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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科49巻2号

2014年02月発行

雑誌目次

視座

留学ノススメ

著者: 秋山治彦

ページ範囲:P.115 - P.115

 昨今の若い整形外科医は,それほど留学に興味がないか,はたまた積極的でないと言われています.確かに,医療技術も医学研究もすべて,日本で学ぶことも実際に経験することもできます.インターネット検索したり,PubMedで論文をみれば,どこの何という先生がどんなことをしているか,その成績はどうなのか,などなど世界中の必要な情報がコンピューターと向かい合っているだけで簡単に手に入れることもできます.しかし,機会があればやはり留学をおススメしたい.ある程度の費用はかかります.英語が得意でなければコミュニケーションできるか不安になります.どんなことを学べばよいのか,どんな仕事を与えられるのか行ってみないとわかりません.家族の生活も心配です.でも,このようなことは何とかなるのです.英語はうまくなくても通じればよいのです.日本を離れて外国に居住し,医学や医療を体験すること,そうすれば日本とは仕組みも価値観も大きく違う社会を知り,多くの人たちと知り合い,医療人としての広がりが身に付きます.日本に戻ってから,違う角度や価値観で日本の医学・医療を考えることができ,日本にいても,いつもglobalを意識して仕事に取り組む姿勢が生まれます.

 スーパーローテーションを基本とする新医師臨床研修制度が始まってから,そろそろ10年になります.また,大学などは独立法人化しました.どの大学も,医局員の確保や病院の収益増加に多大な労力を取られてしまい,内向的になっているかもしれません.1906年に日本で整形外科講座が開講してから100年以上が経過し,先人達の努力で日本からも多くの新しい整形外科学を世界に発信してきました.現在,整形外科に取り組んでおられる先生,ちょうど整形外科を始められた先生,これから整形外科医になろうとしている学生達も,どうか忘れないでいただきたい.留学をして新しい見識を広め,世界を知って,外国から日本を眺めてみてください.帰国してからは,今自分が行っている整形外科が世界の整形外科の中でどのような位置付けなのか.自分が考えていることが世界の考えと何が同じで何が違い,自分の立ち位置はどこなのか.

論述

精神医学的問題が腰部脊柱管狭窄の手術成績に与える影響―前向き研究―BS-POPによる術前評価とJOABPEQとの関係

著者: 二階堂琢也 ,   菊地臣一 ,   大谷晃司 ,   渡邉和之 ,   加藤欽志 ,   矢吹省司 ,   紺野愼一

ページ範囲:P.117 - P.121

 背景:腰部脊柱管狭窄の手術症例における精神医学的問題の存在が日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)による手術成績に与える影響について明らかにする.

 対象と方法:腰痛を有する腰部脊柱管狭窄115例を術前の整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(BS-POP)から正常群と異常群に分類した.その2群間で手術前後の腰痛,JOABPEQ重症度スコア,手術有効率について比較検討した.

 結果:術前でのBS-POPで異常と判定される患者では,術後でのJOABPEQ重症度スコアと手術有効率が低い.

 結論:精神医学的問題は,腰部脊柱管狭窄のJOABPEQによる手術成績に影響する.

腰部脊柱管狭窄における除圧術の手術成績とBS-POPによる精神医学的問題評価との関係―BS-POPの手術前後での変化に着目した前向き研究

著者: 加藤欽志 ,   大谷晃司 ,   二階堂琢也 ,   渡邉和之 ,   矢吹省司 ,   菊地臣一 ,   紺野愼一

ページ範囲:P.123 - P.129

 背景:腰部脊柱管狭窄において,術前後の整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(以下,BS-POP)と手術成績との関係を検討した.

 方法:腰部脊柱管狭窄に対して後方除圧術を施行した189例を対象とした.対象を術前のBS-POPで,正常群と異常群に分けて前向きに比較検討した.

 結果:術前にBS-POPが異常を示した患者のうち,約7割は術後1年でBS-POPが正常化した.BS-POPの異常が術後も残存する,あるいは正常から異常へ悪化する患者は,術前・術後ともにBS-POPの正常を維持した患者と比較して,手術成績が不良であった.

