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連載 いまこそ知りたい臨床医に必要な放射線の知識Q&A・5
Q5 医療被ばくについて 2.世界の趨勢
著者: 鈴木啓司1 山下俊一1
所属機関: 1長崎大学原爆後障害医療研究所社会医学部門放射線災害医療学研究分野
ページ範囲:P.428 - P.431
文献購入ページに移動日本における放射線診療機器の設置数は,諸外国と比較しても突出して多く,医療被ばくへの懸念につながっていますが,世界ではどの程度の医療被ばくがあるのでしょうか.原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)がまとめた2008年報告書に,放射線医療にかかわる最新の統計がまとめられていますので,その実態を日本の現状と比較してみましょう.
まず,年間の1人あたりの平均被ばく線量ですが,日本国内では,自然放射線によるものが約2.1mSv,医療被ばくによるものがおおよそ3.8mSv程度と言われています.これに対し,世界平均では,自然放射線が約2.4mSv,医療被ばくはおおよそ0.66mSv程度でした.しかし,この平均値は,各国の放射線診療の実態と合わせて理解する必要があります.ちなみに,2006年の統計では,米国内での自然放射線は平均でおおよそ3.1mSvで,医療被ばくは平均で約3.0mSvでした.たとえば,人口1,000人あたりの医師数で区分されたUNSCEARの報告書では,区分レベル1(人口1,000人あたり医師数1人以上で,日本はこの区分に含まれる)の1人あたりの平均医療被ばく量は年間で1.19mSvであるのに対し,3,000人あたり医師数1人以下のレベル(レベル3および4)の国々では,その値がわずか0.3mSvと大きな違いがあります.これは,異なるレベルの国ごとの人口1,000人あたりの放射線診療数の違いを反映しており,レベル1の国々では年平均1,332回の放射線診断が行われているのに対し,レベル3および4の国々では年平均で20回でした.
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