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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科49巻1号

2014年01月発行

文献概要

最新基礎科学/知っておきたい

思春期特発性側弯症発症に関する新たな遺伝子GPR126

著者: 高橋洋平1 黄郁代2 松本守雄1 池川志郎2

所属機関: 1慶應義塾大学医学部整形外科学教室 2独立行政法人理化学研究所統合生命医科学研究センター骨関節疾患研究チーム

ページ範囲:P.72 - P.75

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■はじめに

 疾患の多くは,その発症・進行に複数の遺伝因子と環境因子の両者が関与する多因子遺伝病と考えられている.生活習慣病などのありふれた疾患にも,食生活などの環境因子だけでなく遺伝因子が関与していることがわかっており,その遺伝因子には,遺伝子の“決定的な異常”ではなく“個人差程度の違い”が,複雑に関連していると考えられている.

 ヒトゲノムは約30億塩基対あり,ほとんどの塩基配列が共通だが,ところどころ塩基配列が異なるところがある.ヒトはそれぞれ,300塩基に1個,塩基の違いがあり,この一塩基の違いをSNPと呼ぶ.ヒトゲノム全体では約1,000万カ所のSNPがあると考えられている.あるSNPは,ある遺伝子の作られるタンパク質の時期や量,機能に違いを生み出すことがあり,これが病気の危険因子となる.

 特発性側弯症は,発症時期により乳幼児(0~3歳),学童期(4~9歳),思春期(10歳~)の3タイプに分けられる.そのうち,最も発症頻度が高いのが,10歳以降に発症・進行する思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis:AIS)である.全世界で人口の約2%にみられる発症頻度の非常に高い疾患で,日本では学校保健法により側弯の学校検診が義務付けられているほど,学校保健上も重要な問題となっている.AISに遺伝因子が強く関与していることは,これまでの家族・双生児研究から知られている1,5).またAISは多因子遺伝病の一つで,疾患における遺伝因子の割合を示す遺伝率が87%と非常に高い疾患である9)

参考文献

1) Kesling KL, Reinker KA:Scoliosis in twins. A meta-analysis of the literature and report of six cases. Spine 22:2009-2014, 1997
2) Kou I, Takahashi Y, Johnson TA, et al:Genetic variants in GPR126 are associated with idiopathic scoliosis. Nat Genet 45:676-679, 2013
3) Kouwenhoven JW, Castelein RM:The pathogenesis of adolescent idiopathic scoliosis:review of the literature. Spine 33:2898-2908, 2008
4) Lettre G, Jackson AU, Gieger C, et al:Identification of ten loci associated with height highlights new biological pathways in human growth. Nat Genet 40:584-591, 2008
5) Riseborough EJ, Wynne-Davies RA:Genetic survey of idiopathic scoliosis in Boston, Massachusetts. J Bone Joint Surg Am 55:974-982, 1973
6) Soranzo N, Rivadeneira F, Chinappen-Horsley U, et al:Meta-analysis of genome-wide scans for human adult stature identifies novel loci and associations with measures of skeletal frame size. PLoS Genet 5:e1000445, 2009
7) Takahashi Y, Kou I, Takahashi A, et al:A genome-wide association study identifies common variants near LBX1 associated with adolescent idiopathic scoliosis. Nat Genet 43:1237-1240, 2011
8) 高橋洋平,松本守雄,池川志郎(著),日本側弯症学会(編):側弯症治療の最前線.pp52-58,医薬ジャーナル,東京,2013
9) Tang NL, Yeung HY, Hung VW, et al:Genetic epidemiology and heritability of AIS:A study of 415 Chinese female patients. J Orthop Res 30:1464-1469, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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