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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科49巻4号

2014年04月発行

雑誌目次

誌上シンポジウム 整形外科外傷治療の進歩

緒言 フリーアクセス

著者: 金谷文則

ページ範囲:P.308 - P.308

 整形外科外傷センターの充実や緊急医療の標準化などにより,多発外傷の救命率や救肢率の改善に加えて,外傷四肢の機能も改善している.近年の整形外科外傷の進歩についてエキスパートに執筆をお願いした.

 多発外傷では,骨折に対して早期に最終的な固定(early total care)を行うことにより,合併症を少なくするばかりでなく患者管理を容易にし,早期に機能回復が得られる.一方,全身状態不良例では手術がsecond hitとなり予後を悪くする場合があり,damage control orthopaedics(DCO)により,最小限の処置で骨折の安定化を図る必要がある.特に下肢骨折では創外固定が大きな役割を果たす.成人の下肢外傷例では,DCOとして行われた創外固定が最終的な治療になることは少なく,髄内釘やプレート固定に変換されることが多い.

Damage control orthopaedics(DCO)の概念・治療戦略

著者: 新藤正輝

ページ範囲:P.309 - P.313

 多発外傷患者の骨折に対する治療方針についてはearly total care(ETC)とdamage control orthopaedics(DCO)の大きく2つの概念がある.しかし,それぞれの治療の有用性や適応については明確な指標はなく,いまだ議論が続いている.治療方針決定に当たってチーム医療は不可欠であり,整形外科医は集中治療医,救急医とともに個々の症例の全身状態,手術内容,手術時間を十分に協議し理解したうえで方針を決定することが重要である.

Damage control orthopaedicsにおける創外固定の役割

著者: 最上敦彦

ページ範囲:P.315 - P.324

 Damage control orthopaedics(DCO)における創外固定(external fixation;EF)は,最も重要な手技の1つである.多発外傷においては「全身に対するDCO」として不可欠であり,軟部組織の損傷の激しい部位では「局所のDCO」も可能にする.その最大の役割は,内固定への切り替えまでの安全な「橋渡し」である.よってEFを用いたDCOを行うにあたり,本外傷を取り扱う整形外傷医には,その適応を見極め,至適器械を選択し,これを事前に準備したうえで,EFの特性と臨床応用上の留意点について熟知しておくことが求められている.

皮膚欠損を伴う脛骨開放骨折の治療―応急処置とdefinitive surgery

著者: 土田芳彦

ページ範囲:P.325 - P.332

 皮膚欠損を伴う脛骨開放骨折の治療は難しい.患肢の機能的温存が目標だが,その前に生物学的温存が達成されなければならない.そのためには「阻血回避,感染回避,壊死回避」が必要であり,早い血行再建の次に重要なことは十分なデブリドマンである.1回で終わらせる一期的デブリドマンは難しく,多数回施行の繰り返すデブリドマンでは残存壊死組織により感染が生じやすい.そこで,両者の中間とも言える「最大でも2回で完了するデブリドマン」が理想的である.早く確実なデブリドマンが再建の前提条件である.

 デブリドマンを含めた適切な初期治療の次に,確定的骨・関節・軟部組織再建が行われる.この骨・関節再建の成功の鍵は軟部組織再建が十分に行われるか否かにかかっている.

 骨欠損と軟部組織欠損はその程度によりさまざまな組み合わせがある.欠損が同部位,同程度の場合,骨欠損のほうが大きい場合,軟部組織欠損のほうが大きい場合など,その組み合わせにより再建方法は異なる.

 通常は,軟部組織欠損が骨欠損より大きいため,常に皮弁形成術による再建を念頭に置く必要がある.軟部組織欠損の状態を過小評価することは治療の失敗へつながる.もし皮弁形成術が十二分に成功すれば,骨接合と骨欠損に対する治療は自由に施行できる.脛骨開放骨折の治療は軟部組織再建にかかっている.

