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思春期特発性側弯症発症に関する新たな遺伝子GPR126
著者: 高橋洋平1 黄郁代2 松本守雄1 池川志郎2
所属機関: 1慶應義塾大学医学部整形外科学教室 2独立行政法人理化学研究所統合生命医科学研究センター骨関節疾患研究チーム
ページ範囲:P.72 - P.75
文献購入ページに移動疾患の多くは,その発症・進行に複数の遺伝因子と環境因子の両者が関与する多因子遺伝病と考えられている.生活習慣病などのありふれた疾患にも,食生活などの環境因子だけでなく遺伝因子が関与していることがわかっており,その遺伝因子には,遺伝子の“決定的な異常”ではなく“個人差程度の違い”が,複雑に関連していると考えられている.
ヒトゲノムは約30億塩基対あり,ほとんどの塩基配列が共通だが,ところどころ塩基配列が異なるところがある.ヒトはそれぞれ,300塩基に1個,塩基の違いがあり,この一塩基の違いをSNPと呼ぶ.ヒトゲノム全体では約1,000万カ所のSNPがあると考えられている.あるSNPは,ある遺伝子の作られるタンパク質の時期や量,機能に違いを生み出すことがあり,これが病気の危険因子となる.
特発性側弯症は,発症時期により乳幼児(0~3歳),学童期(4~9歳),思春期(10歳~)の3タイプに分けられる.そのうち,最も発症頻度が高いのが,10歳以降に発症・進行する思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis:AIS)である.全世界で人口の約2%にみられる発症頻度の非常に高い疾患で,日本では学校保健法により側弯の学校検診が義務付けられているほど,学校保健上も重要な問題となっている.AISに遺伝因子が強く関与していることは,これまでの家族・双生児研究から知られている1,5).またAISは多因子遺伝病の一つで,疾患における遺伝因子の割合を示す遺伝率が87%と非常に高い疾患である9).
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