であれば血管吻合を試みるべきだと考えられる.

Fontan手術後の脊柱側弯症に対し後方矯正固定術を施行した1例

著者: 福原悠介 ,   渡辺航太 ,   前田潤 ,   香取信之 ,   戸山芳昭 ,   松本守雄

ページ範囲:P.621 - P.624

 先天性心疾患に伴うチアノーゼに対する機能的修復術であるFontan手術の既往がある患者では,人工呼吸器管理中に静脈還流が低下する可能性があるため,大量出血を伴う手術は困難とされてきた.今回われわれは,Fontan手術歴のある17歳の脊柱側弯症患者に対し後方矯正固定術を行い,良好な術後経過が得られた.周術期の心不全予防のため,術中循環動態モニタリング,利尿剤投与などの適切な周術期管理が有効であった.

コーン型セメントレスステム(LIMA Modulus®)の使用経験

著者: 鈴木隆之 ,   佐藤直樹 ,   小林史明 ,   田中宏志 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.625 - P.628

 背景:大腿骨頚部骨折後の偽関節や大腿骨転子部骨折後の陳旧例といったサルベージ症例に対し,コーン型セメントレスステム(LIMA Modulus®)を使用した.

 対象と方法:全4例stovepipe型で,JOAスコア,術前・術後のX線的評価を行った.

 結果:Spot weldsはzone 2,3,5,6で認め,全例でステムの沈下は認めていないが,stress shieldingは認めた.

 まとめ:このステムは菲薄化した骨質に対しても良好な固定性を獲得でき,脆弱な骨質に対しても有効な機種の1つで,大腿骨近位部骨折後のサルベージ症例にも有効と考える.

前腕回内位で起こる尺側手根伸筋腱脱臼・亜脱臼に対する第6区画解離術の1例

著者: 小林裕樹 ,   金子哲也 ,   田鹿毅 ,   小林勉 ,   長谷川仁 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.629 - P.633

 前腕回内位で起こる尺側手根伸筋腱(以下,ECU腱)脱臼・亜脱臼に対し,第6区画解離術を施行したので報告する.症例は40歳の男性である.バドミントンのスマッシュ動作により受傷し,受傷後約7カ月時に当科を紹介され受診した.エコー検査上,前腕回内位で手関節を掌・尺屈するとECU腱がulnar grooveより尺側に脱臼する所見が確認された.第6区画解離術を施行し,術後3カ月時,手関節の疼痛は消失しており,術後1年時,手関節の愁訴はなかった.前腕回内位で生じるECU腱脱臼・亜脱臼は典型的な脱臼形態ではないが,第6区画解離術により症状の改善が得られ,本症例のような脱臼形態に対しても本術式は有用であった.

小児に発症した膝滑膜性骨軟骨腫症の1例

著者: 土田将史 ,   加藤慎 ,   浅井聡司 ,   中田規之 ,   高木博 ,   渥美敬

ページ範囲:P.635 - P.639

 滑膜性骨軟骨腫症の症例報告は散見されるが,小児発症の報告例は少ない.今回外傷を契機に発症したと考えられる小児の膝滑膜性骨軟骨腫症の症例を経験したので報告する.症例は11歳の女児で主訴は左膝関節痛であった.跳び箱から落ちて膝を打ち受傷した.いったん症状は軽快したが,しばらくしてジャンプ着地時に左膝関節痛が出現するようになった.単純X線とCTで左膝関節後外側に石灰化陰影を認めたため,関節鏡下に遊離体を摘出した.病理学的精査によって滑膜性骨軟骨腫症と診断した.現在,症状再発は認めず,経過観察中である.

書評

『臨床研究の道標―7つのステップで学ぶ研究デザイン』 フリーアクセス

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.620 - P.620

 今は,EBM(evidence-based medicine)が臨床研究を実施する際の前提になっている.しかし,少し前までは,そんな認識は誰も持っていなかった.それだけでない.臨床家は,偏見を持ってEBMをみており,敵視さえしていた.今からみれば昔日の観がある.

 もちろん,医療がすべてscienceから成り立っているかと言えば,そうではない.EBMが明らかにしたのは,皮肉にもNBM(narrative-based medicine)の重要性である.医療は科学だけで成立し得るのか,という問いを投げ掛けられているのが現状である.

INFORMATION

第6回セメントTHAセミナー フリーアクセス

ページ範囲:P.628 - P.628

日時:2013年8月22日(木)・23日(金)

場所:関西医科大学附属枚方病院〔大阪府枚方市新町2丁目3番1号 TEL:072-804-0101(代表)〕

第38回日本足の外科学会 フリーアクセス

ページ範囲:P.633 - P.633

会期:2013年10月31日(木),11月1日(金)

会場:仙台国際センター

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.641 - P.641

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.642 - P.642

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.643 - P.643

あとがき フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.644 - P.644

 本年4月10~12日に名古屋市でInternational Congress of Surgery and Elbow Surgery(ICSES)2013(第12回国際肩肘関節外科学会:東北大学の井樋栄二教授と私がco-presidents,昭和大学の筒井廣明教授がgeneral secretary)およびInternational Congress of Shoulder and Elbow Therapist(ICSET)2013が行われ,1,150名(海外から700名弱)を超える世界中の整形外科医や理学療法士の先生方に参加いただき,2,3感じるところがありました.

 まず第一は,リバース人工肩関節に関する演題の多さです.この人工関節は腱板機能の障害を伴う関節が大きく破壊された症例に対して使用できる人工肩関節として開発され,近年では欧米だけでなく,アジアの近隣諸国でも認可され,世界的に標準的な治療法の一つとなっています.しかし,まだ日本では認可されていません.近々,認可されるようですが,日本におけるdevice lagの問題は大きいと思います.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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