皮膚欠損を伴う上肢開放骨折の治療

著者: 面川庄平

ページ範囲:P.333 - P.339

 上肢開放骨折の治療目的は,変形のない骨癒合と軟部組織損傷の機能的再建である.良好な上肢機能を獲得するためには,強固な骨固定と適切な再建を行い早期にリハビリテーションを開始することが望ましい.皮膚欠損の閉鎖方法は,損傷程度に応じて遊離植皮,局所皮弁,島状皮弁,遊離(筋)皮弁を選択する.欠損の生じた骨組織,筋・腱組織,主要動脈・神経を再建する必要があり,治療に携わる整形外科医はマイクロサージャリーを含む再建外科の手技に十分習熟して治療に臨むべきである.

外傷性骨髄炎の治療の進歩

著者: 井上円加 ,   野田知之

ページ範囲:P.341 - P.346

 開放骨折あるいは骨接合術後に続発する骨髄炎は,治療に難渋する疾患で,沈静化を目的とする早期治療のみならず,続発する骨欠損に対する再建法を含めていまだ未解決な疾患である.長管骨開放骨折の感染率は4~64%と報告されており,軟部組織損傷の度合いが大きいほど感染率が上昇する.骨髄炎の治療についてはさまざまな治療法が行われているが,信頼に足るエビデンスに乏しいのが現状である.しかしながら,治療の基本が,①適切な抗菌薬の使用,②十分なデブリドマン,③骨欠損部の適切な固定,④軟部組織被覆・再建であることに変わりはない.近年行われている治療法について概説した.

V.A.C.療法の功罪

著者: 酒井和裕 ,   吉野興一郎 ,   濱崎将弘 ,   馬渡玲子 ,   古川雄樹 ,   杉田健 ,   永吉信介 ,   宮地有理

ページ範囲:P.347 - P.351

 V.A.C.療法は肉芽形成を刺激して創傷治癒を促進させる閉鎖陰圧療法で,汚染創などの治療を容易とした.外傷性皮膚軟部組織欠損も適応で,従来法と比べて便利で感染などの危険性も少ない.しかし,骨関節や腱・神経・血管損傷などが合併しているときは使用法に注意を要す.肉芽形成は創治癒を促進する一方で,最終的には瘢痕となり癒着を生じる.癒着はこういった組織損傷の治療成績を悪化させるためである.創傷治癒だけではなく機能回復も目指すために,これらの組織損傷を合併した広範囲開放創は長期にV.A.C療法を行うべきでない.Damage controlや感染制御期間の一時的な創傷保護を主目的として使用し,早期に機能再建と皮膚欠損部を皮弁などに変換するほうがよい.最近はインプラント露出部や感染創にも使用されているが,十分なデブリドマンと創の観察が必要である.

検査法

超音波画像診断装置を用いた胸郭出口における血管面積測定の検者内・検者間信頼性

著者: 阿部洋太 ,   武井健児 ,   高橋和宏 ,   山本敦史 ,   高岸憲二 ,   白倉賢二

ページ範囲:P.353 - P.357

 背景:本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて胸郭出口における血管面積計測を行い,検者内・検者間信頼性を検討することである.

 対象と方法:健常男性9名を対象とし,端座位・上肢下垂位で斜角筋間三角,肋鎖間げき,小胸筋深部における鎖骨下動脈および腋窩動脈の血管面積を超音波診断装置で計測し,検者2名による級内相関係数(ICC)を算出した.

 結果:検者内信頼性[ICC(1,1)]および検者間信頼性[ICC(2,1)]ともに信頼係数は0.7以上だった.

 まとめ:本法は胸郭出口症候群における症状誘発部位を特定するための有用なツールとなりうる.

Lecture

整形外科疾患の遺伝と遺伝子

著者: 鎌谷直之

ページ範囲:P.359 - P.363

はじめに

 多くの疾患で遺伝と遺伝子は重要な役割を果たしている.整形外科領域でも同様である.筆者は整形外科ではなく人類遺伝学,医科遺伝学の研究者なので,後者の視点から整形外科疾患の遺伝と遺伝子について,いくつかの例を取り上げ総論的に解説する.