 結論:BS-POPによる評価は,手術前後で変化しうる.今後は,術後のBS-POPの変化を含めて,術前に予測する因子をさらに検討する必要がある.

Lecture

糖尿病足病変―診断・治療・予防ケア

著者: 渥美義仁

ページ範囲:P.131 - P.133

 糖尿病患者の足潰瘍は,糖尿病の重篤な合併症で,しばしば長期入院や切断を必要とし,患者のQOLや生命予後を悪くする.足潰瘍は糖尿病に伴う糖尿病神経障害,末梢循環障害,易感染性などの内的因子と,網膜症による視力障害,視力障害による爪の誤処置,合わない履き物の使用,足に小外傷を受けやすい生活環境などの外的因子を基礎として発症する.これらの内外の因子を有する患者が,爪や胼胝や足白癬を不適切に処置したり,小外傷や火傷を負うと足潰瘍まで進行する率が高くなる.足潰瘍が進行すると,足趾や足の切断が避けられない場合が少なくない.足潰瘍の患者は皮膚科,形成外科,整形外科を受診する場合が多い.整形外科を受診する場合は切断を目的とすることが多いが,切断を回避してQOLを保てるような診断法・治療法と予防的フットケアについて概説する.

痛みと脊髄刺激療法

著者: 長谷川理恵 ,   井関雅子

ページ範囲:P.135 - P.139

脊髄刺激療法の歴史・適応疾患・作用機序

 脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は,知覚神経である太いAβ線維を刺激し興奮させることで,痛覚神経である細いAσ線維やC線維からの情報を脊髄後角内で抑制する,Melzackらにより提唱されたgate control説14)を応用し開発されたものである.実際には,経皮的もしくは観血的に目的とする脊髄後索に一致するよう硬膜外腔に電極を留置し,リード,アダプタを介在して体内に埋め込んだ刺激装置から電気刺激を後索へと送ることで,痛みを緩和する治療法である(図1,2).臨床では,1967年にShealyら18)が直視下手術で硬膜外腔から脊髄後索に電気刺激を行い,痛みが軽減することを報告したのが始まりで,以後,さまざまな方法やデバイスが開発され発展し現在に至る.

 Gate control理論が展開された当時,SCSは脊髄ニューロンを介する種々の痛みに対する効果が期待されたが,現在,SCSが特に有効と考えられる疾患は,術後腰痛(failed back surgery syndrome;FBSS)や複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)をはじめとする神経障害痛(および混合痛)が中心となっている21)(表1).

連載 整形外科最前線 あなたならどうする?・23

整形外科最前線 あなたならどうする?

著者: 村上英樹 ,   加藤仁志 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.141 - P.144

症例

症例:57歳,男性,会社員

主訴:進行する両下肢麻痺

既往歴:糖尿病,高血圧,高脂血症で内服加療中.

現病歴:約2カ月前から下肢麻痺を自覚するようになり,前医を受診した.精査の結果,左腎癌の脊椎(T12)転移による下肢麻痺と診断された.前医では,腎癌はまだ小さかったため,脊椎転移の治療が優先され,放射線療法(計36Gy)が施行された.しかし,下肢麻痺は改善せず,3週間前には左腎摘出術を受けた.その間にも下肢麻痺は徐々に進行し受診となった.なお,腎癌に対して分子標的薬,背部痛に対してオピオイドを内服している.

アドバンスコース 整形外科 超音波診断・治療 どこが・どれだけ・どのように・5

軟部腫瘍の診断・治療における超音波診断装置の有用性

著者: 武内章彦 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.145 - P.151

Abstruct

 超音波診断装置(エコー)は,軟部腫瘍の診断・治療においてこれまでにも有用性が報告されているが,近年の画像解析の進歩によって鮮明な画像が得られるようになり,さらなる活用が期待できる.エコーガイド下生検では,腫瘍内の血流が豊富な至適部位をドプラ法で確認したり,腫瘍周囲の神経・血管を同定して損傷を回避したり,MRIでの信号が異なる部位を正確に穿刺することで診断に役立つ.再発腫瘍のスクリーニングでは,MRIで再発が疑わしい小さな陰影もエコーで充実性の腫瘤かどうかで判断に役立つ場合がある.また,術中エコーでは,腫瘍の局在を確認するのみならず,切除が正確に行えているかを確認しつつ手術を進めることも可能である.

