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視座
学会に「ときめく」演題を
著者: 根尾昌志1
所属機関: 1大阪医科大学生体管理再建医学講座整形外科教室
ページ範囲:P.543 - P.544
文献購入ページに移動学会発表と論文発表は似て非なるものである.最近は学会発表でもevidence based medicineの概念に基づいた多施設臨床研究が増えており,これは確かに素晴らしいことには違いない.しかし,統計学的に処理された多施設臨床研究の後ろには,みえないものが数多くある.各施設の「真の」手術適応はどうだったのか? 各施設の手術手技は均一なのか? 術前,術後の成績評価は誰が行い,それは標準化されているのか? などである.雑誌に発表された論文であればある程度検証もできようが,最近の短い学会抄録,短時間の発表でそれを判断するのは不可能である.しかし,学会発表を審査する側からすれば,10例のケースシリーズと200例の多施設臨床研究であれば後者によい点を付けざるを得ないし,私自身もそうしている.学会発表の審査をしていると,なかには症例数は少ないが「目の付けどころが秀逸で面白い」と思う抄録が混ざっており,そういう発表に出会うのを楽しみに審査しているといっても過言ではない.そういった演題には高い点数をつけることにしているが,いざできあがった学会のプログラムを開けてみると,結局採用されていない,といったことも時に経験する.多施設臨床研究はほとんど学会発表に採用されるが,本来はきちんとした論文にすべきものである.皆の勉強になるので,もちろん学会でも発表すべきであろうが,目を見張るような新しい結論とはならず,そのため学会でのディスカッションも通り一遍のものにならざるを得ない.そのような立派な研究は,シンポジウムや主題などに集め,一般演題の中に,もしかしたら大化けする心ときめく演題を散りばめてみると学会が盛り上がるのではないか.そして,そうしたセッションから,何かひとつでも新しい概念が発信されればその学会の価値があったと言えるだろう.これは必ずしも小さな学会や研究会の役目というわけではないと思う.
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