最新基礎科学/知っておきたい

オートファジーによる軟骨変性の抑制

著者: 高山孝治

ページ範囲:P.364 - P.367

■はじめに

 変形性関節症(OA)は関節軟骨の変性によって関節変形や疼痛を生じ,日常生活において著しい機能低下をもたらす.これまで研究により,関節軟骨のOA変化の原因としてメカニカルストレス,遺伝的要因,加齢などさまざまなものが報告されているが,いまだその詳細な制御機構は解明されていない.組織学的には軟骨細胞の減少および細胞外マトリックスの減少がOAの特徴とされている11).関節軟骨において,軟骨細胞は唯一の細胞であり,細胞外マトリックスの代謝を行っている7).したがって,軟骨細胞を健全な状態に保つことは,正常な関節軟骨を維持し,変性を抑制するために重要であると考えられる.

 一方,細胞内のタンパク分解システムの一つであるオートファジー(自食作用)は,生物種間で高率に保存され,細胞内の不要なタンパクや損傷した器官を除去することにより,細胞内の環境を健全な状態に保つために重要な役割を果たしている3,8,10).老化によるオートファジーの低下は不要な物質の蓄積をもたらし,さまざまな老化現象や変性疾患に関与していることが示唆されている8).このようにオートファジーは変性疾患において重要な役割を果たしていることが示唆されているが,軟骨の変性疾患であるOAへのオートファジーの関与についてはいまだ不明である.そこでわれわれはヒト軟骨組織および軟骨細胞におけるオートファジーの発現の変化や影響を調べ,OAにおける役割について検討した.

連載 「勘違い」から始める臨床研究―研究の旅で遭難しないために・1【新連載】

P値が小さいほど,効果が大きい?

著者: 福原俊一

ページ範囲:P.369 - P.373

 近年,わが国の臨床研究の発信力が急速に低下していることが懸念されています(現在世界29位).整形外科の領域ではいかがでしょうか? 識者は,統計学の専門家や教育が足りないからだ,英語力の問題だ,とおっしゃいますが,筆者は,それはそれぞれ10%くらいの問題にすぎず,主要な問題はそこではなく,「研究デザイン」にあると考えています.それはロジカル・シンキングの問題であるとも言えます.

 この連載では,臨床研究に関するよくみられる「勘違い」を,具体例とともにお示しします.それによって,読者の皆様に,「研究デザイン」の重要性と本質をご理解いただくことを狙っています.

いまこそ知りたい臨床医に必要な放射線の知識Q&A・4

Q4 医療被ばくについて 1.現状

著者: 鈴木啓司 ,   山下俊一

ページ範囲:P.374 - P.375

医療被ばくとは

 1895年11月8日にレントゲン博士によって発見されたX線は,数年の後にはX線撮影装置として画像診断に利用されるようになりました.以来,120年あまりが経とうとする今日,放射線診療の技術は目覚ましい発展を遂げ,高度な画像診断や放射線治療が可能になっています.その一方で,これら放射線診療に伴う放射線被ばく,いわゆる医療被ばくの問題が取り上げられることも多くなりました.2004年のLancet誌に掲載された論文で,日本における医療被ばくが他国と比較して高いレベルにあることが報告され,マスコミによる報道をきっかけにして国内に巻き起こった大きな騒動は記憶に新しいところではないでしょうか.そこで,本シリーズでは,医療被ばくの現状を国内や国外に目を向けて眺め,その防護についても考えていきたいと思います.防護の三原則は距離,時間,遮蔽ですが,医療で放射線を使う場合は,放射線のリスクよりもはるかに診断や治療に有益であるという医療行為の正当性が遵守されるという大前提から,医療被ばくの線量限度が設けられていないことに十分配慮する必要があります.

運動器のサイエンス・1【新連載】

運動器活動が脳を健康にする

著者: 半場道子

ページ範囲:P.376 - P.378

超高齢社会と整形外科

 社会の超高齢化に伴い,いま先進諸国では共通して2つの脅威に直面している.①高齢に伴う認知症および軽度認知障害者の増加と,②慢性疼痛患者の増加である.世界の認知症患者は4,400万人,軽度認知障害患者はその3倍と言われる.長寿を願って医学を発達させ,国を挙げて健保制度や衛生インフラを充実させてきたその先に,大きな陥穽が待ち受けていた.各国ともこの脅威に対し国家戦略として解決の道を模索し,2013年には英国で認知症サミットが開催されている.