いまこそ知りたい臨床医に必要な放射線の知識Q&A・2

Q2 外部被ばくと放射線の健康影響について

著者: 鈴木啓司 ,   山下俊一

ページ範囲:P.152 - P.154

 私たちは身の回りから種々の放射線を受けていますが,量子論に基づく知識は,生命の誕生から進化,そして病気の成り立ちまで,放射線を考える時に重要となります.

特別寄稿 整形外科の歴史

幻の慶應義塾大学整形外科初代教授 桂秀三

著者: 三笠元彦

ページ範囲:P.155 - P.158

1.「近世整形外科学」

 本邦で最初の整形外科の教科書は松岡道治著「人體畸形矯正学」(1910年)であるが,「整形外科」の名を冠した最初の教科書は桂 秀三著「近世整形外科学」(1927年,金原商店)で,桂 秀三37歳の上梓である.筆者は1昨年の暮に全くの幸運でこの「近世整形外科学」(図1)をネットで手に入れることができた.早速,日本医史学の泰斗蒲原 宏先生に電話で報告したところ,先生も50年前に山形市の古本屋で手に入れたそうで,「個人が所有しているのは,この2冊だけですので,大切にしてください」と言われた.全379ページで,『神中整形外科』の13年前の著作である.外傷は入っていないが,側弯症,カリエス,先天股脱,クル病など当時の整形外科疾患を網羅しており,大正・昭和初期にこれだけの内容を書いた桂 秀三とはどのような人物であったかに興味を抱き,ネットで検索したが,桂 秀三のプロフィルは全く載っていない.実は蒲原先生も同様なことを感じ,資料を集められたそうである.その貴重な資料を提供していただき,桂 秀三の生涯を調べることとなった.東京大学整形外科学教室100年史を編纂された高取吉雄先生にも協力いただき,慶大医学部人事課の資料も参考にした.

臨床経験

クリーンルームで行った清潔股関節手術―人工股関節置換術の術野は,大腿骨近位部骨折手術の術野に比べて清潔か?

著者: 鄭在夏 ,   山田浩司 ,   苅田達郎 ,   永井一郎

ページ範囲:P.161 - P.164

 目的:股関節手術を行った患者でクリーンルーム使用の有無による術野汚染率の違いを検討する.

 対象と方法:2005年10月から2009年12月に都内2施設でクリーンルームで行った清潔股関節手術―人工股関節置換術,およびクリーンルームで行わない大腿骨近位部骨折に対する手術を受けた患者計609人から,術野スワブを①消毒後ドレープ直前,②初回洗浄直前,③最終洗浄後の閉創時のタイミングで3回採取し培養した.

 結果:タイミングごとの術野汚染率は2群間に統計学的有意差を認めなかった(Fisher exact test,スワブ①:P=0.098,スワブ②:P=0.25,スワブ③:P=0.53).

 結論:クリーンルームで行った清潔股関節手術―人工股関節置換術群の術野汚染率は,そうではない大腿骨近位部骨折手術群の術野汚染率と比べ有意な改善を認めなかった.

Trephineを用いた舟状骨偽関節手術

著者: 畑中均 ,   高崎実

ページ範囲:P.165 - P.171

 背景:舟状骨偽関節に対して楔状骨移植術は広く用いられる術式であるが,手技的には必ずしも容易ではない.Leungらは初めて舟状骨偽関節に対してtrephineを用いた術式を報告した.本調査の目的は,Leungらの術式に小改変を加えて,その術後成績を調査することにあった.

 方法:Trephineを舟状骨偽関節部に存在する瘢痕組織や壊死骨の掻爬および円柱形の移植骨の採取に用いた.Leungらとは異なって,移植骨を腸骨翼ではなく腸骨稜から採取した.

 結果:平均で15カ月の経過観察を行い,DASH score・健側比較力・健側比可動域・Cooney scoreはそれぞれ5点,91%,89%,83点であった.

 まとめ:本調査の結果はLeungらのそれと同等であり,小改変を加えたLeungらの術式は舟状骨偽関節手術に対して有効であることを示している.

症例報告

長母趾屈筋腱滑液包炎の1例

著者: 高橋恒存 ,   早間裕貴 ,   中山和泉 ,   中田裕也

ページ範囲:P.173 - P.176

 症例は関節リウマチで加療中の75歳の女性で,主訴は右後足部痛であった.DAS28 scaleは寛解状態で単純X線像上も関節裂げきは保たれていた.超音波検査・MRI検査で直径25mm程度の囊胞性病変があり,長母趾屈筋ガングリオンあるいは滑液包炎を疑った.伏臥位足関節後外側アプローチで摘出したところ症状は消失した.病理検査は内腔側にfibrinの析出を伴うfollicular bursitisであった.長母趾屈筋腱滑液包炎は稀な症例で,超音波検査が経済的かつ非侵襲的で診断に有用であった.術後8カ月で再発なく経過良好である.

第5腰椎分離症に対し経皮的操作による分離部修復術を施行した1例

著者: 樫村いづみ ,   村田泰章 ,   森田裕司 ,   柴正弘 ,   加藤義治

ページ範囲:P.177 - P.180

 症例はラグビー部所属の16歳男性で,保存療法無効の第5腰椎分離症による腰痛を主訴に来院した.両側第5腰椎分離症に対し,鏡視下経皮的screw-rod-hook法による分離部修復術を施行した.術後,腰痛は消失し良好な成績が得られた.本術式はスクリューやフック設置を経皮的に,分離部修復,骨移植の操作を鏡視下に行う.適応の制限や長期成績の欠如などの問題点もあるが,従来法に比べて筋組織の剝離が少なく低侵襲でスポーツ復帰に有利であると考えられた.若年者の分離症に対する手術療法の選択肢の1つとなりうる.

脊椎に転移した良性転移性平滑筋腫(子宮筋腫)の1例

著者: 野村文彦 ,   細金直文 ,   岩波明生 ,   辻崇 ,   石井賢 ,   中村雅也 ,   戸山芳昭 ,   千葉一裕 ,   松本守雄 ,   渡辺航太 ,   亀山香織 ,   高橋康一

ページ範囲:P.181 - P.186

 稀な疾患であり肺などに転移する良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma:BML)が脊椎に転移した1例を経験したので報告する.症例は子宮筋腫摘出術の既往のある47歳の女性で,主訴は腰下肢痛であった.MRIではL3高位で脊柱管内外に充実性腫瘍を認めた.腫瘍部分摘出術を施行したところ,摘出標本は子宮筋腫の手術標本と類似した組織像を認めたためBMLと診断した.またエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体ともに陽性であったため,残存腫瘍に対しホルモン療法を行い,残存腫瘍の縮小を認めた.

術後55年で再置換術を行ったアクリル樹脂製人工骨頭の1例

著者: 長谷川和宏 ,   加畑多文 ,   前田亨 ,   楫野良知 ,   渡邉慎 ,   岩井信太郎 ,   黒田一成 ,   藤田健司 ,   井上大輔 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.187 - P.190

 背景:アクリル樹脂製人工骨頭は1950年に初めてJudetらにより報告されたが,合併症などの問題から1970年頃から使用されなくなった.

 症例:症例は78歳の女性で,23歳時に左結核性股関節炎に対し,近医でアクリル樹脂製人工骨頭置換術が施行された.77歳時に線維性強直で当科に紹介された.

 結果:KTプレート,同種骨を用いて再置換術を行った.インプラントは骨と結合しておらず容易に抜去できた.