 整形外科は,認知機能問題とはまったく無縁の領域であると,長年考えられてきた.しかし運動器の活動によって認知機能低下が未然に食い止められ,健全に保たれる可能性が最新の神経科学によって報告されている5,6).高齢者の運動器の機能を把握し,維持と向上に助力できるのは,整形外科領域である.

アドバンスコース 整形外科 超音波診断・治療 どこが・どれだけ・どのように・6

リウマチ関連

著者: 小林勉

ページ範囲:P.379 - P.384

Abstruct

 近年,関節リウマチの診断および治療において,超音波検査の有用性が評価されてきている.現在の関節リウマチ疾患活動性の評価においては,DAS(disease activity score in rheumatoid arthritis)28,SDAI(simple disease activity index)あるいはCDAI(clinical disease activity index)などが用いられているが,これらの評価法はいずれも関節局所の所見,炎症反応,患者および診察医の全般評価を組み合わせた評価法で,その評価にはしばしば経験と熟練を要する.

 超音波検査はより正確な関節所見を得ることにつながり,結果として疾患活動性評価の正確性が向上することが期待できる.また,腫脹関節に対して関節穿刺や薬物注入を行う場合に,超音波ガイド下に穿刺を進め,薬液を標的部位に正確かつ安全に注入できることも,本検査が有用である点の1つと言える.

 以上から,関節リウマチの初期診断から,その後の疾患活動性の推移の評価,さらには局所の症状変化への柔軟な対応といったさまざまな場面で超音波検査は有用である.運動器超音波診断は,関節リウマチ診療において不可欠な画像診断ツールであると言える.

臨床経験

筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術の進入法を応用した胸椎黄色靱帯骨化症に対する除圧術

著者: 北中重行 ,   八田陽一郎 ,   長江将輝 ,   小池宏典 ,   三上靖夫 ,   久保俊一

ページ範囲:P.385 - P.390

 胸椎黄色靱帯骨化症(以下,OLF)に対して筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術(以下,MILD)の進入法を応用した除圧術を施行した.対象は4例で,臨床成績と画像所見について検討した.1椎間あたりの出血量は平均41g,日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)の平均改善率は54%であった.骨化巣の高位や骨化形態に関わらず,術前計画通りに骨化巣の切除ができ,後弯の増大は平均2.2°で,矢状面アライメントに大きな影響を与えなかった.本術式は,出血が少なく,オリエンテーションが良好な広い術野で安全かつ十分に骨化巣の切除が可能であり,OLFに対する有用な低侵襲手術である.

Pedicle screw systemを用いて治療したMeyerding分類Ⅳ度の腰椎すべり症の3例

著者: 水野健太郎 ,   三上靖夫 ,   長江将輝 ,   石橋秀信 ,   池田巧 ,   長谷斉 ,   久保俊一

ページ範囲:P.391 - P.395

 Meyerding分類Ⅳ度の第5腰椎すべり症の3例に対し,pedicle screw systemを用いた整復固定術(L5-S1)を行った.3例ともMeyerding分類Ⅰ度まで整復され,最終的に矯正損失なく骨癒合を得た.椎体の形成不全を伴い椎間可動性の少なかった1例で術後一過性の神経障害を認め,より慎重な整復操作が必要であったと考えた.一方,椎間不安定性が強く,短期間にすべりが進行した症例に対しては,神経根の十分な除圧と脊髄モニタリングを行うことで,可及的に整復操作を行えた.