 まとめ:今回,術後55年経過したアクリル樹脂製人工骨頭の再置換術を施行した.現在は使用されていないが,その存在を認識すべきである.

上肢に発生したメロレオストーシスの2例

著者: 清水貴樹 ,   下崎真吾 ,   山本憲男 ,   西田英司 ,   木村浩明 ,   武内章彦 ,   五十嵐健太郎 ,   加藤貴士 ,   三崎智範 ,   隅屋寿 ,   土屋弘行

ページ範囲:P.191 - P.195

 背景:メロレオストーシスは,骨に蠟を流したような特徴的な単純X線所見とsclerotome(硬節)に沿った骨シンチグラフィでの集積を認める骨増殖性疾患である.上肢に発生したメロレオストーシスの2例を経験したので報告する.

 症例1:34歳の男性で,右上肢に単純X線像で骨硬化像と,骨シンチグラフィで同部位の集積を認め,メロレオストーシスと診断した.

 症例2:31歳の男性で,左第4・5指のしびれがあり,単純X線像で左尺骨近位部に骨膨隆と硬化像,骨シンチグラフィで同部位の集積を認めた.メロレオストーシスと診断し,骨膨隆部を切除し症状は消失した.

INFORMATION

第27回日本臨床整形外科学会学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.121 - P.121

会期:2014年7月20日(日)~21日(月・祝)

会長:湊 昭策(山王整形外科医院 院長)

会場:仙台サンプラザホール・仙台サンプラザホテル

日本運動器科学会 平成25年度第3回教育研修講演会 フリーアクセス

ページ範囲:P.176 - P.176

会期:2014年3月30日(日曜日) 10時20分~17時

会場:埼玉県県民健康センター 2階「大ホール」(埼玉県さいたま市浦和区仲町3-5-1)

2014 Orthopaedic Education Committee(OEC)セミナー開催 OEC第11回 スタンダードコースHip/Knee大阪 フリーアクセス

ページ範囲:P.186 - P.186

開催日:Hip  2014年3月29日(土)

    Knee 2014年3月30日(日)

会場:大阪大学中之島センター(大阪市北区中之島4-3-53)

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欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.197 - P.197

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.198 - P.198

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.199 - P.199

あとがき フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.200 - P.200

 整形外科領域のデバイスラグの代表であったリバース人工肩関節が昨年9月にようやく厚生労働省によって認可され,今年4月から使用可能となる予定です.肩関節外科医にとっては待ちに待った人工関節です.素晴らしいことです.現在わが国で認可されている肩の人工関節は,腱板が広範に欠損した肩関節には適応はありません.リバース型人工肩関節は腱板機能の障害を伴う関節が大きく破壊された症例に対して使用できる人工肩関節であり,現在では安定した成績が報告されています.近年では近隣諸国でも認可され,世界的に標準的な治療法の一つとなっています.しかし,本術式は適切に施行されないと合併症が高率に発生することも知られています.本手術の適応を適切に選択することが重要です.昨年5月,日本整形外科学会は「リバース型人工肩関節全置換術のガイドライン」を策定しましたが,このガイドラインの存在が,本品が国内で治験されずに厚生労働省で認可された一つの理由になったことは間違いありません.ただし,本術式を行うには,腱板断裂などの肩関節手術に習熟していること,日本整形外科学会が認定する講習会の受講することなどが必要です.

 本誌視座「留学ノススメ」で秋山治彦先生は「日本に戻ってから,違う角度や価値観で日本の医学・医療を考えることができ,日本にいても,いつもglobalを意識して仕事に取り組む姿勢が生まれます.」「留学は,整形外科学における先端的,独創的な技術を獲得することだけが目的でなく,外国の自然,社会,文化などに対する深い見識をも育みます.世界に通用する豊かな国際性を備えた整形外科医が,これからの日本の整形外科学を発展させて行くことを期待したいと思います.」と述べられています.グローバル社会と言われているにもかかわらず,最近,留学を志す医師数の減少が続いています.視座を読まれて留学へ目を向ける医師が少しでも増えることを期待しています.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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