症例報告

逆行性後骨間皮弁形成術を行ったBowen病の1例

著者: 山田賢治 ,   関谷繁樹 ,   山口芳裕

ページ範囲:P.397 - P.401

 症例は78歳の男性で,左手関節尺側部のBowen病の診断で切除術を受けた.7年後に右膝蓋骨骨折を受傷し入院した際に,同部位に表皮の不規則な肥厚と不全角化や痂皮形成がみられ,再発と判明した.腫瘍切除術後に生じた皮膚欠損を,逆行性後骨間皮弁で被覆した.近位皮膚穿通枝の走行は筋間中隔に一致せず総指伸筋・小指伸筋の深部をくぐり橈側寄りから皮膚に到達し,さらに中央・遠位部の皮膚穿通枝は欠損し,稀な解剖学的変異を伴っていた.後骨間動脈には多彩な解剖学的変異があり,術中に臨機応変な対応を迫られる場合がある.

INFORMATION

第31回日本二分脊椎研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.313 - P.313

日程:2014年7月5日(土)

会場:東京大学本郷キャンパス内 福武ホール

The 27th Annual Congress of the International Society for Technology in Arthroplasty:ISTA 2014(第27回国際人工関節技術学会) フリーアクセス

ページ範囲:P.346 - P.346

会期:2014(平成26)年9月24日(水)~9月27日(土)

会長:高井 信朗(日本医科大学大学院医学研究科整形外科学 教授)

   飯田 寛和(関西医科大学整形外科学 教授)

   堤  定美(日本大学歯学部 特任教授)

会場:京都ホテルオークラ

   〒604-8558 京都市中京区河原町御池 Tel:075-211-5111

   ホームページ http://www.istaonline.org/

第25回日本末梢神経学会学術集会開催 フリーアクセス

ページ範囲:P.390 - P.390

会期:2014年8月29日(金),30日(土)

会場:ホテルルビノ京都堀川(〒602-8056 京都市上京区東堀川通下長者町)

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「臨床整形外科」最優秀論文賞2013発表 フリーアクセス

ページ範囲:P.307 - P.307

 このたび,「臨床整形外科」最優秀論文賞を設け,整形外科領域に関する独創的で優れた論文を表彰することとなりました.昨年1年間(2013年,48巻)に掲載された投稿論文を対象に,編集委員会による厳正な審査のもと,下記論文の受賞が決定いたしました.

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.403 - P.403

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.404 - P.404

文献の書き方 フリーアクセス

ページ範囲:P.405 - P.405

あとがき フリーアクセス

著者: 土屋弘行

ページ範囲:P.406 - P.406

 ロシアのソチで開催された冬季オリンピックも終わり,皆さんも一段落しているところだと思います.日本は金メダル1個,銀メダル4個,銅メダル3個という結果でした.多くの日本人は,だいぶ金メダルを逃したなあと感じているかもしれません.元総理の発言が問題となりましたが,裏返せば,期待がとても大きかったのだと言えるでしょう.日本選手が本番に弱いというイメージがあるのでしょうが,選手は金メダルを目指して頑張っているわけで,勝負は時の運にも左右されますし,メダルをとって当然となると選手には酷かと思います.今回のオリンピックでも,人間の可能性や自分を信じる力,逆境を乗り越える強さ,師との絆を教えてもらいました.選手は襲いかかるプレッシャーの中で,いかにして自分をコントロールして最高のパフォーマンスを出すか自身と戦っています.そのためには,メンタルトレーニングが大変重要なのだと思います.われわれの学会発表や手術などにも通じるものがあります.さらに,今年はブラジルでサッカーのワールドカップが開催されますが,日本人の力を信じ,大いに期待したいと思います.12時間の時差を考えますと仕事が手につかない状況になるかもしれません.そして,関係各位においては2020年の東京オリンピックに向けて,有望な選手をどんどん育成していっていただきたいと思います.整形外科スポーツ医学の領域が益々忙しくなるでしょう.

 本号の誌上シンポジウムは,「整形外科外傷治療の進歩」です.運動器の外傷は,整形外科医療において最も重要な分野です.この領域の治療の進歩が,関節外科や脊椎外科および腫瘍再建術などへ波及効果をもたらします.また,本号から新たに,「『勘違い』から始める臨床研究―研究の旅で遭難しないために」と「運動器のサイエンス」の連載が始まりました.いずれも示唆に富む内容で,整形外科学の分野で研究する者にとっては,重要な道標となるでしょう.今後の内容に,乞うご期待です.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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